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geezenstacの森

音楽に映画たまに美術、そして読書三昧のブログです

佐渡裕のフランス音楽の祭典

 

曲目/

1 . デュカス/ 交響詩 《魔法使いの弟子》11:24

ビゼー/カルメン第1組曲 15:14

2 .闘牛士

3 .前奏曲

4 .アラゴネーズ

5 .間奏曲

《カルメン》 第2組曲より

6.ハバネラ

7. ジプシーの踊り

《アルルの女》 第1組曲より 23:46

 

8.前奏曲

9.アダージェット

《アルルの女》 第2組曲

10.間奏曲

11 .メヌエット

12.ファランドール

ローゼンタール/バレエ音楽 《パリの喜び》17:25

13.序曲

14.第11曲 : アレグロ・ヴィーヴォ

15.第12曲 : ワルツ

16.第13曲 : アレグロ・モルト

17.第14曲 : ワルツ・モデラート (パ・ド・ドゥ)

18.第16曲 : カンカン

19.第22曲 : ヴィーヴォ

20.第23曲 : 舟唄

 

指揮/佐渡裕

演奏フランス国立放送管弦楽団

P:アーノット・モラル

E:シリル・ベクー

録音/1998/05/27-30 サル・オリヴィエ・メシアン ラジオ・フランス

WPCS-21212

 

 

 佐渡裕は1989年ブサンソン指揮者コンクールで優勝した後、初のメジャー録音です。フランス放送フィルを振れるということもあってか、気合いが入った録音で、発売当時、この千手観音のようなジャケットは話題になりました。まあ、思ったよりまとまった演奏になったということでトップにはデュカスの『魔法使いの弟子』が収録されています。日本版のタイトルは「フランス音楽の祭典」ですが、欧米でのタイトルは「FRENCH SPECUTACULAR」となっていますがちょっと違うなぁというのが率直な感想です。小沢催事もブザンソン優勝の後はフランスのオケを立て続けに降っていましたがレコードデビューはいきなりシカゴ響とかロンドン交響楽団とかのメジャーオケで録音していました。その点、佐渡裕はやや粒が小さかったのかもしれません。

 

 ここでは、フランス放送フィルの響きとも相まって熱気のあるダイナミックな演奏となっています。なんと言っても管が粒揃いなのでいい出だしです。気合いと緊張感もあって、キレのある演奏をしていますが曲の持つ滑稽さの演出はちょっと不足しているかもしれません。

 

 

 佐渡裕ほどの指揮者なら、このカルメンとかアルルの女は子供たち相手の移動音楽会あたりで散々演奏したとは思いますが、カルメンの前奏曲はちょっとテンポが重たいのかなぁという印象です。音のキレはあり、シンバルなんかはしっかり鳴らしていますし、メロディの膨らませ方もいいのですがね、オーケストラをドライブしているまでには至っていないのが残念です。

 

 

 これに対して「アルルの女」の第2組曲のメヌエットはフランスの管に委ねた演奏という意味で安心して聴いていられます。

 

 

 この録音、通常のホールより狭いところなのか変な残響が付き纏っています。この録音はRER(高速郊外鉄道)C線の Kennedy-Radio France の駅前にあるラジオ・フランスの中にあるホールで、通常放送用のコンサートなどが安価で開かれています。録音スタッフものちのラムルーとの録音と違いますから、放送用の音源レベルの録音ではないでしょうか。そのため、打楽器間人が変に篭っていて、ここで使われるぷヴァンス太鼓などの音は妙にこもっています。よくこんな演奏が商業化されたものだと思ってしまいます。コレではタイトルの「FRENCH SPECUTACULAR」が恥ずかしいわなぁ。

 

 

 さて、これらの中では最後のオッフェンバック/ロザンタールのバレエ音楽 《パリの喜び》はなかなか楽しめます。最近あまり録音されなくなって来ている作品ですが、元々軽いタッチなので大変聴きやすい曲です。収録日が違うのか、こちらは音がこもっていません。ここでは抜粋の形で演奏されていますが、水準以上の演奏と言ってもいいでしょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ポール・モーリア45回転LP

「フィーリング」

 

曲目/

1.友よ静かに死ね

2.フィーリング

3.メイビー・サムデイ

4.妖精コマネチのテーマ

5.悲しみのフェルナンド

6.ロック・オペラ「エベロンの愛と生涯」から「祖国世泣かないで」

7.ピアノ・スター

 

演奏/ポール・モーリア・グランド・オーケストラ

 

録音:1977 ダーム・スタジオ、パリ

E:ドミニク・ポンセ

マスター・チェック/小川正雄

カッティング・エンジニア/長谷川正

フィリップス 45S-14

 

image

 

 捕獲して最初に聴いたのがこのポール・モーリアの45回転LP「フィーリング」でした。雑誌の無線と実験別冊 「オーディオ・チェックレコードのすべて」誠文堂新光社 1976年に掲載されているチェックマークを採用して小山正雄氏が解説を書いています。この雑誌は今では古書店でたまに目にしますがも当時はバイブルみたいなものでした。この本の中で表立ってはオーディオ用と謳われて発売されたわけではなかったのですが、和田則彦氏が言及していたレコードにソニーがダブルシリーズで発売していたオーマンディ/フィラデルフィアのCBS/SONY SONW-20095~6というレコードがあり、ベルリオーズの「幻想交響曲」とサン・サーンスの「オルガン交響曲」がカップリングされていました。レコード芸術はこのレコードは酷評していましたがオーディオ誌はちゃんと評価していたんですなぁ。何がすごいかというと超重低音まできっちりとカッティングされていたのです。曰く、

 

 SX-68 導入の頃から CBSソニー静岡工場に”悪乗りカッティングの巨匠”がいて、米CBSからのマスター・テープに低域を減衰させてカッティングするよう補正カーヴの指定があったのを、あえてそのまま切ってのけたという神話がある。・・・(これらの盤は当時の)大賀社長も自邸装置のデモ盤に採用しておられるほどの木目状重低音音溝だ。

 

 というのです。まあ、この話は実際にこのレコードを所有していた小生はまさに同感の至りで、すざましい音がしたものです。

 

 話がそれましたが、そういう体験があるのでオーディオチェック・レコードには目がありません。このポールモーリアの45回転LPは1977年から78年にかけて10枚発売されています。そのリストは以下のようになります。

  1. エーゲ海の真珠・シバの女王 ポール・モーリア (1977年 45S-1)
  2. オリーブの首飾り・恋のアランフェス ポール・モーリア (1977年 45S-2)
  3. 涙のトッカータ,イエスタデイ・ワンス・モア ポール・モーリア (1977年 45S-3)
  4. フィーリング/ポール・モーリア (1977年 45S-14)
  5. そよ風のメヌエット/ポール・モーリア (1977年 45S-15)
  6. 聖母の宝石/ポール・モーリア (1977年 45S-29)
  7. 禁じられた遊び/ポール・モーリア (1977年 45S-30)
  8. 007/私を愛したスパイ〜ポール・モーリア (1978年 45S-34)
  9. 夜明けのカーニバル/ポール・モーリア (1978年 45S-35)
  10. 愛のサンバは永遠に/ポール・モーリア (1978年 45S-36)

 ポール・モーリアのレコーディングはパリのダーム・スタジオというところでほとんど録音されています。専任のミキシング担当はドミニク・ポンスですからサウンドが一貫しているところがすごいところです。ここでは1975年から77年にかけての録音からピックアップしてチョイスされています。ただ、曲目からするとちょっと地味目の作品が多いのでシリーズの中ではちょっと目立たない一枚であったようで中古でも出物が少ないものになっています。

 

 さて、選曲にあたってはオーディオ評論家の小川正雄氏がレコードとマスターテープを比較試聴し、最良のマスターを1977年10月20日にあったビクター・カッティングセンターで制作したものをプレスしたものです。この時は同時に発売された「そよ風のメヌエット」その時のカッティング・システムは以下のようになっています。
テープレコーダー/スチューダーA-80Mk2
プログラム・コントローラー/ノイマンSP-75
カッティングレース/ノイマンVMS70
カッター・ヘッド/ノイマンSX-74
カッティング・アンプ/ノイマンSAL-74
モニター・スピーカー/JBL4331

 

 勿論リミッターは使用せず、カッティングレベルも+11dBというハイスペックで、充分なトレースラインを確保するために片面最大12分に収めてあります。そういう代物ですから、CDの高域2万Hz以上カットという音質とは比べ物にならない高域特性を持ったシャープで伸びのいい高音域を楽しむことが出来ます。

 

 最初は「友よ静かに死ね」です。これはアラン・ドロン主演の1977年の映画でカルロ・ルスティケリが作曲しています。イントロのドラムソロからして強烈でポール・モーリアは主題のメロディにいろんな楽器を被せてきて粋なアレンジを施しています。

 

 

 タイトル曲の「フィーリング」はブラジルのシンガーソングライター、モーリス・アルバートの曲で、日本ではファイ・ハイ・セットがヒットさせましたがもともとは「愛のことづて」という邦題もついています。失恋した男性が女性に向かって未練悲しく歌う曲になっていますから大きく盛り上がることのないバラードです。まあ、チェックはチェンバロの響きとストリングスの掛け合いでしょう。

 

 

 この曲が映画「キング・コング」の曲とはにわかに信じられないのですが、手元にあるサントラを見返してみるとその2曲目にこの曲が収録されています。ただ、1分半ほどの曲なのであまりイメージが湧きませんでした。それがポール・モーリアの手にかかるとここまで素晴らしい曲に仕上がるという見本でしょう。

 

 

 多分この時期知られていたのはこの「妖精コマネチ」のテーマではないでしょうか。元々は1971年の米映画『動物と子供たちの詩(Bless the Beasts and Children)』(スタンリー・クレイマー監督)の挿入曲“Cotton's Dream”として、ペリー・ボトキンJrとバリー・デ・ヴォーゾンによって作曲された曲です。それが、1976年のモントリオール・オリンピックで「10点満点」を連発したルーマニアの「妖精」ナディア・コマネチがTVに登場する場面でしばしばこの曲が使用されたことから、“Nadia's Theme”として再評価され、イージーリスニング系アーティストの競作となったものです。下の冬芽の中ではこの曲の聴きどころも紹介されていますからチェックしてみてください。

 

 

 不思議なのはミュージカルの「エビータ」がここではロック・オペラとして紹介されていることです。まあ、マドンナが主演して映画がヒットしたのは1996年ですから、この70年代ではそれほど知られていませんから仕方のないことです。いち早くこういう曲を取り上げているところもポール・モーリアのスゴいところです。

 

 

 最後に取り上げるのはポール・モーリアのオリジナル作品です。もちろんピアノはポール・モーリア自身が弾いています。まさに「ピアノ・スター」です。ピアノの特徴的なリズムが全編を支配していますが、歌詞のない曲という意味ではポール・モーリアの構成力が試されていると言ってもいいでしょう。アレンジの妙が楽しめる曲です。CDは60分以上の曲を聴くことができますが、45回転で切れ味鋭いアナログのサウンドはコレはコレで聴くものを興奮させてくれます。両面聞いても30分。コレぐらいの長さの方がいかにも音楽を聴いたという満足感に浸れます。

 

 

 下で紹介しているのはこのアルバムの元となっている2枚のオリジナルLPレコードです。

 

 

 

文月の散財

 

 

 

 断捨離はしているのですが、1990年代のレコード時代の終焉の頃までに欲しいなぁと記憶の中でストックしていたものたちに出会うとついつい手が伸びてしまいます。今回捕獲したレコードは、先週の金曜日のコンサートの前にふらっと立ち寄って、チョイスしておいたものをベースにしています。コンサートの会場に持ち込むのは荷物になるので、レコードの餌箱の奥に隠しておいたのですが、1週間経つともうかなりチョイスしていたものが消えていました。その中の1枚パトリックグリースと言うシンセサイザー奏者の「四季」のレコードがあったのですが、見事に消えていました。これは1時フィリップスが発売予告をしていたものですが、その時は発売されなかったものでした。残念。ということで、新たに購入するものををピックアップして、下の9枚をチョイスしました。

 

 

 最初は、ラ・プティト・バンドのコレルリの協奏曲集です。 作品6-3枚が揃っていたのですが、残っていたのはその3枚目しかありませんでした。ラ・プティト・バンドがドイツ・ハルモニアムンディに録音を残していたとは知りませんでした。

 

 

 パトリックグリーソンの代わりに購入した早川正昭と東京ヴィヴァルディ合唱団の「四季」です。このレコードには細川俊之のソネットの朗読がついていたということで購入しました。こんなレコードも1,300円盤に投入されていたんですなぁ。

 

 

 コリン・デイヴィスは好きな指揮者です。以前はシベリウスの交響曲全集も持っていましたが、全て手放してしまいました。これはフィリップス時代の録音です。メンデルスゾーンが珍しいということでチョイスしました。2枚組です。

 

 

 こちらは、アンセルメルマンドのレコードでベリーベストクラッシックシリーズで発売されたものです。これも2枚組でストラヴィンスキーの3大バレエ作品が全て収録されています。まぁ個別的には収蔵しているのですが、こういう形でまとまっていたものを見つけたので、購入した次第です。

 

 

 このケンブリッジ・バスカーズと言うのはフルートとアコーディオンと言う組み合わせの言ってみれば、栗コーダーカルテットのような存在のイギリス版でした。こういう軽い感じのクラシックの商品を収めたアルバムは当時は結構ヒットしていたものです。その第二集は比較的曲目も好きなものが揃っていたので捕獲しました。でも、ドイツグラモフォン原盤なのになぜビクターから発売されていたんでしょうかねぇ?不思議です。

 

 

 先日もスメタナ四重奏団の録音を取り上げましたが、こちらは彼らがEMIに残した録音のアルバムになります。シューベルトとシューマンと言う組み合わせに惹かれて購入しました。

 

 

 ラザール・ベルマンというピアニスト覚えている方はかなり年配でしょう。70年代から彗星のように現れて、あっという間に散っていきました。そのベルマンのブームの発端となったアルバムがこのリストの超絶技巧練習曲集でした。帯にも書いてありますリヒテルやゼルキンおも超越した演奏でした。

 

 

 さて、クラシックだけではなく、ポップスのレコードも今回は一緒に購入しました。といっても、好きなイージーリスニングのジャンルです。1枚目はポール・モーリアの45回転LPシリーズの1枚です。同じLPレコードでも45回転はその線速度が早いと言うこともあり、とてつもなく情報量が多かったと言う記憶があります。33回転の通常のLPよりも、キレの良いサウンドを聴くことができます。殴り学のような文字で判読しにくいのですが、当時のヒット曲「フィーリング」がタイトルになっています。

 

 

  このアルバムは全く予期しなかった出会いの1枚です。発売は1982年、61というのはこのレコードで登場する映画音楽の数です。演奏が東京フィルハーモニー交響曲団ということで、こんなレコードが当時発売されていたんだと言うのが驚きです。またレーベルが今まで聞いたことのない「カーニバル」というレーベルで発売されています。摩訶不思議な1枚です。

 

 

ルイ・ド・フロマン

ドビュッシー管弦楽作品集2

 

曲目/

 

 

指揮/ルイ・ド・フロマン

演奏/ルクセンブルク放送管弦楽団

 

録音/1972−1973

VOXBOX   SVBX5128

 

 

 

  第二巻のほうは同じモネの睡蓮の絵ですが、バックはダークピンクを使っています。第一巻に比べてちょっと安っぽい仕上がりになっていますが、曲目は渋いものが揃っています。最初はバレー音楽の「遊戯」、ノクターン、同じくバレーのカンマ、そして交響的組曲、最後が管弦楽のための映像と言う作品が収められています。まぁこの中ではノクターンや映像はよく知られた作品の方でしょう。

 

このセットとは別に同じくボックスのキャンディーシリーズというのがあり、そちらには独創と管弦楽のための競争的作品が収められたアルバムを発売されていました。このキャンディーシリーズっていうのは、通常のボックスターンナバアウトの販売価格よりも1ドル高いシリーズになっていました。多分ボックスはちょっとハイグレードな路線を狙ったのでしょう。こんなジャケットで発売されていました。この一枚は国内ではワーナーパイオニア時代に「ルクセンブルク放送管弦楽団の芸術」というシリーズで発売されていました。こちらのジャケットはゴーギャンが使われていました。

 

 

 冒頭の「遊戯」はバレエ・リュスのニジンスキーの依頼によって書かれた20分弱のバレエ音楽で、4管編成の第オーケストラの作品として作曲されいます。3人の男女によるテニスのプレイの様を恋の駆け引きとして描いている作品です。こちらもモントゥーの指揮で初演されていますが、この上演から2週間後にストラヴィンスキーの「春の祭典」が初演され大混乱を招いたためこの作品はほとんど忘れ去られていました。バレエ作品としては2000年に蘇演されるまで忘れ去られていました。そんなことで音楽もほとんど聞く機会がなかったと言ってもいい作品です。

 

 

 「カンマ」もバレエ作品ですがこちらはドビュッシーの生前には演奏されることもありませんでした。

 

 

 「雲」、「祭り」、「シレーヌ」で構成された「ノクターン」は一種の音画のような作品でそれぞれタイトルにタイトルがついていて、まさに、印象派の作品だなぁと感じさせます。良く、ジェームズ・ホイッスラーのイメージでたとえられますが、曲ごとに楽器構成が違うという意味では組曲なんでしょう。フロマンの指揮はあまり色彩感を感じさせなく、その意味ではやや物足りない部分もあるのですが、弦の細やかな表情には聴くべきところがあります。

 

 

 

 

 

 「映像」は「ジーク」、「イベリア」、「春のロンド」から構成される作品ですが、2曲目の「イベリア」はさらに「街の道から田舎の道から (Par les rues et par les chemins)」、「夜の薫り (Les parfums de la nuit)」、「祭りの日の朝 (Le matin d'un jour de fête)」の3つのパーツで構成されています。ルイ・ド・フロマンの残念なのはちょうど同じ時期にマルティノンがEMIに同様なドビュッシー」の管弦楽作品集を録音したことでしょう。それで、こちらのセットは霞んでしまいました。また、日本ではちょうど契約がコロムビアからワーナー・パイオニアに変わった頃で発売窓口がなかったことも影響しているのでしょう。マルティノンとの比較は苦しいところですが、こちらもフランスのお隣ということでは木管楽器のレベルも高く、結構ハイレベルの演奏を聴かせてくれます。

 

 

 

 

 そうそう、このルクセンブルク放送管弦楽団は、1996年からルクセンブルク放送局が運営を打ち切ったのですが、ルクセンブルク政府がアンリ・ペンシス財団を設立させ、それを管理運営母体とし、ルクセンブルク・フィルハーモニー管弦楽団の名称で存続することとなりました。そして、2026年からは次期音楽監督に、若手指揮者のマーティン・ラジュナ(Martin Rajna, 1995年-)を任命しました。ラジュナは、ハンガリー出身の若干29歳で、2023年からハンガリー国立歌劇場の音楽監督、及びハンガリーのジュール・フィルハーモニー管弦楽団の首席指揮者を務めている有望な若手指揮者です。ハンガリーと言えば、かつては、夭折のイシュトヴァン・ケルテスや巨匠ゲオルグ・ショルティ、現代ではアダムとイヴァンのフィッシャー兄弟といった名指揮者を輩出してきましたが、新世代の才能の出現を予感させます。

 

 

ルイ・ド・フロマン

ドピュッシー管弦楽曲集1

 

曲目/

指揮/ルイ・ド・フロマン

演奏/ルクセンブルク放送管弦楽団

 

録音/1972−1973

VOXBOX  SVBX5127

 

 

 多分ほとんどの人は知らないセットでしょう。1973年にVOXから発売されたVOXBOXというセットのドビュッシーの管弦楽曲集です。ここで取り上げるのは第1集です。各巻が3枚組ということで、この時代では2巻揃えるとドビュッシーの管弦楽作品だけで6枚セットになるという画期的なセットでした。まあ、金のあった人はEMIから発売されたマルティノンのセットを買ったのでしょうが、こちらの全集にはマルティノン盤になかった曲も入っていて面白いものになっています。上のライナーノーツは両巻に共通のものになっています。ボックスは簡素なもので、黒色のボックスにジャケット写真が貼ってあるだけです。極力金をかけないということではレコードも窓空きの無地の紙袋に入っているだけです。この1973年になるとS/N比の改善のためにドルビー・ノイズストレッチャーは使用していますが、4チャンネル録音は終了していました。こちらの第1巻には有名曲が集中して収録されていますが、ラベルもシンプルなデザインです。

 

 

 ルイ・ド・フロマンといっても知らない人が多いでしょうね。1921年トゥールーズ生まれのフランス人指揮者でパリ音楽院では、ルイ・フレスティエ、ユージン・ビゴー、そしてアンドレ・クリュイタンスに学んでいます。1948年には首席で指揮科を卒業しています。ですからクリュイタンスの弟子でもあります。最初はカンヌやドーヴィルのカジノで活躍していましたが、1958年からルクセンブルク放送管弦楽団のシェフになり、1981年に引退するまで米VOXに大量の録音を残しています。ただ、日本ではほとんど紹介されたことが無く、僅かに日本コロムビアの廉価盤シリーズで先のサン・サーンスの交響曲第3番(CO OC7058)がリリースされたことがあるだけです。とにかく、レパートリー的にはバッハからハイドン、モーツァルト、ベートーヴェンの古典派からこのドビュッシー、ミヨー、さらにはメシアンなどのお国ものまでまで幅広く録音していました。
 
 冒頭に収録されているのは「海」です。ルイ・ド・フロマンはフランス人ということもあり、このプロジェクトを任されたのでしょう。なかなか雰囲気のある演奏をしています。
 

第1楽章「海上の夜明けから真昼まで

 

第2楽章「波の戯れ

 

第3楽章「風と海との対話

 

 下の写真はサン・サーンスが写したドビュッシーとストラヴィンスキーのスナップです。ドビュッシーの家ですが、後ろに葛飾北斎の「神奈川沖浪裏」が飾られているのがわかります。この海の楽譜の表紙にはこの「神奈川沖浪裏」を模したデザインが使われていました。

 

 

 2曲目は「牧神の午後への前奏曲」です。この演奏のフルートの音色はなかなか趣があり、アンニュイな雰囲気をうまく表現しています。結構お気に入りの演奏です。

 

 

 このレコードには珍しい「聖セバスチャンの殉教」という作品も収録されています。これは劇音楽ですが、ここでは2時間以上の大作の中から管弦楽部分を抽出した「管弦楽のための交響的断章」という形で演奏されています。