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geezenstacの森

音楽に映画たまに美術、そして読書三昧のブログです

ケンブリッジ・バスカーズ II

Music in the Street

 

曲目/

 

 

 

日本ビクター VIC-28008

 

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 今更ながらびっくりしましたが、このケンブリッジ・バスカーズのレコードは日本だけビクターが発売していました。そう、オリジナルはグラモフォンだったのです。ですから、当然このデザインのジャケットは日本でしか発売されていません。多分日本のみポリドーから発売する気がなかったのでしょう。このレコードは第2弾で、来日記念盤として発売されています。オリジナルはこんなジャケットで発売されています。

 

2371766

 

 ケンブリッジ大学出身のマイケル・コプレイとデイヴィッド・イングラムの二人により1970年代後半に結成された大道芸人風デュオ「ケンブリッジ・バスカーズ」は、、1988年に、アコーディオンがイアン・ムーアに代わって「クラシック・バスカーズ」と名前を変えるまでの10数年間に、世界で人気を博したユニークなデュオです。その特徴は、「クラシックの名曲の数々をおもしろおかしく笛とアコーディオンで演奏してしまう」というもので、特に速いテンポの曲での笛の超絶技巧ぶりには目を見張るものがありました。実際、マイケル・コプレイのテクニックと音楽性には確かなものがあり、イ・ムジチのバッハ:ブランデンブルク協奏曲の録音に参加したり、ヴィヴァルディの協奏曲集やテレマンの協奏曲の録音でソロをとったりと正統派の側面も見せていましたが、しかし彼ならではの魅力がもっとも発揮されるのはやはりバスカーズでのユーモアたっぷりの活動のほうでしょう。

 

トルコ行進曲

 

ほらスタッカート

エンターティナー

ウィリアムテル

 

モーツァルト

 

子犬のワルツ

 

 

 確かにレコードの演奏もいいのですが、元々はストリートミュージックですから、やはりライブの方がいいでしょうなぁ。ネットには彼らの1987年の来日コンサートの映像がアップされていました。こういうのはやはりNHKですなぁ。

 

 

 まあ、この類似を探せば日本ではヴァイオリンとピアノのデュオ、「スギテツ」でしょう。彼らの音楽はそれにプラスして鉄道という切り口もありますからこれも楽しい仕上がりになっています。

 

 

 

 

東フィルの「ポップリ・オン・スクリーン」

 

曲目/

Side1
1 SF, ACTION, SUSPENSE THEMES 7:21
2 AMERICAN LOVE THEMES 6:35
3 WESTERN THEMES 5:29
Side2
1 MUSICAL THEMES 6:24
2 EUROPEAN LOVE THEMES 7:52
3 ACADEMY THMES 5:47

 

編曲、指揮/青木望

演奏/東京フィルハーモニー交響楽団

 

録音/1982

CARNIVAL RJL8038


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 フックト・オンシリーズのクラシクは爆発的な人記録しましたが、それに付随して、ジャズやポップスのアルバムはいくつか発売されました。ただ、このアルバムら類する映画音楽を扱かったフックト・オン・スクリーンというアルバムは検索しても引っかかりませんでした。もちもち、フックト・オン・クラシックがブームになったのは1970年台後半のディスコ・ブームの後を受けて80年ごろを中心に大ブームになりました。

 

 この「フックト・オン (Hooked On)」は、英語の「hooked on」をカタカナ表記したもので、「~に夢中になっている」「~にハマっている」という意味のスラングです According to Yahoo! News。、特定のジャンルの楽曲をメドレー形式で繋ぎ、ディスコビートなどでアレンジした音楽作品を指すことが多いです。特に有名なのは「フックト・オン・クラシックス」で、クラシック音楽をメドレー形式でアレンジしたものです。また、「フックト・オン・○○○」のように、他のジャンルの楽曲をメドレー形式でアレンジした作品も存在します。但し、一般のポップスものは数曲を繋ぎ合わせたものが多くねこういうものは本来はメドレーとして分類されます。

 

 てなことで、このレコードは多分世界で唯一本格的にフックト・オンとして映画音楽を演奏しているアルバムと言えるのでは無いでしょうか。なんと61曲の名作映画のテーマを6つの切り口で分類し4ビートの打ち込み系のビートに合わせて演奏しています。パートと曲は次のようになっています。

 

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 この、一定の打ち込み系のドラムスの4ビートに乗せるのはかなり繋ぎを意識しないとできないことです。編曲者の青木望氏は日本のポップスやアニメ作品の編曲家でさまざまなアーティストの作品を編曲しています。管楽器以外はなんでもこなす編曲家ということで、ここでは本来のフックト・オンのスタイルで膨大な61曲の映画音楽をアレンジして繋げています。残念なのは本家のフックト・オンはキレのあるリズムで4ビートをやや強めに収録していますが、自身が指揮をするということではこのドラムスの打ち込みをややテンポを遅くして演奏しやすいように指揮をしているためリズムに乗り切れていないところです。フックト・オンは一定のテンポで演奏するところに特徴があり、スローな曲でも速い曲でもそのビートに乗せて演奏しなければなりませんが、そこがちょっと慎重になりすぎて波に乗り切れていません。やはり。本家のロイヤルフィルの演奏には太刀打ちできていません。ヒットするにはそれだけの理由があるということなのでしょう。

 

 

 この音源は、CD化もされていません。著作権の関係もあるのかもしれませんが多分忘れ去られて埋もれてしまったのでは無いでしょうか。発売元はRVCでしたから現在の窓口はソニー・エンタティメントと思われますが、どうなんでしょうかねぇ。

 

 さて、元祖「フックト・オン」シリーズは、1980年代に世界的に大ヒットしました。特に「フックト・オン・クラシックス」は、クラシック音楽をより多くの人に親しみやすくするために企画されたもので、ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団が演奏を担当し、ディスコビートに乗せてクラシックの名曲が次々と登場する構成が特徴です。ネットでは全3枚を一つにまとめた音源がアップされていましたのでそれを貼付けておきます。

 

 

 ちなみにネットではフックト・オン・ムービーのこのアルバムの存在を知らないと思われる空想の記事が見つかりました。80年代以降の作品をかなり網羅していますが、映画音楽が華やかだった70年代の作品がごっそり抜けているのはちよっと寂しい選曲だなぁと思われます。

 

 

 

 

 

 

 

  • スタートレック・シップヤード VOL.1 
  • 宇宙艦隊編 2151-2293 年

著:ベン・ロビンソン 

編著:アッシュ・クリエイティブ デアゴスティーニ・ジャパン

 

 

 スタートレックは昔から好きなSFドラマシリーズです。そして、また音楽もしかりです。何しろレコードからCDに乗り換えたのがスタートレックのCDを購入したのがきっかけでした。この本は大人気SFドラマ、スタートレックシリーズに登場する宇宙船をまとめた「STAR TREK SHIPYARDS」、原本の日本語版「スタートレック・シップヤード」です。


 ベースは「隔週刊 スタートレック・スターシップ・コレクション」をベースに、全192ページのオールカラーで、詳細なCG画像と共に宇宙艦隊所属の宇宙船を解説しています。Vol.2もありますが、小生の興味の中心はカーク船長が率いるスタートレック1701です。
VOL.1は現実の宇宙船とスタートレック世界の宇宙船をつなぐ船から、『スタートレック:ヴォイジャー』の船など、2151~2293年に登場する宇宙船を掲載しています。

 

 ディアゴスティーにから2014年5月20日に、「隔週刊 スタートレック・スターシップ・コレクション」が創刊され、創刊号は特別定価499円(8%税込)、2号特別価格1,299円(8%税込)、3号以降通常価格2,495円(8%税込)、消費税改定後の2019年10月1日発売の第141号から2,541円(10%税込)で刊行されました。当初全70号の予定、後に全110号に延長され、更に予定が延長されて2020年06月23日発売の第160号で完結しています。総額で396,928円になります。中々のシリーズでした。このディアゴスティーニ、2015年の資料ですが、デアゴスティーニ・グループの売上高は、世界の出版社売上ランキングで見ると、1367M$(約1500億円)で18位(前年は13位)であり、単純な規模で言えば、日本のトップである23位の集英社の1033M$(約1130億円)、24位の講談社の997M$(約1090億円)を軽く上回る巨大出版社であることを知ると結構驚きます。デアゴスティーニ・ジャパンは、イタリアのデアゴスティーニ社の日本法人です。なお、その起源は、世界地図の普及を目的にイタリアの地理学者ジョバンニ・デ・アゴスティーニ(Giovanni De Agostini)が1901年に設立した地図研究所なので「ディア」ゴスティーニではありません。


 この本、図版が豊富で見飽きる事がありません。発売時は、まだ形になっていなかった「スタートレック:ディスカバリー」も収録されています。いいですねぇ。

 

エンタープライズ(無印):コンスティテューション級
NCC-1701

全長/289m 重量/19万トン 乗員数/430名
登場作品/TOS

お馴染みの“初代”「宇宙船USSエンタープライズ号」です。

 

 

エンタープライズ(リフィット:改装型):改コンスティテューション級
NCC-1701

全長/305m 重量/20万トン 乗員数/450名
登場作品/映画第1~3作

 

 

エンタープライズA:改コンスティテューション級
NCC-1701-A

全長/305m 重量/20万トン 乗員数/450名
登場作品/映画第4~6作

 

 

エンタープライズC:アンバサダー級
NCC-1701-C

全長/526m 重量/371万トン 乗員数/700名
登場作品/TNG第63話

 

 

エンタープライズD:ギャラクシー級
NCC-1701-D

全長/641m 重量/500万トン 乗員数/1200名
登場作品/TNG・DS9(ゲスト出演)・映画第7作

 

 

 

 

 

 

我が家に飾ってある1701-D型のポスター

 

これまでに取り上げたスタートレック関連の記事

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ルイス・レーン/クリーヴランド・ポップス

Music From The Films

 

曲目/

1.ハロルド・ローム:『ファニー』~テーマ    2:22

2.フレデリック・ロウ:『恋の手ほどき(ジジ)』組曲   9:09

3.リチャード・ロジャース:『ステート・フェア』~春の如く    3:22

4.アーネスト・ゴールド:『栄光への脱出』   9:52

5.ケネス・アルフォード:ボギー大佐    2:26

6.ウィリアム・ウォルトン:『ヘンリィ五世』~ファルスタッフの死    3:04

7.ウィリアム・ウォルトン:『ヘンリィ五世』~その優しき唇に触れて別れなん   1:43

ヴァージル・トムソン:『ルイジアナ物語』

8.Sadness    2:14

9.Papa's Tune    0:59

10.The Alligator And The 'Coon    2:08

11.Super Sadness    1:45

12.The Squeeze Box    3:30

 

指揮/ルイス・レーン

演奏/クリーヴランド・ポップス管弦楽団

録音/1961/07/12,13 クリーヴランド、セヴェランス・ホール

P:ジェーン・フリードマン

 

米Epic Stereorama – BC 1147 

 

 

 最近、レコ芸の1970年7月豪の記事を取り上げた中でクリーヴランド管弦楽団の記事を取り上げていますが、その中でこのルイス・レーンも取り上げています。そして、今年2月23日のFM放送の「名演奏家ライブラリー」ではこのルイス・レーンが取り上げられていましたからお聞きになった人も多いのではないでしょうか。下はその時の放送の模様です。

 

 

 しばらく前に、このルイス・レーンのボックスセットが出ていたようです。そのセットの紹介には下記のような解説が施されていました。

 ルイス・ガードナー・レーン(Louis Gardner Lane、1923年12月25日~2016年2月15日)は、アメリカのテキサス州イーグルパスで生まれました。テキサス大学オースティン校でケント・ケナンに作曲を学び、1943年に音楽学士号を取得。タングルウッド音楽センターでボフスラフ・マルチヌーに(1946年夏)、イーストマン音楽学校でバーナード・ロジャースに師事。サラ・コールドウェルにオペラを学びました。
彼はその後、ダラス交響楽団とアトランタ交響楽団という世界一流のオーケストラを客演指揮。1955年から1960年までジョージ・セルとクリーヴランド管弦楽団のアシスタント指揮者、1960年から1970年まで副指揮者、1970年から1973年まで常任指揮者を務めました。1957年にジョージ・セルがレーンに宛てた「風変わりなピアニスト、グレン・グールド、彼は天才だ」というコメントは非常に有名になりました。グールドはレーンにその後のクリーヴランド公演の伴奏を依頼し、彼のカナダ指揮者デビューは1960年のバンクーバー音楽祭でグールドとの共演でした。
なかでもクリーヴランド管弦楽団には20年以上在籍。名高いクリーヴランド・ポップスを指揮し、75以上の地方公演を行ってオーケストラのレパートリーを広げ、彼自身の輝かしい名声を獲得。その独自なプログラムにより、マーラー・メダルとディットソン指揮者賞という2つの主要な賞を受賞。1959年から1983年までアクロン交響楽団の音楽監督を務め(後に名誉指揮者に就任)、1964年からは1972年までエリー湖オペラ劇場の音楽監督、ダラス交響楽団では1973年から1978年までの首席客演指揮者や同楽団の他の役職も務めたことで、年間契約を持つグループに成長させた功績が認められました。
また、1977年から1983年までアトランタ交響楽団のロバート・ショウの准指揮者、また1982年から1983年まではヨハネスブルグに拠点を置く南アフリカ放送協会国立交響楽団の首席客演指揮者を、そして1984年から1985年には首席指揮者を務めました。
さらには1969年から1983年までアクロン大学の非常勤教授、1973年から1975年までシンシナティ大学の客員教授、1982年から2004年までの20年間以上、クリーヴランド音楽大学の芸術顧問および指揮者、その後は名誉教授を務めました。
1959年から1972年にかけて、クリーヴランド管弦楽団のフル編成、やや小規模なクリーヴランド・ポップス、室内楽規模のクリーヴランド・シンフォニエッタとともに、ルイス・レーンはコロンビア・レコードに批評家から高い評価を得た録音を行いました。それらは「並外れた幅広さと非の打ち所のないセンス」を示しており、この才能に恵まれながらも常にあまり目立たなかった指揮者は、オーケストラのエグゼクティブ・ディレクターによって称賛されました。今回、ソニー・クラシカルは、その多くを初めてCD化した新しい14枚組のディスク・セットでリリースすることとなりました。
レーンはクリーヴランド管弦楽団と、クラシック名曲集、映画やミュージカルなどの録音がメインとなっていたようですが、クラシックのレパートリーも録音しており、その中には1966年のモーツァルト(「素晴らしいニ長調ディヴェルティメント K.334」~Classics Today)、1967年のベートーヴェン(「・・・劇的なセンスとキャラクターで導かれたプロメテウスの完全な創造物」~Classics Today)などが含まれています。またフランスのドビュッシー、ラヴェル、サティのコレクション(「クリーヴランドの、あまり目立たないアメリカの指揮者、ルイス・レーンの驚くべき感性を再発見...魔法...感情の洗練。セヴェランス・ホールの温かい雰囲気もまた資産です... 1969年の録音が最も音楽的にバランスが取れています。」~グラモフォン)。

 

 上の写真の一番奥の左端に見覚えのあるジャケットが写っていました。それがここで取り上げる「MUSIC FROM THE FILMS」というアルバムです。中古で入手したのでいつ、どこで手に入れたかはわかりませんが、クリーヴランド・ポップスの表記があったので確保した覚えがあります。当時聴いた感想ではボストン・ポップスより面白い演奏というイメージでした。映画音楽を集めたアルバムはこれ一枚しか持っていませんが1960年当時これだけの内容を詰め込んだアルバムは注目に値します。

 

 このレコードA面が12日、B面が13日と効率よく録音されています。ポップス・オーケストラですから各セクションの主席級の演奏者は抜けていますが、それでも堂々とした演奏を繰り広げています。冒頭の「ファニー」はミュージカル作品でその主題曲が演奏されています。次の「ジジ」は日本では「恋の手ほどき」としての方が知られているでしょう。舞台版ではオードリー・ヘップバーンが活躍しましたが映画版ではアンドレ・プレヴィンが全体の音楽を担当しました。ここではそのプレヴィン版に基づき組曲で演奏されています。そういう意味では「栄光の脱出」もテーマ音楽だけでなくここでは組曲として演奏されていますから聞き応えがあります。この演奏を聴いたらスタンリー・ブラックの演奏も霞んでしまいます。映画音楽ファンにはたまらない演奏です。

 

 「戦場にかける橋」からは「ボギー大佐のマーチ」が切り取って演奏されています。シンフォニックな演奏であっさりと演奏しているところがかっこいいです。ウォルトンの「ヘンリー5世」はウォルトンがのちに組曲としてまとめた版によって演奏されています。この組曲はどちらかというと地味で多分一般受けはむづかしい作品です。ただし、ヘンリー・ルイスはその純音楽としてこの曲を演奏していると思われます。個人的には中世を描写した音楽としてはジョン・バリーの作曲した「冬のライオン」の音楽のが好きです。

 

 さて、このLPでのこだわりは最後のヴァージル・トムソンの「ルイジアナ物語」でしょう。1949年のこの作品でピューリッツァー賞を受賞しています。ドキュメント作品に強いということでこのトムソンの作品を取り上げたのでしょうが、多分他にこの曲を映画音楽として取り上げたレコードは他には無いのではないでしょうか。このブログでも彼の「大地を耕す鍬」や「リバー組曲」を取り上げています。

 

 

 

 

PS.ルイス・レーンはこのレコードの翌日にも、コープランド:戸外のための序曲やメノッティ:『アマールと夜の訪問者』組曲などの作品をレコーディングしています。この頃がルイス・レーンの一番輝いていた時代だったのでは無いでしょうかねぇ。

 

 

 

デュトワ/ラプソディ

 

曲目/

1.リスト/ハンガリー狂詩曲 第2番 10:44

2.ドヴォルザーク/スラヴ狂詩曲 第3番 変イ長調 Op.45-3 13:04 

3.アルヴィーン/スウェーデン狂詩曲 第1番 Op.19「夏の徹夜祭り」 11:30

4.エネスコ/ルーマニア狂詩曲 第1番 Op.11-1 12:18

グラズノフ/オリエンタル狂詩曲 Op.29

5. I.アンダンテ 4:38

6. II.プレスト 4:45

7. III.アンダンテ(ア・カプリッチョ) 4:48

8.IV.モデラート・アラ・マルチャ 2:36

9.V.フィナーレ(アレグロ) 4:21

 

指揮/シャルル・デュトワ

演奏/モントリオール交響楽団

P:クリス・ハーツェル

E:ジョン・ダンカーリー

 

録音/1995/05/17,25,10/05 サントゥスタッシュ教会、モントリオール

POCL-1715

 

 

 デュトワにしては珍しいレパートリーとなるリスト、ドヴォルザーク、アルヴェーン、エネスコ、グラズノフら主に東欧・北欧の作曲家たちによる狂詩曲(ラプソディー)集です。狂詩曲は自由奔放な形式で民族的または叙事的な内容を表現した楽曲であり、当然のことながらローカル色豊かな内容となります。そうはいっても、デュトワとモントリオール響はこれらの楽曲をローカル色はそれほどでもなくすっきりとスマートに、聴き易く表現しており、無理なく安心して聴ける一枚になっています。

 

 このリストのハンガリー狂詩曲第2番はピアノ版の編曲です。1番よく知られているのはヘルベルト・フォン・カラヤンとベルリン・フィルが演奏したものでしょう。小生も最初はそれを聴きました。で、音が厚ぼったく息苦しいような演奏であって、とても好きにはなれませんでした。そんなことでレコードは持っていますが、その後ほとんど聴いた記憶がありませんでした。ここでのデュトワの演奏は、そういう重々しさを取り払ったとてもスマートな演奏になっています。これなら聴きやすいですね。もともとこの曲はリストの作品ですが、編曲は違っています。ここでデュトワが採用しているのはカール・ミューラー=ベルクハウスの編曲盤です。編成にハープが加えられているのが聴感上の大きな違いになります。カラヤンやドラティの演奏もこの編曲版で録音しています。でも聴いた印象は全く違うんですね。このデュトワの演奏でこの曲が改めて好きになりました。

 

 

 ドヴォルザークを世界的な名声に押し上げたスラヴ舞曲集第1集と同年、1878年に作曲されたのが3つのスラヴ狂詩曲です。魅力的な民族舞曲の旋律に色彩豊かなオーケストレーションで作曲されています。国際的な名声が高まると共に彼への批判も増えていった中で周囲に囚われず比較的自由な発想の基に作られた狂詩曲です。作品14、作品45のいずれもドヴォルザークの特徴である民謡風の美しいメロディに包まれた狂詩曲です。一般的には彼を人気作曲家に押し上げたと言われるスラヴ舞曲の方が有名で演奏される機会も多いですが、こちらも隠れた名曲だと思います。それぞれをリボール・ベシェクやズデニェク・コシュラーが録音していますが、二人ともチェコ出身の指揮者であり以前からドヴォルザークに関しては定評のある指揮者です。ここではデュトワが中立的立場で全編に渡り美しく抒情的なメロディを味わうことができ、薄めの民族性で曲をストレートに味わうことができる狂詩曲になっています。

 

 

 アルヴィーンの「夏の徹夜祭」はこれもよく知られた作品でしょう。NHKの「今日の料理のテーマソング」に似ている事でも有名です。これもデュトワの棒にかかると非常にチャーミングでスマートな演奏になっています。好きな曲なのでいろいろ聴いていますが、ここまでなめらかでゴツゴツしない演奏はこれも初めて聴いたような気がします。ちょうどこの時期の音楽ということでは、ぴったりではないでしょうか。楽しめます。

 

 

 エネスコの代表作品といってもいい曲です。このルーマニア狂詩曲は全集も持っていますが、洗練度の観点から言えば、このデュトワの演奏の方が聴いていて面白いのは確かです。旋律線の扱い方がうまく曲の盛り上げ方もうまいので、曲がだらけることなくキリッと引き締まって聴くことができます。もったいない話ですが、このCD 1996年の録音ですが、ほとんど知られてないのではないでしょうか。

 

 

 このアルバムの中で一番注目した作品です。そもそも録音がほとんどない作品で、デュトワのこの演奏で初めて知ったものです。この作品が聴きたくてアルバムを入手したといってもいいでしょう。狂詩曲はそれ自体で単独の作品ですが、ここでは5曲の組曲で構成されています。5曲といっても後半の3楽章は続けて演奏されますから聴感上は3曲に聴こえます。

 

1.Andante
 ホルンの穏やかな響きによって曲は始まります。そして、異国情緒を感じ取る事の出来る叙情的なメロディーが登場します。このメロディーは歌詞を付けて歌えそうなほど叙情的な旋律です。イッポリトフ=イワーノフのコーカサスの風景の一曲目を連想させます。

2.Presto
 舞曲調の曲です。最初は静かに、そして徐々に高揚感のある演奏へと続きます。

3.Andante
 重々しい始まりです。その後はどこか異国情緒も少し感じさせるメロディーが奏でられます。すっきりとした青空では無く、曇り空と表現したら良いでしょうか。そんなイメージがします。最後は華やかなメロディーが奏でられ、次の曲へアタッカで続きます。

4.Moderato
 華やかでリズミカルなメロディーが前の曲から引き続き奏でられます。終始この華やかでリズミカルな演奏が続きます。ここもアタッカで次につながりますから聴感上は3つのパートでできているというイメージです。

5.Finale
 リズミカルな演奏が前の曲から続きます。やがて1曲目の異国情緒が溢れるメロディーが華やかに登場します。そして、高揚感のある演奏が続き、最後はその高揚感の中で幕を閉じます。グラズノフは多作家で我々の知るグラズノフは一般的にヴァイオリン協奏曲やバレエ音楽の「ライモンダ」や「四季」、交響詩「ステンカ・ラージン」でしょうか。でもあまり知られていませんが交響曲も9曲も書いています。