やあ。
久しぶりだね。
ボクはカイン。
サマルトリアの王子さ。
そして、ボクの仲間は、
ローレシアのろと王子と、
ムーンブルクのサマンサ王女。
ボクたち、
というのは、僕とろと王子のことだけど、
2人でムーンブルクを助けようとして、
それぞれサマルトリアとローレシアを旅立ったんだ。
ところが、
健闘空しく、
ムーンブルクを助けるには至らなくて、
滅びの現実を目にしてしまった。
不幸中の幸いというべきか、
呪いで犬の姿にされていたサマンサ王女だけは、
なんとか助けることはできた。
しかし、
ロトの血を引く3人が合流できたとはいえ、
ボクたちが目的を果たせなかったのは事実だ。
ムーンブルクを守れなかったんだからね。
苦い思いをさせられたよ。
苦虫を噛まされた思いだ。
いや、苦汁を飲まされた思いだ。
いやむしろ、辛酸を嘗めさせられたと言ってもいい。
そんな苦くて辛くて酸っぱい思いをさせられたボクたちは、
やはりハーゴンをこのままにはしておけない。
このまま放っておけば、
いずれハーゴンが世界中を
ムーンブルクのようにしてしまうかもしれないんだからね。
それに、
ロトの子孫であるボクたちが屈することは許されない。
ロトという矜持が、ボクたちを突き動かすんだ。
必ずハーゴンを打ち倒してみせる!
ジッチャンの名にかけて!
いや、ひいじいちゃんかな。
いやいや、もっと前だ。
15代前よりもっと前のロトの名にかけて!
とはいえ、
ハーゴンがどこにいるかわかったわけじゃない。
ボクたちの次にやるべきは、
世界を回ってハーゴンを探すことだ。
いったいハーゴンはどこにいるのか。
それが最大の命題だよ。
聞くところによると、
どこかの塔に風のマントというものがあるらしい。
そのマントを身につけると、
ムササビのように空を飛べるらしいんだ。
……ムササビか。微妙だな。
どうせならペガサスぐらい飛びたいものだよ。
ムササビじゃ、
高いところには行けないじゃないか。
そうは言うものの、
他に旅のあてがあるわけじゃない。
場所はわからないが、
その塔を探してみようじゃないか、ろと王子。
旅立ちに際して、
ボクはまた新しい武器を買ったよ。
鉄の槍だ。
これでナイフよりもずっと遠くの敵と戦うことができる。
お下がりの聖なるナイフはサマンサ王女にあげるとしよう。
ひのきの棒でマンドリルに立ち向かう王女の姿を見るのは、
さすがに忍びないからね。
そんなサマンサ王女だったけど、
レベル4にもなると、
バギの呪文を覚えたみたいだ。
ボクのギラの10倍役に立つ呪文だ。
ボクのギラでは、
マンドリル4匹を屠るのに8ターンかかってしまうのに、
サマンサ王女のバギでは1ターンで決着をつけれてしまうんだ。
これはいかん。
ボクの出番がなくなってしまうじゃないか。
王女はベホイミの呪文も覚えている。
これもボクのホイミの3倍の回復力を持つ呪文だ。
しかし、それを理由に、
サマンサ王女のほうがいい呪文使いだ、
ということになるわけじゃない。
基礎を知らずにいきなり大呪文を使えるサマンサ王女は、
ウサギを狩るのにも、
ライオンを倒せるような呪文を使ってしまうんだ。
そして、簡単にMPが尽きてしまうんだ。
ウサギにはウサギとの、
ライオンにはライオンとの戦い方というものがあるのを
王女は知らないんだ。
小回りの利く戦い方というのを
今後は教えていかないといけないのかもしれない。
ボクたちは、
ムーンペタを西に向けて出発し、
ムーンブルクを越えて、
川の下のトンネルのような教会を通り過ぎ、
広い砂漠のある大陸を北に抜けたよ。
いや、
実はそう簡単に抜けることができたわけじゃないんだ。
お化けネズミやマンイーターに阻まれて、
何度もムーンペタに戻ってはまた挑戦するという、
その繰り返しだったよ。
おかげでお金も貯まり、
ろと王子は鋼の剣と鋼の盾を買うこともできた。
……鋼の剣か。
ボクも装備してみたいものだ。
剣と魔法で戦うと自称しているボクだけど、
剣と言っても、実は銅の剣ぐらいしか扱えないんだ。
あとは、
棒とか、ナイフとか、鎌とか、槍。
とても魔法剣士とは言えないのは内緒だ。
買い物ついでに薬草を仕入れたときに、
3回連続で福引券をもらったよ。
薬草3個に福引券3枚だ。
なんて太っ腹な道具屋だ。
あるいは、ハーゴンの手下なのか。
そんな風にも思ったよ。
だけど、
道具屋が太っ腹なのとは逆に、
いつも太っ腹だった福引屋のほうが渋かった。
福引は3回連続でハズレだったんだ。
はじめはハーゴンの仕業かと思ったけど、
どうやら商店街のキャンペーンだったみたいだ。
結局賞品はもらえないんだけど、
道具屋の売り上げは上がるわけだ。
それならこっちだって考えがある、
とボクだって思ったさ。
どうせ当たらない福引なんてしないで、
福引券をもらった矢先に、
その道具屋で売ってしまおう、
なんて考えだってあるわけだ。
15ゴールドで薬草を買って、
53ゴールドで福引券を売れば、
こっちのほうが大黒字なんだからね。
しかし、なぜだろうね。
当たらないかもしれないと思っても、
どうしてもボクは福引券を売れないんだ。
どうしても福引を回したくなるんだ。
もしかすると、
ギャンブラーの血が流れているのかもしれない。
父王ミニロトの血脈が受け継がれているわけだからね。
どうしても、ロトよりもミニロトのほうが、
ギャンブル好きに聞こえてしまうんだ。
実際、
ろと王子は、
まったくギャンブルに興味を持っていないんだからね。
ロトの血脈は英雄の一族であるのに、
ミニロトの血脈は、まるで英雄の雰囲気がないんだ。
さて、
準備を整えたボクたちは、
また西の砂漠を目指した。
そして、
砂漠を北に抜けたところに、
塔がそびえ立っていた。
ついに見つけたよ。
風のマントがあるというどこかの塔というのが、
この塔のことなんだろう。
ボクたちはさっそく塔に潜入したよ。
この塔の1階には、
旅の商人風の男がいてね。
「旅の人、知ってますか?」
と、いきなり話しかけてきたんだ。
ボクには何のことだかわからなかったんだけどね、
ろと王子は「はい」と答えてしまったんだ。
商人風の男は、
「まだ何も話してないのに、ま、いいか」
と言ったまま口を閉ざしてしまってね。
結局何もわからなかったのだけど、
ろと王子が見栄っ張りなのだけはわかったよ。
知らないのに知っているフリをするみたいだ。
塔の中は恐ろしい魔物たちで溢れていたよ。
中でもメドーサボール。
たくさんの蛇を使って、2回攻撃をするんだ。
なんてズルいんだ!
1ターンに2回も攻撃するなんてズルいじゃないか!
ボクたちはそう叫びながら、
3人で3回攻撃してメドーサボールを倒したよ。
いや。
ボクたちはズルくない。
勝てば官軍。死人に口なし。
ズルいことを伝えるべき存在が、
もう死んでしまっているのだからね。
勝ち続けている限り、
ボクたちがズルかったとしても、
誰もそれを知ることはできないんだ。
英雄なんてそんなものさ。
ズルかった事実なんて、
後世には残らないんだ。
英雄となるべきボクたちは、
ズルかった事実をもみ消さなくちゃならないんだ。
そうしていると、
今度は、メドーサボールが4匹がかりで襲ってきてね。
勝てば官軍、
というボクたちの話を聞いていたのかもしれない。
勝って官軍になるつもりに違いない。
4匹の2回攻撃で、8回攻撃をするつもりなんだからね。
しかし、
多勢に無勢の状態で、
ボクたちがただただやられると思うかい?
幾多の戦いを繰り返し、
サマンサ王女も賢くなっているんだ。
ウサギにはウサギ、
ライオンにはライオン、
そして蛇には蛇との戦い方がある。
サマンサ王女は、
先刻覚えた、マヌーサで、
メドーサボールの蛇たちの目をくらませたよ。
そこから先は言うまでもないね。
メドーサボールたちは、
力自慢のろと王子の、
新しい鋼の剣の錆と化したよ。
やがてボクたちは、
塔の最上階に到達したよ。
だけど、
風のマントなんてどこにもなかった。
いや、むしろ、
風のマントがあれば、
ここからムササビのように飛び降りることで、
川の向こう岸まで飛んで行けるような気がする。
しまった。
ここじゃなかったんだ。
ボクたちは塔から飛び降り、
川の手前に着地した。
だいぶ助走をつけたつもりだったんだけどね。
やっぱり川を飛び越えることはできなかった。
風のマントがあるのは、
また別の塔なんだね、きっと。
ムーンペタに引き返そうとしたボクたちは、
少し気になって、
塔の1階にいる商人風の男にもう一度話を聞きに行ったよ。
今度こそ「いいえ」と言うためにね。
すると、
男は教えてくれたよ。
「ここがドラゴンのツノと呼ばれる有名な双子の塔です」
ってね。
ろと王子め。
最初から聞いておけばよかったものを。
いずれにしても、
ボクたちは戻らなければならない。
風のマントを探しにね。
そして、
風のマントを手に入れて、
またここへ戻って来よう。
また会おう、商人風の男よ。
ボクたちは必ず戻ってくる!
アイルビーバック!
ろと:レベル13
カイン:レベル11
サマンサ:レベル7
りひう きびけ ぱぴあぼ
ぺのや ゆちへ ぴにうは
たたた ざおち たげずぜ
ろふり こへり そおつに
めじく がぷの ぽぜごぜ
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目次
【1話:出会い】
【2話:銀の鍵】
【3話:ムーンペタ】
【4話:ラーの鏡】
【5話:ドラゴンのツノ】
【6話:ルプガナ】
【7話:アレフガルド】
【8話:大灯台】
【9話:ベラヌール】
【10話:デルコンダル】
【11話:ペルポイ】
【12話:テパ】
【13話:盗賊ラゴス】【14話:海底洞窟】
【15話:ロンダルキアへの洞窟】
【16話:ロンダルキア】
【17話:ハーゴンの城】
【18話(最終話):破壊神シドー】

