ボクたちは最終決戦に向けて、
ロンダルキアの祠から、
ハーゴンの城を目指した。
これが最後となるはずだ。
と、思っていたら、
ハーゴン城に着くと、
またアトラスとバズズとべリアルが待ち構えていた。
なるほど、復活の呪文を書いてしまうと、
また復活するのか。
復活の呪文は、
ボクたちが復活するという意味ではなかったのか。
はかぶさの剣を持っていない今回は、
第1戦よりも厳しい条件ではあったが、
1度勝った相手に負けるわけにもいかない。
ただ、
その3体を倒した時点でずいぶんと消耗してしまい、
ルーラで祠へと戻った。
一休みしてから、
ボクたちはまた雪の中に足を踏み出す。
これが最後となるはずだ。
と、何度思ったことだろう。
ボクたちはまたハーゴンの城の塔を上り、
ついに最上階まで辿り着いた。
すると、
部屋の奥で祈りを捧げている者がいた。
大神官ハーゴンだ。
「誰じゃ?私の祈りを邪魔する者は?」
ハーゴンは振り返って言った。
ふふっ。白々しい。
ボクたちのことを知らないわけでもないだろう。
オマエが福引きで散々足止めをした者だよ。
「愚か者め!私を大神官ハーゴンと知っての行いか!?」
また白々しいことを。
知っている。知っているさ、ハーゴン。
ここで会ったが3年目!
ボクは2014年の7月からこの冒険を始めている。
今は2016年の1月だ。
足掛け3年の苦節の末、
やっとここまで辿り着いたんだ!
決着をつけようじゃないか!
「ならば許さぬ!」
ハーゴンはそう言って、イオナズンを唱えてきたよ。
しかし、そんなのはアークデーモンだって使う呪文だ。
もう、喰らいなれたものだよ。
形勢はこちらが有利だった。
ろと王子の稲妻の剣が冴え、
ハーゴンのほうは、かなり苦しそうにも見えた。
しかし、
ちょっと油断していると、
ベホマを使って全快してしまった。
なるほど、そう来たか。
じゃあ、マホトーンで封じるまでだ。
アークデーモンやべリアルと違い、
ハーゴンの呪文はマホトーンで封じられた。
得意分野を奪われたハーゴンは、
甘い息や肉弾攻撃で反撃してくるも、
そんなものは何の脅威でもない。
呪文の使えないハーゴンなんて、
餡の入っていないあんパンのようなものであり、
生きている腐った死体のようなものであり、
知性のあるバーサーカーのようなものであり、
お金を持たないゴールドオークのようなものだ。
怖くもなんともない!のかどうかよくわからない!
それからの戦局はワンサイドゲームとなった。
ハーゴンは、
まるで、
ろと王子の斬撃訓練のためのワラ人形のようだった。
「お、おのれ、口惜しや……」
ハーゴンはそう言って倒れた。
が、それだけでは済まなかった。
ハーゴンは、
「私を倒しても、もはや世界を救えまい!」
と、自らを生贄に捧げて、悪霊の神を呼び出したんだ。
呼ばれて飛び出てじゃじゃじゃじゃ~ん。
破壊神シドーがボクたちの前に立ちはだかった。
シドーはいきなり炎を吐いた。
とにかく熱かった。
ボクは、
防御しても100ほどのダメージを受けてしまう炎の前に、
2ターンも生きていられなかった。
2度目の炎を吐く恐ろしい表情が、
ボクが見たシドーの最後の姿だった。
ボクが目を覚ましたときには、
すでにシドーは倒された後だったよ。
聞くと、
ボクが棺化した後に、
相当な激戦が繰り広げられたらしかった。
ろと王子が斬りつけても斬りつけても、
シドーはベホマで回復し、
サマンサ王女もまたベホマでろと王子を助け、
隙あらばルカナンでシドーを軟体化させ、
戦況が膠着し、
シドーが倒れるまでに、サマンサ王女もシドーも、
5回ずつベホマを唱えたらしかった。
長い戦いだったらしい。
最後の戦いだったのに、
勝利したことをボクは全く知らない。
気が付くと、
どこからともなく美しい声が聞こえた。
「破壊の神シドーは死にました」
声がそう教えてくれたから、
ボクはシドーが倒れたことを知ったんだ。
声は、いつでもボクたちを見守っている、と言った。
「私のかわいい子孫たちに光あれ!」
というのは、いったい誰の声なのだろう。
精霊ルビスの声のようでもあり、違うようでもある。
ボクたちのことを子孫と呼ぶのは誰だろう。
わかった!
きっと、声色を変えた15代目かいんなんだ!
そう思って聞いてみると、
鼻をつまんで話しているようにも聞こえる。
毒舌家だと聞いていたから想像しにくいけど、
意外と美声じゃないか。
しかし、これでラダトーム王ハーゴンを倒した。
ラダトームもアレフがルドも、
これで終わりかもしれない。
そう思って、一応ボクたちは、
ラダトームへと足を運んだよ。
武器屋の隠居だと名乗っていた身なりのいい老人は、
「騙していて済まなかった!わしはこの城の王様じゃったのだよ」
と言って、かっかっか、と笑っていた。
な、なんだって!?
くっ!
だ、騙された!
てっきりハーゴンか、その手下だと思っていたのに、
まさかラダトーム王だったなんて!
ボクは完全に騙されていたんだ!
騙されてはいたんだけど、
やっぱり、
この国はこれで終わりなのかもしれない、
と思う。
この王様じゃ、
今後はこの国はやっていけないだろう。
竜王がアレフガルドを治めたほうがいいと、
ボクは思った。
ボクたちは、
ムーンブルク、サマルトリアを経由して、
ローレシアへと凱旋した。
ろと王子の父、オルテガ王がボクたちを待ち受けていた。
感余ったからだろうか、
父王から数歩のところまで来て、ろと王子が立ち止まる。
進むのをためらうようなろと王子に、ボクは、
「さあ、行きなよ」
と声をかけた。
「なーに?照れるなんて、あなたらしくないわよ」
とサマンサ王女も言った。
確かに、無骨で寡黙で無愛想で不器用なろと王子だ。
ここで照れるなんて、らしくない。
なのに、顔を赤らめているのは、どういうことだろう。
そう考えたときに、
ボクはピンときたよ。
サマンサ王女は、
きっと、そういうつもりで言ったわけじゃないだろう。
しかし、
今の言葉を聞いたろと王子がどんな風に思うのか、
考えただけでも笑っちゃうじゃないか。
ボクはろと王子の背中を強く叩いたよ。
行け、ろと王子!
勇気を出せ!
ボクたちは勇者ロトの末裔だぞ。
勇気だけは、誰にも負けないはずだ。
強敵に立ち向かうばかりが勇気じゃない。
怯えても進むのが勇気なんだ。
さあ、父オルテガ王に報告するんだ!
そして、皆に伝えるんだ!
キミの妻となる人物の名を!
どうせ本人にも伝えていないんだろう。
シドー戦で、
ボクのいない間に伝えられたはずもない。
ボクはもう1度ろと王子の背中を叩いた。
背中を叩いただけでも伝わってきた。
ろと王子の心臓の鼓動だ。
その鼓動は、
触れたボクの掌が火傷しそうなほどに熱かった。
聞いたボクの鼓膜が震えるほどにうるさかった。
それを感じ取ったとき、
ボクまで胸を締め付けられるような思いがしたよ。
誰も何も言わない奇妙に長い間が、
ボクにも苦しく思えた。
ただ最初に口を開くだけでも勇気が要るほどだ。
そして、そんな中で、ろと王子が動いた。
意を決したように、
ゆっくりとオルテガ王の前へと進み出る。
そのときの、ろと王子のしどろもどろ具合といったら、
もう見ていられなかったよ。
しかし、ボクは嬉しかった。
本当に嬉しかった。
涙が出るほどにね。
こういう形のハッピーエンドになるなんて、
想像もしていなかったよ。
ろと王子を見据えて、オルテガ王は言った。
「さすが我が息子!ロトの血筋を引きし者!」
確かに見せてもらったよ、ろと王子。
キミの勇気をね。
「今こそお前に王位を譲ろう!引き受けてくれるな?」
気の早いオルテガ王だよ。
でも、これで、
王と王妃の同時誕生だ。
2人で力を合わせて、
ムーンブルクを作り直すんだ!
もちろんボクだって協力を惜しみはしない。
そういう理由で、ボクはこの旅を始めたんだ。
ローレシアとサマルトリアの発展、
そしてムーンブルクの再建。
それから、余計なお世話かもしれないけど、
早く子供を産んでくれよ?
ローレシアは代々無骨者の血筋で、
婚期がサマルトリアよりも遅いだろう?
おかげで、
15代目かいんの子、ロトとミニロトは年が近かったのに、
キミとボクの父ミニロト王は、
ずいぶんと年が離れてしまっている。
早く、ボクと同じ代のオルテガ王子を
ローレシアに誕生させてくれ。
「ローレシアの新しい王の誕生じゃ!」
とオルテガ王の喜ぶ顔が、
見ているボクの心も嬉しくさせてくれた。
「さあカイン王子も、サマンサ姫もこちらへ」
気を使ったのか、
オルテガ王は、ボクのほうを先に呼んでくれた。
もっとも、
私事と公事をわきまえるのが王族なんだから、
当然といえば当然だ。
オルテガ王は、
ボクとサマンサ王女の肩を無骨にバシバシと叩いた。
「これからも3人で力を合わせ、世界を守ってくれ」
オルテガ王に言われるまでもない。
はじめからそのつもりだ。
ボクは道具袋に手を入れて、ひとつの道具を握った。
ろと王子とサマンサ王女も考えは同じだったみたいだ。
ボクたちは、握った拳を3人の真ん中でコツンと合わせた。
拳の中で、リンッ、と音が響く。
ボクたちは3人でひとつだ。
魔よけの鈴のその音が、
ボクの耳には心地よい。
ろと:レベル31
HP178、力127、素早さ90、攻撃力207、守備力125
稲妻の剣、ロトの鎧、ロトの盾、ロトの兜
カイン:レベル29
HP152、MP105、力65、素早さ99、攻撃力70、守備力97
隼の剣、ミンクのコート、力の盾
サマンサ:レベル23
HP140、MP151、力29、素早さ117、攻撃力44、守備力93
いかづちの杖、水の羽衣
こうして、ボクたちの冒険は終わった。
しかし、ボクたちはこれからも自分の道を歩く。
人生の旅は続く。
この道、わが旅。
完
【はじめから読む】
目次
【1話:出会い】
【2話:銀の鍵】
【3話:ムーンペタ】
【4話:ラーの鏡】
【5話:ドラゴンのツノ】
【6話:ルプガナ】
【7話:アレフガルド】
【8話:大灯台】
【9話:ベラヌール】
【10話:デルコンダル】
【11話:ペルポイ】
【12話:テパ】
【13話:盗賊ラゴス】
【14話:海底洞窟】
【15話:ロンダルキアへの洞窟】
【16話:ロンダルキア】
【17話:ハーゴンの城】
【18話(最終話):破壊神シドー】
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