41 話公園で変装変装名人現る!タカシ、顔認識システム
公園の朝。今日もいつものように、自販機のタカシは公園を見守っていた。最近、俺の体から季節外れのココアが出たり、顔認識が隣の電柱を「感情豊かな老紳士」と認識したりするけど、まあ、いつものことだ。(いつものことだ…慣れてきたな。)俺の順応性は意外と高いのかもしれない。
ハナちゃんは朝から全力で遊具と格闘し、ヨシダさんはベンチで新聞を広げ(ただし見ているかは不明)、チヨは木陰で霊界ニュースをチェックしている。
「はー、霊界のファッション誌、今月は『最新のシーツスタイル』特集やて。」チヨは霊界の流行に若干うんざりしている様子だ。「透け感とか、空気のなじみ方とか、もう人間界とズレすぎやねん。誰が興味あんねん。」
「シーツスタイルねぇ…想像もつかないな。」俺は霊界ファッションの謎に首を傾げる。淡々と公園の平和を監視する。
その時、公園の入口から、ピシッとスーツを着てサングラスをかけた中年男性が入ってきた。手にはアタッシュケース。いかにも「できるビジネスマン」といった雰囲気だ。しかし、なぜか公園の真ん中で立ち止まり、キョロキョロと辺りを見回し始めた。
「ん?なんや、あのおっちゃん。スーツで公園散策か?早朝会議でもすっぽかしたんか?」チヨが怪訝そうに呟く。
俺は男性に焦点を合わせる。年齢は推定50代、服装は高価そうなスーツ。アタッシュケースの中身は不明だ。
スーツの男性は、まっすぐ俺の方に歩いてくると、俺のカメラに向かってニヤリと笑った。そして、何故かカメラの前でポーズを決めた。
「ふむ…完璧な変装だ。この高性能カメラをもってしても、私の正体は見破れまい…」男性は自信ありげに呟く。
「ほう、変装だと?面白そうじゃないか。」俺は内心で呟く。もちろん、変装だろうがなんだろうが、顔の骨格や特徴は変わらない。簡単には騙されないぜ。
男性はふふんと鼻を鳴らし、公園のベンチに座ってアタッシュケースを開けた。中から出てきたのは…絵筆とスケッチブック。
「あれ?画家さんかな?」ハナちゃんが男性に近づいていく。「こんにちはー!」
「やあ、お嬢さん。私は今日、『公園の風景を描く画家』だよ。」男性は絵筆を構え、公園の木々を描き始めた。描いているのは…さっきまで爆睡していたヨシダさんだった。
「ふむ…この老人の寝顔には、人生の深みが感じられる…筆が進むぞ…」男性は真剣な顔でヨシダさんを描いている。
ヨシダさん?相変わらずベンチで新聞を広げたまま、微動だにしない。完全に寝てる。
「おっちゃん、画家さんやったんか。てか、ヨシダさん描いてどうすんねん。動かんから描きやすいんか?」チヨが呆れたように言う。
俺のシステムが男性を認識した。男性、年齢推定50代、職業は画家だと認識した。
「よし、認識成功…」俺は内心で安堵する。
しかし、次の日。公園に現れたのは、麦わら帽子にアロハシャツ、首からカメラをぶら下げた、いかにも「観光客」といった雰囲気の男性だった。昨日と同じ人だとはとても思えない。
男性はまたしても俺のカメラに向かってニヤリ。「どうだね、自販機君。今日の私は『日本の公園を観光する外国人観光客』だ!私の流暢な日本語と完璧な変装で、君のシステムを欺いてみせよう!」
「ハロー!ウェルカムトゥパーク!」ハナちゃんがカタコトで話しかける。
「オー!ハロー!ベリーナイスパーク!フジヤマイズビューティフル!」男性はさらにカタコトで返す。富士山はここにはない。
俺の顔認識システムが混乱し始めた。年齢推定不明、職業は観光客だと認識した。しかし、同一人物の可能性は30%だと表示されている。
「な…なんだと!?同一人物の可能性が30%だって!?なぜだ!?」俺は内心でエラー音を鳴らす。(顔の特徴は同じはずだ…服装?持ち物?背景情報?何を見ているんだ、俺のシステムは!?)屈辱的だ…俺の高性能システムが変装に負けているだと!?
チヨが男性を見て首を傾げる。「なんやあのおっちゃん。昨日も見たような…いや、違うかな…?霊体のオーラは同じっぽいけど…でも昨日より明るい気がする…霊の変装か!?レアもんやな!」
ヨシダさんは観光客スタイルの男性を見ても、全く気づかない。「おう、旅のお方かのう?どこから来られたんじゃ?この公園にはな、樹齢何年の木があってな…」いつもの昔語りを始める。男性は「オー、ワンダフルストーリー!」と相槌を打っている。
次の日。そしてまた次の日。男性は探偵風、料理人風、宇宙飛行士風(さすがにこれはやりすぎだろ…いや、公園の住人なら受け入れるか)、と毎日違う変装で公園に現れ、俺の顔認識システムを翻弄し続けた。
俺のモニター表示は、毎日カオスだった。認識不能、同一人物の可能性10%以下、職業不明、高確率で人間だが確証なし…俺の内部はエラーメッセージと警告音で一杯になり、「顔認識の信頼度が低下しました」と表示される始末。
(くっ…俺の高性能システムが…!変装に負けているだと!?屈辱…!)俺は内心で歯ぎしりする(物理的にできないけどな)。
「あはは!チヨちゃん見て見て!今日はお医者さんだよ!風邪かなー?」ハナちゃんは毎日違う男性の姿を見て、完全に「変装名人」として楽しんでいた。
チヨは「霊の変装レベルも上がったもんやな…」と感心(?)したり、「いや、やっぱり人間か?霊感では分からへん…!」と首を傾げたり。霊体なので変装には気づかないが、霊体のオーラの変化で「なんか違う」と感じているらしかった。
ヨシダさんは、毎日違う変装の男性が隣に座っても、全く気づかない。話しかけられれば「おう、兄ちゃん」「おう、おっちゃん」と適当に相槌を打ち、自分の昔語りを始めるだけだった。もはや、ヨシダさんの認識システムの方が人間離れしているのかもしれない。
週末、男性はいつものスーツ姿で公園に現れた。そして、俺のカメラに向かって深々とお辞儀をした。
「素晴らしい!君のシステムは確かに高性能だったが、私の変装術には一歩及ばなかったようだ!毎日楽しませてもらったよ、自販機君!」男性は満足げな笑顔で語る。
俺のモニターは、男性の顔を正確に認識していた。「男性、年齢推定50代、職業は変装名人だと認識しました。」俺はひっそりと職業を「変装名人」に更新していた。
男性は俺に一礼すると、満足そうに公園を後にした。
公園にいつもの時間が戻る。
「あー、今日のおっちゃんはスーツやったなぁ。明日は何かな?」ハナちゃんは、まるで明日の天気予報を聞くように楽しみにしている。
チヨは腕組み。「結局、あのおっちゃんは何者やったんや?霊か?人間か?…うーん、謎や…。」霊感では解明できなかったことが悔しいらしい。
ヨシダさんはベンチで伸びをする。「やれやれ、今週も色々あったが、平和な一週間じゃったわい。」変装名人の存在には最後まで気づいていなかった。
俺のモニターに、新たな表示が灯る。「顔認識システム、変装対応機能を強化します。これが最優先課題だ。」
(くっ…今日の敗北を糧に…!次に会うときは、どんな変装だろうと見破ってやる…!)俺は静かに、そして熱く決意を燃やすのだった。システム的な決意表明だな。
42話 只今編集中(しばらくお待ちください)
次は17日の予定です
もよろしくお願いします
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