片山さつき氏の詭弁を否定してみる | 秋山のブログ

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ユーチューブを見ていたら、藤井聡氏と片山さつき氏の論戦を紹介するものがあったので視聴してみた。

 

片山氏の詭弁がひどいという話であるが、元財務官僚としては当たり前の立ち振る舞いだろう。馬鹿みたいに見えても言い張ることが、官僚の仕事の一つであるからだ。

典型的な詭弁は、きちんと構造的、数量的な検証をせずに、やれ台風が原因だ等々の考えうる要素を上げただけの主張である。しかし素人にはなかなか判断できないかもしれない。思い出されるのが、最初の消費税増税の際の落ち込み理由としてのアジア通貨危機である。データ上、アジア通貨危機が日本の経済にそこまで大きな影響を与えたという話は完全に否定できる。それにしても、消費増税の度に落ち込み、その度に別の理由が取りざたされ、且つ同じことがおこってもそれらの影響がほとんどないことを見れば、どういうことなのか普通は分かるだろう。

 

今回検討しようと考えたものは少子高齢化が原因であるという考えである。つべの作者も藤井氏もその点については多少歯切れがよくない。そこでそれについて検証しようと思う。

 

片山氏の出したグラフは、以前ここでも紹介したものである。

 

片山氏の主張は、働いていない赤い部分、老人の割合が増えているので、日本は経済成長しない。経済成長しないのは、このためであるということである。

藤井氏が消費増税のたびに成長率が下がっているグラフ(それをみれば、消費税による悪影響が数値的に計算できることも分かるだろう)を出して、消費税の成長を著しく阻害する作用、成長が阻害されているのは消費税のせいであることを説明しているのに対し、片山氏は成長を阻害している(後述するがほとんど関係ない)別の要因を主張しているだけである。つまり何の反論もしていない。

また片山氏は、老人の割合が増えていることに関して、「こういう傾向になるとどこの国でも個人消費は下がる」などと言っているが、現実には高齢化の進んだ他の先進国を見ても、日本のような低成長率にはまったくなっていないのである。すなわちこれは実証に基づかない嘘である。各国の高齢化率と成長率を比べても、高齢化による成長率の鈍化は観察されない。

老人になれば勤労世代に比べて、食べる量も減り、使う必要があるものも少なくなるだろうから(実際は、例えば医療費のように老人の方がお金が必要になるものもある)、消費が減るといった考えもあるかもしれない。しかし現実においてそうなっていない理由は難しくない。ほとんどの国民は欲求のおもむくまま消費しているわけではなく、収入によって多くの欲しいものを我慢している状況なので、結局消費は収入次第だ。そして老人の割合が増えても、勤労世代一人あたりの生産が増え(政府がインバウンド消費を求め、それに対応できていることを考えれば、供給する余力は大きい)、本来は(消費増税のような収入を著明に減らすショックがなければ)収入が増えるはずなので、その増加分を考慮すればトータルでは消費はほとんど減らないということである。

財務省がMMTを否定している資料のP32に少子高齢化を利用し、日本の経済低迷を否定する詭弁が述べられているが、片山氏の主張はそれと同等のものである。P32では1990から2016年の実質GDP、生産人口一人当たりの実質GDP、一人当たりの実質GDPが示され、特に生産年齢人口一人当たりでは他国と変わらない値が示されている。既に述べているように、非生産世代(老人だけでなく、子供もそうであることを留意しておかなければならない)の割合が増えても一人当たりの消費はほとんど変わらないどころか、逆に生産年齢人口一人当たりの生産量は増えるはずなのである。従って、少子高齢化を考慮すれば日本の経済成長は他国と遜色ないという財務省の主張は誤りで、少子高齢化のおかげで数値上は他国に遜色ないように見えるというのが本当のところだ。また、そもそもGDPを利用する時には、留意しなくてはいけないことがたくさんある。輸出やインバウンド消費でかさ上げされたGDPは、内需型の成長に比べ、価値はかなり低いものである。例えば保育所に預けるようになるなど、家事労働がお金に計上されるようになることによるGDPの上昇も、成長とは言えないだろう。しかし実際それらによってかさ上げされたGDPによって、生活の実感では明らかに悪い状態が続いているのに、その原因である経済政策が失敗が有耶無耶にされているのである。

 

事実関係をまとめれば、以下の通りになるだろう。

消費税は、理論的に(取引毎に信用を収縮させるのだから当然といえば当然)経済に重大な悪影響を及ぼす。事実、四度の増税の度に経済は悪化しており、その悪化の度合いも重大である。

財務省及びその御用学者がその度に、様々な消費税以外の理由を持ち出してくるが、それらが景気に消費税並み(リーマンショック並み)の悪影響を与えたという証拠はない。

人口減はGDPにはマイナスに働くが、一人あたりで考えれば影響はほぼなく、消費税程のマイナス効果はない。高齢化は供給の余力がある限り関係がない。

景気を悪化させる要因があるならば尚更、消費税などおこなうべきではない。