一昨日、球界が、いや日本中が28年ぶりの快挙に沸いた。千葉ロッテマリーンズ・佐々木朗希投手(20)による完全試合達成である。私がちょうど京都から帰る新幹線を降り、在来線に乗り換えたところで第一報が飛び込んで来た。私は妻に、「完全試合とは何か」から説明せねばならなかった😅💦。佐々木投手は、パーフェクト達成の最年少記録や連続奪三振記録まで塗り替えた。いやはや、“令和の怪物”ぶりを早くも証明する形となった。

 

 私は、パーフェクトというと漫画『巨人の星』(梶原一騎・辻なおき)の最終巻を思い出す。偉業達成を目指す星飛雄馬に相対する27人目・最後の打者は、親友・伴宙太。打者走者・伴の一塁判定を巡って紛糾、完全試合か否かはコミッショナーに委ねられる。だが父・星一徹は完全なる敗北を認める。あの時、飛雄馬はまだ10代だったはずだ。彼は利き腕の左腕を壊し、野球生命を絶たれてしまう。

 

 佐々木投手は、マスコミやファンのさらなる注目を集め、相手打線からはマークされ研究されるだろう。真価が問われるのはこれからだ。彼は東日本大震災で被災、また中学生で大きな故障をし、そのたびに挫折を力に変えてきた。今後の彼の順調な成長と、投手としての大成を祈ってやまない。

 

完全試合を達成した佐々木朗希投手

 

 さて、今日取り上げる「太陽が笑ってる」は、その誕生の経緯からして稀有な楽曲である。「シアワセノカケラ」「光の軌跡」(曲のみ)の作者である池間史規さんは、2019年の暮れ、宏美さんのディレクターに一本のデモテープを届けた。だがその一週間後、池間さんは肺炎に罹り、帰らぬ人となってしまわれたのだ。この「太陽が笑ってる」は、池間さんにとっての遺作になってしまったのである。

 

 この曲の数奇な運命は、それだけにとどまらない。年が明けて2020年、世界中がコロナ禍に襲われた。宏美さんもほとんど歌う場を失い、この1年間スタジオでレコーディングしたのは、僅かにこの「太陽が笑ってる」1曲だけだったのだ。この1曲のレコーディングのために集まったいつものメンバーは、久々の再会を喜び合ったという。そして宏美さんは、「池間さんはこのコロナ禍の世の中を見通していて、この歌を書かれたのではないか」と思うことがある、と言われている。

 

 そのコロナ元年12月、45周年企画の一環として、2枚組の『LIVE BEST SELECTION 2012-2020 太陽が笑ってる』がリリースされた。そのボーナストラックとして、唯一スタジオ録音音源として収録されたのが、この「太陽が笑ってる」である。Webサイトによっては“配信シングル”という表記もあるが、ここはオフィシャルサイトに従ってシングル扱いはせず、アルバム収録のオリジナル曲とする。

 

 私がこの曲を初めて聴くことができたのは、遡って2020年8月15日の東京コットンクラブでのことである。このライブは、宏美さんにとっても半年ぶりに観客の前で歌う機会ということで、ずいぶん緊張もされ、そして気合も入っていらした。この時の模様は、「残したい花について」のブログで触れているのでご参照願いたい。

 

 この時は、まだ新型コロナウィルスへの対応の緊張感が大変高かった時期で、このライブへの参加を見合わせた仲間も多かった。それで、新曲である「太陽が笑ってる」の印象を、参加できなかった仲間から問われて、私は咄嗟に「『シアワセノカケラ』と『光の軌跡』を足して2で割った感じ」と答えてしまった。ずいぶん乱暴な言い方をしたものだが、あながち外れてもいないと思う。

 

 「シアワセノカケラ」は、今エネルギーが落ちている大切な人に対し、「♪ 今はそれでいいよ」とあるがままの全てを受容しようとする歌である。そして「光の軌跡」は、デビュー40周年記念曲ということもあり、「♪ まだ 走ろうと思うのは/未来の私に 出会うため」と、あくまで走り続けよう、という前向きな楽曲だ。「太陽が笑ってる」は、ちょうどAメロBメロは後ろを振り返って、悲しみも過ちも全て受け容れようという部分であり、そしてサビでは力強く前を向く歌なのだ。そして池間さんの素朴な癒しのメロディー。「♪ 終わったわけではない ずっとずっと続いてく この道 太陽が笑ってる」という、宏美さんの明るい歌声に、いつもたくさん力をいただく歌である。

 

 

 この歌は現在のツアータイトルにもなっている。先日の札幌公演では、特にこの歌が沁みた。それまで意識したことはなかったのだが、定年退職をしてこれから第2のキャリアへ一歩踏み出そう、という自分の置かれた状況にもピタリと当てはまり、宏美さんの歌う歌詞のひとことひとことが、直接心に響いてきたのである。今の私にとって、この歌はテーマソングと言っていいだろう。宏美さんの歌声からも力をいただき、人生百年時代、頑張ります❣️

 

(2020.12.2 アルバム『LIVE BEST SELECTION 2012-2020 太陽が笑ってる』収録)