今、ちょっと元気がない人たちへの応援ソングとして、静かな人気のある「シアワセノカケラ」。以前にも触れたことがある臼井孝氏のラジオ番組における宏美さんの歌独自ランキングでも、22位にランクインしている。また、コンサートで初めて聴いたお客さんから、「『シアワセノカケラ』と『始まりの詩、あなたへ』の両方が入ったCDはないのか?」という問い合わせが多いので、両曲を収録したアルバム『Thanks』を作ったという話は、コンサートのMCでよく宏美さんがなさっていた。

 

 私がこの曲を初めて聴いたのは、2007年2月24日、今はもうなくなってしまった六本木のライブハウス・スイートベイジル139でのことだった。ライブハウスツアーが西の方から始まり、最後が東京だった。関西の友人が「今度の新曲、すごく良いよ」と言って、この曲の歌詞の、何回か通って記憶した部分を、私に前もって送ってくれていた。歌詞の世界を先に知っていて、宏美さんの新曲を聴く、というのは、もちろん私にとって初めての経験である。歌詞を知って妄想が膨らんでいる分、この曲への期待は相当なものだった。

 

 アンコールで、宏美さんから曲紹介のMCがあって、青柳さんのピアノがハ長調の平易なイントロを奏で始めた途端、私の涙腺は決壊してしまった。私が歌詞を読んでイメージしていた世界にピッタリの、いやその遥か上をいく素晴らしい曲想だったのである。そして、ライブハウスならではの、息づかいまでわかる至近距離で、宏美さんが温かく優しい声で歌い出すのだ。その感動は、言葉にできない。

 

 この曲は、発表当時だけでなく、宏美さんのコンサート終盤になくてはならない定番の曲となった。宏美さんがこの曲を歌い始めると、あちこちで鼻を啜る音が聞こえ、ハンカチを目に押し当てる人が増える。私も例外ではない。中でも私は、「♪ 忘れたいできごとや 人に言えない事/ひとつやふたつ誰にもあるよ 心配しないで」の部分に、いつも反応してしまう。宏美さんご自身も、この歌を歌いながら何度も涙を流されていた。そして、そのたびに少しずつ元気になっていった、と仰っている。より多くの人を元気づけ、勇気づけるために、宏美さんはこの歌を歌い続けるのだ。

 

 

 この曲には一生忘れられない思い出がある。時に2014年11月9日。宏美さんのコンサートツアー『Thank You !』が、浜松市の浜北文化センターにやって来た。宏美さんが新幹線で浜松入りすると踏んで、ファン仲間で入り待ちをすることに。すると、さすがに楽器のまち・浜松である。新幹線ホームへの通路に、演奏自由のピアノがあったのだ。そこで、仲間のEさんと私とのピアノデュオで、宏美さん歓迎の演奏を敢行した。その時の曲目が、この「シアワセノカケラ」だったのである。果たして、宏美さん一行はここを通りかかり、足を止めてくださったのだ😍(自慢話めいて申し訳ない😅💦)

 

 

 最後に。この曲の作詞・作曲者であるシンガーソングライターの池間史規さんは、昨年12月28日に急逝された。改めて、心からご冥福をお祈りする。その5ヶ月前に、初めて池間さんと宏美さんがお二人でこの「シアワセノカケラ」を歌われた映像がある。それを一人でも多くの方に見ていただき、追悼としたい。合掌

 

 

(2007.3.21 シングル)

 

【追記 2020.7.7】昨日、「シアワセノカケラ」のピアノを浜松駅で一緒に弾いたEさんが、天に召された。心からご冥福をお祈りいたします。私がそちらに行って、また宏美さんの曲を連弾するまで、しばらく待っていてくださいね❣️