自民党若手議員の提言 | 秋山のブログ

秋山のブログ

ブログの説明を入力します。

以前から正しい貨幣の理解が国会議員の中で広まらず、まんまと財務官僚の詭弁に騙される議員が多いことを嘆かわしく思っていた。安藤裕衆議院議員や、西田昌司参議院議員などMMTを理解している議員がいることはもちろん知っていたが、42名の議員が提言に参加したというのは相当明るい状況である。(その後100名以上の自民党議員が減税を主張し始めた)

 

 

提言を引用しておこう。

「令和恐慌」回避のための30兆円規模の補正予算編成に関する提言

  1. 30兆円規模の補正予算を編成し、財源には躊躇なく国債を発行してそれを充てること。なお、2025年のプライマリーバランス黒字化目標は当分の間延期すること。
  2. 被雇用者に対しては十分な休業補償をするとともに、事業者、特に中小企業及び小規模事業者(個人事業主を含む)に対しては、失われた粗利を100%補償する施策を講ずること(特別融資だけでは不十分)。安心して休業できることは、有効な防疫対策にもなる。
  3. 消費税は当分の間軽減税率を0%とし、全品目軽減税率を適用すること(消費税法の停止でも可)。なお、消費税の減税のタイミングとして6月を目指し、各種調整を速やかに行うこと。
  4. 従来から存在するあらゆる制度を活用し、資金繰り支援等企業の廃業防止、国民の不安を払拭するために全力で取り組むこと。
  5. 国土強靭化、教育・科学技術投資、サプライチェーンの再構築、特定国依存のインバウンドの見直しなど、内需主導型の経済成長を促す政策を検討すること。

 

この内容は素晴らしい。短く簡潔におこなうべきことが全て書かれている。私が、様々な経済学を学び、経済に関して理解してきた内容とも完全に一致する。ここで内容に関して述べてみよう。

 

まず状況から考えてみよう。新型コロナによる需要不足と、消費増税による需要不足は構造が異なる。新型コロナによる需要不足は、政府及び国民の意思による需要の低下だ。もちろん店を閉めているために買えないといった事情もあるだろうが、供給する力自体が失われたわけではなく、国民が消費できる状況になればただちに対応可能である。一方、消費増税による需要の低下は、徐々に起こってくる収入の低下、貧困化を主因としておこったものである(駆け込み需要の反動による低下は観察しやすいがメインではなく、大した問題でもない)。

どちらにせよ需要が低下すれば、供給する側である人、企業にお金が入っていかなくなる。しかしどのような仕事であれ、存在するだけでコストもかかってくるので、需要減が急激であれば急速に、ゆっくりであればゆっくりと、多くの事業が破綻するということになるだろう。一部のエコノミストが、新陳代謝が重要などと企業の破綻を肯定するような意見を述べることもあるが、そこには積み重ねられた来た知識・技術・ノウハウ等が失われる損失も、供給力を得るために設備にかけたコストや時間も計算に入れられていない話でありナンセンスである。企業を破綻から守ることが重要なのだ。社会の移り変わりによって産業が変遷していくのは容認することもできるが(フィルム会社が新型コロナの薬を作ったりすることが理想である)、運転資金の枯渇で企業が潰れるのことを肯定する理由はない。

ここで、企業に融資を受けさせて、倒産を回避させればよいという意見が出てくるかもしれない。しかしそれは現在デフレスパイラルの状況にあることを失念している。デフレの状態であれば平均がほぼゼロもしくはマイナスになるので、全員が(全員がどれだけ努力してもパイの取り合いで必ず負けるものが出る)借りたお金に利子をつけて返すことは不可能である。実体経済を循環する貨幣の量が減少し、さらに需要が減少する状態では、企業や国民の努力に関わらず、お金を借りて事業をおこなうことは難しい。(それでも当面の倒産回避のために現在多くの企業が銀行に殺到している)

成長率が高ければ、金利次第ではあるが借りられるならば借りる方が得であり、返すことも困難ではないので、ある程度自力で企業は生き延びることができただろう。しかし政府は、消費税と言う実体経済から強力にお金を取り上げる制度を導入し、不況にも関わらず増税するなどという馬鹿のなことをおこなった。政府が赤字を膨らまさずに、実体経済に十分な貨幣が存在するためには、民間企業が借り入れをおこなわなくてはいけない。しかし前述のように企業は借り入れて使うことをおこない難いため、それは全く増えない。さらには運よく利益を膨らませられた企業は、内部留保という形、又は富を増やすだけで使わない富裕層への配当という形で、実体経済からお金を失わせている。

このような状態になれば、政府が貨幣を供給すなわち財政赤字を拡大して、経済成長させることにより、企業がお金を借りるような正常な状態に戻すしかないが、戻る前に財政を均衡させようと戻してしまうために、財政赤字を積み増すだけで効果がない。何年も財政出動させてきたが効果がなかったというのは、十分な効果を見る前にやめていたということと、実体経済の貨幣の量からも少なすぎたという二つの理由が、データからも明らかである。また既に示しているように、消費税は景気を冷やす効果の著しい税であり、そのマイナス分を財政出動やその他の減税で補おうとするなら、消費税で得られるお金よりずっと多くのお金を出す必要がある。消費税は少子高齢化の対策として有益どころか財政収支の観点でもマイナスであり、少子高齢化に拍車をかける原因でもある。

 

ということで、まずは破綻回避のための財政支出が必要である。すなわち提言2・4である。そしてデフレを脱却できなければ、繰り返し何度も財政支出が必要になり、経済活動を自然にまかせることも困難になる。デフレを改善せずに、支出したものを回収すれば、すぐに同じような状況になり、倒産や(実質的)失業が増えるからだ。法人税、所得税などは不況により税収が上がらず、消費税で集めればより不況になり必要な支出が増えることになる。それを回避するためのものが提言1・3だ。

 

提言を実行する上で邪魔になるのはプライマリーバランスである。このプライマリーバランスは全く価値の無い考えだ。むしろ有害な考えとすら評価できる。この考えが生まれた背景は、政府と、企業や家計を混同するという誤り、貨幣に対する無理解だろう。貨幣は、政府が供給しなければ存在しないもので、まず政府が使ってから税で集めて経済を調整しているのであって、皆の血税で政府が活動しているわけではない。もっとも間違って理解している国民がほとんどなのが悩ましい。経済に関する国民のリテラシーはまだまだで、通貨の信任なる無意味なトートロジーを財務官僚が堂々と国会で答弁し、それが非難もされないことからも分かる。

さすがに今回は何もしないわけにはいかないだろう。新型コロナから国民を守るために、どうしても需要を強く抑制することになる。不況で自殺する数が増える方が、新型コロナで死ぬ人より多くなる(はっきり言って間違いである)から自粛はあまりするべきでないといった意見が存在するが、全く的を射ていない。重症化した人一人にかかる医療費、労力は半端なものではないし、自動的にその周囲の需要も供給も大きく抑制するため、規制を甘くして重症患者を発生させれば、規制とは一桁以上違った損害を生み出すからだ。需要が抑制された状態でも経済がまわるくらいのお金を政府が供給しなければ、有効な防疫は可能にならず、かえって政府の持ち出しも大きくなるだろう。そうでなくても国民のために存在する政府が有効な政策をおこなわないことは許されない。国民が悲惨な状況になれば、新型コロナのせいで仕方なかったなどと言っても納得されず、いかに野党がダメ過ぎだと言っても、自民党の優位は崩れ、その結果分裂の危機も起こるだろう(どの選挙区でも、消費税減税をうたって公認を外れた元自民党議員が対立候補として立てば、ほぼほぼどの自民党議員でも落選するだろう)。

 

インバウンドに期待したのは、安倍政権の経済政策の最も愚かな点だ。輸出もそうであるが、インバウンドは日本人がサービス等を提供して、外国人が消費をするというものなので、日本人の豊かな生活には繋がらない。実体経済でお金が増えることにはなるが、それらは外国、主に米国政府(成長しているといっても愚かなインフレターゲットのせいで各国の成長率は低い)の借り入れによって創造されたお金がまわりまわって日本に入ってきたもので、日本政府が信用創造しお金を供給してはダメな理由はない。それどころか日本政府がおこなえば、日本人が生産し、日本人が消費するというよい形で経済成長が実現する。トランプ大統領はMMTを推奨しているわけではないが、金利は抑えるべきという考えを持ち、失業率や労働者の賃金上昇を目標とし、財政支出が超過することもやぶさかではないこともあって、米国政府は十分な借金をおこなっているし、もちろんそれでハイパーインフレなど全くおこっていない。当然日本に関しても相当な財政支出をおこなっても何も問題はおこりえない。

また、そもそも新型コロナのために、しばらくインバウンドには期待できないだろう。

提言5はそういったことを示している。

 

安倍総理は結局周りの意見に流されて間違った政策を多々おこなってきたが、今回に関しては理解してこれを採用することを決断してもらいたものだ。現時点で多くの国民がこの内容を理解できなくても、未来永劫間違った理論のままであることは考えられない。採用しなければ、悪夢の某政権と似たり寄ったりであったと後世に評価されることにもなるだろう。