ポール・キング監督、ベン・ウィショー (声の出演)、ヒュー・グラント、サリー・ホーキンス、ヒュー・ボネヴィル、ブレンダン・グリーソン、マデリン・ハリス、サミュエル・ジョスリン、ノア・テイラー、ジム・ブロードベント、ピーター・パカルディ、イメルダ・スタウントン (声の出演)、マイケル・ガンボン (声の出演)、ジュリー・ウォルターズ出演の『パディントン2』。2017年作品。
原作はマイケル・ボンドの児童文学作品「くまのパディントン」。
ロンドンのウィンザーガーデンに住むブラウン家に居候しているクマのパディントンは、お世話になったルーシーおばさんの100歳の誕生日にグルーバー氏の骨董品店の“飛び出す絵本”をプレゼントしようとアルバイトを始める。無事、窓拭きの仕事に就いたパディントンだったが、飛び出す絵本が彼の目の前で盗まれてしまう。
クマのパディントンが活躍するシリーズ第2弾…なんですが、実は僕は前作を観ていなくて、最初にこの続篇の予告を観た時も軽くスルーしていました。
クマといえば、自分は別のハッパ大好きなヌイグルミ製のクマが人を殴りまくるシリーズの方が好みだろうと思っていたし、なんというか、こちらはヌイグルミでもなければ本物のクマにも見えない微妙な感じのCG(剥製みたいだし)がちょっと受けつけない予感がしたので、まったく興味がなかった。まぁ、子ども向けの作品だろう、と。
だけど世間ではやたらと評判がいいし、ちょうど観終わって「あぁ~、楽しかった!」と思えるような明るい映画を求めていたので、観てみることにしました。
僕の住んでるところではほとんどの映画館で日本語吹替版しかやっていないので、唯一字幕版を、それも一日に2回しかやってないシネコンに行ってきました。
ディズニーアニメのように吹替版も丁寧に作ってあるのかもしれませんが、洋画のアニメ(言うまでもなくパディントンはCGアニメ製)はできれば原語版で観たいので。
いつも言ってるようにあちらのアニメーションってキャラクターの口の動きと声がぴったりシンクロしてるから、より入り込めるんですよね。
それと、主人公のパディントンの声をアテてるのがみんな大好きベン・ウィショーだから、ってのもあった(予告観た時にはてっきりユアン・マクレガーだと思っていたんですが)。ダニエル・クレイグ版007シリーズのQ役のお兄さんですね。
そんなわけで、『バーフバリ』の時と同じように前作を観ないまま続篇を観たんですが、まったく問題ありませんでした。
僕は原作も読んだことがないからどんなお話なのかも一切知らなくて、原作は絵本なんだとばかり思い込んでたせいもあって、同じイギリスだし、ちょうど“ピーターラビット”みたいなわりと日常的な世界を描いた物語なのかと思っていたんです。
そしたら、確かに日常も描かれはするんだけど中身は結構派手で、パディントンが繰り広げる床屋での騒動はチャップリンのドタバタ喜劇みたいだったし、後半の列車での追っかけのくだりなんかは完全にアクション物。
子どもの頃に観た児童向け映画を彷彿とさせてなんだか懐かしかった。
僕が観たのは平日の夜の回だったこともあって子どもの姿はなくて、ほとんどが女性かカップルでした。予想はしてたけど^_^;
むさ苦しいおっさんがぼっちで観るのはちょっと恥ずかしかったけど、でも童心に返って楽しみました。
やはり僕の隣の席で一人きりで観ていたおじさんが、上映中に何度も声を上げて笑ってました。きっとパディントン好きなんだろうなぁ。おじさんが可愛いものを好きでも別にいいですよね。
事前に言われていたように、これは人を信じたり前向きな気持ちで生きていくことを素直に肯定する、「性善説」に基づくお話。
通常、日本でこういう作品を作る場合は主人公は女性の声優さんが可愛い声で演じることが多いように思うんだけど、そうではなくて普通の青年の声というのが面白いですね。その辺はリアリズムでいくという。
当初、パディントンは『キングスマン』でもお馴染みコリン・ファースが声をアテることになっていたそうだけど、大人っぽ過ぎてイメージに合わなかったのかもっと若いベン・ウィショーに代わったんだとか。
『テッド』のクマのヌイグルミはもろ“おっさん声”だったけど、この映画のベン・ウィショーはナチュラルに演じててそんなに目立つ声じゃないから、僕のように声だけ聴いても彼だとはわからない人もいるでしょう。ちょっと“くまのプーさん”っぽい声だけど、パディントンは口調が紳士っぽいのが特徴。
彼が作るマーマレードをたっぷりつけたサンドイッチが食べたくなりました(^o^)
ただ、刑務所の中でパディントンたちが作るのが甘いスイーツばっかだったんで、普通の食事も作ってほしかった^_^;
ネタバレというほどでもないけど、一応ストーリーについて記すので未見のかたはご注意を。
予告でもわかるようにヒュー・グラントが悪役で、パディントンを陥れる。
彼が演じる落ち目の俳優ブキャナンは、パディントンがお金を貯めて買おうとしていた飛び出す絵本にかつて自分の先祖がサーカスでかすめた財宝のありかを示すヒントが記してあることを知り、長い間それを探していたのだった。
ヒュー・グラント七変化
そんなわけで中盤以降は泥棒の濡れ衣を着せられたパディントンの刑務所からの脱走劇と奪われた絵本の争奪戦。王道の娯楽アクションですね。上映時間が100分ちょっとというのもちょうどいいし。
その限られた時間で描かれる単純明快なお話の中に巧い具合に伏線が張ってあって、ブラウン家の人々の活躍でパディントンは最後に無事絵本を取り戻すことができる。
ブラウン家ではヘンリー・ブラウン氏(ヒュー・ボネヴィル)はヨガをやっていて、妻のメアリー(サリー・ホーキンス)は高いところから水に飛び込むのが得意。古い印刷機を購入して新聞作りを始めた長女のジュディ(マデリン・ハリス)、学校ではラッパーみたいな格好でクールなふりをしている長男のジョナサン(サミュエル・ジョスリン)は機関車の模型作りに熱中している。
それらが後半に活かされる。
部屋に閉じこもっていたランカスター大佐(ベン・ミラー)は、パディントンが窓を拭いてくれたおかげで日の光を浴びて窓の外の店屋の女性と仲良くなる。
毎朝出掛ける時にいつも家の鍵を忘れる医者のジャフリ先生(サンジーヴ・バスカー)は、パディントンの一言で外に締め出されずに済んでいる。
パディントンはご近所の人たちにとって今や欠かせない存在。
刑務所のコワモテな囚人たちも根はいい人たちで、脱走してパディントンを見捨てるのかと思いきやクライマックスでは飛行機で彼を助けに現われる。
悪者であるブキャナンもエンドクレジットでは入れられた刑務所で楽しげに踊ってて、これが深刻な話じゃないことを強調している。
ブキャナン自身の屈折した性格みたいなものはほとんど描かれていないから、キャラクターとしてはほんとによくある勧善懲悪のわかりやすい悪役に過ぎない。余計な暗さがないのはよかったな、と。
刑務所で洗濯係になったパディントンが赤色の靴下と一緒に洗ってしまったために全員の囚人服がピンクになってしまうのが可笑しいけど、この映画では囚人の怖そうなおじさんたちもみんな可愛く描かれていて、彼らは甘いお菓子が大好きだったりもする。
ブキャナンのダンスシーンもそうだけどちょっとオネェっぽい雰囲気が入ってて、『美女と野獣』みたいに「人は見かけによらない」ってことを語ってもいるように思える。
世の中の明るい部分を見ていこうよ、っていうポジティヴな姿勢。
そういう「みんなイイ人」な映画である一方で、刑務所で収監中に食事係のナックルズ(ブレンダン・グリーソン)に「そのうち家族はお前のことを忘れる」と言われたパディントンは、ブラウン家のみんながブキャナンを追っていたために面会時間に間に合わなかったのを「自分は見捨てられた」と思い込んで、躊躇していた脱走の決意をする。
このパディントンの「自分は見捨てられるかもしれない」という怖れは、僕にはわりとリアルな感情に思えたんです。
こんなにまわりのみんなから愛されているパディントンでさえも、心の中にはそういう怖れを抱いているということ。彼は幼い時に川で流されていたのをルーシーおばさん(声:イメルダ・スタウントン)と今は亡きパストゥーゾおじさん(声:マイケル・ガンボン)に救出されたので、一見愛に満ちた生活を送ってきたようでいて、そこには本人も意識していないような「孤独への怖れ」があるのかもしれない。
僕は前作を観てないので、そちらにはもっとパディントンがみんなから邪険にされる場面もあったのかもしれないし。
続篇の今回でも自称・自警団のカリー氏(ピーター・パカルディ)はパディントンのことを毛嫌いして排斥しようとしているし、警察も彼を絵本泥棒の犯人だと決めつけて逮捕したわけだから(そういえば、パディントンがカリーと和解したり、警察官がパディントンに謝罪する場面ってあったっけ?)、世の中のすべての人が自分に好意を持ってくれているのでないことは、さすがに人のいいパディントンもわかっているでしょう。
明るくてお行儀のいいパディントンの心の奥底にある、独りぼっちになる恐怖。
だからこそ、ルーシーおばさんのパディントンへの愛、パディントンのおばさんへの感謝の気持ち、そしてブラウン家の人々との絆などが本当にかけがえのないものとして映ってくるんですね。
メアリーを演じているサリー・ホーキンスは、彼女の主演した『シェイプ・オブ・ウォーター』や『しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイス』が公開をひかえているけど、そちらでは「パディントン」での明るくて活動的なお母さんとはまた違うタイプの女性を演じている。
僕がこの女優さんを初めて意識したのは、多分、ケイト・ブランシェット主演の『ブルージャスミン』で(それ以前に出演したという『レイヤー・ケーキ』や『わたしを離さないで』も観てるけど、彼女のことは記憶にない)、あの映画では恋愛や性に奔放な妹を演じていた。
主演映画が矢継ぎ早に公開されて、ブレイクしてるなーって思いますね。
彼女以外にも、ヒュー・グラントをはじめ、パディントンの声のベン・ウィショーにジム・ブロードベント、ナックルズ役のブレンダン・グリーソンなどハリウッド映画でお馴染みの英国の俳優たちが何人も出ていて、彼らの顔を見てるだけで嬉しくなってくる。
「ハリー・ポッター」シリーズのプロデューサーが作ってるから、先ほどのグリーソンやバード夫人役のジュリー・ウォルターズ、声の出演のイメルダ・スタウントンやマイケル・ガンボンなどのハリポタ組もいるし。
個人的には意外とダークなハリポタよりも、こちらの路線の方が僕は好きだな。
それにしても前々から思ってたけど、ブレンダン・グリーソンって英国版“渡辺哲”みたいなクマっぽいおっさんだけど、息子のドーナル・グリーソン(『スター・ウォーズ』のハックス将軍役の人)は青っ白いヒョロッとした感じの俳優で、親子で顔も体型も全然似てないのが面白い。
パディントンにとっての「夢のかなう場所」。それがロンドンであり、ウィンザーガーデンであり、そしてブラウン家でした。
高齢だけど長らくロンドンに来ることを夢見ていたルーシーおばさんとの再会は、おばさんとパディントン二人への人々からの贈り物でした。
人々に日々の喜びを届けていたパディントンに、今度はみんなから感謝を込めて贈られるプレゼント。
大好きな人に誕生日プレゼントを贈りたい、というささやかな、でも大きな願いがかなう喜び。
パディントンの優等生過ぎて嫌味にならない程度の善人ぶりと、これもあざと過ぎない可愛らしさ、そういう「ほどのよさ」がこのシリーズが好感を持って迎えられている理由なんでしょうね。
この映画を幼い頃に観ていたら、きっととても好きな想い出の作品になっただろうなぁ。
だから子どもたちがこの映画を観て、明るい世の中、みんなが親切で思いやりがある世界を「いいものだな」ってイメージできたらそれはほんとに素敵だと思います。
観終わって会場から出る時に、後ろの席で観ていたカップルの彼氏の方が「めちゃくちゃ面白かった。お父さんの“ヨガのシーン”で超ウケた」と言ってて、彼女も笑いながらウンウン頷いてました。
僕はこの映画を『スリー・ビルボード』のあとに続けて観たんですが、なかなかいい組み合わせの2本でしたよ(^o^)
ドタバタに笑いつつ、最後はほっこりできる作品でした♪
※マイケル・ガンボンさんのご冥福をお祈りいたします。23.9.27 or 28
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