中央線で読む新書 -63ページ目

企業を高めるブランド戦略

「素敵です」が懐かしいEXテレビ月曜日レギュラーだった慶応の村田教授の
教え子さんによるブランド戦略論。

特に目新しいものはない。
傘下に多数のブランドを持つ日本ロレアルや、多様な商品を持つ
日本リーバ(現ユニリーバ)、ジョンソンエンドジョンソン、P&Gの
日本での展開などに特化した章を持てば、この手の書物もその価値が
高まろうか。日本で「ブランド戦略」なるものを最も意識的に実践しているのは
これら外資系コングロマリッドであるのだから。

各章の扉におのおの引用文が載せてある。第6章の扉には9.11テロの際に
避難する3000人の社員に向かって発したアメリカンエキスプレスのCEO・
ケネス・シュノールトの言葉が素晴らしい。

アメックスというブランドは我々の本社ビルよりもはるかに現実の
生き生きとした存在であり、そこに価値があります。……
あなたがた社員がアメリカン・エキスプレスなのです

【時間つぶしにはGOOD】 2002年

田中 洋
企業を高めるブランド戦略

世紀の誤審

2003年のパリ世界陸上男子200m決勝のスタートで
なぜ末次慎吾は注意を受けたのかを、皮切りに柔道篠原の
敗戦などを省察していく。

題名からしてマラドーナの「神の手」などの誤審が生んだドラマについて
かと思ったが、そうでなく、誤審を生むメカニズムについての書物であった。

「第七章 マイノリティの悲哀-ラグビーにおける誤審」では
ラグビーワールドカップでは強豪国に有利に笛が吹かれ、
大会のスケジュールもそうなっている(2003年W杯の予選プールを
オーストラリアやニュージーランドは23日間で4試合に対して
日本は16日間、イタリア・トンガは15日間しかなかった)ことを検証。

早稲田大学が勝ち進まないと観客が動員できない事情がある
日本の大学ラグビー選手権も似たようなものであろうか。
(トーナメントの組み方は明らかにそうである。ジャッジについては
わからないが)

【時間つぶしにGOOD】 2004年

生島 淳
世紀の誤審 オリンピックからW杯まで

スポーツ・エージェント

ぎっしりと米国のスポーツエージェントについての小ネタが
書き込まれている。それだけの書籍に過ぎない。

【車窓からの眺めの方がマシ】 2000年

梅田 香子
スポーツ・エージェント―アメリカの巨大産業を操る怪物たち

アドルフ・ヒトラー

ナチスの台頭は、ヒトラーのパーソナリティによるものでなく、
ミュンヘンの事情によるものであったと論証。
よって書名は的確でない。

ヒトラーのユダヤ人説(ユダヤ人であると知って発狂しサディズムに
走った)や近親相姦の子である説、果てはヒトラーの父親が大酒呑みで
あった説などが戦後登場するが、それらを村瀬は否定していく。

そして以下のように論じる。
ヒトラーの性格や事業を考える時に、その出生とその家庭環境とを
特別に異常なものと想定しなければ説明のつかないようなことは
何もない、と私は考えている」(101)

井上章一の名著「狂気と王権」 で書かれているように、かつての日本では
天皇・皇族へのテロリストを狂人であるとして話を収めようとした。
それと同じようにナチスの凶行は、ヒトラーの出生からくる狂気であったと
話を収めようとしたのであろうか。

また、ナチスはワイマール共和国の産物と言われることが度々だが、
村瀬は当時のミュンヘンの事情に求めている。
ミュンヘン市はすでに第一次世界大戦の最中から国家主義的、
全ドイツ主義運動の中心地となっていた」(172)、その原因は「ベルリンに
対する対抗意識や地方割拠主義だけでなく、第一次世界大戦から戦後に
かけての中産階級に属する市民たちの生活の窮乏」(173)であった。
そのため、ナチス以外の国家主義団体は数多かった。

ナチス運動はいろいろな極右グループや民族主義思想の集大成であって、
『ヒトラー主義』はその一部にすぎない。この運動はヒトラーなしに成立したし、
ヒトラー個人の力などあまり借りずに、(略)ドイツ各地で発展していた」(224)
と結論づける。

【時間つぶしにはGOOD】 1977年

村瀬 興雄
アドルフ・ヒトラー―「独裁者」出現の歴史的背景

エシュロン

文春新書「エシュロンと情報戦争」 とは反対にEUによるエシュロン追求が主。
「エシュロンと情報戦争」の方が圧倒的に面白く、且つよい。

【他によいものがある】 角川ONEテーマ21 2001年

産経新聞特別取材班
エシュロン―アメリカの世界支配と情報戦略

化物屋敷

化物屋敷史。
たいへんよくまとまっているのであろうけれども。
特別このジャンルに関心がある方を除いてはおすすめできない。

【車窓からの眺めの方がマシ】 1994年

橋爪 紳也
化物屋敷―遊戯化される恐怖

遊女の文化史

遊女であれ娼婦であれ、早く死ぬ女たちである。
「聖なる性」という言葉を使おうが「遊女」として捉えようが
早死にする運命にあるのだから絶対的に不幸である。
本書はこの点がまったく欠如しているといえる。

【時間つぶしにはGOOD】 1987年

佐伯 順子
遊女の文化史―ハレの女たち

虚構の時代の果て

アマゾンでなぜか古本が4000円以上も値が付いている。
96年の新書なのに。

「第三章 サリンという身体」の「3 家族の無化」が面白い。

【時間つぶしにGOOD】 1996年

大澤 真幸
虚構の時代の果て―オウムと世界最終戦

文人たちの句境

春の日やボタン一つのかけちがへ  久保田万太郎

古本を売りて富みたる夕心 吉川英治

菫(すみれ)程な小さき人に生まれたし 夏目漱石

仏性は白き桔梗にこそあらめ 夏目漱石

【車窓からの眺めの方がマシ】 1991年

関森 勝夫
文人たちの句境―漱石・龍之介から万太郎まで

回想回転扉の三島由紀夫

今月大量に発刊された文春新書の一冊。
これで一冊の本にはならないだろう。
「文藝春秋」か「文学界」の1コーナー程度が関の山。

【車窓からの眺めの方がマシ】 2005年

堂本 正樹
回想回転扉の三島由紀夫