日本特有の「終身雇用」や「年功序列」の総見直し問題。日本の未来を考える上での最大の難題ですが、こと国を超えて終身雇用・年功序列の無いアメリカの労働市場の様子を見てみると、少しその見え方が変わります。
アメリカは資本主義の総本山の国。日本よりもさらにハードな問題が渦巻いていました。今回はそんないわゆる格差問題(反貧困・反格差の問題)について。(2011年 ウォール街を占拠せよ)
(上記記事から引用)
アメリカのギャラップ社が約1万5000人のアメリカ人労働者を対象に調査を行ったところ、仕事に熱意を持つ人の割合は32%と前回調査より低下し、7年ぶりの低水準となった。
一方、会社に不満を持つ人の割合は高まっており、約半数が仕事に対して意欲を持てず、最低限の仕事しかこなしていない状態だという。同社ではこうした労働者を「静かな退職者」と呼んでいる。
(引用終わり)
「r>g」(資本の成長率>賃金の成長率)
フランスの経済学者のトマ・ピケティが、「21世紀の資本」の中で示したもので、株や不動産、債券などへの投資による資本収益率が常に経済成長率を上回るという禁断の不等式です。これが発刊されたのが2013年。あれから約10年が経過。2008年のリーマンショックからもう14年が経過したんですね。
投資家が資産を再投資してどんどん利益を拡大化しながら、資産をさらに増やしている一方で、労働者はどれだけ働いても給与が増えず、資産を増やすどころかむしろ資産を減らしているというのが現実。
このことによって、アメリカの労働者は完全に意欲を無くしてしまい、生活のための労働に対してはもはや最低限のことしかしないと、この風潮がアメリカ国内でさらに顕著になったということです。(日本もそうなりつつあるが)
アメリカから入って来たと言われるFIREという言葉が日本でも一般化しつつあります。
「あくせく正社員で必死に働くのはバカバカしい。投資でしっかり儲けて早く退職して優雅にゆったり暮らそう」
という類の言葉がすっかり魔力を持ってしまった時代です。
そういう私もFIRE後もこうして働いてはいますが、確かに正社員という責任の重いハードな仕事ではなく、アルバイト・パートという軽めな最低限の仕事を選んでいるという意味で、この風潮にはしっかり乗っかっています。
「投資の方が稼げることがデータで明白になってしまうと、働くモチベーションが大きく削がれてしまう!」
この現実問題は世界共通であり、ピケティが大昔の分かり得る膨大な蓄積データを丹念に調べてきた中で、賃金の成長率が資本の成長率を上回ったことは一度も無かったという現実が史実上にも明らかになったということです。この本で資本主義の構造的な見えづらかった欠陥が巷にあぶり出されてしまったといってもいいでしょう。
「禁断の果実」の味をピケティが全世界にデータ公開したわけです。そういう意味では資本主義にも成長の限界と制度設計の限界が最初からあり、これをそう遠くないいつか、そろそろ何かしらの力を発動しないといけない時代に入ってきているのは間違いなさそうです。
労働者は投資家に利益で勝てないのは事実ですが、では、全ての投資家が投資でいい思いをできるかと言ったら答えは、ノー。ある一定以上の資産規模を蓄えた選ばれしエリート層や富裕層のみが成長の恩恵を常に受けられると聞いたならば、ウォール街でデモが起こっても確かに不思議ではありませんね。
労働者で働いていると知らないほうがいいことはたくさんありますが、こうして不都合な事実を知ってしまった以上は、それをベースに未来の人生設計をしていかざるを得なくなりました。(もしくはこの価値観から外れた生き方を目指すか?)
格差の解消や社会の平等化というものは口では簡単に言えますが、実現させるとしたら人類が滅亡するまで地球上には存在しない空想世界なのかもしれません。