スター・トレック/イントゥー・ダークネス | geezenstacの森

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スター・トレック

イントゥー・ダークネス

 

監督    J・J・エイブラムス

脚本    デイモン・リンデロフ

アレックス・カーツマン

ロベルト・オーチー

原作    ジーン・ロッデンベリー

製作    J・J・エイブラムス

ブライアン・バーク

デイモン・リンデロフ

アレックス・カーツマン

ロベルト・オーチー

製作総指揮    ジェフリー・チャーノフ

デヴィッド・エリソン

デイナ・ゴールドバーグ

ポール・シュウェイク

出演者    クリス・パイン

ベネディクト・カンバーバッチ

ザカリー・クイント

ゾーイ・サルダナ

ジョン・チョー

アリス・イヴ

ブルース・グリーンウッド

サイモン・ペッグ

カール・アーバン

ピーター・ウェラー

アントン・イェルチン

音楽    マイケル・ジアッキーノ[1]

撮影    ダニエル・ミンデル

編集    メリアン・ブランドン

メアリー・ジョー・マーキー

製作会社    バッド・ロボット・プロダクションズ

K/Oペーパー・プロダクションズ

スカイダンス・プロダクションズ

配給    パラマウント・ピクチャーズ

 

 

  「M:I Ⅲ、 8/スーパーエイト」のJ・J・エイブラムス監督が往年のTVシリーズを基に贈る大ヒットSFアドベンチャーの第2弾。本作ではクリス・パイン演じる主人公ジェームズ・T・カークを追い詰める冷徹な悪役としてTV「シャーロック」のベネディクト・カンバーバッチ扮するジョン・ハリソンが登場、彼が企む復讐計画によって史上最大の危機を迎える地球の運命と、過酷な決断を迫られるカークとエンタープライズ号のクルーの生死を懸けた悲壮な闘いの行方を壮大なスケールで描き出す。
 西暦2259年。U.S.Sエンタープライズのクルーたちとともに惑星ニビルを探査中のジェームズ・T・カークは、副艦長スポックの窮地を救うために重大な規律違反を犯してしまう。地球に帰還したカークはその責任を問われ、艦長を解任される。その頃、ロンドンでは恐るべき陰謀が進行していた。やがて首謀者ジョン・ハリソンは惑星クロノスに逃亡。この緊急事態に、再びU.S.Sエンタープライズの艦長に復帰したカークは、ジョン・ハリソンを追ってクリンゴン人が支配するクロノスへと向かうのだったが…。2013年作品。---allcinema---

 

規律違反を犯し原住民に見られてしまいます

 

ジョン・ハリソンことカーンによる襲撃

 

 確かに、惑星規模の危機的災害が描かれるオープニングから、謎のテロリスト、ジョン・ハリソン(ベネディクト・カンバーバッチ)とカーク(クリス・パイン)らの死闘、宇宙船同士の砲撃戦、そしてエンタープライズ号に訪れる絶体絶命の危機と、前作以上のスペクタクル・シーンが、文字通り、見る者を圧倒します。これは映画第2作へのオマージュとも言えます。

何しろ、この作品でもジョン・ハリソン(カーン)が登場するのですから。よほど映画の制作者たちはこのキャラクターを重要視しているのでしょうなぁ。そして、スター・トレック劇場第2作「カーンの逆襲」ではミスター・スポックが放射能を浴びて亡くなってしまうのですが、この作品ではパラレルワールドを地でいって今度はカークが放射能で死んでしまいます。ただ、この世界でも治療法があり生き返るのですけどね。まあ、肉付きは違えどストーリーはこんな形でハッピィエンドになります。

 

あらすじ

 

 西暦2259年(前作の1年後)、ジェームズ・T・カーク率いるU.S.S.エンタープライズは、未開の惑星ニビルの原住民を火山の爆発による危機から救うが、噴火口に取り残されたスポックを救助する際に宇宙船を現地人に目撃されてしまいます。探査という本来の目的から逸脱した上、最優先の指令である「艦隊の誓い」に違反したカークは船長の任を解かれてしまうものの、クリストファー・パイクの温情により副官に指名される。

同じ頃、ロンドンではセクション31所属のジョン・ハリソン中佐によるテロが発生し、多数の艦隊職員が犠牲とななります。最高司令官アレクサンダー・マーカスは地球付近にいる主だった士官たちをサンフランシスコの艦隊本部に召集しますが、そこもハリソンに襲われ、パイクが犠牲となってしまいます。クリンゴン帝国の本星クロノスに逃げ込んだハリソンを、マーカス提督の命令によって再びカークの指揮下に置かれることになったエンタープライズが追います。マーカス提督は、セクション31が開発した新型光子魚雷をエンタープライズに搭載させるが、その是非をめぐってカークとモンゴメリー・スコット機関主任(スコッティ)が言い争います。結局、出発直前にスコッティが下船してしまい、パヴェル・チェコフが代理を任されることになります。また、乗員名簿に載っていなかった女性科学士官の乗船を、カークがスポックの反対を押し切って許可するのですがが、後に彼女はマーカス提督の娘キャロル・マーカスだと判明します。

 

 カークはマーカス提督からハリソンを殺すように命じられていたのですが、スポック、レナード・マッコイ、ウフーラの説得により、殺さず逮捕を決心。クロノスでは、ヒカル・スールーにエンタープライズの指揮を一時的に任せ、カークとスポックが、クリンゴン語を話せるウフーラを連れて地上に降り、クリンゴン人パトロール隊との交渉を試みる。だが、その最中にハリソンが銃を乱射しながら現れ、ほぼ1人でパトロール隊を全滅させる。超人的な強さを発揮するハリソンですが、エンタープライズが72個の魚雷を搭載していると聞くと、あっさり降参します。そして、エンタープライズに捕われたハリソンは自分の正体を明かすのです。

 

 ハリソンの本名はカーンといい、その正体は300年前に遺伝子操作を受けて誕生した優生人類でした。彼によりカークは光子魚雷の中にカーンの72名の部下らが冷凍睡眠の状態で格納されている事実も聞かされます。そこへマーカス提督がドレッドノート級の新型戦闘艦U.S.S.ヴェンジェンスに乗ってカーク達の前に現れます。マーカス提督はカーンを引き渡すように命令するのですが、カークは拒否して地球へとワープで発進してしまいます。しかし、ワープ中に追いついたヴェンジェンスに攻撃され、エンタープライズは月まで2万キロの位置でワープから離脱してしまう。提督はカークの説得に応じずあろうことかエンタープライズを撃墜しようとします。が、ヴェンジェンスに潜入していたスコッティの妨害工作によりパワーが切れてしまいます。その隙にカークとカーンはヴェンジェンスに直接飛び移り、合流したスコッティらと共にブリッジの制圧に成功します。しかし、カーンはカークの隙を突いてマーカス提督を殺害し、さらにカークらを人質にして部下らが乗った光子魚雷を引き渡すようスポックを脅迫します。事前にスポック大使(スポック・プライム)からカーンの非道さを忠告されていたスポックは、冷凍睡眠にされたカーンの部下全員を取り出し、代わりに簡単なスキャンでは分からないよう偽の生命反応を返す疑似体を入れたうえで、時限爆弾がしかけられた光子魚雷を引き渡します。 カーンはカークらをエンタープライズに転送すると攻撃を開始したが、直後にヴェンジェンスの機内で光子魚雷が起爆し、両機は地球へと墜落を開始してしまいます。

 

  エンタープライズのクルーは必死に機能を回復させようとするのですが、メインコアの連結がずれたためにパワーを得られなくなってしまいます。エンタープライズに戻ったカークは、放射線で汚染された区域にあるメインコアへひとりで向かい、正しく連結させることに成功します。墜落寸前でパワーを取り戻したエンタープライズは再び衛星軌道へと戻ることが出来たが、大量の放射線を浴びたカークは、スポックらの見守る中、絶命してしまいます。 一方、宇宙艦隊本部付近へ墜落したヴェンジェンスからカーンが脱出し、サンフランシスコの市街へと逃亡する。友を失い怒りに震えるスポックは、カーンが生きていることを確認し、追跡しはじめます。 その頃、友の死を悼むマッコイ医師の隣で、死んでいたトリブルがカーンの血液によって生き返っります。これを見たマッコイは、カーンを生きた状態で捕らえるべきであることをスールーとウフーラに忠告する。怒りに我を忘れたスポックは危うくカーンを撲殺しかけますが、駆けつけたウフーラの説得でカーンを生かしたまま逮捕します。この追跡シーンは、これもアクション映画の典型的なシーンへのオマージュでしょうなぁ。

 

 

 死の淵から蘇生したカークは、スポックらが自分を救ってくれたこと、カーンは再び冷凍睡眠にされたことを知ります。そして修理が完了したエンタープライズで、スポックらと共に5年間の探査飛行任務を受けて宇宙へとワープを開始します。パラドックス映画ですが、ストーリーとしてはこれまでの映画の正史と齟齬のないような結末に持っていっています。

 

 ということで、この映画は映画版「スター・トレック2/カーンの逆襲」を様に見ておいた方がより、この作品を楽しめるのではないかと思います。そう、今作のオマージュの捧げ方で特筆すべきところは過去作における役割が「逆」になっており、ストレートなオマージュではなく一捻り入れているところにあります。つまり全作におけるカークとスポックの果たした役目が逆になっている点です。放射能に汚染された部屋に入るのも、今作ではカークですが、『カーンの逆襲』ではスポック、「カーーーン!!」と叫ぶのも今作ではスポックで、『カーンの逆襲』ではカークという具合です。ただ、個人的には音楽は第2作を担当したジェームズ・ホーナーの作品の方が好きですけどね。

 


 もう一つ、元々スター・トレックは宇宙を舞台に大冒険したドラマというわけではなく、地球上では差別がなくなった世界を描き、いつか人類がこうなればいいなという理想の元に作られたドラマです。だからエンタープライズ号のクルーは多種多様なのです。つまりスタートレックに描かれている世界は人類が目指すべき理想郷でもあるのです。この作品は穿った見方をすれば、これは明らかに2001年の9.11が下敷きにあります。冒頭のテロ、捕まえたカーンへの対応で対立しあうエンタープライズ号とヴェンジェンス号は9.11に対してテロで報復するか、ほかの解決案はないのかとアメリカ内で対立しあった姿ともとれるのです。実際のアメリカは間違った戦争を初めてしまい、マーカスのような対応を取ってしまったのです。だから映画の最後で、事件を起こしたカーンも、そしてカーンが助け出そうとした仲間たちの命も奪わないという解決策を取っています。そして最後のカークの演説での「復讐は復讐で解決しない」というメッセージからも明らかで、イラク戦争の反省も描き、エンタティメントの中にもこうするべきであったというアメリカの理想が作品に込められています。