45話 公園で忘れん坊の詩人現る!ヨシダさん、記憶力
今日の公園は、穏やかな陽気に包まれている。ハナちゃんは地面に落ちた桜の花びらを拾い集めて、なにやら楽しそうな工作を始めた。チヨは相変わらずタカシの横で霊界の最新ゴシップをチェック中。「えええ!あの霊界のセレブ夫婦、まさかの泥沼離婚!?…って、人間界と変わらへんなあ、ほんま。」
(霊界にもゴシップがあるんだな。情報網が気になる…)タカシは内心で感心(?)する。
ヨシダさんは?いつものベンチで、なにやら難しい顔をして空を見上げている。「うむむ…今日の空は…なんと表現すれば良いかのう…」
そこへ、ふらり、と一人の白髪の老紳士がやってきた。手には使い込まれたノートとペンを持っている。彼は公園の景色を眺めると、時折ペンを走らせ、何かを書き留めている。
「ふむ…あの柳の緑は…まるで…そうだ、春の溜息のようだ…」老紳士はそう呟くと、満足そうに頷いた。しかし、数歩歩いたかと思ったら、「あれ?さっきの…なんと表現したかのう…春の…なんだっけ…?」と頭を抱えてしまった。
「あの人、なんかブツブツ言ってるで。」チヨが老紳士を指さす。
「詩人じゃろうか?言葉を紡いでおるようじゃ。」ヨシダさんは興味深そうに老紳士を見つめる。
老紳士はまた別の景色に目を留めた。「あの鳩の歩き方は…まるで…そうだ、哲学者の散歩のようだ…」再び満足げに頷く。そして、また数歩。「…あれ?鳩の…なんだっけ?哲学者の…なんだっけ…?」
ヨシダさんは、老紳士の様子を見て、ピンと来たようだ。「これは…もしや、物忘れが激しい詩人の方じゃな?」
「物忘れの詩人?そんなんおるんや?」チヨは不思議そうな顔をする。
「昔、ワシの村にもおったんじゃ。ええ詩を作るんじゃが、作ったそばから忘れてしもうてな。『昨日の傑作は今日のゴミ』が口癖でな…」ヨシダさんは懐かしそうに語る。
その時、老紳士が困った顔でヨシダさんに話しかけてきた。「あの…もしよろしければ…先ほど、何か良い言葉が浮かんできたのですが…どうしても思い出せなくて…何か…空の様子を…何か…」
ヨシダさんは胸を張って言った。「ほう、それはお困りじゃのう!ワシは記憶力には自信があってな!さっきの空は…ええと…まるで…あれだ!…夕焼け空のように…って、今日は昼じゃった!」
「いえ、夕焼けではありませんでした…もっと…こう…青くて…」老紳士は困惑する。
「青い空か…青い空は…そうじゃ!ワシの初恋の人の瞳の色じゃった!…って、どんな色じゃったかのう…もう忘れてしもうたわ!」ヨシダさんも自分の記憶があやふやになってきた。
「あんたら二人とも、アテにならへんなあ…」チヨは呆れ顔。
ハナちゃんが、拾った桜の花びらを老紳士に見せた。「おじいちゃん!この花びらみたいな空の色?」
老紳士は花びらを見て、「ああ!そうです!そうです!まるで…桜の…桜の…なんだっけ…?」
ヨシダさんが割って入る。「桜か!桜といえば…ワシが若い頃、花見で一杯やって…その時の桜の色は…ピンクじゃった!…って、それが何か関係あるかのう?」
「誰も聞いてへんわ!」チヨがヨシダさんにツッコミ。
タカシは、老紳士とヨシダさんの会話を記録し、分析を始めた。(…老紳士…直前記憶の想起困難…ヨシダさん…長期記憶との混同…興味深いデータだ…)
老紳士は再び頭を抱えた。「ああ、思い出せない…せっかくの良い言葉が…」
ヨシダさんは、何とか老紳士の役に立ちたいと思った。「うむむ…ワシが代わりに覚えよう!お主が次に思いついた言葉を、ワシが絶対に忘れないでいてやる!」
老紳士は半信半疑ながらも、再び空を見上げて呟いた。「あの雲の流れは…まるで…そうだ、白い鯨の群れのようだ…」
ヨシダさんは真剣な表情で頷く。「白い…鯨の…群れじゃな!よし、覚えたぞ!」
しかし、次の瞬間。「…白い…魚の…なんだっけ…?」ヨシダさんも早くも記憶が曖昧になってきた。
「早っ!もう忘れてるやん!」チヨが目を丸くする。
「いやいや!鯨じゃ!白い…ええと…海の…あれじゃ!」ヨシダさんも必死に思い出そうとするが、言葉が出てこない。
ハナちゃんが「クジラさん!大きくて潮吹くやつ!」とジェスチャー付きで教える。
「そうじゃ!クジラじゃ!…って、さっき何の話をしておったかのう?」ヨシダさんはすっかり忘れてしまった。
老紳士は苦笑い。「ありがとうございます…お気持ちは嬉しいのですが…」
タカシは、老紳士の言葉とヨシダさんの言葉をモニターに並べて表示する。(…老紳士:白い鯨の群れ…ヨシダ:白い魚の…海の…クジラ…関連性は認識できるが…正確な想起には至らず…)
チヨはタカシのモニターを見て、「兄さん、ヨシダさんの記憶力、ポンコツすぎひん?ってか、人のこと笑えへんけど、うちもさっきのゴシップ、誰と誰の離婚やったか忘れかけてるわ!」
老紳士は諦めずに、また公園の別の景色に目を向けた。「あの風に揺れる木の葉は…まるで…そうだ、緑の…緑の…なんだっけ…?」
ヨシダさんが自信満々に割って入る。「緑の!緑といえば!ワシの盆栽の葉の色じゃ!鮮やかな緑で…って、あれ?紅葉の盆栽もあったような…」
「もう、めちゃくちゃや!」チヨが頭を抱える。
ハナちゃんは、拾った桜の花びらを風に吹かせてみた。「風さん、おじいちゃんの言葉、運んで来て!」
老紳士はハナちゃんの様子を見て、微笑んだ。「ありがとう、お嬢さん。あなたの優しい気持ちは、ちゃんと届きましたよ。」
結局、老紳士は素晴らしい詩の言葉を思い出すことはできなかったが、ヨシダさんやハナちゃんとの交流を通して、どこか心が温まったようだった。「まあ、言葉は消えても、感じた美しさは心に残りますからね」と穏やかに笑い、公園を後にした。
ヨシダさんは、老紳士を見送りながら、「ええ人じゃったなあ…確か、何か頼まれておったような…なんじゃったかのう?」と首を傾げている。
チヨはタカシに話しかける。(なんか、もどかしいけど、ええ話やったなあ。ヨシダさんも、もうちょっと記憶力あれば完璧やったんやけどな!)
(ヨシダさんの記憶力も個性だ。それに、一生懸命思い出そうとしていたじゃないか)タカシはそう答える。(人間の記憶って、本当に不思議だな。感情と結びついたり、全く関係ないことで連想したり…)
ハナちゃんは、風に舞う桜の花びらを追いかけて、楽しそうに走り回っている。公園には、忘れっぽい詩人と、忘れん坊のヨシダさんの、ちょっぴり不思議で温かい記憶が、春の風に乗って漂っていた。そして、タカシは今日も、人間と記憶の奥深さに思いを馳せるのだった。
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