カインの冒険日記 -48ページ目

カインの冒険日記

ページをめくれば、そこには物語がある。

      読むドラゴンクエストの世界へようこそ。

ボクたちはムーンブルクを目指した。
そもそも、ボクたちの旅の目的は、
ムーンブルクを救うため、だったからね。
だけど、ムーンブルクは全滅してたんだ。
いや、その前に。
ボクたちも全滅したんだ。
マンドリル3匹と鎧ムカデによってね。
マンドリルの攻撃は本当に痛いんだ。
ボクはガマン強いほうだからね。
痛いのはガマンしてたんだけど、
ガマンしているうちに、
どうやら死んでしまったようなんだ。
痛いのはガマンできても、
死ぬのはガマンができないみたいだ。
はじめて知ったよ。


ボクが目覚めたときには、
ムーンペタの教会にいたんだけど、
どういうわけか、
財布のお金がほとんどなくなっていたんだ。
600ゴールド以上あったのに、
100ゴールドほどになってしまっている。
アイテムを買った形跡もない。
ボクはろと王子を糾弾したんだよね。
いったいどういうことなんだ、とね。
だけど、ろと王子は何も言わないんだ。
ボクが棺桶の中にいる間に、
きっとろと王子が勝手に使ってしまったんだろう。
都合が悪くなると、彼は口を閉ざす。
ずっと閉ざしているのだから、
ずっと都合が悪いのかもしれない。


僕たちは、なけなしの100ゴールドで、
いくつか薬草を買った。
すると、道具屋はまたアレをくれたんだ。
ボクはアレを使ってアレを回した。
アレを回すと、ハズレになったんだけど、
アレ屋の店員は、
ハズレたのに、またアレをくれたんだ。
ボクはまたアレを回した。
またハズレた。
そして、またアレをもらった。
どうやらハーゴンがまたボクたちを邪魔しようとしているようだ。
アレ屋の店員は、
いつまでやっても、またアレをボクにくれる。
とは言っても、
4回目ともなると、
アレ屋もアレをくれなくなった。
またか。
でも、いいんだ。
ボクだっていつまでもハーゴンに構ってばかりもいられない。
ムーンブルクに行かなければならないんだ。


そう思ってムーンブルク城に行ったら、
ムーンブルクが滅びてたんだ。
しまった。
アレハーゴンと戦っている間に、
ムーンブルクは滅ぼされてしまったんだ。
なんてことだ!
ハーゴン、なんて恐ろしい。
ボクたちをムーンペタで足止めしておいて、
その間にムーンブルクを攻め落とすなんて。
ボクはハーゴンの戦略に驚いた。
きっと、
ムーンブルク王もきっと勇敢に戦ったのだろう。
そして勇敢に散ったのだろう。
早々に「ぎょえー!!」と言ったりしたわけではないと思う。
ロトの血を引く一国の王なんだからね。
ほんのさっきまで戦っていたに違いない。
ボクたちがふくび・・・アレに手こずっていなかったら、
ムーンブルクは滅びなかったかもしれないんだ。


と思って城の中に入ってみたら、
どうやら、
滅びてからだいぶ時が経っていたように見えた。
さっき滅びたわけじゃなさそうだ。
アレのせいでもないのかもしれない。
ハーゴン。恐るに足りないね。

滅びたムーンブルクの城には、
滅びてもまだ魂を留めている人々がいた。
そのひとりが、ムーンブルク王だった。
王はこう言ったんだ。
「我が娘サマンサは呪いをかけられ、犬にされた」とね。
そしてボクたちは知ったのさ。
ムーンブルクの王女の名は「サマンサ」なのだとね。
魂は王様のものだけじゃなかった。
「4つの橋が見える小さな沼地にラーの鏡」
「姫の呪いを解くにはラーの鏡」
ボクたちは重要な情報を手に入れたのかもしれない。

ボクはすぐにわかったよ。
サマンサがサマンサだったんだ。
いや、意味がわからないことを言ってしまったね。
この国の王女の名は、
ボクがムーンペタの犬につけた名前と、
同じ名前だったってことさ。
奇妙な偶然だけど、
ボクとムーンブルク王のネーミングセンスは、
全く同じだったということだ。
いや、それほど驚く必要はないのかもしれない。
サマンサというのは俗な名だ。
それほど珍しい名前じゃない。
「トンヌラ」や「すけさん」と同じ程、
メジャーな名前だからね。

だから、
ボクとムーンブルク王のセンスが似ていたのは、
それほどの問題じゃない。
もっと不思議なのは、
王女とラーの鏡の関係だ。
ボクは、
かつて初代ロトの時代の、
架空の国「サマンオサ」に因んで、
ムーンペタ犬に「サマンサ」と名付けた。
きっとムーンブルク王もそうだろう。
サマンオサでは、
魔物が化けた王の真実の姿が、
ラーの鏡に映し出され、
そしてロトに倒されたという物語になっている。
奇しくも、
サマンサ王女の真の姿を取り戻せるものが、
ラーの鏡であるのであれば、
サマンオサの物語はただのおとぎ話とは言えなくなる。
架空の国サマンオサからラーの鏡を持ち帰れたとすれば、
それはロトでしかあり得なく、
アレフガルドから、ここムーンブルクに持ち運べたのも、
またロトの一族だということになる。
つまりボクたちだ。
にもかかわらず、
ボクはこの鏡が実在するなんて知らなかった。
ろと王子は無口だけど、
表情から察するに、
ボクと同様、実在だと知らなかったようだ。
ムーンブルクの至宝として、
秘密裏に受け継がれていたのだろうか。
事実、
秘密裏であったおかげで、
ハーゴンに奪われることもなかった。
王女に呪いをかけて犬にしたハーゴンだ。
その呪いを解く鏡の存在を知っていたのなら、
それを放っておくわけがない。
せっかくの呪いが解けてしまうわけだからね。

ムーンブルク王が、
王女に「サマンサ」という名をつけたことは、
因縁めいているとしか言えない。
王女がハーゴンに呪われることだって、
王女が名付けられた時点ではわからなかったことだ。
にもかかわらず、
ムーンブルク王は、何か直感的に、
ラーの鏡が使われる事態が起こることを想像していたんだ。
「サマンオサ」と「サマンサ」を
頭の中でリンクさせているわけだからね。
つまり、
ムーンブルク王が、
「サマンオサ」に因んで「サマンサ」と名付けた時点で、
この事態をやや予言していたとも思えるんだ。
ラーの鏡が「サマンサ」を救うんだ。
伝承のとおりじゃないか。


ボクとろと王子は、
8ツ橋だったか4ツ橋だったか、
とにかく橋が見える沼地を探し、
その沼地からラーの鏡を拾い上げた。
そして、
そのままムーンペタへと戻り、
ムーンペタ犬サマンサに鏡を見せたのさ。
結果は言うまでもないね。
ムーンペタ犬は少女へと姿を変えた。
そして彼女は名乗った。
「私はムーンブルク王の娘サマンサ。私もあなた方の仲間にしてくださいませ。」
サマンサ王女
【絵:堺むてっぽうさん】


彼女は「ともに戦いましょう!」と、
細い腕で、ひのきの棒を振るって見せた。

これはいかん。
犬のときよりも役に立たないかもしれない。




ろと:レベル10
カイン:レベル9
サマンサ:レベル1


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