さすがは、ろと王子だったよ。
結局、サマンサ王女の人工呼吸など、
何の必要もなく、
ろと王子は自力で沈んだ財宝を持ち帰って来たよ。
ボクたちは早速、
財宝を持ち主のところへと運んだ。
財宝の所有者は、
ルプガナの大商人だ。
大商人は、財宝が戻ってきたことを
いたく喜んでね。
お礼に、と、
山彦の笛、というオカリナをくれたよ。
ろと王子。早速吹いてみたまえ。
ちなみに、先に言っておくが、
キミが吹いた後には、ボクは吹かないからね。
サマンサ王女が吹くこともないからね。
ろと王子が山彦の笛を吹いてみたが、
何も起こらなかった。
なんだ?山彦が返ってくる笛じゃないのか?
それとも、ろと王子が上手く吹けなかったのか?
よくわからないところはあるけど、
ろと王子、上手く吹けるように、
練習しておいてくれよ。
ところで。
ラダトーム城では、
王様が行方不明だと聞いていたので、
ハーゴンにさらわれてしまったのか、
と、心配していたんだけど、
兵士の話を聞くと、
王はハーゴンを恐れて隠れてしまった、
ということだった。
「情けない事です」
と、兵士は嘆く。
ずいぶんと気の弱い王様だ。
と、
素人なら思ってしまうことだろう。
しかし、
ボクは、そんな手には引っ掛からないよ。
ボクの名前はコナンではなくカインだが、
名探偵カインの手にかかってしまえば、
王様がいなくなった謎なんて、
すぐに解き明かせるというものだよ。
王様を連れてくるのは難しいのかもしれないが、
王様の正体が、ボクにはすぐわかったよ。
王様は、ハーゴンを恐れて隠れたんじゃない。
王様がハーゴンなんだ。
ハーゴンとしての仕事があり、
ハーゴンとしての姿がある。
そのままラダトームに居続けることができない。
だから、身を隠したんだ。
兵士や国民たちは、
まだそのことに気付いていないんだ。
そう考える理由は、
ハーゴンが現れた時期と、
王様がいなくなった時期が同じというだけじゃない。
ここラダトームには福引所がないんだ。
福引きとハーゴンは密接な関係にあるんだ。
どこにでもある福引所が、
ラダトームにだけないなんて、
作為的なものを感じるじゃないか。
一部の人の話によると、
王様は武器屋の2階に隠れている、
なんて言われてもいるが、
それも偽物だとボクは考えている。
堂々と姿を見せると、
見破られてしまうから、
武器屋の2階に隠れているという体で、
姿を見せずにいるだけだ。
真実を映しだすラーの鏡があれば一発なんだけど、
アレはサマンサ王女を映したときに割れてしまったんだ。
今となっては、
王様が本物か偽物かを確認する術はない。
いや、術はないというか、
見たらわかるんだ、きっと。
だから姿を隠しているんだ。
というか、つまり偽物なんだ。
本物は大神官ハーゴンを名乗っているんだからね。
さて、
かくして、
ラダトーム王の雲隠れの謎は、
このボクの推理によって見事に解決したわけだ。
次にボクたちは、
アレフガルドを散策することにした。
この地はロトのゆかりの地だからね。
ボクたちにとっても、
大きな意味があるはずだと思うんだ。
と、思ってラダトームを出たら、
3歩で敵が出た。
死神3匹と泥人形2匹だ。
少し前に説教したにも関わらず、
ろと王子の不手際によって、
またサマンサ王女が死んでしまったよ。
1度ならず2度までも。
死神の鎌の切れ味を
まざまざと見せつけられたよ。
ボクたちは、
3歩の距離をルーラで引き返し、
教会で、サマンサ王女を生き返らせようとしたさ。
でもね。
お金が足りないんだ。
寄付が足りないから生き返らせてあげない、
と、神父は言うんだ。
なんて商売的な神父だ。
とても神を崇拝している者の言葉とは思えない。
もしかすると、邪教の神父なのかもしれない。
王様がハーゴンなのだから、
神父が教徒だとしても何の不思議もない。
しかし、
邪教にすがってでもサマンサ王女を助けたいというのが、
ボクたちの思うところだ。
サマンサ王女の棺桶からキメラの翼を取り出して、
それを売ったお金で邪教の商売神父に支払いを済ませ、
ボクたちはサマンサ王女と再会を果たした。
帰ってきたサマンサ王女と、ろと王子と、
ボクたちはまた3人でアレフガルドの散策に戻った。
そして、
聖なる祠と呼ばれる場所で、
ひとりの老人と出会った。
老人は、
ボクらがロトの子孫だと名乗ると、
「愚か者よ!」と叱責して、
ボクらを追い払った。
曰く、
まことにロトの血を引いているならば、
その印を持って来い、ということなんだそうだ。
3人の王族が揃って旅をしているのに、
身分証明ができないなんて、
なんとも世知辛い話じゃないか。
ところで、
老人の後ろに、
旅の扉があったから、
愚か者は愚か者らしく、
何も考えず、浅はかに飛び込んだよ。
すると、
どこともわからない島の祠に着いたんだ。
この島の祠には、
合計3つの旅の扉があって、
あちこちに繋がってはいるが、
鍵が合わない扉に遮られて、
結局、あちこちへと移動することはできなかった。
その代わり、
面白いことが起こったんだ。
ろと王子の、
山彦の笛の腕前が上達してね。
どこそこで練習をしていたみたいだけど、
ついに山彦が返ってきたんだ。
はじめは、
山彦のほうも、
ろと王子が吹いていたのかと思ったんだけど、
どうやらそうじゃなかった。
笛の音を跳ね返す物が存在するということだったんだ。
ボクたちは祠の中をくまなく探した。
そして、発見したんだ。
太陽の紋章をね。
これが何なのかはわからない。
しかし、
この紋章もやまびこの笛も、
とても重要な意味を持つんだと、
ボクのカンが告げているんだ。
紋章を手に入れたボクたちは、
また旅の扉を使って、
愚か者の老人のいる聖なる祠へと戻ってきたよ。
そして、
その瞬間、ボクは天啓を閃いたよ。
まことのロトの血を引く者の印、
つまりロトの印のことだ。
伝承で聞いたことがあったのを思い出したんだ。
ロトの血を引く15代目かいんは、
毒の沼地を探してロトの印を見つけたんだとね。
思い立ったら、すぐ行動だ。
ボクたちは、
毒の沼地に浸かって、沼をくまなく探した。
サマンサ王女が弱ってきているみたいだが、
ろと王子が抱きかかえればいいことだ。
15代目かいんだって、
ローラ姫を抱いたまま冒険を続けたと、
おとぎ話では言われているからね。
さて、
そんな話はいいとして、
サマンサ王女だけじゃなくて、
ボクもろと王子も弱ってきてしまってね。
結局ロトの印を見つけることはできなかった。
というか、
おそらく、ここにはないんだ。
よく考えたら、
15代目かいんが1度拾ったものを
また毒の沼地に放り捨てるようなことを
するわけがないじゃないか。
とも思うけど、
15代目かいんの話を伝え聞くに、
あり得ないとも言い切れないような性格だったと、
そう聞いたこともあるんだった。
ロトの印のことは、一旦諦めて、
ボクたちは、
次に竜王の城を目指したよ。
初代ロトも15代目かいんも、
虹の滴で橋を架けたと言われているけど、
時代は流れ、
そんなことしなくても、
今では普通の橋がかかっていた。
アレフガルドの人も、
さすがに気付いたんだろう。
何度も虹の滴使わないと行けないなんて、
あまりにも愚かしいからね。
聖なる祠の老人でなくても、
ボクでも愚かだと思ってしまうからね。
そういうわけで、
今では、竜王の城へ行くのは簡単なんだ。
そもそも、
実は、その橋を渡る必要もなくて、
ラダトームから船で渡れるようにもなっているんだ。
とにかく、
かつてのロトたちと違って、
ボクたちが竜王の城に行くのは簡単なんだ。
竜王の城で、
ボクたちは、
伝説の剣であるロトの剣を見つけた。
かつては王者の剣とも呼ばれていた、
ロトの一族にしか使いこなせない名剣だ。
もちろん、ボクもロトの一族だからね。
当然ロトの剣を扱えるに決まっている。
……はずだと思っていた。
でも、
剣を振るってみようとしてわかってしまった。
……この剣は、ボクには扱えない。
そのとき、
ボクはえも言えない不安に陥った。
急に、息が詰まるほど苦しくなった。
目の前が暗くなった。
もしかすると、
ボクはロトの子孫じゃないんじゃないのか。
だって、そうだろう?
ロトならば、当然扱えるはずの剣なんだ。
魔法使いであるサマンサ王女はともかく、
ボクは魔法剣士なんだ。
ロトの子孫で剣士であるなら、
ロトの剣を扱えないはずがない。
つまり……
ボクはロトの血を引いてなかったんだ。
だから……
だから愚か者と言われたんだ。
だから印を持って来いと言われたんだ。
印を持たず、剣を扱えないボクは、
自分の身を証明できない。
ボクは……ロトじゃないんだ……
ボクは、
すぐに剣をろと王子に渡したよ。
装備できないことを気取られるわけにはいかないんだ。
剣を扱えないことを知られるわけにはいかないんだ。
ボクが……
ボクがロトでないことを知られたくない。
だけど、
剣を受け取りながら、
ろと王子が怪訝そうな顔をするんだ。
……しまったか?気付かれたか?
いつも、いの一番に自分が装備するのに、
今回、急にろと王子に剣を渡したことを
不自然に思われてしまったのか?
確かに。それはそうかもしれない。
鎖鎌や鉄の槍でさえ、
ボクは自分が先に装備しようとしたんだ。
それなのに、
こんな大事な剣を
自分が装備せずに渡してしまうなんて、
ボクの行動としては不自然すぎる。
だけど、
装備ができない剣をいつまでも持っているわけにもいかない。
ロトであることを証明しようとしていたのに、
逆に、
ロトでないことを証明してしまうことになるんだから。
考えてもみれば、
思い当たる節がないとも言えない。
いわゆる、器用貧乏だという点だ。
確かに、ひとりでも戦えるのではあるけど、
しかし、逆を言えば、
誰をも補えないとも言える。
ボクはチカラ自慢のろと王子を補えるのか?
いや、それはサマンサ王女が補えばいいことだ。
サマンサ王女は呪文のエキスパートなんだからね。
じゃあ、サマンサ王女をボクは補えるのだろうか?
それもまた否。
サマンサ王女の盾になれるのもまたボクじゃない。
ろと王子以外では、それはあり得ないんだ。
ならば、
一体、ボクは、
このパーティーの中で、
どういう存在意義があるのだろう。
いや、
そういう役割的なことじゃない。
ボクが今のチカラでしかないのは、
ボクがロトじゃないから。
そういうことなんだ。
ボクはロトの血を引いていないから、
ロトの血を引く2人を助けられないんだ。
助けるチカラがないんだ。
ボクは……
ボクが、そう迷走していたら、
ろと王子とサマンサ王女が、
それぞれの道具袋から何かを取り出して、
それを握った手をボクのほうに突き出した。
2人が、握った拳を軽く振ると、
リンッと音がした。
そして2人は掌を開いて見せた。
魔除けの鈴、だったよ。
それは……ボクが買ったものじゃないか……
……そう。お揃いで。
ボクたちは3人でひとつ。
はは。そう言ったのはボクだったね。
みんな、ボクの悩みをわかっていたのか。
みんな、それでもボクを仲間と認めてくれるのか。
ボクもまた道具袋から魔除けの鈴を取り出して、
2人の鈴にコツンと当てたよ。
なぜだろう。
鈴の音が、ひどく心地いいんだ。
なぜだろう。
心が洗われる気がするんだ。
これも魔除けの効果なのだろうか。
ボクの心に巣食ったわずかな魔を
洗い流してくれたのだろうか。
ろと王子とサマンサ王女の顔を見上げると、
2人の笑顔が、とても優しくて穏やかで和やかで、
そう、ボクにとって嬉しい笑顔なんだ。
……ありがとう。
気がつけば、
ボクの口から、ポロリとそんな言葉が出ていたよ。
出たのは口からだけだ。
目からは何も出ていない。
出ていないってば。
そんなに見ないでくれ。
埃が目に入っただけだ。
ろと:レベル16
カイン:レベル14
サマンサ:レベル10
ろふい ちぽさ ふひみは
みぴた じすに ずすぱじ
ふぷれ てけへ なねぜひ
ぽもば つきれ てにげけ
すじれ こしせ
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【はじめから読む】
目次
【1話:出会い】
【2話:銀の鍵】
【3話:ムーンペタ】
【4話:ラーの鏡】
【5話:ドラゴンのツノ】
【6話:ルプガナ】
【7話:アレフガルド】
【8話:大灯台】
【9話:ベラヌール】
【10話:デルコンダル】
【11話:ペルポイ】
【12話:テパ】
【13話:盗賊ラゴス】
【14話:海底洞窟】
【15話:ロンダルキアへの洞窟】
【16話:ロンダルキア】
【17話:ハーゴンの城】
【18話(最終話):破壊神シドー】
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