実体経済を循環する貨幣の量 | 秋山のブログ

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ちょっとここで概念の整理をしておきたいと思う。よく使っている実体経済を循環する貨幣の量についてである。MMT等を学んで貨幣の本質を理解しても、その結果何が言えるかというところまで深めなければ意味がないからである。

人々は自ら生産したもの、サービスを売ってお金を得る。そしてそれを別の誰かからものを買う時に支払う。お金は支払ってもなくなるわけではなくグルグルまわっていくというのが、経済の構造である。これをイメージしたものが、上記のシェーマであり、今まで何度も説明してきたことである。これに関してまず異論はないだろう。

 

次に考えるべきことは名目成長である。通常時間とともにより多く、又はより質のよいものを生産できるようになるものであるが、より多く、より高く(品質だけでなく供給力不足や買い占め、コストの上昇で高くなることもしばしばである)買ってもらうことができなければ意味がない。より多く、より高く買ってもらうために、それを支払うためのお金が必要になる。すなわち借り入れがおこなわれ、循環するお金が増えなくてはならないのだ。そしてそれが実現しているの状態が、経済の状態として好ましい。

 

上の図において、循環するお金が増えるのは銀行からの貸し出しだけのようになっているが、あくまでも単純化のためであって、例えば政府が財政政策で支払う(政府は日銀から借りている)とか、貯金を切り崩す(昔誰かが借りたものではある)など考えられる増える方法は何種類もあり、循環する量は変動しているものである。従って実体経済を循環しているお金の量は正確には測定困難だろう。ただし、そのかわりマネーストックが指標としてかなり優秀であり、そのうちの実際の経済活動から長期間離れているお金(例えば投機市場)を考慮すれば代替えとなりうる。

さてその考慮の仕方であるが、借り入れの性質、例えばクレジットカードのように超短期で返すものだとか、債券の信用売りの資金のように他の用途に流用できず期間でまるごと返す必要があるものとかであれば、それが大きな金額であっても影響はないだろう。返済によって貨幣がなくなったわけではなくいずれ戻ってくるとしても、実体経済から長時間離れているなら、その期間に比例して減っているのと同等の効果があるだろう。どのような状況なら戻ってくるのかとか、戻り安さ等も考慮する必要がある(富裕層から戻すことは困難で、インフレは戻す一つの手段である)。

 

実証の結果もかなりこのモデルを裏付けるものである。マネーストックの推移は、物価と強く相関し、名目成長率と強く相関し、賃金の推移とも相関している。そのため経済政策としてマネーストックの調整が考えられた時もあった。しかしその時考えられた方法が、ベースマネーの調整だったために、それは失敗に終わったのである。

もっとも実体経済を循環するお金の量を調整するという考えは、政策を考える上で、現在も有効である。実体経済から常に政府にお金を移行させ、減少させる消費税が、毎回その増税した率に応じて日本の経済成長を長期的に抑制していることはデータでも確認されている。政府が消費税によって集めたお金を実体経済に戻すとしても、戻されるまでの時間の長さが問題になる(他の税にも同様の傾向があるが、レントにかかる税はむしろ戻る時間を短くするだろう)。もちろん政府の負債を返すことに使われるならば、単純に減ってしまうので最悪だ。また金利を上げることで、失業が増え、労働者の収入が減少し、成長が鈍化するのも同じく、高くなった金利によってより多くのお金が失われるからである。金利の場合は、企業がお金を借りて使い、お金を増やすことも抑制する(金利はブレーキであって、金利で企業の投資が決定されるという考えは、実証の結果とは一致しない)。

 

以上のことを理解すれば、現在のデフレの構造を理解できるだろう。貨幣が増え、それが適切な場所で循環しなければ、国民や企業がどれだけ努力をしても、どれだけのイノベーションがおこっても、マクロ的に(または、平均として)売り上げも、収入もあがらず、国民が豊かになることはない。嘗てはお金を増やす一翼をになっていた企業も、以前は名目成長率に比べて金利が低く、需要も増加する状況だからお金を借りていたのであり、その構造が壊れているので、内部留保を貯めるという行動に走る。貨幣の供給者である政府が本来の役割を果たすべきだが、財務省は頑なに昔からの誤った習慣をあらためようとしないといったことである。それが分かれば自ずとすべきことも分かるだろう。