「いやー、探しましたよ。」
それが、ボクたちの最初の会話だった。
最初、と断言していいのかどうか、
実のところ、ボクにはわからない部分もある。
ボクたちは、
ローレシアとサマルトリアという2大大国の王子同士ではあるものの、
その2国間を行ったり来たりした記憶はない。
記憶がないほど小さい頃に、
もしかしたら会ったこともあるのかもしれないけれど、
顔を覚えている仲でもなかった。
だから、はじめてとも2度目とも3度目ともつかぬ仲間に対して、
やはりボクたちははじめて会った体で旅をすることになった。
申し遅れたね。
僕の名はカイン。
ロトの血を引く一国の王子、と名乗っておくことにしよう。
もちろん、
言うまでもないことだけど、
王であるボクの父もロトの子孫だ。
だけど、
ロトの子孫であっても、
国を放って旅に出るわけにもいかないから、
旅をするとしたら、
それは第1王子であるボクの役目ということになる。
これは伝承だから、
真実かどうかわからないのだけど、
昔々あるところに、
竜王を倒した15代目かいんという勇者がいたそうなんだ。
15代目なのかどうなのか、
正確な数字はわからないので、
ここではひとまず触れないでおいてほしい。
その15代目勇者かいんは、
父親の名をいたく嫌っていたらしくてね。
「子には自分の父と同じ名をつけるべし」
というロトの掟を破ったらしいんだ。
父親の名はオルテガ、だったらしい。
それで15代目かいんは、
自分の子に「ロト」という名前をつけたそうなんだ。
15代目かいんは、その後、第2王子を授かった。
そして「ミニロト」という名前をつけた。
兄がロトで弟がミニロト。
センスはないが、
他に名前が思い浮かばなかったのかもしれない。
オルテガ-カインスパイラルを断ち切るのだから、
もっとセンスのいい名前で断ち切ってほしかった、
とも思う。
15代目かいんは、
ローレシアとサマルトリアを建国したと伝えられているけど、
実際に国を治めたのは、
かいんの2人の子、ロトとミニロトだったとも言われている。
以来、
「ロト」と「ミニロト」は、
ローレシア王家とサマルトリア王家で、
継がれ継がれている名前なんだ。
だけど、そんなロトとミニロトも、
ロト一族の命名スパイラルからは抜け出せず、
2国に別れた後になって、
また「オルテガ」と「カイン」の名が王家の名前に連なった。
ボクもそのひとりだし、
子ができたら、
きっと、その掟を踏襲する名前をつけることになるだろう。
ボクたちの血族には、
もうひとつ、ムーンブルクという国があるんだ。
同じく、15代目かいんが建国した国で、
かいんの末娘が納めた国だというウワサだ。
それ以上のことは知らない。
いや、知らなかった。
つい先日まで知らなかったんだ。
ところが、
先日、大神官ハーゴンという邪教の神官が、
ムーンブルクを襲撃したという報が届いた。
大神官ハーゴンは、
禍々しい神を呼びだし、
世界を破滅させる気だというんだ。
姉妹国を襲撃されて、
ボクたち、
ローレシアとサマルトリアが黙っているわけにもいかない。
ボクたちはロトの結束で繋がっているんだ。
ボクたちは、
ムーンブルクを救わなければならないんだ。
そしてボクは旅立った。
まず、ボクは、
勇者の泉と呼ばれる試練の洞窟に向かった。
ロトの勇者の旅立ちの儀を行う洞窟だ。
同じくムーンブルクを救うべく立ち上がった隣国も、
きっと同じように動いていると思った。
ボクたち、
ロトの血を引く仲間たちは、
この泉で集うことができると考えていた。
しかし、
ボクたちは勇者の泉で会うことはできなかった。
ボクは探した。
しかし、少し急ぎ過ぎたのかもしれない。
彼は、ボクよりもずっと進むのが遅かったんだ。
サマルトリアから勇者の泉、
勇者の泉からローレシア、
ローレシアからサマルトリア。
すれ違い、行き違えたボクたちは、
長い長いひとり旅をすることになったが、
その長旅の末、
両国の中間の町リリザで、
ついに出会うことができた。
探しに探した王子と出会えて、
ボクはこう言った。
「ボクはサマルトリアのカイン王子です。もしやキミはローレシアのろと王子では!?いやー探しましたよ。さあ力を合わせ共に闘いましょう!」
「ボクはサマルトリアのカイン王子です。もしやキミはローレシアのろと王子では!?いやー探しましたよ。さあ力を合わせ共に闘いましょう!」
【絵:堺むてっぽうさん】
そして、
サマルトリア王ミニロトの第1王子カインと、
ローレシア王オルテガの第1王子ろとの冒険は始まった。
行こう、ろと王子!
ボクたちはムーンブルクを救うんだ!
ローレシア王子ろと:レベル6
サマルトリア王子カイン:レベル1
ぼふい えじぞ きかくぷ ぽぞび つみり とすにぼ ぎるご てなぬ はちろい ずぞ
2人で旅を始めようとしたときに、
ロトの血を引く王女が、
3人目の仲間となるべくボクに駆け寄ってきた。
自分も連れて行ってほしい、と言う。
ボクはそれを「だめだよ、お前は」と跳ね退けた。
王女は、旅立つボクたちの背中に向けて、
恨めしそうに言った。
「お兄ちゃんのいじわるうっ!」
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目次
【1話:出会い】
【2話:銀の鍵】
【3話:ムーンペタ】
【4話:ラーの鏡】
【5話:ドラゴンのツノ】
【6話:ルプガナ】
【7話:アレフガルド】
【8話:大灯台】
【9話:ベラヌール】
【10話:デルコンダル】
【11話:ペルポイ】
【12話:テパ】
【13話:盗賊ラゴス】
【14話:海底洞窟】
【15話:ロンダルキアへの洞窟】
【16話:ロンダルキア】
【17話:ハーゴンの城】
【18話(最終話):破壊神シドー】
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