歌野晶午 * 角川書店


東京近郊で発生した小学生誘拐事件。町内で起こった残酷で不可思議なその事件が、小学六年生の息子・雄介と関わりがあるかもしれない。不安に苛まれる父の心情を描いた問題作、なのですが、ミステリか、これ? というのが正直な感想。

うーん。確かに一気に読んでしまったし、そうさせられた以上は面白かったというべきなのかもしれないのですけれども、……最後がなぁ。ミステリを(てか、どんでん返しを)期待せずに読めば面白かったのかもしれない。歌野氏にはついこの間「やられた!」と叫んだところだったから。

近年の犯罪低年齢化も視野にあるのだろうなと思いつつ、やはり何かしらの答えを用意してほしかったというのが本音です。何にせよ、問題作であることは確か。


歌野 晶午
世界の終わり、あるいは始まり

仁川高丸 * 集英社


ポップでライトな百合小説。

中学三年の日に教室にやって来た転校生・良平(アキラ)。女の子なのにあたしを「好き」だと言う彼女は、口を開けば「きれい、かわいい、好き」を連呼する。その賛美に反発しながらも心地よさを覚えるあたし。友情か恋、微妙なラインを辿る、ふたりの少女の物語。

女子校作品によく見られる”一過性の恋心”的なものではなく、大学後もきちんと描かれています。

まっすぐな良平の感情はそれでもどこか遠慮がちで、触れきらない距離にあるふたりが、それぞれどう答えを出してゆくかが気になるところ。全体的に切なく、気持ちの面では汚い部分も冷たい部分もたくさんあって、それでも少女的な要素が甘さと強さを見せています。好きだなぁ。


仁川 高丸
文月に不実の花咲く

戸梶圭太 光文社カッパノベルス


戸梶圭太、というと『溺れる魚』とか『ご近所探偵TOMOE』とかの原作者。どちらも未読なのですが、堤監督が映像化しているくらいだし、ああいうノリなのだろうと思って試しに読んでみた。ので、意外と真面目で驚きました。

地方のパチスロ屋に強盗へ入った鉤崎。トラブルに見舞われ、チームを組んだ同業者に裏切られてまんまと金を持ち逃げされた彼は、犯罪者ばかりの舞台の上で、無事に金を取り戻せるか?

娯楽小説、と銘打ってあるように、確かに何も考えず楽しんでしまうのが一番。何ていうかもう、笑えます。えらく残虐なシーンなのに、どういうわけか笑えます。何だろうこの、暗い気分に浸って零れる笑みではなく、プッとふきだしてしまう感じ……不謹慎ではありますが、とても面白く読めました。


戸梶 圭太
クールトラッシュ 裏切られた男

青木和雄 * 金の星社


11歳の誕生日、「生まれてこなければよかった」という兄のひとことから声をなくしてしまった少女・あすか。田舎の祖父母の元で自分自身を見つけ出したあすかは、新しい生活環境のなかで「自分は自分として生きる」と心に刻み、強く成長してゆく。

うーん、感動、というほどの強い衝撃はありませんでした。アダルト・チルドレンである親に支配された理不尽な家庭環境は現実に存在するし、硬く心を閉ざす子どもも多い。だからこそのリアリティであるはずなのだけれど、しかしどうも、弱く感じました。

簡単に言うと、大人はそんなに簡単に戻ってこない、と思ったのだと思う。

あすかが苦しんで、苦しみを乗り越えてゆく姿は理解できる。けれど、両親側の心情がほとんど描写されていないためか、どうも都合が良すぎるような気がしてならないのです。無理矢理なハッピーエンドに見える。

とか思っていたのですが、加筆修正版もあるのですね。そちらでは母親の心情を加えて大人向けになっているそうなので、次は是非そちらを読んでみようと思います。


青木 和雄, 加藤 美紀
ハッピーバースデー―命かがやく瞬間

畠中恵 * 角川書店


江戸は上野の端にある神社で神官を務める神官兄弟、弓月と信行。

粗忽な兄としっかり者の弟という世間には良くある兄弟関係の彼らだが、兄には夢で未来や過去を見る『夢告』の能力があった。

大して役に立たない、と有名なその占いの噂を聞きつけて、ある日舞い込んで来たのは、大店の行方不明の一人息子の行方を占ってほしいという依頼。

目先の欲に目がくらみ、弟を共に出かけてしまったが運の付き。不吉な夢告げと連続する辻斬り、弓月は無事に依頼をこなし、家に帰ることが出来るのか…?

しゃばけ シリーズとはまた違った風味を出している作品です。っても、独特の和やかさ暖かさは健在。キャラクターの良さも引けを取りません。
シリーズ化は難しい感じのラストでしたけれども、是非短編で続きが欲しいところ。弓月の心情に割を裂き過ぎて、どうも脇役の印象が薄くなってしまったような気がしますし。

ていうか、弟の話が読みたいです(正直)


畠中 恵
ゆめつげ

宮部みゆき * 中央公論社


秋の夜の虫聞きの会で一人の若い女性が殺された。事件に巻き込まれ、調査を進める「僕」と親友の島崎はやがて悲しい結末を知ることとなる。

今夜は眠れない に続くシリーズ二作目です。が、前作の方がおもしろかったかな…。

話自体はライトで読み薦め易いですし、キャラクターもしっかりしていて楽しめるのですが、後味がちょっと何だかなぁ。子どもがああいう答えを導くほど気持ちの悪いものはありません。正しいからこそ余計に、やりきれなくて気持ちが沈む。そうじゃないだろう、と思ってしまう。中学生だからこそ、ああいう正論は苦手です。

しかし推理小説としては普通に楽しめる作品でした。島崎は良い頭をしているなぁ。


宮部 みゆき
夢にも思わない

あさのあつこ * 講談社青い鳥文庫


あさのあつこの超能力モノ、シリーズ一作目。

あまり自覚はないものの超能力を持っている少女・蘭。ボーイフレンドの留衣との楽しい中学生生活の矢先、不思議な転校生・翠と知り合って以来、おかしなことが起こり始める。

蘭ちゃんはえらくのんきで、自分の能力にも興味がなく、温かい家庭で素直に育った普通の女の子。反転、転校生の翠は生まれ持った超能力に悩み、独りで生きる覚悟を持った美少女。

近い力を持ちながら正反対の生活を送った彼女たちは、だから反発もするし、お互いを認めることも出来る。良いコンビです。ゆっくり既刊作を読んでいこうかなと。


あさの あつこ, 塚越 文雄
ねらわれた街

響野夏菜 * 集英社コバルト文庫


単位制高校の保健室に巣食う兼業ギャングの探偵集団、S黄尾探偵団。

今まで各キャラにスポットを当ててやってきた中、ひとりだけ渦中とならなかった人物・じじいこと局長の慈吾朗の話で、長く続いたシリーズ最終章の前編になります。

前回気になるところで終了し、今回もまた引いてくれています。ああ。

S黄尾とは長い付き合いになるので(小学生の頃から読んでる…)、次で最後かと思うと感慨深くも寂しい限り。気持ちよく最後を迎えたいものです。


響野 夏菜
東京S黄尾探偵団―史上最大の作戦 前編

松浦理英子 * 河出書房新社

連作短編集。まぁ、ビアンものなわけですが。

直接的な描写が多く、そちらの方に興味のない方には少し厳しいかなぁと思わないでもありません。しかし互いに好きなのに傷つける、身を削るような恋愛は異性間でも同性間でも変わらず、辛いものです。作品全体を包む、痛々しくも純粋な雰囲気がとても良い。

映画化もされているようですが、どういった出来なのか気になるところ。


松浦 理英子
ナチュラル・ウーマン
ジーダス(JSDSS)
ナチュラル・ウーマン
映画のほう。一度見てみたいなぁ。

舞城王太朗 * 新潮社


文庫化のため購入・再読。とても好きな作品です。

同級生が誘拐されて「グルグル魔人」は幼児殺害、中学生は「アルマゲドン」で攻撃されるしグッチ裕三はお父さん。そんな変な話。

変な話なんだけど、その変で意味不明で暴力的でグロテスクでどうしようもないぐちゃぐちゃな世界の中に愛とか恋とか純粋な何かが見えてくる。全編通して、主人公の恋する女子高生・アイコの”独り言”で形成されていると行っても過言ではないのですが、このアイコが実にキュート!

突然フォントが大きくなったり、まったく違う世界に飛んでみたり、かと思えば突然ホラーだったり色々ですが、舞城らしくてもう全部許せます。

説教臭くても良いじゃない! 私は大好きです。


舞城 王太郎
阿修羅ガール
ちなみにこっそり単行本版の装丁のが好き。