続きまして、日本マンション学会会長で弁護士の折田泰宏先生より、
「公営住宅と自治-ペット規制を巡って-」というテーマで講演していただきます。
折田先生、よろしくお願いいたします。(拍手)
講演「公営住宅と自治-ペット規制を巡って-」
日本マンション学会会長・弁護士 折田 泰宏
日本マンション学会という学会がございまして、マンションの管理をテーマにしたいろんな調査、研究をしている団体ですが、実務家、研究者、いろんな方が集まっております。
実は、マンションのトラブルというのは「3P」と言われておりまして、Pといいますと、そのうちの1つがペットのPなんですね。ほかはパーキング、つまり駐車問題。そして、あともう1つのPはパーソンという、いわば人と人との問題。こういう3P問題というのがマンショントラブルの典型的なものとして言われておりまして、これは実は日本だけの問題かといえばそうではなくて、世界じゅうのマンションがこの3P問題を抱えているという状況にあります。
そういうことで、きょう、直接私はペットの専門ではないのですけれども、呼び出されたということになるわけですが。実は、私は尼崎の出身でして、尼崎の小学校、中学校を出ております。先ほどもちょっと同窓の方にお会いしましたが、そういうことでこの場所も、昔はこの建物の前に同じような文化会館がありまして、そこで学芸会をやったような思い出がありまして、懐かしい思いで参りました。
きょうの私のテーマが、レジュメで少し内容的なものをお配りしていますけれども、時間が余りありませんので、なるべく手短にお話しさせていただきたいと思っております。公営住宅の中でのペット禁止ということで、この間公営住宅ということの意味合いについても少し考えてみたわけでありますけども、先ほど冬しばさんもおっしゃったと思うのですが、公営住宅の目的というのは、法律の第1条に書いてあるわけですが、「健康で文化的な生活を営むに足りる住宅を整備し、これを住宅に困窮する低額所得者に対して低廉な家賃で賃貸し、又は転貸することにより、国民生活の安定と社会福祉の増進に寄与する」と、こういうふうに書かれているわけです。
つまり、1つは「健康で文化的な生活を営むに足りる住宅」を提供するということでありますし、そして、対象としては「住宅に困窮する低額所得者に対して」これを提供するということになっているわけです。
この公営住宅法は平成8年に改正されているわけですが、その改正の主たる目的は、高齢者と障害者を対象にして、要するに本当に住宅に困窮している人たちに公営住宅を的確に供給すると、そういう目的で平成8年に改正されております。その際に、福祉目的といいますか、高齢者のためのグループホーム事業との提携もできるというふうに改正をされているわけです。
そうとしますと、公営住宅と多分民間の賃貸、あるいはマンションのような区分所有建物との違いがどこにあるのかというところが、ペット問題に絡んで議論されると思うんですけれども、少なくとも民間の住宅と公営住宅の違いというのは、民間の住宅はこれは一人のオーナーがいて、それが賃貸をするわけですけれども、そこで契約はいわば対等の契約の中で、家主さんのほうでそれなりの制限を課した場合、これは従わざるを得ないかもしれない。しかし、借りる側は選択の余地があるわけですね。
ところが、公営住宅について言いますと、その地域で、なおかつ困窮者であるとすれば、そこで選ぶとなれば、もう市営住宅あるいは県営住宅のほうに入らざるを得ない。いわば選択の余地がないということになります。そうすると、選択の余地のないところに入居するということの中で、そこでいろんな制限が課されるとなってきますと、もうそこでその制限は絶対的なものになってしまう。つまり逃げようがない、ほかの選択の余地がない選択を迫られるということになってしまうわけです。
それはまさに、端的にペット問題にもあらわれてくるわけでありまして、もし今回の尼崎市のような条例が通った場合には、尼崎市においては市営住宅に入るということは、即、ペットは飼えないということにしてしまう。そういうことが果たしていいのかどうか。あるいは、公営住宅の目的からして沿うのかどうかということが問題とされなければならないと思いますね。
先ほど言いました公営住宅の目的から言いますと、「健康で文化的な生活」というのが言われています。そしてなおかつ、福祉との関連あるいは高齢者との関連が、公営住宅の目的として課されているとすれば、ペットの問題は、この「健康で文化的な生活」はペットを飼うということが保障されるべきではないかというところの議論が当然出てくるのではないかと思うわけです。
ただ、ペットの問題が実際にトラブルになるということは事実でありまして、そこのルール、規制をどうしていくのかということが次の問題になってくるわけですが、そこで多分私が関連するマンションの問題と関係してくると思うんですね。マンションにお住まいの方はおわかりだと思うんですけれども、管理規約というものがどこのマンションにもあります。いわば、管理規約というのは、そのマンションの中の法律、大げさに言えば憲法のようなものでありまして、そこのマンションに入れば、その管理規約には従わなくちゃいけないということになります。
ただ、この管理規約の設定は、これは建前といいますか、法律ではそのマンションに居住している、これは区分所有者というふうに呼ぶんですけれども、マンションを持っておられる方が集まって、そこで集会で決議をして決めるというふうになっているわけです。マンションの管理規約は、マンションの区分所有者の集まりを管理組合と呼ぶのですけれども、この管理組合という集まりと、よく言われる町内会、自治会という団体があるわけですが、それとの違いもよく問われることがあるんですけども、管理組合というのはマンションの区分所有者が集まっている団体なんですね。自治会とか町内会というのは、所有者に関係なくそこに住んでいる人、居住者としての集まりということになります。
ですから、一般の住宅では、これはどこにも自治会とか町内会とかあると思うんですけれども、これは加入することについて強制力もありませんし、いわば自治親睦団体でしかないわけですね。法律的に言いますと、そういうものでしかありません。ところが、マンションの管理組合というのは、これはそのマンションを買った途端に強制的に加入をしなくてはいけない。当然に管理組合の一員にならざるを得ない。そういう団体なんですね。
その管理組合で何をするかというと、基本的にはマンションの財産の管理をする。つまり、マンションは下の敷地もありますし、それから建物もあるわけですから、その敷地、建物を管理しなくちゃいけない。さらに、マンション法と言われる区分所有法では、それだけではなくて、マンションのコミュニティーについても管理組合で対応していかなくちゃいけないということになっているわけであります。
ただ、コミュニティーの問題というのは、これはどちらかといいますと財産管理よりは実は自治会のほうで対応したほうがいいわけでありまして、マンションによっては管理組合と自治会と両方存在しているというところもありますし、それからマンションの居住者全員がその地域のほかの、全体のもう少し大きな町内会に属しているということもあります。その中でマンションの住人というのは財産管理も含めていろんな生活ルールも管理組合の中で決め、そしてなおかつ自治会の中で決めてやっているというのがマンションの実態なのです。
そうしますと、ペット問題ということを考えたときに、これは先ほど言いましたように、管理組合の中でルールを決めて生活規則を決めて、そこでマンションのペットをどうするか、あるいは管理規約の中でマンションによってはペットは禁止するということを決めているところもあります。
これらはすべてどういうふうに決めようが、これはマンションの区分所有者が自分たちで決められることなんですね。ですから、マンションを買うときに、これも選択ができます。つまり、このマンションはペットが飼える、このマンションはペットを飼えない。そこで、購入段階で当然選択する自由があるということになります。
ところが、市営住宅、公営住宅の場合はそれがないという問題が出てくるのです、先ほど言ったとおりなんですね。私はそういう意味合いにおいては結論的に言いますと、国あるいは自治体がこういうペット問題で私的生活に介入するということについては、これは法的に問題があるというふうに考えておりますし、大げさに言えば憲法25条、あるいは憲法13条の関係でも憲法違反という問題も出てくるのではないかというふうに考えております。
ただ、すべての物事がオール・オア・ナッシングで決められるわけではないわけでありまして、いろんな条件がついてくると思います。それについては後でマンションの実情をお話ししながら、少しお話ししたいと思っています。
それに関連してもう1つお話ししておきたいと思っていますのは、マンションでは、先ほど言いましたように自分たちで決められるというふうに申し上げました。決められると同時に、マンションでペットが認められるとした場合に、何らかの当然各マンションで第三者に迷惑がかからないように、いろんな処置を講じているわけであります。
そういうことをやる管理組合、あるいは自治会と言ってもいいんですけれども、そういう存在が、マンションにペットが存在していたとしても、ペットの所有者に対する規制というものがかかってくる。これは権力による規制ではなくて、自分たちで話し合ったルールによる規制だということになるんですね。
そうとしますと、市営住宅においてペットがもし認められるとした場合に、そのルールを一体だれがつくるのかということになります。これは民間のアパートなんかですと、当然借りるときに契約の中でもいろいろ書き込んであるでしょうし、あるいは絶対ペットを飼ってはならないという契約の条件に入っているかもしれません。
しかし、公営住宅の場合どうなるのかということがあります。1つは、公営住宅を借りるときには、これはどこの自治体もそうですけれども、生活のルールを渡されると思うんです。しおりのようなものを尼崎市の場合そうでしょうけれども、その中にいろいろ書いてあるわけです。ただ、これはある意味で相当生活の細かいところまで、つまり非常に日々の日常的な生活、ペットだけじゃなくて、ピアノは何時以降は弾いてはいけませんよとか、いろんなことが書いてあります。
果たしてしかし、そういうことを行政がやるべきことなのかどうかということをぜひ考えていただきたいなと思っているのです。これはむしろ、それはそのコミュニティー、市営住宅が棟の1つの建物の中にあるとすれば、その建物全体の中の皆さんで話し合って決めるべき生活ルールではないか。一戸建てが並んでいるような住宅の場合ですと、1つの地区で自治会をつくって、その中でいろんな生活ルールを話し合って決める。ごみの問題もあるでしょう。そういうことがベースとして必要ではないかと思っています。
多分、市営住宅、公営住宅の場合は、場所によって違うのでしょうけれども、そういう自治会が既に存在していると思うのです。最近、そういう自治会の組織の崩壊がかなり言われていますけれども、そういう自治会がしっかりしておれば、自分たちで自分たちの生活を守るためにどういうルールを決めていくのかという機能も当然果たせるのではないかというふうに思っているわけであります。
実は、きょうの話をする前に、そういう資料はないかということでいろいろ探したのですが、ちょっといい資料が見つからなかったのですけれども、大阪府の府営住宅で昔、増築運動というのが起きたことがあります。これは千里ニュータウンのほうだと思うんですけれども、団地で非常に府営住宅が狭い。狭いのをどう解決するかということで、南側に1部屋分増築するということで運動しまして、そして幾つかの棟で府営住宅が増築をした例があります。そのときの運動の記録を書いた本が見つかったわけでありますけれども、これは府営住宅の賃借人といいますか、皆さんがかなり集まって一致団結して、大阪府に交渉して、それを実現させたという経過があるわけであります。
それを書いた方が、後ろのほうに書いてあったのですけども、こういう府営住宅、公営住宅を行政に任せておくとスラム化するだけだと。いい住宅環境をつくっていくには、これは自分たちが管理をしていくのが一番いい。効率もいいし、何をやったらいいかということも自分たちはわかっているというわけですね。ですから、住民たちで自主管理をしていくということを進めていくべきではないか。
例えば、住宅委員会というようなものを自治会でつくって、そこがいろんなことをやっていく。これはマンションの管理組合と一緒で、その気になれば住宅の管理についていろんなことをすることがあると思うのです。小さな補修も自分たちでやることもできるでしょうし、日常生活のルールについても自分たちで話し合ってルールを決めて解決していくということもできると思うんですが、そういう提案をしていました。
残念ながら、その結果、自治体が今、公営住宅がどうなっているのかということを私は知らないんですけれども、しかし公営住宅においてペットの禁止に反対をし、そしてルール化をする前提で別途容認していこうということを運動として求めるのであれば、そういう自治能力を高めるということが一方では必要ではないかなというふうに思っております。
そこで、これは参考までということになるかと思いますけれども、我が国のマンションで今、ペット問題はどうなっているのかということを少しお話しさせていただきたいと思うのですが、先ほど言いましたように、管理組合の決める管理規約の中でペットを禁止しているというところも結構あります。禁止の決め方もいろんな決め方がありまして、非常に荒っぽくペットは禁止だと書いているところもありますし、小動物が禁止であるとか、人に迷惑をかけるペットは禁止するとか、いろんな表現があります。
ただ、禁止をしているというのは、みんなで話し合って禁止条項を入れたというのは、実は余りないんですね。先ほど、建前はという話をいたしましたけれども、マンションを売るときは管理規約というのは分譲業者が先につくってしまうのです。つくってしまって、それに判こを押して同意をして管理規約が成立してしまうということなので、入る方の実際の意思が反映されるということはまずないわけです。これは私ども、原始規約というふうに呼んで、少し問題があると言っているわけです。
そうしますと、入ったときの管理規約をちゃんと読んでいない人もたくさんいるのです。ですから、もうペットを飼いたい人はそこで飼い出すということがあります。でも、最近はマンションを買うときに業者のほうは、仲介業者あるいは販売業者のほうで重要事項説明というのをやりまして、そこで結構、どういうことが生活ルールとして規制されているかということの説明しなくてはいけないとなっているわけですけれども、多分、そういう不動産を買うときに業者さんがいて、重要事項説明いたしますよということで、わっと早口で何か読み出したとしても、ほとんど多分聞いていないだろうと思います。そういうこともあって、実際にマンションに入られる方はペットが禁止されているかどうか、ほとんど認識しないで入って、そしてペットを飼うということが結構日常的に行われているわけです。
ところが、実際にそのマンションの中で問題になってくるのは、飼われる方のマナーの悪さで、非常に犬の鳴き声がうるさいとか、あるいは猫がベランダを行ったり来たりして、ベランダが非常に臭くて隣の部屋ににおってくるとか、そういうふうなことの事件が起きてくる中で、改めて管理規約を見ると禁止になっているじゃないか、あいつはけしからん、何とかしてくれということで理事会に持ち込んで理事会が悩んでしまう。そういうプロセスでペット問題というのが大きくなってくるということが、一般的なマンションの実情です。
この場合に、規約が書いてあるからとわかって、そしてそれならやめましょうというのは、関東の方は割合ルールに忠実な方が多くて、関東のマンションは規約で決めてしまえば割合それに従う傾向にありますが、関西は逆ですね。規則があっても守らないというのが一般的な傾向としてあるんですけれども。それでも、だからといって規約違反の状態がずっとあったとしても、実際にさっき言ったような問題が起きてこない限り、余り表に出てくることはないというのが現状です。
ただ、この10年来、やはりペットの問題が裁判まで発展したというのが幾つかあります。有名な横浜の事件が最初なんですが、藤井が丘マンションだったと思うのですけども、そのマンションはペットについては特に何の禁止もしていなかったのですが、途中で規約を改正してペット禁止をしたという事件ですね。禁止したので、ペットを飼っている家族に対してペット飼育をやめろという裁判をしたという事件があったのですが、飼われた方は、少し病気のお子さんがいられまして、ペットが子供さんのために絶対必要であると。そういうことでかなり反論したわけですけれども、裁判所は管理組合の言い分を認めました。地方裁判所、高裁も認めて、最高裁でも確定するということがありました。
こういう流れは、実はその後のペット裁判ではずっと一貫して裁判所の対応は同じでありまして、管理組合が管理規約で決めたことは尊重しなさいということが、裁判所の一貫した態度であります。そのペットを飼っている事情とかは余り考慮しないで、みんなで決めたんだからだめだよというのが裁判所の考え方なんですね。自治を非常に重く見ているということであります。
ただ、裁判所のそのユウチュウ(?)の判断で、例えば盲導犬であればともかくとか、例外的な場合もあるよという表現も出てきます。どういう場合が例外的なのかというと、これについてはまだ認められた事例がありませんのでわかりませんけれども、必ずしも絶対的なものではない。ケース・バイ・ケースで判断はされるということは動かないわけでありますけれども、通常の理由でペットを飼うということが、これが管理規約で明確に禁止しておれば、これはマンションの場合は難しいというのが現実だということです。
ただ、そういう状況の中で、皆さんもご存じといいますか、資料の中にもありますが、今、多くのマンションが販売の段階から、うちのマンションはペットを容認しますというところがかなりふえてきています。
先ほどの管理規約についても、国土交通省が標準管理規約というものをつくっておりまして、一般的にマンションを売り出すときにこういう標準管理規約をベースにしてつくりなさいと、そういう通達行政の中の一環としてそういうものがあるわけですが、その中でもペット禁止ということは入れていません。入れてなくて、生活ルール、生活するについて生活の規則をつくるようにという形で標準管理規約には入れているわけですが、その中でコメントがついております。そのコメントの内容を少しレジュメに挙げておいたのですけれども、もしペットを禁止するということであれば、これは非常に重大な権利を規制することなので、これは管理規約で決めなくてはいけない事項だということをコメントに入れています。
じゃ、どういう場合に飼育を認めるかという場合には、動物等の種類、それから数等の限定、それから管理組合への届け出、登録による飼育動物の把握、それから飼育方法ですね。それから共用部分の利用方法、ふん尿の処理等の飼育者の守るべき事項、それからもし被害があった場合の責任体制をどうするか、被害者に対する措置をどうするか、こういうものを規則で決めなさいということがコメントの中にあります。
ここに大体抽象的ではありますけれども、もし認めるとすればどういうことを考えなくちゃいけないということが、すべて挙がっていると思うんですね。
例えば、動物の種類、数の限定というのがありますが、これも各コミュニティーでいろんな決め方があろうかと思います。小動物といってもどの程度の大きさなのか。これは私、アメリカの管理組合をのぞいたときに見せてもらったのは、長さ何センチ以内というふうにすべて細かく書いているのです。それから、動物といっても爬虫類とかなんかはどうなるのかというようなことも、動物の種類を限定をしておくということも考えられると思います。それから、管理組合に届けるということは、これは当然必要であろうかと思います。
それから、飼育方法とか共用部分の利用方法についても、特に共用部分の利用方法について言えば、廊下、エレベーターをどう使うのかということがあります。マンションによってはペット専用のエレベーター、ペットは必ずこのエレベーターを使いなさいと決めている場合もありますし、そうでなくてもエレベーターに乗せるときは必ず抱き上げて乗せるということを規則で決めているところもあります。
それから、マンションによっては足洗い場をつくって、玄関でペットの足は、外から帰ってきたときには必ず足を洗わせるということをしている、設備がついているところもあります。
それと、ここには書いてありませんけども、それに関連するのですが、ペットを飼われる方のクラブをつくる。クラブをつくって管理組合はいちいちペットの飼育者の管理、規制ができないものですから、ペットを飼育しておられる方の団体をつくって、その団体でそれぞれ自主規制するといいますか、相互規制をしていく。そういうことを規則で決めるというふうにしているところもあります。
で、ペットを飼うということが区分所有法では、先ほど裁判例があって、規約で定めればだめだという判決が出ていると言いましたけれども、ここはなぜだめなのかということなんですが、区分所有法という法律では、実は共同生活を守るということのために共同の利益に違反する行為をしてはならないという、そういう条項が区分所有法の中にあるんですね。ペットを飼うということが共同の利益に違反する行為であるという判断をされてしまっているということです。
ただ、ここも先ほど言いましたように、ペットを飼うということ一字でもって共同利益違反行為なのかどうかという議論もありまして、裁判所はいろんな理屈をつけているわけですけれども、ペットを飼うということ自体が一緒に住んでいる人に対して不快感を与えるとかそういうことを言って、共同利益違反行為だと言っているわけですけれども、そこはまだしかし、そう言い切れないところもあるわけでありまして、今後の時代の変化の中で裁判所の判断も少し変わってくる可能性があるのではないかというふうに考えているわけです。
こういう状況の中で、先ほど言いましたようにペットを容認するマンションがふえてきているわけですが、数の実態がちょっとまだつかめていません。最近、国土交通省は5年ごとにずっとマンション総合調査というのをやっているのですが、ペット問題について調べ出したのが平成5年ぐらいから調べ出しています。ですから、つい最近結果が発表されて、4回目の発表がされているんですが、その結果はちょっと見ておりませんけども、平成15年に発表された結果では、調査したマンションのうち約70%のマンションはペットを容認しているというふうに回答が寄せられています。ですから、容認というのが黙認というか、規約はだめだと言っているけども、事実上黙認していることも含めての容認なのか、ちょっとよくわからないのですけども、もう過半数以上のマンションが実は認めているという状況にありますし、多分今後その数はますますふえていくのではないかというふうに思うわけであります。
そうとしますと、マンションというのは実は今、全国で500万戸ですね。公営住宅はちょっとわかりませんが、古い数字では200万戸ぐらいと言われていますので、実はマンションのほうが既に多いわけでありまして、この500万戸のうちの半分以上はペット容認だという状況の中で、ペットに対する、あるいは集合住宅、言いかえれば市営住宅も今集合住宅になっているわけですね。
一戸建ての家がずらっと並んでいるのではなくて、そういう集合住宅になっているということの中でのペット問題というのが出てきていると思うのですが、その点はマンションも共通した問題だと思うのですけれども、マンションという区分所有建物でありますが、マンションという集合住宅の中でペットが容認されていくという状況が一般化していけば、賃貸でありますけども、公営住宅という集合住宅におけるペットのあり方、存在というのもこれから変わってくるのではないかというふうに思っています。
ということで、ちょっと時間が超過いたしましたが、ご聴講ありがとうございました。(拍手)
【司会】折田先生、どうもありがとうございました。大変参考になりました。
(続く)








































