月末になったので、(1ヶ月飛ばしましたが)毎月末に書いているピアノの練習記事です。どうしてこんなことを始めたのか?どうしてベートーベンのピアノ・ソナタを練習しているのか?については、以下の記事をご参照ください。

 

 

(参考)2020.1.31 ピアノ練習(2020年3月の目標&1月末時点)

https://ameblo.jp/franz2013/entry-12571968320.html

(参考)2020.2.29 ピアノ練習(2020年2月末時点&4月の目標)

https://ameblo.jp/franz2013/entry-12578996972.html

(参考)2020.3.31 ピアノ練習(2020年3月末時点&5月の目標)

https://ameblo.jp/franz2013/entry-12586437559.html

(参考)2020.4.28 ピアノ練習(2020年4月末時点&5月の目標)

https://ameblo.jp/franz2013/entry-12592900531.html

(参考)2020.5.31 ピアノ練習(2020年5月末時点&8月の目標)

https://ameblo.jp/franz2013/entry-12600918809.html

 

 

 

始めに、今回の記事で声を大にして伝えたいことは、

 

 

ベートーベン/ピアノ・ソナタ第30番は神曲(かみきょく)だった!!!

 

 

いや~、もう思い知りました!凄い!凄すぎる!何という素晴らしい曲!何という深い曲!1音1音が愛しすぎる!私はいま30番に無我夢中です!

 

 

 

それこそ、今回の記事はこれで終わりにして、すぐに練習したいくらいですが、それでは何が何だか分らないので(笑)、この6月・7月の紆余曲折の経緯も含め簡単に。この2ヶ月間は決して順調にピアノの練習ができた訳ではありませんでした。

 

 

まず6月。6月は残念ながら、あまりピアノの練習ができなかった月となりました。その理由は、

 

①仕事がとても忙しかった。終わりの時間が毎日遅く、土日もどちらかは仕事だった。

②今ひとつやる気が出なかった。(決してコロナではなく)理由はお天気。梅雨の季節はどうも調子が上がりません…。

③熱情ソナタを全曲弾けるようになり、プチ燃え尽き症候群になった(笑)。

 

③は大きな曲を終えると、よくあることなので想定内。①は仕方ないし、逆にこのコロナの時期にありがたいくらいですが、②が意外に堪えました。もっと気温が上がって夏らしくなると、大好きな季節が来た!と、スッキリするのですが。

 

 

そして7月に。このままではイカンイカン!と思い直して、まずはピアノ・ソナタ第30番から譜読みを始めたら…、これが大いにハマってしまい、しばらくは取り憑かれたように、毎日30番のみを練習しました!

 

結局、ワルトシュタイン・ソナタの練習を始めたのは、7月18日(土)からに。そして先日の4連休は「ピアノ合宿」さながらに集中的に練習、何とか月末に記事が書けるまで進めたところです。以下、その進捗状況です。

 

 

 

 

 

(1)ベートーベン/ピアノ・ソナタ第30番ホ長調op.109第3楽章

⇒5月末の目標:8月末までに第3楽章を仕上げる。

⇒7月末時点:まずまず弾けるようになってきました。

 

 

7月に多くの時間を割いて練習したのがこの30番です。もともと32曲あるベートーベンのピアノ・ソナタの中でも、かなり好んで聴いていた曲でしたが、いざ実際に自分で弾いてみると、これが本当に凄い曲でした!10ペ-ジの譜読みは10日ほどで終了。通しで弾けるようになって、今は特に難しい第5変奏と第6変奏を中心に練習しています。

 

 

(参考)ベートーベン/ピアノ・ソナタ第30番ホ長調第3楽章

https://www.youtube.com/watch?v=uyhfzQEuzQc (13分)

※Benjamin Goodmanさんの公式動画より。名盤の誉れ高いヴィルヘルム・バックハウス盤に比べると、いささかやんちゃな面(笑)もある演奏ですが、気持ちはよく分ります。いずれにしても、こんな雰囲気のある演奏をしてみたい。

 

 

いま練習していて、その魅力に大いに実感している場面をいくつかご紹介します。

 

 

 

(写真)ベートーベン/ピアノ・ソナタ第30番第3楽章の冒頭(上記動画の0:00~0:36)

 

この曲は変奏曲ですが、基本となる主題です。祈るような静かな主題ですが、充足のような、あるいは諦念のような、どこか悟りを得たような雰囲気が堪らない!右手を追いかけるように、左手が一歩一歩と上昇していく旋律が、またいいんです。

 

 

(写真)ベートーベン/ピアノ・ソナタ第30番第3楽章の第1変奏(同2:24~2:52)

 

最初の変奏ですが、ここを弾きたくてこの曲の練習を始めた、と言ってもいいほど好きな場面です。主題の途中で転調して拡げることもできるのに、そのままホ長調で内に深めていくような、静謐さと豊かさが同居したような美しい音楽。

 

 

(写真)ベートーベン/ピアノ・ソナタ第30番第3楽章の第2変奏の途中(同5:29~5:41)

 

第2変奏は上の2小節のように左手→右手→右手→左手と飛び飛びの和音で主題を繋ぎますが、3小節目からのような印象的な和音とトリルの場面が2回出てきます。ここはその2回目。シンプルですが、何か深いものを感じる、とても印象的な音楽。トリルに気が行きがちですが、右手の副旋律(赤の丸)をしっかり出したいところ。

 

そして、最後の小節で転調し、右手のトリル2連発(オレンジの丸)で締めるところの切なさと儚さが堪らない!まるで飛べない天使が羽ばたいて、大空を飛ぶことを夢想するかのよう。ここのトリルは工夫して、絶妙な味わいになるように弾いてみたいです。

 

 

(写真)ベートーベン/ピアノ・ソナタ第30番第3楽章の第6変奏の冒頭(同9:50~10:37)

 

そして、いよいよ「その時が来た」という雰囲気を大いに感じる第6変奏の冒頭。ここは始めの4分音符が、2連符→3連符→6連符→8連符と、どんどん刻んでいきます。

 

スクリャービン/ピアノ・ソナタ第2番では、左手が3連符→4連符→5連符→6連符と変化していく場面があり、まるで波に揺られつつ船がゆっくり湖に進んでいくような、素晴らしい効果を感じますが、ベートーベンの場合は、もっと決然として真っ直ぐ進んでいく印象を持ちます。そして、この後にこの曲の圧倒的なクライマックスを迎えます!(後述)

 

 

 

この曲はあまりにも素晴らし過ぎて、このように好きな場面やその印象を語り始めると、止まらなくなってしまいます。現に、先日レストランで親友と30番の魅力について話し始めたら、悠に1時間は語ったかも(笑)。

 

 

 

しかし、いいことばかりではありません。上にご紹介した場面もそうですが、レガートで弾く場面が多く(ペダルの指定の箇所は10ページで2場面のみ)、それも1つの指違いも許されないようなギリギリのレガートのオンパレードで(間違えたら次の音を弾く指がない)、弾きこなすのにとても骨の折れる曲です。そして、最後の最後に高い高い壁が…、

 

 

(写真)ベートーベン/ピアノ・ソナタ第30番第3楽章の第6変奏のトリル地獄(同10:49~11:46)

 

さきほど、「クライマックス」と称した場面です。まず1段目から左手がずっとトリルで(赤の矢印)、右手が情念を感じさせる旋律を速く延々と弾くシーンが続きます。そして、5段目からは、右手がずっとトリルで(オレンジの矢印)、左手が速い下降旋律、さらに右手は12の指でトリルを弾きながら5の指で高音の旋律線を弾かなければならず、中にはオクターブを超えて弾く場面もあり、これがめちゃめちゃ難しいんです!

 

それが次の2/3ページほど続いて、最後はトリルの指の持ち替えの連発となります。もう本当に難しい場面。紹介動画でもGoodmanさんがいささか苦労されているのが伺えます。はう~。難しい!

 

 

この難しくて長いトリルの練習の影響なのか、実は7月中旬くらいから、プールでクロールを泳ぐときに、右腕の肘より上の部分に痛みが走ることがあって、支障が出て少々困っています…。

 

これまで、どんなに難しい曲でも指や腕を傷めたことはないので、そんなに変な弾き方はしていないと思うのですが、もしかすると、この延々と続くトリルの練習のし過ぎによる腱鞘炎か何かの兆候なのかも知れません?少しペースを落として、気を付けながら練習しようかと思っています。

 

 

 

ところで、この第3楽章を実際に弾いてみて、私は、とある曲に世界観や構成がよく似ている、と感じています。その曲とは、

 

 

ショパン/幻想ポロネーズ 変イ長調op.61

 

 

2017年に同じく熱中して練習した、幻想ポロネーズです。まるでショパンが自分の人生を振り返るような曲想、ベートーベンのように変奏曲ではないものの、5つもあると言われている主題のめくるめく展開、決して聴きやすくはないものの、聴けば聴くほど心に沁みる音楽など、ベートーベンと同じく「神曲」として特別な感情を持つ曲です。

 

2曲とも作曲家の晩年の作品。2人の天才作曲家が、数多くの作曲を経て辿り着いた境地の、極めて味わい深い音楽。そう感じています。

 

 

 

これほどまでに熱狂できる曲に出逢えて、本当に良かった!これもまた、ベートーベン・イヤーの大いなる喜びです。最後の至難の第6変奏以外はまずまず弾けるようになってきたので、8月末までにしっかり仕上げたいと思います。

 

 

 

 

 

(2)ベートーベン/ピアノ・ソナタ第21番ハ長調op.53「ワルトシュタイン」第1楽章

⇒5月末の目標:8月末までに第1楽章を仕上げる。

⇒7月末時点:通しで弾けるようになりました。

 

 

30番に熱狂して、そればかり練習していた7月でしたが、18日(土)からはお休みの日が多かったので、そこで集中的にもう1つの課題曲、ワルトシュタイン・ソナタを練習しました。

 

ワルトシュタイン・ソナタも難しい曲ですが、そこはハ長調の単音主体の曲。とにかく譜面がめちゃめちゃ読みやすい!14ページの譜読みは18・19日の2日間で終え、4連休に集中的に繰り返し練習して、何とか通しで弾けるようになりました。今は弾きにくいところを中心に、部分練習をしています。

 

この曲も昔から弾くことを憧れていた曲なので、まだ途中ゆっくりになりながらですが、通しで弾けるようになって、本当に嬉しい!弾いてみて、特に魅力を感じる場面を以下にご紹介します。

 

 

 

(写真)ベートーベン/ワルトシュタイン・ソナタ第1楽章の冒頭、第1主題の2回目

 

冒頭の有名な第1主題の和音が、2回目はトレモロになります。ワルトシュタイン・ソナタは大学生の時に第3楽章だけ弾いたことがありますが、当時は確か、このトレモロが難しそうなので第1楽章にはトライしなかった、と記憶しています。

 

熱情ソナタやハノンで鍛えられたためか、今はこのトレモロを問題なく弾けますが、この右手の4241の指遣いがめっちゃ気持ちよくて!(笑) 何かボタンをポンと押すと、指がタカタカタカタカと勝手に動いていくような、そんな感覚を持ちます。

 

 

(写真)ベートーベン/ワルトシュタイン・ソナタ第1楽章の第2主題

 

この第2主題(4小節目から)は本当に好き。とても神聖な気持ちになります。何となくワーグナー/タンホイザーの第2幕冒頭の、エリーザベトの歌の殿堂のアリアを思わせます。

 

“dolce e molto legato”の指示もいいですね~。しっかり繋いで弾きたいものです。ちなみに、ワルトシュタイン・ソナタの第1楽章は14ページ中、ペダルの指定の箇所は1箇所たりともありません。歯切れ良く弾くところと、レガートでしっとり弾くところ。しっかり描き分けられればと思います。

 

 

(写真)ベートーベン/ワルトシュタイン・ソナタ第1楽章の第1主題が回帰する場面

 

交響曲でもそうですが、第1主題に回帰する場面をどのように繋げるのか?も作曲家の腕の見せどころ、そして聴きどころです。(3小節目から)ハ長調になって、スフォルツァンドをガツンと2発入れて、最後フォルテッシモで右手と左手が豪快にスケールで締めるこの場面、めっちゃカッコイイ!

 

また右手と左手が第1主題より少し上に着地して、下がって第1主題が始まる流れにも痺れます。単純なハ長調のスケールでこんなにも心躍る音楽を書くなんて、ベートーベンって、天才としか言いようがありません!

 

 

(写真)ベートーベン/ワルトシュタイン・ソナタ第1楽章の2回目の第2主題

 

ワルトシュタイン・ソナタはハ長調の曲ですが、曲のイメージとは異なり、必ずしもハ長調のシーンばかりではありません。冒頭の第1主題ですら、2小節目の最後にはもうニ長調になったり(笑)。でも、ここぞという時にハ長調が出てきて、とても清々しい気持ちになります。ここもそんな場面で、5小節目からのハ長調への転調の妙にゾクゾクきます。

 

 

 

続いて、難しく感じている場面。14ページの中で、最も弾きこなすのに苦労しそうなのは以下の場面です。

 

 

(写真)ベートーベン/ワルトシュタイン・ソナタ第1楽章の展開部

 

ここは右手の3連符がどんどん飛んで、左手もオクターブ4音をしっかり押える必要があるので、十分な注意を払って弾く必要があります。こんな感じで1ページ半も続くので、なかなかタフな場面です。こればかりは、繰り返し練習あるのみです。

 

 

 

ワルトシュタイン・ソナタもとても難しい曲。ただ、曲の長大さや難易度において、熱情ソナタと双璧の印象もありますが、私はワルトシュタイン・ソナタの方がいくぶん取り組みやすい感触を持ちました。特に譜面が本当に読みやすいので、より早く弾き込めるのがいいですね。

 

 

 

 

 

以上、第30番第3楽章とワルトシュタイン・ソナタ第1楽章の練習の状況でした。1ヶ月出遅れましたが、2曲とも8月末までにしっかり仕上げたいと思います。そして、熱情ソナタ全曲、テレーゼ・ソナタ第1楽章、第27番全曲、スプリング・ソナタ第1楽章も引き続き弾いていきたいと思います。

 

(なお、後輩たちから、月光ソナタと悲愴ソナタも弾いてほしい、とリクエストがあったので、少しずつさらっています。)

 

それでは、全国のアマチュアのピアノの愛好家のみなさま、お互いに練習頑張りましょう~!