ボクたちはムーンブルクを目指した。
そもそも、ボクたちの旅の目的は、
ムーンブルクを救うため、だったからね。
だけど、ムーンブルクは全滅してたんだ。
いや、その前に。
ボクたちも全滅したんだ。
マンドリル3匹と鎧ムカデによってね。
マンドリルの攻撃は本当に痛いんだ。
ボクはガマン強いほうだからね。
痛いのはガマンしてたんだけど、
ガマンしているうちに、
どうやら死んでしまったようなんだ。
痛いのはガマンできても、
死ぬのはガマンができないみたいだ。
はじめて知ったよ。
ボクが目覚めたときには、
ムーンペタの教会にいたんだけど、
どういうわけか、
財布のお金がほとんどなくなっていたんだ。
600ゴールド以上あったのに、
100ゴールドほどになってしまっている。
アイテムを買った形跡もない。
ボクはろと王子を糾弾したんだよね。
いったいどういうことなんだ、とね。
だけど、ろと王子は何も言わないんだ。
ボクが棺桶の中にいる間に、
きっとろと王子が勝手に使ってしまったんだろう。
都合が悪くなると、彼は口を閉ざす。
ずっと閉ざしているのだから、
ずっと都合が悪いのかもしれない。
僕たちは、なけなしの100ゴールドで、
いくつか薬草を買った。
すると、道具屋はまたアレをくれたんだ。
ボクはアレを使ってアレを回した。
アレを回すと、ハズレになったんだけど、
アレ屋の店員は、
ハズレたのに、またアレをくれたんだ。
ボクはまたアレを回した。
またハズレた。
そして、またアレをもらった。
どうやらハーゴンがまたボクたちを邪魔しようとしているようだ。
アレ屋の店員は、
いつまでやっても、またアレをボクにくれる。
とは言っても、
4回目ともなると、
アレ屋もアレをくれなくなった。
またか。
でも、いいんだ。
ボクだっていつまでもハーゴンに構ってばかりもいられない。
ムーンブルクに行かなければならないんだ。
そう思ってムーンブルク城に行ったら、
ムーンブルクが滅びてたんだ。
しまった。
アレハーゴンと戦っている間に、
ムーンブルクは滅ぼされてしまったんだ。
なんてことだ!
ハーゴン、なんて恐ろしい。
ボクたちをムーンペタで足止めしておいて、
その間にムーンブルクを攻め落とすなんて。
ボクはハーゴンの戦略に驚いた。
きっと、
ムーンブルク王もきっと勇敢に戦ったのだろう。
そして勇敢に散ったのだろう。
早々に「ぎょえー!!」と言ったりしたわけではないと思う。
ロトの血を引く一国の王なんだからね。
ほんのさっきまで戦っていたに違いない。
ボクたちがふくび・・・アレに手こずっていなかったら、
ムーンブルクは滅びなかったかもしれないんだ。
と思って城の中に入ってみたら、
どうやら、
滅びてからだいぶ時が経っていたように見えた。
さっき滅びたわけじゃなさそうだ。
アレのせいでもないのかもしれない。
ハーゴン。恐るに足りないね。
滅びたムーンブルクの城には、
滅びてもまだ魂を留めている人々がいた。
そのひとりが、ムーンブルク王だった。
王はこう言ったんだ。
「我が娘サマンサは呪いをかけられ、犬にされた」とね。
そしてボクたちは知ったのさ。
ムーンブルクの王女の名は「サマンサ」なのだとね。
魂は王様のものだけじゃなかった。
「4つの橋が見える小さな沼地にラーの鏡」
「姫の呪いを解くにはラーの鏡」
ボクたちは重要な情報を手に入れたのかもしれない。
ボクはすぐにわかったよ。
サマンサがサマンサだったんだ。
いや、意味がわからないことを言ってしまったね。
この国の王女の名は、
ボクがムーンペタの犬につけた名前と、
同じ名前だったってことさ。
奇妙な偶然だけど、
ボクとムーンブルク王のネーミングセンスは、
全く同じだったということだ。
いや、それほど驚く必要はないのかもしれない。
サマンサというのは俗な名だ。
それほど珍しい名前じゃない。
「トンヌラ」や「すけさん」と同じ程、
メジャーな名前だからね。
だから、
ボクとムーンブルク王のセンスが似ていたのは、
それほどの問題じゃない。
もっと不思議なのは、
王女とラーの鏡の関係だ。
ボクは、
かつて初代ロトの時代の、
架空の国「サマンオサ」に因んで、
ムーンペタ犬に「サマンサ」と名付けた。
きっとムーンブルク王もそうだろう。
サマンオサでは、
魔物が化けた王の真実の姿が、
ラーの鏡に映し出され、
そしてロトに倒されたという物語になっている。
奇しくも、
サマンサ王女の真の姿を取り戻せるものが、
ラーの鏡であるのであれば、
サマンオサの物語はただのおとぎ話とは言えなくなる。
架空の国サマンオサからラーの鏡を持ち帰れたとすれば、
それはロトでしかあり得なく、
アレフガルドから、ここムーンブルクに持ち運べたのも、
またロトの一族だということになる。
つまりボクたちだ。
にもかかわらず、
ボクはこの鏡が実在するなんて知らなかった。
ろと王子は無口だけど、
表情から察するに、
ボクと同様、実在だと知らなかったようだ。
ムーンブルクの至宝として、
秘密裏に受け継がれていたのだろうか。
事実、
秘密裏であったおかげで、
ハーゴンに奪われることもなかった。
王女に呪いをかけて犬にしたハーゴンだ。
その呪いを解く鏡の存在を知っていたのなら、
それを放っておくわけがない。
せっかくの呪いが解けてしまうわけだからね。
ムーンブルク王が、
王女に「サマンサ」という名をつけたことは、
因縁めいているとしか言えない。
王女がハーゴンに呪われることだって、
王女が名付けられた時点ではわからなかったことだ。
にもかかわらず、
ムーンブルク王は、何か直感的に、
ラーの鏡が使われる事態が起こることを想像していたんだ。
「サマンオサ」と「サマンサ」を
頭の中でリンクさせているわけだからね。
つまり、
ムーンブルク王が、
「サマンオサ」に因んで「サマンサ」と名付けた時点で、
この事態をやや予言していたとも思えるんだ。
ラーの鏡が「サマンサ」を救うんだ。
伝承のとおりじゃないか。
ボクとろと王子は、
8ツ橋だったか4ツ橋だったか、
とにかく橋が見える沼地を探し、
その沼地からラーの鏡を拾い上げた。
そして、
そのままムーンペタへと戻り、
ムーンペタ犬サマンサに鏡を見せたのさ。
結果は言うまでもないね。
ムーンペタ犬は少女へと姿を変えた。
そして彼女は名乗った。
彼女は「ともに戦いましょう!」と、
細い腕で、ひのきの棒を振るって見せた。
これはいかん。
犬のときよりも役に立たないかもしれない。
ろと:レベル10
カイン:レベル9
サマンサ:レベル1
しぴも らにほ てつずわ
ぎぎじ ちひも てもぐゆ
うぐが たごぐ ずかじは
ぜぐが すまむ もゆそほ
やよ
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目次
【1話:出会い】
【2話:銀の鍵】
【3話:ムーンペタ】
【4話:ラーの鏡】
【5話:ドラゴンのツノ】
【6話:ルプガナ】
【7話:アレフガルド】
【8話:大灯台】
【9話:ベラヌール】
【10話:デルコンダル】
【11話:ペルポイ】
【12話:テパ】
【13話:盗賊ラゴス】
【14話:海底洞窟】
【15話:ロンダルキアへの洞窟】
【16話:ロンダルキア】
【17話:ハーゴンの城】
【18話(最終話):破壊神シドー】


