ムーンペタに戻ったボクたちは、
今度は東に向けて足を進めたよ。
すると、
こっちにもまた別の塔があったんだ。
ボクはピンと来たね。
この塔に風のマントがあるんだと。
そう思って得意気になっていたら、
ろと王子とサマンサ王女もピンと来た顔をしていたんだ。
なんだ。
みんなわかってるじゃないか。
ボクの直感が優れているわけじゃなかったのか。
残念だよ。
ボクたちは、勇んで塔の階段を駆け上がったよ。
とにかく目の前の階段を登り続けると、
最終的には何もない狭い小部屋に辿り着いてしまった。
ホントに狭いんだ。
どのくらい狭いかというと、
階段とボクとろと王子とサマンサ王女がいるだけで、
もう他に何も部屋には入れないほど狭いんだ。
ところが、だよ。
そんなに狭いにもかかわらず、だよ。
魔物はそんなところでも襲って来るものなんだ。
このギュウギュウの部屋で、
なんとタホドラキーが5匹とお化けネズミ1匹、
合計6匹の魔物が現れたんだ。
6匹と3人と階段1個。
部屋の広さは4マス。
いったいボクたちはどんな風に押し込まれているのだろう。
タホドラキーが空を飛んでいるのが、
せめてもの救いだった。
ギュウギュウの戦いで、
タホドラキーは5匹がかりでルカナンを唱えるわけだよ。
ボクたちの守備力は下限に到達し、
硬い硬いろと王子の鋼の鎧なんて、
もうコンニャクみたいにグニャグニャになったよ。
しかし、それでよかったのかもしれない。
コンニャクになったおかげで、
狭い部屋の中でも、密着状態でも、
柔軟に戦えたんだからね。
サマンサ王女のゼロ距離バギなんて見事だったよ。
密着しているタホドラキーにはダメージを与えれるのに、
自分は無傷なんだからね。
大魔法使いだと思っていたら、
意外にも、実は職人だったみたいだ。
そうして、
紆余曲折あったものの、
ボクたちは塔の一室で、
念願の風のマントを手に入れることができた。
はじめはボクが装備しようとも思ったんだけど、
ボクはボクでお気に入りのマントをいつも身につけてるから、
ここはろと王子に譲ることにしたよ。
考えてもみれば、
ろと王子がムササビになれば、
ボクとサマンサ王女はろと王子に掴まって飛べばいいけど、
ボクがムササビになったら、
ろと王子に掴まれてしまうことになるじゃないか。
華奢とは言わないが、
ボクはスマートな身なりなんだから、
筋肉マッチョムキムキボディビルダーのような、
ろと王子に掴まれたりしたら、
墜落することは疑いない。
ろと王子のほうが、
どう考えたって適役だろう。
ボクがそう思ってろと王子のほうに目を向けると、
彼は特に不満を口にしなかったよ。
何もしゃべらないということは、
何も不満はないということだろう。
ムササビ役は、ろと王子に決定だ。
風のマントを手に入れたボクたちは、
またドラゴンのツノへと戻った。
また来たよ、商人風のキミよ。
彼はまた「知ってますか?」と聞いてきたので、
ボクたちは「はい」と答えた。
今度は本当に知ってるんだからね。
すると、商人風の彼は、
「まだ何も言ってないのに」
と、何度も首をかしげていたね。
どうやらボクたちを覚えてないらしい。
もしかしたら、
毎日誰かがここにやって来るのかもしれないね。
彼は毎日、新しい冒険者にそれを教えてるんだ。
2回来るなんて思っていなかったんだろう。
そんな彼に背中を向けて、
ボクたちはドラゴンのツノを登り、
塔のてっぺんから、
ムササビと化したろと王子に掴まって川越えを果たしたよ。
実に爽快な空の旅だった。
川を越えた先には、
港町があった。
町娘に聞くと、
ルプガナという町であるらしい。
ボクたちはひとまず宿に泊まり、
その後で薬草を買った。
この町の道具屋も気前のいい店主でね。
礼のヤツをもらったんだ。
ボクはすぐに福引屋に行って回したよ。
1枚しか券をもっていなくても、
3回は回させてくれた。
どうやら、
券を何枚持っていても、
3回が相場みたいだ。
どっちにしてもハズレだったんだから、
それでどうだということはないんだけどね。
これは想像だけど、
福引台の後ろから、店主が、
福引のレーンの回転を手で止めて、
調節してるんじゃないかと思う。
1回じゃかわいそうだと思えばもう1回券が当たるように、
そろそろ頃合いかと見ればハズレるように。
店主の気分次第で、
何かが当たるかもしれないし、ハズレるかもしれない。
そんなところだろう。
ボクたちはこの町の隅で、
魔物の赤ちゃんと戯れる若い女性を見かけたよ。
楽しそうだな、と思って見ていると、
彼女はボクたちに駆け寄って助けを求めてきたんだ。
戯れていたわけじゃないというのが、
そこではじめてわかった。
赤ちゃん魔物は2匹いたんだけど、
女性がボクたちの後ろに隠れたんだから、
魔物も諦めればいいのに、
愚かなことに、ボクたちに襲いかかってきたんだよね。
魔物であっても、
若気の至りというものはあるらしい。
襲い来る赤ちゃんたちの前にサマンサ王女が立ちはだかり、
ラリホーでもって、あっという間に眠らせてしまったよ。
サマンサ王女も若いのに、
赤ちゃんを寝かしつけるのが上手だなんて、
将来有望じゃないか。
ろと王子、よかったじゃないか。
そんな声をかけてはみたが、
彼はボクが言った意味がわからなかったみたいだ。
朴念仁め。
そんなこともわからないのか。
わからなさすぎて、
せっかく寝かしつけた赤ちゃんを
鋼の剣で斬り殺しているじゃないか。
空気ぐらい読まないか、ろと王子。
女性に嫌われるぞ。
それを見ていたように、
別の町娘が、ろと王子に声をかけてきた。
そしてこんなことを言う。
「あら、可愛い女の子ね。大事にしてあげてね」ってね。
もちろん「可愛い女の子」というのは、
赤ちゃん魔物のことじゃない。
サマンサ王女のことだ。
ろと王子はサマンサ王女のほうをチラリと見て、
赤い顔をして目をそらしていたよ。
なんだ。
わからなくもないんじゃないか。
このムッツリ朴念仁め。
心配するな、ろと王子。
ボクたちは血が繋がってはいるが、
4親等よりも離れた間柄だ。
何の問題もない。
大切にしてあげるといい。
ボクはろと王子の肩にポンと手を乗せた。
と、ろと王子は赤い顔をしたまま口をぱくぱくさせていた。
何か言おうとしたのかもしれない。
聞き取れなかったけど、
「自分、不器用ですから」
なんてことを言ったのかもしれないね。
さて。
結果的にではあるけど、
ボクたちは、
魔物に襲われていた女性を助けたわけだ。
いたく感謝されてね。
その女性のおじいさんに、
船を貸してもらえることになったんだ。
ありがたい話だ。
さっそく、
ボクたちは船に乗って、
ルプガナから海を挟んだ対岸へと足を踏み入れた。
アレフガルド。
ボクたちロトの末裔が知らないことはあり得ない、
伝説のはじまりの地だ。
勇者ロトが誕生し、
その一族が長い間暮らしてきたアレフガルド。
ボクたちは今、
伝説の大陸を踏みしめている。
感慨深いものがあるじゃないか、ろと王子。
それにサマンサ王女。
ボクたちも、
この地に先祖がいたからこそ、
今があるわけだからね。
しかし、
聞くところによると、
そのアレフガルドも、
今ではすっかり変わってしまっているらしい。
どう変わっているかというと、
ラダトームの王様が行方不明になっていると言うんだ。
これは事件の匂いがするよ。
ラダトーム城に急ごうじゃないか。
ところが、
急ぎ過ぎたのが災いへと転じた。
サマンサ王女が死神に殺されてしまったんだ。
油断したよ。
いや、確かにボクも油断はしたんだけどね。
しかし!
それよりも、ろと王子!
何をやってるんだ!
サマンサ王女を守らなくてどうする!
大層に構えているその鋼の剣は何だ!
不器用だからじゃ済まないんだぞ!
ナマクラ剣か!
いい機会だから言っておこう。
器用貧乏とは言われているが、
一応ボクはひとりでもやっていけるんだ。
怪我をすれば回復できるし、
硬い敵がいれば呪文で戦える。
敵の呪文だって、
ボクは封じることができるんだ。
もちろん、
ろと王子ほどじゃないが、
剣や槍で戦うことだってできる。
だけどね、ろと王子!
キミはそうじゃないだろう!
回復はできない!
硬い敵には立ち向かえない!
敵の呪文は甘んじて受けるしかない!
そんなキミにとって、
サマンサ王女の助けが重要なのがわかっていないのか!
もちろん王女だってそうさ。
強い呪文を使えたって、
打たれ強いわけじゃない。
キミが体を張って守らなければ、
彼女は得意の呪文を唱える暇すらないんだ。
呪文が封じられたり、
呪文が効かない敵に遭遇したりしたら、
サマンサ王女は何もできないんだ。
だから、サマンサ王女にはキミが必要なんだよ。
その朴念仁の筋肉頭でよく考えるといい。
それからボクとろと王子は気まずい雰囲気になって、
会話が途切れていたんだけど、
ラダトーム城に着いて、
神父さんのおかげでサマンサ王女が息を吹き返したところで、
ボクとろと王子のわだかまりも消えた。
謝るタイミングがなかったんだけど、
ボクも少し言いすぎたと思っていたんだ。
ろと王子のほうも、
少し反省したみたいで、
元気に笑うサマンサ王女に、
申し訳なさそうに頭を下げていたよ。
サマンサ王女には、
何のことかわからないかもしれないが、
ろと王子の心の中で何かが変われば、
それでいいんだとも思う。
とにかく、
サマンサ王女がいることで、
ボクたち3人はうまく行ってるってことさ。
冒険を始めたときからサマンサ王女がいたわけじゃないけど、
だけど、今となっては、
もうサマンサ王女がいない冒険は考えられない。
今回、それをつくづく感じたよ。
ボクも、それは勉強になったところだ。
屈託のない笑顔を見せるサマンサ王女と、
それを見て照れ臭そうに頭をかくろと王子。
ま、いいと思うよ、ボクは。
ボクは彼らに見えないところで、
神父さんに160ゴールドの献金を渡したよ。
いや、献金じゃなくて募金かな。
いや違った、お布施だったね。
あれ、それも違う?寄付なの?
まぁいいや、
とにかくお支払いを済ませて、
ボクは先に教会を出たってわけさ。
ボクが道具屋で魔よけの鈴を3つ買って出てきたところで、
ちょうど、ろと王子とサマンサ王女も教会から出てきたよ。
ボクは2人に魔よけの鈴を渡した。
3人で1個ずつだ。
お揃いのお守りだよ。
ボクたちは3人でひとつなのさ。
ひとりはみんなのために。
みんなはひとりのために。
ろと:レベル14
カイン:レベル12
サマンサ:レベル8
もとべ ぱろぜ せすつせ
たうた はげぶ ぬろねた
しあじ こほけ ぎごぷゆ
あとか ろへき すもぴつ
るもむ あつめ や
ところで、
ラダトーム城で、海に沈んだ財宝の話を聞くことができた。
だから、財宝を求めて、
ボクたちはもう一度船を出して、
財宝が沈んだという小さな浅瀬まで行ったんだ。
そこから先はろと王子の役割だろう?
潜って財宝持って泳いで来るなんて、
正気の沙汰じゃない。
正気の沙汰じゃないけど、
ろと王子なら可能だろう。
よし、頼んだよ、朴念仁。
大丈夫だ、
さっきあげた魔よけの鈴があるじゃないか。
溺れたり死んだりはしないさ。
最終的に、
人工呼吸はサマンサ王女がしてくれるだろう。
言うまでもないが、
ボクはやらないけどね。
【続きを読む】
【前に戻る】
【はじめから読む】
目次
【1話:出会い】
【2話:銀の鍵】
【3話:ムーンペタ】
【4話:ラーの鏡】
【5話:ドラゴンのツノ】
【6話:ルプガナ】
【7話:アレフガルド】
【8話:大灯台】
【9話:ベラヌール】
【10話:デルコンダル】
【11話:ペルポイ】
【12話:テパ】
【13話:盗賊ラゴス】
【14話:海底洞窟】
【15話:ロンダルキアへの洞窟】
【16話:ロンダルキア】
【17話:ハーゴンの城】
【18話(最終話):破壊神シドー】
ドラクエブログランキング

【ドラクエブログ相互読者希望】

【続きを読む】
【前に戻る】
【はじめから読む】
目次
【1話:出会い】
【2話:銀の鍵】
【3話:ムーンペタ】
【4話:ラーの鏡】
【5話:ドラゴンのツノ】
【6話:ルプガナ】
【7話:アレフガルド】
【8話:大灯台】
【9話:ベラヌール】
【10話:デルコンダル】
【11話:ペルポイ】
【12話:テパ】
【13話:盗賊ラゴス】
【14話:海底洞窟】
【15話:ロンダルキアへの洞窟】
【16話:ロンダルキア】
【17話:ハーゴンの城】
【18話(最終話):破壊神シドー】
ドラクエブログランキング

【ドラクエブログ相互読者希望】

- ドラゴンクエスト25周年記念 ファミコン&スーパーファミコン ドラゴンクエストI・II・III.../スクウェア・エニックス

- ¥4,567
- Amazon.co.jp
- ドラゴンクエスト25周年記念 ファミコン&スーパーファミコン ドラゴンクエストI・II・III.../スクウェア・エニックス

- ¥1,620
- Amazon.co.jp