今日は富士市ロゼシアターにて、ひと夜限りのヒロリン・ヨシリンのコラボレーション❣️ この日をどれだけ楽しみにしていたか…。だが、私の部署でこのところ連日のように陽性者の報告。責任者の立場として、万一のことを考えるとやはり県またぎでのコンサートは残念ながら諦めざるを得ない。😭

 

 

 どうもヨシリンとのジョイントに私は縁がない。神奈川フィルをフィーチュアしての『Precious Night』(2008)の時は、自分のバンドの本番直前のリハ。そして『残したい花について』の実質ファイナルとなった大阪フェスティバルホール(2020)も、平日に飛んだためアウト。そして今回はオミクロン株の大流行…。

 

 コンサートに行かれないのなら、せめてヨシリンとのデュオ曲でまだ取り上げていない「恋のフーガ」を楽しみ、無念の気持ちを晴らそう、という訳である。

 

 「恋のフーガ」は、ご存知ザ・ピーナッツの1967年のヒット曲で、作詞がなかにし礼さん、作曲が昨年亡くなったすぎやまこういちさんである。タイトルには「フーガ」とあるが、音楽の形式としては全くフーガではないのに、と思っていた。今回調べたら、編曲の宮川泰さんが「当初フーガのイメージを出すアレンジを試みたが、行き詰まってしまった」そうだ。

 

 そもそもフーガとは。対位法に基づく楽曲形式で、カノンと同様に同じ旋律が複数の声部に次々に現れるのだ。クラシックファン以外の方にもお馴染みなのは、バッハの「トッカータとフーガ ニ短調」であろう。嘉門達夫さんが、「♪チャラリー、鼻から牛乳」とやった、あの曲である。

 

 

 さて、ピーナッツの「恋のフーガ」である。なかにしさんによる歌詞世界は、「追いかけてすがりつきたい」ほどの未練たっぷりの雨の日の別れの歌だ。真珠の指輪も出てくるので、「♪ はじめから結ばれない/約束のあなたと私」の「約束」が虚しく響く。

 

 宮川さんによるアレンジは、イントロからAメロにかけてのティンパニがあまりにハマり過ぎで、すぎやまさんのメロディーとピーナッツのお二人の歌唱を盛り上げているというより、もはや聴く者にとって一体化しているとも言える完璧な仕事であろう。まずはオリジナルをどうぞ。

 

 

 さて、あまりにも完成度の高いこの作品。別のアレンジを施すのは難しいという判断がなされたのであろうか。宏美さん・良美さんがカバーした『Dear Friends Ⅴ』では、「原編曲:宮川泰」(編曲は中井幸一さん)としっかりクレジットされ、アロージャズオーケストラが、オリジナルのレオン・サンフォニエットのビッグバンド・サウンドを再現している。

 

 キーもザ・ピーナッツのお二人と同じB♭マイナー。オリジナルでは「♪ パヤ・パヤ・パヤ……」のスキャットはアウトロのみだが、カバーバージョンでは景気よくノッケから歌っておられる。😊一応現役でビッグバンドに参加している身としては、アロージャズの音はちょっとクリアに抜けず、シャープなキレがないなぁ、と若干不満に感じていた。だが、『Dear Friends Booklet』で、アロージャズとの共演についてこう書いてあった。

 

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 豪華な共演といえばアロージャズオーケストラ(注:1958年に大阪で結成された日本を代表するビッグバンド)の皆さんとの「恋のフーガ」と「L-O-V-E」。ちょうど東京公演があった次の日に演奏していただきました。懐かしくてお洒落な時代感が出せたな〜って思いますね。

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 つまり、イマドキのサウンドではなく、あえてあの時代のラッパの音を再現する音作りをされた、と分かり得心したのである。

 

 ヒロリン・ヨシリンの姉妹デュオは、いつもながら息もピッタリ。前半のユニゾンは完全に溶け合っている。「♪ はじめから結ばれない〜」からは、追い立てるようなリズムに乗り、お二人の掛け合いとハモりが楽しめる。ここは、珍しく宏美さんが後追いからの高音部。「♪ あなたっとーわたしぃーいぃーっ!」というスカッとする宏美節の歌い切り、最高!ラストの「♪ ドゥン・ドゥビ・ドゥバ〜」のお二人のスキャットも言うことなし。

 

 

 今日のジョイント・コンサートではいったいどの曲のハモりを聴かせてくれるのだろうか。チラシには「にがい涙」は書いてあったが…。悔しくて仕方ないが、仲間の報告を楽しみに待つとしよう。

 

 では、コンサートのご盛会、大成功を祈りつつ…。🥰

 

(2010.10.20 アルバム『Dear Friends Ⅴ』収録)