櫛木理宇さんの「ぬるくゆるやかに流れる黒い川」(双葉社)

 

香那が中学生の頃。ある平凡な日のこと。彼女と、クラスメイトの小雪は、顔面蒼白になった副担任から呼び出されます。聞けば、同じ通り魔が二人の家を襲い、在宅中だった家族たちを惨殺したとのこと。特に、女性の遺体は損傷がひどい上、その傷のすべてが生前につけられたものであること。

犯人は武内譲、20歳になったばかり。20歳になったら大量殺人すれば死刑になれるから殺した、女なら誰でもよかった、というのが武内の供述。しかし、死刑になりたいといっていた彼は、独房内で自殺してしまいます。

それから、6年。大学生になった香那に、やはり成人した小雪が近づいてきます。いっしょに、6年前の惨殺事件の、ほんとうの動機と犯人の武内に関して調査してみないか、と小雪は持ち掛けてきたのでした。香那は、この話に乗ります。

武内の身内をたどろうとして気づいたのは、その係累の異常な少なさ。唯一話ができそうなのは、武内の大叔父にあたる昭也。ところが、ふたりが会いに行く寸前、昭也は何者かに殺されてしまったのでした。

 

 

櫛木理宇さんは、大好きな作家さんのひとり。ですが、今回、版元さんが双葉社ということで、微妙に嫌な予感が。双葉社、双葉文庫のミステリーで、おもしろいものって読んだ経験がないような気がする。

 

結果をいいますと、小野不由美さんの「残穢」に近い読後感です。

ただひたすら、話を聞いては、係累をたどり、過去を探っていく。そう、戸籍調査の本か何かを読んでいるみたい。

 

確かに、過去作品と比べても重いテーマ、深いメッセージ性があるんですが。

 

ひとつ印象的だったのは、小雪の姉の早月。「わたしって男みたいな性格だから」「サバサバしていて男みたいだから」が口ぐせ。「女はじめじめしていて嫌い」とまで言い放ち、女友だちがいないことを”自慢”する。

このタイプ、けっこう、見かけませんか? ほんとうは誰よりも「自分が女であること」にこだわっている人たち。

 

あとこの小説は、女性ヘイトに拒否感をもつ人は読まない方がいいかも。DVが苦手な人も要注意。

たぶん、吐いちゃいます。