忠左衛門とのんびりライフⅡ -20ページ目

公園の主は喋れない


 

45話 公園で忘れん坊の詩人現る!ヨシダさん、記憶力


 

 

今日の公園は、穏やかな陽気に包まれている。ハナちゃんは地面に落ちた桜の花びらを拾い集めて、なにやら楽しそうな工作を始めた。チヨは相変わらずタカシの横で霊界の最新ゴシップをチェック中。「えええ!あの霊界のセレブ夫婦、まさかの泥沼離婚!?…って、人間界と変わらへんなあ、ほんま。」

 

(霊界にもゴシップがあるんだな。情報網が気になる…)タカシは内心で感心(?)する。

 

ヨシダさんは?いつものベンチで、なにやら難しい顔をして空を見上げている。「うむむ…今日の空は…なんと表現すれば良いかのう…」

 

そこへ、ふらり、と一人の白髪の老紳士がやってきた。手には使い込まれたノートとペンを持っている。彼は公園の景色を眺めると、時折ペンを走らせ、何かを書き留めている。

 

「ふむ…あの柳の緑は…まるで…そうだ、春の溜息のようだ…」老紳士はそう呟くと、満足そうに頷いた。しかし、数歩歩いたかと思ったら、「あれ?さっきの…なんと表現したかのう…春の…なんだっけ…?」と頭を抱えてしまった。

 

「あの人、なんかブツブツ言ってるで。」チヨが老紳士を指さす。

「詩人じゃろうか?言葉を紡いでおるようじゃ。」ヨシダさんは興味深そうに老紳士を見つめる。

 

老紳士はまた別の景色に目を留めた。「あの鳩の歩き方は…まるで…そうだ、哲学者の散歩のようだ…」再び満足げに頷く。そして、また数歩。「…あれ?鳩の…なんだっけ?哲学者の…なんだっけ…?」

 

ヨシダさんは、老紳士の様子を見て、ピンと来たようだ。「これは…もしや、物忘れが激しい詩人の方じゃな?」

 

「物忘れの詩人?そんなんおるんや?」チヨは不思議そうな顔をする。

「昔、ワシの村にもおったんじゃ。ええ詩を作るんじゃが、作ったそばから忘れてしもうてな。『昨日の傑作は今日のゴミ』が口癖でな…」ヨシダさんは懐かしそうに語る。

 

その時、老紳士が困った顔でヨシダさんに話しかけてきた。「あの…もしよろしければ…先ほど、何か良い言葉が浮かんできたのですが…どうしても思い出せなくて…何か…空の様子を…何か…」

ヨシダさんは胸を張って言った。「ほう、それはお困りじゃのう!ワシは記憶力には自信があってな!さっきの空は…ええと…まるで…あれだ!…夕焼け空のように…って、今日は昼じゃった!」

 

「いえ、夕焼けではありませんでした…もっと…こう…青くて…」老紳士は困惑する。

「青い空か…青い空は…そうじゃ!ワシの初恋の人の瞳の色じゃった!…って、どんな色じゃったかのう…もう忘れてしもうたわ!」ヨシダさんも自分の記憶があやふやになってきた。

 

「あんたら二人とも、アテにならへんなあ…」チヨは呆れ顔。

 

ハナちゃんが、拾った桜の花びらを老紳士に見せた。「おじいちゃん!この花びらみたいな空の色?」

 

老紳士は花びらを見て、「ああ!そうです!そうです!まるで…桜の…桜の…なんだっけ…?」

ヨシダさんが割って入る。「桜か!桜といえば…ワシが若い頃、花見で一杯やって…その時の桜の色は…ピンクじゃった!…って、それが何か関係あるかのう?」

 

「誰も聞いてへんわ!」チヨがヨシダさんにツッコミ。

 

タカシは、老紳士とヨシダさんの会話を記録し、分析を始めた。(…老紳士…直前記憶の想起困難…ヨシダさん…長期記憶との混同…興味深いデータだ…)

 

老紳士は再び頭を抱えた。「ああ、思い出せない…せっかくの良い言葉が…」

ヨシダさんは、何とか老紳士の役に立ちたいと思った。「うむむ…ワシが代わりに覚えよう!お主が次に思いついた言葉を、ワシが絶対に忘れないでいてやる!」

 

老紳士は半信半疑ながらも、再び空を見上げて呟いた。「あの雲の流れは…まるで…そうだ、白い鯨の群れのようだ…」

 

ヨシダさんは真剣な表情で頷く。「白い…鯨の…群れじゃな!よし、覚えたぞ!」

しかし、次の瞬間。「…白い…魚の…なんだっけ…?」ヨシダさんも早くも記憶が曖昧になってきた。

 

「早っ!もう忘れてるやん!」チヨが目を丸くする。

 

「いやいや!鯨じゃ!白い…ええと…海の…あれじゃ!」ヨシダさんも必死に思い出そうとするが、言葉が出てこない。

 

ハナちゃんが「クジラさん!大きくて潮吹くやつ!」とジェスチャー付きで教える。

 

「そうじゃ!クジラじゃ!…って、さっき何の話をしておったかのう?」ヨシダさんはすっかり忘れてしまった。

 

老紳士は苦笑い。「ありがとうございます…お気持ちは嬉しいのですが…」

 

タカシは、老紳士の言葉とヨシダさんの言葉をモニターに並べて表示する。(…老紳士:白い鯨の群れ…ヨシダ:白い魚の…海の…クジラ…関連性は認識できるが…正確な想起には至らず…)

チヨはタカシのモニターを見て、「兄さん、ヨシダさんの記憶力、ポンコツすぎひん?ってか、人のこと笑えへんけど、うちもさっきのゴシップ、誰と誰の離婚やったか忘れかけてるわ!」

 

老紳士は諦めずに、また公園の別の景色に目を向けた。「あの風に揺れる木の葉は…まるで…そうだ、緑の…緑の…なんだっけ…?」

 

ヨシダさんが自信満々に割って入る。「緑の!緑といえば!ワシの盆栽の葉の色じゃ!鮮やかな緑で…って、あれ?紅葉の盆栽もあったような…」

 

「もう、めちゃくちゃや!」チヨが頭を抱える。

 

ハナちゃんは、拾った桜の花びらを風に吹かせてみた。「風さん、おじいちゃんの言葉、運んで来て!」

 

老紳士はハナちゃんの様子を見て、微笑んだ。「ありがとう、お嬢さん。あなたの優しい気持ちは、ちゃんと届きましたよ。」

 

結局、老紳士は素晴らしい詩の言葉を思い出すことはできなかったが、ヨシダさんやハナちゃんとの交流を通して、どこか心が温まったようだった。「まあ、言葉は消えても、感じた美しさは心に残りますからね」と穏やかに笑い、公園を後にした。

 

ヨシダさんは、老紳士を見送りながら、「ええ人じゃったなあ…確か、何か頼まれておったような…なんじゃったかのう?」と首を傾げている。

 

チヨはタカシに話しかける。(なんか、もどかしいけど、ええ話やったなあ。ヨシダさんも、もうちょっと記憶力あれば完璧やったんやけどな!)

 

(ヨシダさんの記憶力も個性だ。それに、一生懸命思い出そうとしていたじゃないか)タカシはそう答える。(人間の記憶って、本当に不思議だな。感情と結びついたり、全く関係ないことで連想したり…)

 

ハナちゃんは、風に舞う桜の花びらを追いかけて、楽しそうに走り回っている。公園には、忘れっぽい詩人と、忘れん坊のヨシダさんの、ちょっぴり不思議で温かい記憶が、春の風に乗って漂っていた。そして、タカシは今日も、人間と記憶の奥深さに思いを馳せるのだった。

 

 

45話 只今編集中(しばらくお待ちください)

 

忠左衛門とのんびりライフ

もよろしくお願いします

 

 

 

 

 

 

 

1話 俺はなに?俺はどこ?なんじゃこりゃー!

2話 公園の噂と、困ったじいさん

3話 消えたお弁当と、爆笑!勘違い大作

4話 雨上がりの虹と、見つからない宝物

5話 自動販売機、意識あり

6話 熱中症にご用心!自販機、緊急事態発生!

7話 動けない俺と爆笑!恋のキューピッド大作戦

8話 夜の公園と、爆笑!謎の夜間徘徊者

9話 ボールはどこへ消えた!?自販機探偵、華麗なる(迷)推理!

10話 あの頃へ…? タイムスリップ大作戦!…って、?

11話 謎の箱、現る!…一体何が入ってるんだ!? 爆弾…じゃ

12話 星空からの訪問者と、言葉の壁(1)

13話 星空からの訪問者と、言葉の壁(2)

14話 いつもの公園と、現れた小さな芸術家

15話 夜の響きと、心に響くリズムの巻

16話  公園に現れた、色彩の記憶

17話 犬になった親友と、自販機の受難と友情?

18話 自販機パニックと、機械オタクの来襲

19話 自販機せんせい、勘違いとジュースの嵐、そして伝説

20話 春爛漫!自販機せんせい、桜の下の奇跡

21話 初夏爛漫!鬼ごっこと秘密の花園、そして自販機の辛口

22話 自販機せんせい、ワールドワイドデビュー!?

23話 キクエさんの忘れ物~自販機、まさかの再会!?~

24話 公園に現れたタイムトラベラー~自販機

25話 公園の秘密の花園~自販機、まさかの植物と会話!?~

26話 公園と夢見るアイドル~自販機、少女の夢を応援する!?

27話 公園の都市伝説~自販機、少女と怪奇現象!?~

28話 公園の事件簿~自販機と霊の迷コンビ、事件に挑む!?

29話 公園の宝探しと、残された謎 -

30話  井戸が誘う、時空迷宮!~自販機と幽霊、過去へのダイブ!?~

31話 公園の新しい住人~未知なる植物踊る〇〇草、マジかー

32話 ヨシダさんの秘密の趣味~盆栽と猫と懐かしのメロディー

33話 チヨ、霊力チャージ!~公園で迷子の霊を探せ!~

34話 ラジオ体操は替え歌合戦!?~公園の夏休み大騒動!~

35話 公園 de 大喜利花見!~自販機と霊の迷コンビ、春風

36話 公園と家出少女と心の虹!

37話 公園でスズメバチ大パニック!笑撃の巣退治作戦

38話 公園でラジコン大暴走!?自販機、まさかの電波

39話 公園で謎の健康おじさん現る!ヨシダさんと奇妙な健康対決!

40話 公園で失われた「運命のタオル」を探せ!チヨ、霊感迷走

41話 公園で変装変装名人現る!タカシ、顔認識システム

42話 公園で未来予知少年?ハナちゃん、予言に振り回

43話 公園で完璧主義の清掃員とチヨの「散らかし」霊?