デュトワ/ラプソディ | geezenstacの森

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デュトワ/ラプソディ

 

曲目/

1.リスト/ハンガリー狂詩曲 第2番 10:44

2.ドヴォルザーク/スラヴ狂詩曲 第3番 変イ長調 Op.45-3 13:04 

3.アルヴィーン/スウェーデン狂詩曲 第1番 Op.19「夏の徹夜祭り」 11:30

4.エネスコ/ルーマニア狂詩曲 第1番 Op.11-1 12:18

グラズノフ/オリエンタル狂詩曲 Op.29

5. I.アンダンテ 4:38

6. II.プレスト 4:45

7. III.アンダンテ(ア・カプリッチョ) 4:48

8.IV.モデラート・アラ・マルチャ 2:36

9.V.フィナーレ(アレグロ) 4:21

 

指揮/シャルル・デュトワ

演奏/モントリオール交響楽団

P:クリス・ハーツェル

E:ジョン・ダンカーリー

 

録音/1995/05/17,25,10/05 サントゥスタッシュ教会、モントリオール

POCL-1715

 

 

 デュトワにしては珍しいレパートリーとなるリスト、ドヴォルザーク、アルヴェーン、エネスコ、グラズノフら主に東欧・北欧の作曲家たちによる狂詩曲(ラプソディー)集です。狂詩曲は自由奔放な形式で民族的または叙事的な内容を表現した楽曲であり、当然のことながらローカル色豊かな内容となります。そうはいっても、デュトワとモントリオール響はこれらの楽曲をローカル色はそれほどでもなくすっきりとスマートに、聴き易く表現しており、無理なく安心して聴ける一枚になっています。

 

 このリストのハンガリー狂詩曲第2番はピアノ版の編曲です。1番よく知られているのはヘルベルト・フォン・カラヤンとベルリン・フィルが演奏したものでしょう。小生も最初はそれを聴きました。で、音が厚ぼったく息苦しいような演奏であって、とても好きにはなれませんでした。そんなことでレコードは持っていますが、その後ほとんど聴いた記憶がありませんでした。ここでのデュトワの演奏は、そういう重々しさを取り払ったとてもスマートな演奏になっています。これなら聴きやすいですね。もともとこの曲はリストの作品ですが、編曲は違っています。ここでデュトワが採用しているのはカール・ミューラー=ベルクハウスの編曲盤です。編成にハープが加えられているのが聴感上の大きな違いになります。カラヤンやドラティの演奏もこの編曲版で録音しています。でも聴いた印象は全く違うんですね。このデュトワの演奏でこの曲が改めて好きになりました。

 

 

 ドヴォルザークを世界的な名声に押し上げたスラヴ舞曲集第1集と同年、1878年に作曲されたのが3つのスラヴ狂詩曲です。魅力的な民族舞曲の旋律に色彩豊かなオーケストレーションで作曲されています。国際的な名声が高まると共に彼への批判も増えていった中で周囲に囚われず比較的自由な発想の基に作られた狂詩曲です。作品14、作品45のいずれもドヴォルザークの特徴である民謡風の美しいメロディに包まれた狂詩曲です。一般的には彼を人気作曲家に押し上げたと言われるスラヴ舞曲の方が有名で演奏される機会も多いですが、こちらも隠れた名曲だと思います。それぞれをリボール・ベシェクやズデニェク・コシュラーが録音していますが、二人ともチェコ出身の指揮者であり以前からドヴォルザークに関しては定評のある指揮者です。ここではデュトワが中立的立場で全編に渡り美しく抒情的なメロディを味わうことができ、薄めの民族性で曲をストレートに味わうことができる狂詩曲になっています。

 

 

 アルヴィーンの「夏の徹夜祭」はこれもよく知られた作品でしょう。NHKの「今日の料理のテーマソング」に似ている事でも有名です。これもデュトワの棒にかかると非常にチャーミングでスマートな演奏になっています。好きな曲なのでいろいろ聴いていますが、ここまでなめらかでゴツゴツしない演奏はこれも初めて聴いたような気がします。ちょうどこの時期の音楽ということでは、ぴったりではないでしょうか。楽しめます。

 

 

 エネスコの代表作品といってもいい曲です。このルーマニア狂詩曲は全集も持っていますが、洗練度の観点から言えば、このデュトワの演奏の方が聴いていて面白いのは確かです。旋律線の扱い方がうまく曲の盛り上げ方もうまいので、曲がだらけることなくキリッと引き締まって聴くことができます。もったいない話ですが、このCD 1996年の録音ですが、ほとんど知られてないのではないでしょうか。

 

 

 このアルバムの中で一番注目した作品です。そもそも録音がほとんどない作品で、デュトワのこの演奏で初めて知ったものです。この作品が聴きたくてアルバムを入手したといってもいいでしょう。狂詩曲はそれ自体で単独の作品ですが、ここでは5曲の組曲で構成されています。5曲といっても後半の3楽章は続けて演奏されますから聴感上は3曲に聴こえます。

 

1.Andante
 ホルンの穏やかな響きによって曲は始まります。そして、異国情緒を感じ取る事の出来る叙情的なメロディーが登場します。このメロディーは歌詞を付けて歌えそうなほど叙情的な旋律です。イッポリトフ=イワーノフのコーカサスの風景の一曲目を連想させます。

2.Presto
 舞曲調の曲です。最初は静かに、そして徐々に高揚感のある演奏へと続きます。

3.Andante
 重々しい始まりです。その後はどこか異国情緒も少し感じさせるメロディーが奏でられます。すっきりとした青空では無く、曇り空と表現したら良いでしょうか。そんなイメージがします。最後は華やかなメロディーが奏でられ、次の曲へアタッカで続きます。

4.Moderato
 華やかでリズミカルなメロディーが前の曲から引き続き奏でられます。終始この華やかでリズミカルな演奏が続きます。ここもアタッカで次につながりますから聴感上は3つのパートでできているというイメージです。

5.Finale
 リズミカルな演奏が前の曲から続きます。やがて1曲目の異国情緒が溢れるメロディーが華やかに登場します。そして、高揚感のある演奏が続き、最後はその高揚感の中で幕を閉じます。グラズノフは多作家で我々の知るグラズノフは一般的にヴァイオリン協奏曲やバレエ音楽の「ライモンダ」や「四季」、交響詩「ステンカ・ラージン」でしょうか。でもあまり知られていませんが交響曲も9曲も書いています。