無関心という大罪
※画像はお借りしているものです。
この映画、劇場公開されたときに気になってたんだけどなぜか観にいかんかったんだよな。
なんでだろう?こういうやつはたいがい観に行くんだけどな。
ありがたいことにアマプラで配信してくれてるんでしっかりと鑑賞、結論から言うとこれは“観る人を選ぶ”超傑作なわけだ。
なんで“観る人を選ぶ”のか?
それは面白くないからだ。
エンタメ性ゼロ、ただ自分の感性がマヒしていないか顧みるための作品だからだ。
舞台はアウシュビッツ収容所の隣にある居住区。
アウシュビッツ収容所って、教科書とかで名前ぐらい聞いたことがあるだろう、ナチスによるあまりにも残虐なユダヤ人を大虐殺した収容施設だ。
その収容所で繰り広げられた残虐な大虐殺は歴史に刻まれた事実として語り継がれるが、この映画ではそんなことは一切描かれない。
この映画はアウシュビッツから壁一枚隔てた屋敷に暮らす収容所所長の家族の暮らしについて。
家族はプール付きの屋敷で、休みの日は川で水遊び、ピクニックやバーベキューを楽しむ。
新しい洋服をみんなで選ぶ女性たち、その服は処刑されたユダヤ人からはぎ取った洋服や毛皮…、石ころのように歯で遊ぶ子供たち、おそらくそれは処刑されたユダヤ人の歯…、
収容所では所長の元に業者が新しい焼却炉の商談に訪れている。
2系統ある焼却炉を交互に動かすことにより償却効率を大幅に向上させるという提案だ。
しかしその焼却炉は虐殺したユダヤ人を焼却するためのものだろう、たぶん。
狂ってる…、所長はただ単に仕事に就いているだけ、その家族は何でもない日常を過ごしているだけ…
感覚の麻痺とは恐ろしい。
転勤になった所長に対し、妻は今の生活を手放したくないからと所長は単身赴任を選ぶ。
家族は今まで通り収容所の隣で普通の生活を続けるのだ。
客観的に見ると、なんて人たちなんだ…
でも本当にそうなんだろうか?
家族は収容所で繰り広げられている内容なんて全く知らない、おれたちもニュースや新聞で信じられないような悲劇を目にするが正直なところ安全なところから見て、「信じられないね、可哀そうだね」と完全に対岸の火事のような感覚で見ている。
劇中の家族と同じじゃないか。
一つの家族の日常が淡々と語られるんで、残虐シーンやグロテスクなシーンは皆無、ただ立場が違うがゆえに潜む人間のグロテスクさに感嘆する。
まるでおれ自身の醜さをあぶりだされたようだ。
正直、辛い映画だった。
鑑賞メモ:Amazonプライム