2017年ブゾーニ国際ピアノコンクール ソロファイナル 第1日 | 音と言葉と音楽家  ~クラシック音楽コンサート鑑賞記 in 関西~

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クラシック音楽の鑑賞日記や雑記です。
“たまにしか書かないけど日記”というタイトルでしたが、最近毎日のように書いているので変更しました。
敬愛する音楽評論家ロベルト・シューマン、ヴィルヘルム・フルトヴェングラー、吉田秀和の著作や翻訳に因んで名付けています。

イタリアのボルツァーノで、ブゾーニ国際ピアノコンクールが開催されている。

8月26日は、ソロファイナルの第1日。

ネット配信を聴いた(こちらのサイト)。

ちなみに、これまでの記事はこちら。

 

セミファイナル 第1日

セミファイナル 第2日

セミファイナル 第3日

セミファイナル 第4日

 

 

Larry Weng (25/09/1987 China)

 

Bach/Busoni: Toccata, Adagio und Fuge BWV 564

L. v. Beethoven: Sonata n. 30 op. 109

C. Mason: Just as the sun is always

S. Prokofiev: Sonata n. 7 op. 83

 

バッハ/ブゾーニの「トッカータ、アダージョとフーガ」BWV564は、やはり音が硬め、そしてヴィルトゥオーゾ風の演奏。

ベートーヴェンのソナタ第30番は、思ったよりは柔らかな音で、また端正なスタイル。

ただ、テンポの微妙な揺らし方や、左右の手のずらし方などに、ときに何ともロマン派風というか、様式的違和感を感じないでもない。

そして、やっぱりフォルテ(強音)の部分では音が硬め。

プロコフィエフのソナタ第7番、この曲は彼のスタイルに合っている印象である。

ただ、終楽章はやや遅めのテンポの割に、あまり余裕の感じられない演奏となっており、少し残念。

 

 

Dmytro Choni (31/08/1993 Ukraine)

 

Bach/Busoni: Choralvorspiel n. 3 “Nun komm’ der Heiden Heiland“ BWV 659

J. Haydn: Sonata HOB. XVI:31 n. 46

E. Benzecry: Toccata Newen

F. Liszt: Les cloches de Geneve: Nocturne n. 9

S. Prokofiev: Sonata n. 6 op. 82

 

バッハ/ブゾーニの「いざ来ませ、異邦人の救い主よ」、悪くはないが、とりわけ味わい深いというほどではないし、音も硬め。

ハイドンのソナタ第31番、こちらはまずまず良いか。

リストの「ジュネーヴの鐘」、これはロマン的、神秘的な雰囲気が出ており、なかなか美しい演奏。

プロコフィエフのソナタ第6番、やはりフォルテが硬めだが、プロコフィエフにはこういう音もありかもしれない。

丁寧な演奏だが、演奏のキレとしてはまずまずといった程度であり、とりわけ目立った集中力やこだわりの表現を見せるというわけでもない。

 

 

HanGon Rhyu (12/06/1999 Korea, Republic of)

 

Bach/Busoni: Choralvorspiel n. 5 “Ich ruf zu Dir Herr Jesu Christ” BWV 639

J. Lenot: Dramatis Personae (2007)

L. v. Beethoven: Sonata n. 31 op. 110

R. Schumann: Carnaval op. 9

 

やはり、全体に音が軽めなのが特徴。

バッハ/ブゾーニの「主イエス・キリストよ、われ汝に呼ばわる」、ときどき妙なテンポの停滞があるが、そこそこ味わいはある。

ベートーヴェンのソナタ第31番、うまく弾けているが、フレーズの終わりでいちいちテンポを遅くしたり、つながりを切ったりするので、音楽がスムーズに流れないきらいがある。

シューマンの「謝肉祭」、丁寧に弾けている。

とりわけ奔放だったり、生き生きしていたりするわけではないけれど。

 

 

Anna Geniushene (01/01/1991 Russian Federation)

 

Bach/Busoni: Choralvorspiel n. 5 “Ich ruf zu Dir Herr Jesu Christ” BWV 639

J. Haydn: Sonata HOB. XVI:31 n. 46

C. Mason: Just as the sun is always

S. Prokofiev: Sonata n. 8 op. 84

 

バッハ/ブゾーニの「主イエス・キリストよ、われ汝に呼ばわる」、なかなかに味わい深い。

ハイドンのソナタ第31番、強弱や音色に工夫があり、表情の変化がそこここにみられて、なかなか面白い。

理知的というよりは、感性の赴くままにといった感じ。

古典派の曲にしては少しやりすぎかもしれないが。

プロコフィエフのソナタ第8番、この曲らしい妖しい雰囲気がよく出ている。

急速部分ではかなり激しく情熱的で、私の好みとは少し異なるが、迫力は十分にある。

終楽章、かなりのハイテンポで、かつ相変わらず情熱的だが、雑にはなっていない。

コーダは少しミスもあり惜しかったが、なかなかのテンポで突っ切っており、スリリングである。

 

 

Daniele Paolillo (14/09/1991 Italy)

 

Bach/Busoni: Choralvorspiel n. 5 “Ich ruf zu Dir Herr Jesu Christ” BWV 639

M. Clementi: Sonata Didone abbandonata op. 50 n. 3

F. Liszt: Sonata in si min. / h-moll S. 178

E. Benzecry: Toccata Newen

 

バッハ/ブゾーニの「主イエス・キリストよ、われ汝に呼ばわる」、クレメンティのソナタ ト短調「見棄てられたディドーネ」op50-3、ともにまずまずの出来。

リストのソナタも、誠実な感じの演奏で好感が持てるが、迫力やキレが特別あるというわけではなく、細部へのこだわりがすごいというわけでもない。

あとワンポイント、何か強みが欲しいところである。

 

 

Madoka Fukami (16/07/1988 Japan)

 

G. Pesson: Vexierbilder II

J. Haydn: Sonata HOB. XVI:50

M. Ravel: Miroirs

Bach/Busoni: Choralvorspiel n. 5 “Ich ruf zu Dir Herr Jesu Christ” BWV 639

A. Skrjabin: Sonata n. 5 op. 53

 

ハイドンのソナタ第50番、快速テンポで、かつ打鍵の粒がそろっており、聴いていて小気味よい。

ラヴェルの「鏡」、やはりキレがある。

同曲をOnodaがセミファイナルで弾いたが、詩情のOnoda、キレのFukamiといった感じで、それぞれに個性があり甲乙つけがたい。

その分、「道化師の朝の歌」のようなキレ重視の曲では、Fukamiのほうにややアドバンテージがあるかもしれない。

トリル風の三連符音型や、同音連打音型は、Fukamiのほうがわずかながら明瞭度が高い(それでも完全に明瞭というわけではないが)。

ごまかされることの多い再現部での二重グリッサンドも、かなりちゃんと弾けている。

バッハ/ブゾーニの「主イエス・キリストよ、われ汝に呼ばわる」、これも淡々としていながらも、シックな味わいのある演奏。

スクリャービンのソナタ第5番、これも良さそうだが、何かの手違いなのか、残念ながらオンデマンド配信では冒頭ごくわずかしか聴けない。

 

 

そんなわけで、第1日の演奏者のうち、私が室内楽ファイナルに進んでほしいと思うのは

 

Anna Geniushene (01/01/1991 Russian Federation)

Madoka Fukami (16/07/1988 Japan)

 

あたりである。

 

 


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