2017年ブゾーニ国際ピアノコンクールが終わって | 音と言葉と音楽家  ~クラシック音楽コンサート鑑賞記 in 関西~

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クラシック音楽の鑑賞日記や雑記です。
“たまにしか書かないけど日記”というタイトルでしたが、最近毎日のように書いているので変更しました。
敬愛する音楽評論家ロベルト・シューマン、ヴィルヘルム・フルトヴェングラー、吉田秀和の著作や翻訳に因んで名付けています。

イタリアのボルツァーノで開催された、2017年ブゾーニ国際ピアノコンクールが、終わった。

これまで、ネット配信を聴いて(こちらのサイト)感想を書いてきたが、とりわけ印象深かったピアニストについて、忘備録的に記載しておきたい。

ちなみに、これまでの記事はこちら。

 

セミファイナル 第1日

セミファイナル 第2日

セミファイナル 第3日

セミファイナル 第4日

ソロファイナル 第1日

ソロファイナル 第2日

室内楽ファイナル 第1日

室内楽ファイナル 第2日

グランドファイナル

 

 

Stefano Andreatta (25/07/1991 Italy)
安定した技巧に基づく冷静な演奏。
それでいて、味気ない演奏には決してならず、適度な抒情性がある。
今回、早い段階で落ちてしまったのは残念だった。
クレメンティのソナタ第5番、ショパンのソナタ第2番、いずれも良かった。

 

Anna Geniushene (01/01/1991 Russian Federation)
今大会の第3位。
しっとりした情感から激情の表現まで聴かれる、感性重視タイプのピアニストで、味わい深い演奏。
ただ、とても大柄な音楽をするというよりは、意外と音楽が拡散することなく、こじんまりとまとまっている。
ラフマニノフの「音の絵」op.33、プロコフィエフのソナタ第8番、シューマンのピアノ五重奏曲あたりが印象的。

 

Madoka Fukami (16/07/1988 Japan)
あくまでも淡々とした表現が魅力。
メカニックの点でもかなりのアドバンテージがある。
ドビュッシーの「12の練習曲」より第2部、プロコフィエフのソナタ第3番、ラヴェルの「鏡」、いずれも彼女の演奏スタイルにぴったりの曲で、素晴らしかった(彼女は、自分の得意曲がよく分かっているのではないか)。

 

EunSeong Kim (07/03/1997 Korea, Republic of)
今大会の個人的なMVPは、彼にしたい。
テクニック的にも、表現力の点でも、群を抜いている。
フランクの「前奏曲、コラールとフーガ」、リストの「ダンテを読んで」、バッハ/ブゾーニの「前奏曲とフーガ」BWV552、スクリャービンのソナタ第5番など、いずれの曲も細部まで表現が尽くされていた。
特に、リストの「ダンテを読んで」は、今まで一番好きだったチョ・ソンジンの2015年浜コンライヴ盤を抜いたかもしれないほどの、圧倒的な迫力を誇る名演である。
反面、室内楽は(少なくとも現段階では)それほど得意というわけではなさそう。
コンクールで上位を狙うには、そのあたりが課題かもしれない(ソロ・ピアニストとしての活動自体には障りはないだろうが)。

 

Xingyu Lu (17/06/1999 China)
優れたテクニックが魅力である一方、ロマン的な表現などはあまり得意ではなさそう(それなりにがんばってはいるのだが)。
何と言ってもストラヴィンスキーの「ペトルーシュカからの三楽章」が最高の名演で、溌剌とした演奏は水を得た魚のよう。
名高いポリーニ盤以上の出来、と言っても過言ではないかも。

 

Arisa Onoda (16/01/1996 Japan)
ラヴェルの「鏡」で抒情的な表現が聴かれ、なかなか良かった。
淡々とした表現のFukamiと好対照をなす。

 

Jaeyeon Won (22/02/1988 Korea, Republic of)

今大会の第2位。
テクニシャンではあるが、それほどは徹底されていなかったり、あるいは弾き崩すクセが気になったり、手放しで好きなピアニストというわけではない。

しかし、シューマンの「フモレスケ」やバルトークの「戸外にて」など、悪くない演奏も多々あった。

 

Ivan Krpan (28/05/1997 Croatia)
今大会の優勝者。
表現に生硬さがあるが、テクニックはまずまずしっかりしており、今後に期待か。
ブラームスの「シューマンの主題による変奏曲」、リストの「ダンテを読んで」、ベートーヴェンのソナタ第11番、ブラームスのピアノ五重奏曲あたりが比較的印象に残った。

 

Julius Asal (12/02/1997 Germany)
軽やかな演奏が特徴的。
シューベルトのソナタ第13番、ベートーヴェンのソナタ第5番あたりが割と良かった。

 


以上のようなピアニストが、印象に残った。
今大会は、残念ながら気に入ったピアニストが少なめだった。
ただ、その分をEunSeong Kimが埋め合わせてくれたといえるかもしれない。
今後も大いに活躍するであろう逸材である。

 

 


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