金城一紀 * 講談社


話題になったし、映画化もされた作品だけど、実は全然中身を知りませんでした。しまった、面白すぎた。どうしてもっと早く読まなかったのだろう。(話題になると気後れする性質は、時折こうして損をする)

日本で生まれ、日本で育ったけれど”在日”と呼ばれる僕。ダンスパーティーでコケティッシュな魅力を持つ女の子に出会い、恋に落ちた。

私の町にも在日者は多い。小中学校とやたらに朝鮮・韓国の文化は触れさせられたし、お隣の住宅の何とかさんもそうらしい。らしい、っていうのは興味がないからよりも先に触れ合う機会がないからなのだけれど。

この本の中には、知らないことがたくさん詰まっていました。「私はどこからきたのだろう」なんて聞き飽きたテーマがひどく新鮮で、主人公の声にも脇役のエピソードにも唸ってしまうものがあった。

とはいっても、青春小説。重いテーマを背負いながら、馬鹿なことを言って喧嘩して恋をして、若者の勢いのあるポップな物語にしあがっています。


金城 一紀
GO
GO

映画のほうも見ました。これ見てこれだけで満足しちゃうひと多いんだろうなぁ勿体ない…!

奥田英朗 * 文芸春秋


人間不信のサーカス団員、尖端恐怖症のヤクザ、ノーコン病のプロ野球選手。

精神の病に困り果てた末、伊良部総合病院にやって来た彼らを迎えるのは、デブで幼稚で注射が大好きな伊良部一郎医師と、無愛想で露出過剰なセクシー看護士マユミちゃん。

精神年齢五歳児の伊良部に、はたして彼らを救うことができるのか?

トンデモ精神科医・伊良部による無茶苦茶なカウンセリングが五話収録された短編集。イン・ザ・プール に続く、シリーズ第二段なのですが、先に手に入ってしまったのでこちらから。

全体的にすっきりまとまったさわやかな話で、前作を未読でも特に違和感なく読めました。ていうか、なんてあほなんだろう…! 『義父のヅラ』はもう、だめでした。あほすぎる…!

映画化していることもあって、脳内で伊良部は限りなく松尾スズキでした。五歳児の如く駄々をこねる松尾氏はとても想像し易い…(笑)

前作はもちろん読むつもりですが、是非続けてほしいシリーズです。


奥田 英朗
空中ブランコ

講談社


闘うイラストーリーノベルスマガジン『ファウスト』。

前回の文芸合宿を経て、今度の特集は「上遠野浩平をめぐる冒険」。新作二作とロングインタビューを掲載。イラストは今回表紙も描いたウエダハジメが担当。

小説はおなじみ西尾維新、浦賀和宏、そしてファン待望の佐藤友也『鏡家』シリーズ最新短編を一挙三篇掲載。

対談、インタビュー、コラムや漫画も含めて堂々の796P!


まあ、なんていうか…1500円は、文芸誌の値段じゃないですよね……。

対談の類がちょっと多すぎるような気がするのですが、如何なものでしょう。個人的に、評価のしあいを聞くより小説が読みたくて買っているわけで…。インタビュアー西尾維新は少し喋りすぎじゃないかと思ったりするわけで…。

ええと、佐藤友哉が異様に面白かったです。こんな面白い話書くひとだったっけ…?(失礼) フリッカー式で挫折している人間なので、鏡家少し読んでみようかと思います。色シリーズも単行本化するようですし、まとめて読んでも良いかもしれない。

りすかは引っ張ってくれているので次回を楽しみにするということで。西尾維新は殺しすぎなので、もう誰が死んでも驚くより哀しむより溜め息の方が出てきそうです。だから頼む、死なないでくれ。

あと、舞城は小説家なんだから小説を書かせてください。あのひとの絵はきらいではないが、もうちょっとやり方があるだろうと思う。頼むよ…。


まだ目を通していない部分が多々あるので、ゆっくり読んでいこうかと。

しかし読みにくい。次は是非もう少し薄くしてください。


ファウスト vol.5

はやみねかおる * 講談社YA!ENTERTAINMENT


都会に住まう中学生、内人と創也。サバイバル能力と天才的頭脳を武器とするふたりの冒険に、新たなる謎の組織・頭脳集団(プランナ)が参戦。堅物卓也さんの日常も覗ける、シリーズ第三弾。

もう、毎度のことながら、創也がかわいくてしかたありません……。なに、なんであの子、あんなに頭悪いの…? どんどん、困ったときの内人くん頼みが進行してます。かわいい。

内容の方は相変わらずぎっしり詰まった330ページ。S計画(プロジェクトS)編、校内ボーリング編、卓也さんの変な日常編、文化祭編。よっつともバラバラに見えて、しっかり繋がった話になっています。もう少し厚くなっても良いから、カットされた部分も是非読みたかったなぁ…。

いつもどおり、パロディのセンスもきらりと光り(笑)、読み応えのある一冊でした。早く続きが読みたい。


はやみね かおる, にし けいこ
都会のトム&ソーヤ (3)

甲田学人 * メディアワークス 電撃文庫


Missingシリーズ第十巻。じきに最終巻が発売されると聞いて慌てて読書。久しぶりすぎて話の筋を忘れ気味です。

幕間、という感じのする薄さなのですが、それは魔女側のみ。今回はついにあの男が動き出し、内容は確実に核心に近付きつつあります。亜紀の嘘、圭子の嘘。そして、武巳の嘘。文芸部に広がる亀裂は、今のところ修復不可能な様子。

見所はむしろ圭子の怪異ではなく、武巳の男気ではないですかね。村神のへこむのもよくわかる(彼の心情が今後一番心配なのだよなぁ…)。

前回に引き続き今回も引っ張ってくれているので、完結編はなるたけ早く読みたいところ。


甲田 学人, 翠川 しん
Missing(10) 続・座敷童の物語

あさのあつこ * 講談社 青い鳥文庫


テレパシー少女・蘭シリーズ第二段。

あやしげな景色とともに聞こえた見知らぬ声に導かれるように、疾風村をおとずれた蘭たち。村で見つかった幻の「エマヒクサ」の謎とは?

相変わらず蘭と翠のボケツッコミは非常に微笑ましく、留衣との関係もかわいらしくてすてきです。主人公に最初から恋人がいる、というめずらしい設定なのに、こうもラブラブされては手に負えません。勝手にやっててください…笑。

前回が留衣のピンチで、今回は翠のピンチ。…いや、どうして翠が攻撃されたのかいまひとつ納得しかねるのですが。仕方ないか、草だものな。

しかしあさのさんは、少年愛(愛?)だけでなく少女愛にも理解があるようだ。蘭と留衣がらぶらぶなのはさておいて、翠のあの行動はちょっとどうなの…! ふつう中学生は冗談であんなことしないと思うんですが?(どうだろう…)


あさの あつこ, 塚越 文雄
闇からのささやき―テレパシー少女「蘭」事件ノート〈2〉

小路幸也 * 講談社


「いつかおまえの周りで、誰かが『のっぺらぼう』を見るようになったら呼んでほしい」

姿を消した兄の残した謎の言葉。20年前にカタカナの町で起こった真実と人々が『のっぺらぼう』に見えてしまう少年の見たもう一つの世界を描く、第29回メフィスト賞受賞作。

ノスタルジック……。ミステリーランドで刊行されていてもおかしくないような雰囲気でした。ミステリーよりもホラー、ファンタジー色の濃い作品だと思います(が、メフィストなので義務的にミステリ区分…)。

昭和30、40年ほどの独特の雰囲気は懐かしく、(知らなくたって懐かしさはあるのです。不思議…)、小学校五年生の夏、突然人々が『のっぺらぼう』に見えるようになってしまった、という設定に、いったいどういう回答が用意されているのかわくわくしながら読みました。

結果の方は、展開が段々と早足になって行ったこともあって大喝采を贈れるものではなかったのですが、それなりに納得。続編があるそうなので、そちらも是非読みたいと思います。


小路 幸也
空を見上げる古い歌を口ずさむ

高里椎奈 * 講談社ノベルス


フェンネル大陸偽王伝、第二段。

前巻を読んだのが随分前のことなので、どうも記憶が曖昧で仕方なかったりするのですが…。

一巻が序章ならば、二巻は物語の起。テオとともに旅を続ける13歳の王女フェンベルクは、平和な王国・ソルドにたどり着き、騎士見習いの少年・ロカと国を揺るがす陰謀を耳にしてしまいます。

二冊通してみると、物語全体の説くところはどうやら『崩れた真実からの回帰』であるようす。

次巻の舞台となるであろう、300年以上鎖国を続ける王国パラクレスで承となるか転となるか、ともかく、シリーズタイトルである『偽王伝』の意味がようやくぼんやりと見えてきたところで、三巻に続く、のは期待が出来て良いことです。

一冊一冊では今ひとつよくわからない、というのが本音なのですが、全体を見る意味で、次巻の発売が非常に楽しみです。


高里 椎奈
騎士の系譜 フェンネル大陸偽王伝

伊坂幸太郎 * 新潮社


重力ピエロ の伊坂幸太郎、デビュー二作目文庫化です。

どこかおかしなプロの泥棒、愛人の妻の殺害を目論む精神外科医、神の解体をスケッチする青年、犬と拳銃を連れた無職の男、そして拝金主義の画商と新鋭女流画家。

ラッシュ・ライフの意味は多様で、綴りによって異なる生活に見えてくる。頻繁に登場するエッシャーのイラストのように、騙し絵を思わせる時間軸のトリックは見ものです。相変わらずこの方はプロットが巧だ…。

伊坂節もバッチリ効いて、すっきりな読後感は毎度のことながら「さて、生きるか」と思わせてくれます。時間を見つけて、もう一度今度は時間の流れどおりに読んでみたいなぁ、違う発見がありそう。


伊坂 幸太郎
ラッシュライフ

高里椎奈 * 講談社


第十一回メフィスト賞受賞作にして薬屋シリーズ第0巻目、待望の文庫化です。
長身温和系青年・座木、国籍不明超美少年・秋、元気な赤毛少年リベザル。三人の営む薬屋『深山木薬店』の裏の顔は、薬事法などなんのその、お客さまの症状にあわせて薬を調合してさしあげるという蛇の道な薬局。

それだけでも相当怪しいのに、彼らの正体は実は人の世に紛れて生活する『妖怪』なのでした…。

『ショタ系ミステリ』とまで称されたキャラもの色の濃いシリーズですが、文庫化にあたってまさかのイラスト表紙。担当は唯月一。ついでに解説は今日からマのつく自由業! の喬林知。何かもう完全に狙いを定めてきましたという感じです講談社さん。『本格推理でキャラ萌え』とか書いちゃってる辺り、思い切り放り投げてるような気がしてなりません。正直、公式でイラストはつけて欲しくなかったのだけれど……。

目立った加筆はなかったように思います。中身は変わってないのに表紙が違うだけで随分手を出しやすくなっているので、これを機にファンが増えると良いなぁと。

あ、でも値段はノベルスと百円違うだけです。ノベルス所持者は別に買わんでも良いかも。(買ったけど)


高里 椎奈
銀の檻を溶かして