出ました。

  12月11日発売予定なのに、気が付いたら12月8日には店頭に平積みされていたことが既にミステリーな、宝島社年末恒例イベント、「このミステリーがすごい!」 なんと創刊30周年、「2019」です。

 

  去年の「屍人荘の殺人」のような超目玉作品がない今年、はたしてランキングはどうなるのか。

  あるサイトで予想の投稿を受け付けており、私は下記のように予想しました。ものすごく、私的な好みと偏見による(10位だけは、誓って、私の主観ではありません。ただ、この作家さんの才能は、悲しむべきことに否定しがたく、しかも純然たる本格作家さんなので、妥協して、ランクインさせました。純粋に実力だけで判断すれば、おそらくは3位以内に入ること明白な作家さんだと思います)ベスト10です。

 

1位 市川憂人さんの「グラスバードは還らない」(「あの設定」さえなければ、客観的にも1位にふさわしいと思います)

2位 小林泰三さんの「ドロシイ殺し」または人外サーカス」(田中啓文さん同様、もっと評価されるべき作家さんかと)

3位 鳥飼否宇さんの「隠蔽人類」(とにかく、とにかく、びっくりした。小さい本格ミステリーがパッチワークのように繋がれた、最後はトンデモSF。いや、よくこれを考え付いたな、と)

4位 深緑野分さんの「ベルリンは晴れているか」(もしかするとベスト3入りするかも。しかし、一般受けはしないと思う)

5位 上田早夕里さんの「破滅の王」(これもSF。ひょっとすると、ジャンルSFはジャンルミステリーを超えちゃう? がんばれ、ミステリー作家さんたち)

6位  葉真中顕さんの「凍てつく太陽」(こんな作風のものも書けちゃうの?という、嬉しい驚き)

7位  川越宗一さんの「天地に燦たり」(実は歴史小説なんですが、松本清張賞をとってるし、そして実際、面白いし。どうなる?ジャンルミステリー)

8位 塩田武士さんの「歪んだ波紋」(「騙し絵の牙」で本屋大賞候補になった作家さんの最新作。もっと有名になってよい人だ)

9位 宮内悠介さんの「超動く家にて」(「動く」理由がすごい。そして、そのすごさゆえに、じつはミステリーではないことが明確になってしまうんですが、途中まではミステリーなので。短編集です。一気に全編読むと、たぶん脳みそが沸騰します)

10位 白井智之さんの「少女を殺す100の方法」(ほんとうにランクインしたら、世も末だ。「人間の尊厳? それって食べられるの?」的信条に支えられた、断固とした作品。吐かずに読み切れる人は何人いるのか?)

 

なお、別のミステリーファンさんの予想は以下のとおりです。

 

鳥居の密室…島田荘司
ベルリンは晴れているか…深緑野分
骨を弔う…宇佐美まこと
少女たちは夜歩く…宇佐美まこと
凍てつく太陽…葉真中顕
雪の階…奥泉光
松岡圭祐…瑕疵借り
昨日がなければ明日もない…宮部みゆき

長く高い壁…浅田次郎

 

手堅さを感じる予想です。やっぱり深緑さんの「ベルリン」は上位確定なのか。

 

そして、本誌を買って、家で結果を見たところ・・・・・・

以下秘密。ミステリーで言えば、ネタバレ部分ですので。たいていの図書館に入庫すると思いますので、借りてご確認ください。ただ、やっぱり「ベルリン」は強かった! そして若竹七海さん、最盛期の超絶おもしろさが雲散霧消したとたん、数年前から連続高位ランクイン。複雑な気分です。そして、そういえば三津田信三さんのことは忘却の彼方だった私。あと奥泉泉さんも忘れていたん。このおふたりは、まず100%面白いのに。

 しかし、私はすでにオワコンでは、と感じている〇野さんが堂々とランクインする世の中なんですね。それに比べて、湊かなえさんは、完璧、オワコン作家さんなのか。

 そして、注目すべきは15位入賞の、新人賞出身ではない無名の新人作家、鵜林伸也さんの「ネクスト・ギグ」。密室状態のロックコンサート場を舞台にした本格クローズドサークルもの。めちゃ、おもしろそうなんですけど。発掘したのは、ぼちぼち目玉新人を拾ってくる、あの東京創元社。この会社はやっぱり、優秀なトレジャーハンターだと思います。さっそく借りてみようかな、と。

 

 ランキング以外の記事としては、恒例「新人賞メッタ切り」。やっぱり、今年は不作感ハンパないです。私が、おもわず激辛レビューを書いてしまった「コンビニなしでは生きられない」。誰が読んでも駄作確定のようです。メフィスト賞ともあろうものが、このような作品を世に送りだしてよいのか。

 

 また巻末に掲載された「このミス30年の履歴 ランキング一覧」を見ると感慨深いものがあります。特に海外編は盛者必衰、諸行無常のムードが漂います。

 今から見ても、印象深いのは、なんといってもウェストレイクの「踊る黄金像」(1995年)。この作家さんのバカらしさは、もはやひとつのカルチャーと言って良いと思います。だって、「あんなもん」が踊るんですよ。イラストを見ちゃったときの衝撃は、たぶん生涯、忘れられないでしょう。

 あとディープインパクトだったジェフリー・ディーヴァーの「魔術師」。そう、この一冊で、私にはディーヴァーの面白さが理解できないということが自覚できたのでした。

 それにしても「悪夢のバカンス」「飛蝗の農場」「五輪の薔薇」「「捕虜収容所の死」「騙し絵の檻」「ジョン・ランプリエールの辞書」「女彫刻家」などなど、海外の名作が軒並み絶版になっております。出版社さまにお願いしたいのは「翻訳独占権」を放棄していただきたい、のひとことです。そうなれば河出書房新社さんか中央公論新社さんあたりが復刊してくださるかな、と思うので。しかし、そんな中で「フロスト」シリーズの強さは輝くばかりです。

 

 本誌を読んで、これは読むべきだなとつくづく感じたのは、まず倉知淳さんの「皇帝と拳銃と」、霞流一さんの「パズラクション」、恒川光太郎さんの「滅びの園」、飛浩隆さんの「零號琴」あたりでしょうか。お名前が「伊坂幸太郎」さんのパクリみたいな「伊兼源太郎」さんの連作短編集「地検のS」も高評判で、高期待。

  そして全く知らない作家さんの全く内容も知らない「異常探偵 宇宙船」。タイトルからして、タダモノでははない感じがハンパないです。これは読まねばならないでしょう。

 

 そして盲腸における虫垂みたいな取り上げ方になって申し訳ないのですが、「このミス大賞」です。みなさま、わたしは欣喜雀躍しております。たいへんに嬉しいお知らせです。

   今回の「このミス大賞」、もしかしたら、もしかしたら、中山七里さん以来の「大当たり」が「3作」くるかも、という感じです。さらに最終候補のラインナップから「隠し玉」にも、期待できるかも、です。

 それにしても、優秀作の「殺戮図式」を書いた「井上ねこ」さんて、どっかで見たことあるな。

碁だったかな。

将棋だったかな・・・・・もやもやしたままですが、みなさま、おやすみなさいませ。