39話 公園で謎の健康おじさん現る!ヨシダさんと奇妙な健康対決!
初夏の公園は、今日も空気まで重たく感じるような、ムシムシとした湿度に包まれていた。アスファルトからは陽炎が立ち上り、座っているだけでじんわり汗ばんでくる。
「あ~、ジメジメするなあ…ってか、兄さん、この湿気、霊体にはあんま良くないねん。」チヨは自分の腕をさすりながら、分かりやすい不快感を顔に浮かべた。(って、霊体にも湿気って関係あるんや…ほんま、霊界も大変やわ)「なんかね、体がベタつくっていうか、フワフワ浮きにくいっていうか…例えるなら、そう!湿気でしなしなになった海苔みたいな感じ?」
(霊体が湿気でしなしな海苔…?初めて聞いたな。データにはない新しい情報だ)タカシは、チヨのユニークすぎる霊体コンディション報告をひっそり記録した。
ヨシダさんは?当然、今日の特等席であるいつものベンチで、お昼寝を満喫している。持参した小さな扇子を、時折パタ、パタとゆっくり動かしながら、深い眠りの海を漂っているようだ。口元が少し緩んでいて、「う~ん、せんべい…」と寝言が漏れる。
「ヨシダさ~ん、暑いね~!なんか今日、公園まで来るだけで汗かいちゃった!アイス食べたいね~!」ハナちゃんが、顔を赤らめながらヨシダさんの周りをウロウロ、足元をチョロチョロ。
「ふむ…アイスも良いが…この時期は麦茶も捨てがたい…キンと冷えたやつを…コップになみなみと…って、ZZZ…」ヨシダさん、アイスと麦茶の狭間で完全に夢の世界へ旅立った。扇子の動きもピタリと止まる。
そんな、いつもの、のんびりした公園の風景を切り裂くように、突如として野太い声が響き渡った!
「おおおぉぉぉぉ!!感じるぅぅぅぅ!!大地と空と木々!そして遥かなる宇宙のエネルギーが、私の体に流れ込むぅぅぅぅ!!!」
その声の主は、公園の真ん中に仁王立ちした、上下真っ赤なスウェット姿の中年男性だった。彼は、空に向かって両手を突き出し、なぜか片足立ちになっている。そして、体がフニャフニャと不安定に揺れている。まるで、地面から生えたばかりの変なキノコが風に揺れているみたいだ。
「なんですあの人!?なんか変な踊りしてる!しかも、すっごい汗かいてるよ!」ハナちゃんが指差す。確かに、真っ赤なスウェットが汗で張り付いて、さらに変な感じになっている。
タカシのモニターには、男性の周りを囲むようにいくつかの項目が表示された。(…対象人物…確認…体表面温度…急上昇…発声音量…基準値超過…発せられるという「エネルギー」…感知…しかし…数値…ゼロ…やはり…)
(…エネルギー…感知…不能…偽物…か…?)タカシは静かに分析を続ける。
チヨは腕組みして、眉間に深いシワを寄せている。(なんやあのおっちゃん…痛々しいにも程があるわ…)「霊界にもああいう痛いおっちゃんおるで。『霊界エネルギーを感じろ!』とか言うて、変なポーズするんや。最終的に『ワシの霊力は高すぎて、お前らには感知できへんのじゃ!』とか言うて、周りの霊から白い目で見られてるねん。」
おっちゃんはそのまま、ヨシダさんのベンチのすぐ近くまで、フニャフニャした片足立ちのまま移動してきて、再びピタリと止まった。そして、ヨシダさんに向かって、講演会のように力強く語り出した。
「おやおや、そちらのおじいさん!公園のベンチで寝ているだけでは健康になれませんぞ!筋肉は衰え、血液は滞り、魂の輝きも失われていく一方だ!だがしかし!この『宇宙吸収健康法』はだね!公園の木々から発せられる力強い生命力と、頭上から惜しみなく降り注ぐ宇宙エネルギーを、同時に体内にダイレクトに取り込む究極のメソッドなのだ!」
「うるさいのう…ぐぅ…」ヨシダさん、眉間に深いシワを寄せ、苦しそうに寝返りを打つ。どうやら、おっちゃんの声で快適な眠りを邪魔されたらしい。完全に不機嫌モードだ。
おっちゃんは、ヨシダさんの不機嫌に気づかず、ますます熱心に話しかけてきた。「おお、目が覚めましたかな!これは良い兆候!私のエネルギーがあなたの眠りを打ち破ったのです!さあ、あなたも宇宙エネルギーを取り入れて、細胞レベルで若返り、明日の朝には少年のような活力を手に入れましょうぞ!」
ヨシダさん、ゆっくりと、しかし確実にムクッと起き上がった。目は完全に覚めているが、表情は渋い。「何を…」ヨシダさんは扇子をバッと広げ、パタパタと勢いよく振り始める。「何を言うか!ワシはこれでええんじゃ!日光浴でビタミンDを生成し、この扇子で血行促進!そして適度な睡眠で疲労回復!これこそ自然と一体になった、体に負担をかけない真の究極健康法じゃわい!」
「ノンノンノン!」おっちゃんは首を横に振る。体がフニャフニャ揺れる。「それでは表面的な健康にしかならない!私のメソッドの方が、体の芯!魂に働きかける!効率がダンチだ!」
「いやいや!ワシの健康法こそ、何より心が安らぐんじゃ!無理な運動など必要ない!心穏やかに過ごす!自然体こそが一番健康的じゃわい!」ヨシダさんは胸をドンと叩く。結構良い音がした。
「心の安らぎだけでは筋肉は衰えます!心臓も肺も弱まる一方!老いは心臓から来るのですよ!私のメソッドで心臓を活性化!」おっちゃんが熱弁する。
「何を!ワシの心臓は元から強いわい!若い頃は山をいくつも越えて…」
「それは昔の話でしょう!今!現在の数値を!」
「数値など要らん!ワシの体を見よ!」
二人とも一歩も引かない。まるで漫才を見ているようだ。タカシのモニターには、二人の心拍数が表示されている。ヨシダさんは安定したまま、おっちゃんはどんどん上がっている。(…ヨシダさん…心拍数…70…平静…おっちゃん…心拍数…130…興奮状態…これは…健康なのか…?)
ハナちゃんはおっちゃんの「宇宙エネルギー吸収」のポーズと、ヨシダさんの「自然体」ポーズ(ただベンチに座ってるだけ)を交互に真似てみた。「宇宙エネルギー!えい!えい!」「自然体!ふ~…」なんだか、どんどん変な動きになってきて、最終的には両手を広げて棒立ちになり、動かなくなった。
チヨはそれを見て、ついに腹を抱えて大爆笑。「ぶははは!ハナちゃん!それ完全に止まってるだけやん!おっちゃんのも大概やけど!って、兄さん!あの二人の消費カロリー、データで出して!恥ずかしい数値晒したって!」
タカシのモニターに、二人の消費カロリー予測値が表示される。(…ヨシダさん…消費カロリー…ほぼゼロ…睡眠時と変わらず…おっちゃん…消費カロリー…散歩以下…)
(チヨ。データによると、ヨシダさんの消費カロリーは睡眠時とほぼ同じ。おっちゃんは…散歩以下だ)タカシは冷静に、しかしモニターの数字に内心で若干引いている。
「なんやて!消費カロリー、散歩以下!?あんなに変な動きしてんのに!?全然効率的ちゃうやん!っていうか、おっちゃん!霊界のおっちゃんみたいに、動いてるつもりになってるだけちゃうんか!?」チヨ、タカシのデータに後押しされて、おっちゃんに特大ツッコミをお見舞い!
おっちゃん、タカシのモニターを見て固まる。目に映るのは、自分が信じる「宇宙吸収健康法」で消費したはずの、絶望的なほど低い消費カロリーの数値。
「な、なんだと!?この数値は間違っている!私の宇宙エネルギーは数値化できない特殊なものなんだ!この自販機、ポンコツか!?」
「いやいや、おじさん、運動してるなら最低限消費カロリーは出るはずなんやけどな?って、タカシ兄さんはポンコツちゃうわ!高性能や!ポンコツはおっちゃんの健康法や!」チヨはタカシを庇いながら、おっちゃんに反論。
「黙りなさい!君のような若い娘にはこの深遠なメソッドは理解できまい!」おっちゃんはチヨが見えないので、タカシに向かって怒鳴った。
「って、あんたに見えてへんうちは娘ちゃうわ!幽霊や!って、自販機に説教してどうすんねん!あんたの話、霊界のしょーもないおっさんの話より意味不明や!」チヨ、さらにボルテージMAX!
「ふん、わけのわからん奴じゃわい!」ヨシダさんも、おっちゃんの低い消費カロリーデータを見て、自分の勝利を確信したようだ。ふたたび扇子をパタパタ。「ワシの自然体健康法こそ至高!さあ、ワシは昼寝に戻るぞ!」
「待ちなさい!昼寝など言語道断!」
二人とも一歩も引かない。まるで終わらない相撲だ。ハナちゃんはまだ棒立ちポーズで固まっている。
「あーもう!見てられへん!どっちもどっちや!ってか、兄さん、あの二人、どっちが長生きするかのデータ、ポンと出してスッキリさせたって!」チヨがタカシに無茶ぶりパート2。
タカシは困った。(だから、人間の寿命予測なんて無理だってば…っていうか、予測できたとしても、こんな状況で出したらさらに混乱するだけだろ…)
(予測不能。個体差、環境、運…要因が多すぎる。データ不足だ…頼むから無茶言わないでくれ…)タカシは心の声で懇願しつつ、正直に答える。
「なんや、使えへんなあ…」チヨはガッカリ。
結局、健康おじさんは「ふん!凡人には理解できまい!」と捨て台詞を残し、汗だくの真っ赤なスウェットを揺らしながら、次の宇宙エネルギー吸収スポットを探すべく、フニャフニャした動きで公園の奥へ消えていった。ヨシダさんは「ふん、わけのわからん奴じゃわい」と鼻を鳴らし、扇子を顔に当てて、再びベンチで気持ちよさそうに眠りについた。
「なんか変なおじさんだったねー!宇宙エネルギー、難しかったー!」ハナちゃんは、ようやく棒立ちポーズを解除し、けろっとしてる。
「ほんまや。霊界のおっちゃんの方がまだマシやったわ。ってか、霊界にも宇宙エネルギーってあるんかな?今度調べとこ。」チヨは何か新しい疑問を見つけたようだ。
タカシは、健康おじさんから謎のエネルギーが出ていなかったデータと、自身のランダム排出機能がまだ治っていないことに頭を悩ませていた。(宇宙エネルギー…本当に存在するのか?それとも、俺のセンサーがイカれてるのか?そして、このランダム排出…次は一体何が出るんだ…?)
公園に、いつもの平和で、ちょっぴりおかしな時間が戻ってきた。そして、タカシは今日もまた、理解不能な人間と、理解不能な自分の機能と向き合うのだった。タカシの受難は、今日も続く。
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40話 只今編集中(しばらくお待ちください)
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