霊能者なおこの事件ファイル11~心の鎖~①

霊能者なおこの事件ファイル11~心の鎖~②

霊能者なおこの事件ファイル11~心の鎖~③

霊能者なおこの事件ファイル11~心の鎖~④

霊能者なおこの事件ファイル11~心の鎖~⑤

霊能者なおこの事件ファイル11~心の鎖~⑥

霊能者なおこの事件ファイル11~心の鎖~⑦

霊能者なおこの事件ファイル11〜心の鎖〜⑧

霊能者なおこの事件ファイル11~心の鎖~⑨

の続きです

 

 

 

 

 

 

吉井さんは、あの日

次の予約を取らずに帰りました

 

 

 

 

院長先生は

検査の結果、アルコール摂取による

一時的な貧血だったということが分かり

お酒の量を控えなさいと医師から指示されて

退院してきました

 

 

 

 

院長先生が退院して

通常の業務に戻った連絡をすると

早速、たくさんの患者さんから予約が入り

また忙しい日々が戻ってきました

 

 

 

もちろん吉井さんのところへも

電話での連絡をしましたが

留守番電話になるだけで

折返しの連絡はなく

 

 

 

 

そのまま年が明けました

 

 

 

私は

年末年始の休業中、何度も

吉井さんのことを思い出しては

 

 

 

彼女が来なくなったのは

「私が余計なことを、

言ったからかもしれない・・・」

と思うのと同時に

 

 

 

吉井さんが、安心して眠れていますように

痛い思いをしていませんようにと

祈りました

 

 

 

 

 

 

仕事はじめの日に

花屋の患者さんが持ってきてくれたのは

シンビジュームで

 

 

 

可憐な蕾をたくさんつけた

ピンク色の花に

心を癒やされました

 

 

 

 

私は、お花が暖房の風にあたって

弱らないように

花瓶を、寒い窓際に置きました

 

 

 

その日もとても忙しく

息つく間もないほど、慌ただしくて

 

 

 

次にシンビジュームに会えたのは

お店を閉める前

ゴミ箱のゴミを集めていたときでした

 

 

 

 

「今日もバタバタやったね。

おつかれさま。」

 

 

 

とお花に話しかけたところで

ピンポンと玄関のインターホンが鳴り

私は飛び上がるほど、びっくりしました

 

 

 

 

受付時間はもうとっくに過ぎていますし

こんな時間に宅配便の配達が

来たこともありません

 

 

 

 

誰だろう?と、緊張しながら

インターフォンに応えてみると

 

 

 

「こんな時間にすみません。

前に、患者さんのボランティアで

伺った太田と言います。

あの・・・吉井さんの車椅子で。」

 

 

 

という返答で、私はどうぞと返事しながら

胸がドキドキし始めるのを感じました

 

 

 

お顔を見ると、確かに何回か

吉井さんの車椅子を押して

来院されていた方です

 

 

 

ひとまず年始の挨拶をして

ご用件を伺おうとすると

 

 

「あの・・・もうお帰りになる時間ですよね。

すみません。」

と、なんとなく話し難そうにされています

 

 

 

 

私は

「大丈夫ですよ。どうぞお座りください。」

と言って、キッチンからお茶と

患者さんに頂いたお菓子を持ってきました

 

 

 

 

「ありがとうございます。」

と、お茶を飲む太田さんより先に

私が耐えきれなくなり

 

 

 

 

「あの、吉井さんに何かあったんでしょうか?」

と聞くと

 

 

 

バッグから分厚い封筒を取り出して

「今日は、その事で寄らせていただきました。

お手紙を預かって来ています。」

と、私に差し出しました

 

 

 

 

 

封筒には

若先生へ  吉井 道子

と書いてあり、その字はとても下手でした

 

 

 

 

字が下手な訳は、私にはよく分かり

関節リウマチで

手指の変形があり

ペンがうまく持てないのです

 

 

 

ミミズが這うように書かれた文字を見るだけで

私は吉井さんを思い

泣けて仕方がありませんでした

 

 

 

封筒の中身は、便箋5枚に渡って

今の吉井さんの近況が書かれており

花束が刺繍されたピンク色の

ハンカチが同封されていました

 

 

 

 

若先生へ 

 

 

先生、連絡もせず、

急にお伺いできなくなってすみません。

私は今、シェルターという所にいます。

 

 

 

先生に、あのカードを貰った帰り

思い切って、ボランティアの太田さんに、

自分のことを話しました。

 

 

 

太田さんから、専門の施設に連絡をしていただき

毎週水曜日の2時、鍼灸には行かずに

担当の方とお話を重ねていました。

 

 

 

お話して、色々なことが分かり

私が色々知らないで生きてきたことも

よく分かりました。

 

 

 

今は安全な場所にいて

同じような境遇の方とも出会い

大きな荷物をおろしたような

気持ちでいます。

 

 

 

ここでは不思議と

ご飯もおいしく食べられるし

夜もよく眠れます。

驚いたことに、先日は足の腫れが引いて

数歩歩くことも出来ました。

 

 

 

先生、あの日

私に怒ってくれてありがとうございます。

 

 

いつかまた

お目にかかれることがあったら

歩いてお礼を言いに行かせてください。

 

 

先生のお幸せを、

陰ながらお祈りしております。

 

 

どうぞ、お元気で。

 

 

 吉井 道子

 

 

 

 

 

 

手紙を預かって来てくれた太田さんも

シェルターの場所は知らされておらず

 

 

 

お返事を書くことは

叶いませんでした

 

 

 

 

 

 

あの日から一度も

吉井さんには会っていません

 

 

 

 

 

でも

その後辛いことがあった時

 

 

 

 

 

心の鎖を切って

自由になった吉井さんのことを

思い出して

 

 

 

 

 

自分には力があると

励まされたのは私の方でした

 

 

 

 

 

 

 

 

霊能者なおこの事件ファイル 11

~心の鎖~

 

 

 

 

 

 

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霊能者なおこの事件ファイル12~2人の霊能者~

 

 

 

 

 

 

ある日、突然我が家の寝室にカシエルが?! 龍を呼び起こす白い麒麟、索冥を追って はじめましての方へこれまでの私について 霊能者なおこの事件ファイル 江島直子著「鳳凰メソッド」サイン入りメッセージカード付き VenusWebShop 江島直子のオリジナルグッズを販売しております