6月9日、宏美さんの長い歌手生活の中でも歴史に残るコンサートが開催された。まずは正式名称をご紹介しておこう。

 世界遺産・薬師寺東塔落慶記念奉納「岩崎宏美&岩崎良美SYMPHONIC CONCERT in 薬師寺」

である。

 

 この情報が発表された時、大いなる驚きと喜びと共に、私は落胆した。「どうして日曜日の夜開催なんだ!😱遠征が難しいじゃないか」と。しかし、待てよ。私は現在非常勤で働いており、年間52週のうち、37週しか勤務がない。確か6月の初め頃に、その勤務のない週が割り振られていたような…と思い調べたところ、大当たり❣️翌日の月曜日に勤務がないため、後顧の憂いなく泊まりで奈良に遠征できるのだ。

 

 という訳で、私はこの歴史的な奉納演奏会の場に居合わせるという幸運を得た。本日はその様子を是非皆さまにお伝えしたい。オーケストラ(指揮:栁澤寿男さん、京都フィルハーモニー室内合奏団特別交響楽団、ピアノ:上杉洋史さん)を率いての1回限りの公演である。ネタバレも構わないと思うので、セットリスト付きでご紹介していこう。それでは皆さま、よろしくお願いします。

 

 

 数日前から、9日の西日本の天気予報が悪化していた。公演前日には、オフィシャルサイトならびにSNSの「岩崎宏美ニュース」において、「6/9当日正午に実施の可否を判断、情報を掲載」との情報がもたらされた。またしても雨女の本領発揮か。当日の奈良市の予報は一日中小雨。私は午前中には奈良入りしたが、ずっと傘が要るか要らないか程度の降りで、これなら本番は大丈夫と思えた。果たしてHPの発表も予定通り実施😍。しかも、16時頃私が薬師寺に着いた頃にはすっかり雨も上がっていた。開場を待つ間も雨は落ちず、三々五々集まって来たファン仲間と楽しく待ち時間を過ごした。

 

 いよいよ開場。しばらく止んでいた雨が、無情にも再び降り始める。お寺での公演ということで、まずは執事長の大谷徹奘氏からのご挨拶。大谷さんは何と、文化教養学園幼稚園で宏美さん・良美さんの後輩に当たられるとのこと。お兄様は宏美さんの同級生らしい。われわれ一人ひとりが生きて今この時音楽を楽しめることへの感謝、ウクライナやパレスチナに想いを馳せ世界平和を願うことの大切さ、自分の顔や背中は一生見ることができない、せめて自分の心を見つめるようにしよう、などの心に響くお話があった。観客一同も、東塔に向かっての合掌・礼から公演が始まったのである。

 

 大谷さんが流石なのは、お話が説教がましくなく、笑いも取りつつわれわれの心を掴むあたりだ。「音楽の公演のためのステージ特設などは、参拝客によっては苦々しく思っている人もいる。今回のコンサートもお受けしようか迷っていると、出演者に岩崎姉妹の名が。幼稚園の先輩でもあるし、兄に相談すると『お前、分かってるだろうな』のひとことだった」で一同爆笑。雨のためオケが下手側の回廊に配置され舞台上にいないため、客席からは東塔の1階部分がよく見える。そこで特別なご配慮で、1階の扉を開け放っての公演と相成ったのである。

 

●序曲(オーケストラ)

恋のフーガ(宏美&良美)

●赤と黒〜青春〜タッチ(良美)

シェルブールの雨傘(良美)

ロマンス(宏美)

思秋期(宏美)

夢やぶれて(宏美)

 

 そしていよいよ、オーケストラの華々しい序曲からスタートである。宏美さんが白、良美さんが黒の対照的な衣装で登場されたお二人は、歌の前に東塔に向かって恭しく一礼。オープニングの「恋のフーガ」では、傘も差さずに抜群のリズム感と美しいハーモニーでわれわれを惹きつける。「♪ パヤ パヤパヤ…」の部分では、オケ伴ならではの生ティンパニが嬉しい。

 

 雨足が強まり、スタッフがお二人を気遣い薬師寺の名入りの風流な和傘を手渡す。東塔をバックに和傘で歌われるお二人。それはそれは荘厳かつ神秘的な、美しい光景だった。ヨシリン・メドレーの「タッチ」では、「♪ お願い タッチ タッチ/ここにタッチ あなたから/タッチ」の太赤字部分で、舞台袖から宏美さんの威勢のいいひと声が。いつぞやのステージでは、宏美さんがこの「タッチ!」を歌い忘れたそうな😜。この日のセットリスト中、一番傘が似合いそうな楽曲「シェルブールの雨傘」だけ、何故かヨシリンは傘を置いて熱唱🤣。宏美さんのソロ3曲は、『PRAHA』収録のアレンジだったようだ。「夢やぶれて」の圧巻の歌唱で前半終了。

 

上2枚は特設ステージの様子、下左は宏美さんのSNSより、下右は終演後の幻想的な東塔

 

●間奏曲(オーケストラ)

●天使のささやき(宏美&良美) 

いのちの理由(宏美)

● プロローグ(良美)

●さよならを教えて(良美)

太陽が笑ってる(宏美)

聖母たちのララバイ(宏美)

 

 これまた通常のコンサートと異なり、休憩なしで後半へと。オーケストラだけの演奏はポロネーズのようなリズムを持った曲だ。序曲も含めて、どなたか曲名をご存知の方があればご教示願いたい。衣装替えはなし。未レコーディング曲ではあるが、このところお馴染みのデュオ曲でスタート。素敵な和傘だったが、重かったためか前半の途中からビニール傘にチェンジ。

 

 宏美さんは、いつも「いのちの理由」は手話を付けて歌われるが、傘を差しているため手話ができない。だがそれを逆手に取るように、傘をも含めてまたいつもとは違った歌の表情を見せる。良美さんも、八神純子さん書き下ろしの「プロローグ」、リズミカルな米国産シャンソンの「さよならを教えて」と一歩も引かない。

 

 雨は止むどころか次第に本降りの様相を呈して来る。宏美さんは何度も「大丈夫ですか?」「可哀そう」「罰ゲームみたい」「もうすぐ終わるから」(会場爆笑)と、観客を気遣ってくださる。それがまた嬉しくて、お二人の素敵な歌をずっと聴いていたい、降りしきる雨に打たれていたいと思う。

 

 「太陽が笑ってる」では、サビでは傘を外して見えない太陽を仰ぐようなポーズで熱唱。思わずジーンと来る瞬間だ。ラストの「聖母たちのララバイ」も『PRAHA』アレンジだったが、2コーラス目のパイプオルガンだけになる部分は編曲し直されていて、ホルンの咆哮が聞こえる新鮮なサウンド。歌い終わると、宏美さんは雨にもかかわらず傘を閉じられ、客席に向かってに深々と礼をされたことにも心を打たれた。

 

アンコール

ごめんねDarling (宏美&良美)

見上げてごらん夜の星を(宏美&良美)

 

 そしてアンコールは、オケの皆様のいる回廊にお二人が登場。お二人とオーケストラとの共演では必ず取り上げられるこのデュオ2曲。いつも以上に楽しそうで息もピッタリの宏美さん、良美さん姉妹だ。歌い終えて引き上げる宏美さんが「あれ?なんか雨、止んできてる?」とトドメのひと言に、またもお客さん大爆笑。コンサートの間じゅう降り続けた雨が、確かに小降りに…。土砂降りだった札幌手稲神社ライブの話を持ち出すまでもなく、「雨女」どころか「嵐を呼ぶ女」確定だね!😜

 

 

 思い出に残る素晴らしいコンサートの余韻に浸りながら、これもお寺側のご厚意で、金堂安置の薬師三尊像を拝んでから帰路に着くことができた。宏美さん、良美さん、栁澤さん、京フィルの皆様に上杉クン、本当にお疲れ様でした。そしてこのようなまたとない機会を与えてくださった薬師寺の関係者の皆さまにも改めて感謝したい。ありがとうございました。