Neil Young『After the Gold Rush』 50周年記念盤 | Music and others

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 ロックに夢中になっていた20代の頃は、さほど気になるアーティストではなかったニール・ヤングNeil Young)でした。それなのに、ブログを始めた頃から、節目節目に取り上げる機会が増えてきました。 おそらく、彼の自伝、『Waging Heavy Peace』(英語版)をKindleで購読した頃から気にかかる存在になった様に思います。 その自伝を3度くらい読み返してから、3回に分けてブログをアップしました。
 
もちろん、自伝以外にも、過去の発掘音源、”アーカイヴ・シリーズ“や新録アルバムを聴き続けています。 
 
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この『After the Gold Rush』はソロ・アルバムとしては3作目になるもので、1970年9月にリリースされました。 もちろん、リアルタイムに聴いた訳ではなく、数年後にLPを購入して聴きました。当時は、ウェストコースト・サウンドと呼ばれるカテゴリーに括られており、ジャクスン・ブラウン(Jackson Browne)に夢中だった自分にはすんなり入ってきました。
 
ちょうどその頃、CSN&Y(Crosby, Stills, Nash & Young)の『Déjà Vu』が大ヒットしており、満を辞してのリリースだった筈です。 それから50年、いまだに深化し続けるニール先生のスタート地点とも言えるアルバムです。その発売50周年記念のエディションになります。 多くの未発表テイクやデモ・ヴァージョンがたっぷりとお披露目されるのかと思いきや、同時期に書かれたアウトテイクとなった”Wonderin’”が2ヴァージョン追加されただけで、少し肩透かしな感じです。 それだけ完成度の高いアルバムだったわけで、未発表曲やアウトテイクは”アーカイヴ・シリーズ“で楽しめということでしょうか??。
 
 
このアルバムは、当初はクレイジーホース(Crazy Horse)をバックにレコーディングがスタートし、"Oh, Lonesome Me"と"I Believe in You"が完成しました。 しかし、 ダニー・ウィッテン (Danny Whitten)がドラッグ禍で離脱してしまい、その2年後には29歳で早逝しました。 ダニーはほかの曲でも、ハーモニー・ヴォーカルで大きな貢献をしていたのですが・・・・・。
このため、CSN&Yのバンド・メンバーと当時無名に近かった若干18歳のニルス・ロフグレンNils Lofgren)の参加を経て、アルバムを完成させます。 結果的には、クレイジーホースとCSN&Yとのサウンドが融合した形となり、ここにニール・ヤング先生の原点というべき”らしさ”全開のサウンドが産まれたのだと言えます。
 
ヴォーカルはさすがに24歳の若さが表れていますけれど・・・。今聴いても、全11曲どれをとっても無駄な曲がない名曲揃いです。 多くの方はアナログB面にあたる”Oh, Lonesome Me”からの流れが素晴らしいと思われるかもしれません。 
 
それでも、個人的には、アマチュア・バンドに参加していた頃に、A面収録の5曲を何度も何度も繰り返して聴いていたので、想い入れがとても強いです。 アナログ・プレイヤーで音楽を聴いていた世代にとっては、ありがちなことですけれど、歌詞が全て頭に入っています。
 
Track listing;
All tracks composed by Neil Young.
 
1. "Tell Me Why" – 2:54
2. "After the Gold Rush" – 3:45
3. "Only Love Can Break Your Heart" – 3:05
4. "Southern Man" – 5:31
5. "Till the Morning Comes" – 1:17
6. "Oh, Lonesome Me" (Don Gibson) – 3:47
7. "Don't Let It Bring You Down" – 2:56
8. "Birds" – 2:34
9. "When You Dance I Can Really Love" – 4:05
10. "I Believe in You" – 3:24
11. "Cripple Creek Ferry" – 1:34
12. Break  (Silent Track)– 0:30
13. "Wonderin’"– 2:14
14. "Wonderin’ " (previously unreleased)– 1:53
 *)  This unreleased version was recorded on 5 August 1969 at Sunset Sound in Hollywood, CA.
 
Personnel;
  Neil Young – guitar, piano, harmonica, vibes, lead vocals
  Danny Whitten – guitar, vocals
  Nils Lofgren – guitar, piano, vocals
  Jack Nitzsche – piano
  Greg Reeves – bass
  Billy Talbot – bass
  Ralph Molina – drums, vocals
  Stephen Stills – vocals on 3, credited as Steve Stills
  Bill Peterson – flugelhorn
 
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やはり、1曲目の“Tell Me Why“から3曲目“Only Love Can Break Your Heart“までの流れがとてもイイですね。
 
当時の世相を反映したかの様なモラトリアムな心情を描いた“Tell Me Why”、コーラス部分の歌詞、
 
    it hard to make arrangements with yourself,
    When you're old enough to repay but young enough to sell
 
身につまされる問いかけですね。
 
 
そして、泥沼化して行くベトナム戦争に対する間接的な批判を込めた、アメリカの過去、現在、未来に言及した不思議な曲、"After the Gold Rush"。 ピアノの弾き語りの曲ですが、ピアノを弾いているのはニルス・ロフグレンです。本職のギターではないところが不思議な点ですが。
□ ”After the Gold Rush by Neil Young lived in11/6/1993 at Shoreline Amphitheatre

 

 

 
この歌の素晴らしさを伝えるカヴァーと言えば、この3人による軌跡のアルバム『Trio Ⅱ』に収められたヴァージョンに尽きると思います。 今でも、聴くたびに”鳥肌”が立ちます! 見た目で判断してはいけないこと、ドリー・パートン(Dolly Parton)に教えられました。
 
□ ”After the Gold Rushby Dolly Parton, Emmylou Harris and Linda Ronstadt ;
 

 

※)このアルバムに触れたブログを3年前にあっぷしています。     
              5年遅れのリリース 『Trio Ⅱ』    (ここ↓↑
 
 
それから、当時も今も大好きな楽曲、“Only Love Can Break Your Heart”、切ないワルツです。 アマチュアバンド時代にヴォーカルを取った数少ないレパートリーでした、懐かしい! このアルバムから最初にシングルカットされた楽曲です、キーは確かA7でした。 当時の甘酸っぱい想い出が甦ります。
 
□ ”Only Love Can Break Your Heartby Neil Young

 

 

そう言えば、このアルバムで一躍名前を知られるようになったニルス・ロフグレンがニール・ヤングの楽曲全15曲を弾き語りでカヴァーしたアルバム、『The Loner: Nils Sings Neil sounds』でこの曲も取り上げています。
 
□ ”Only Love Can Break Your Heartby Nils Lofgren ;

 

 

 
 
唯一ハードなクレイジーホース的な“Southern Man”、未だに根深いアメリカに存在する人種差別に言及した曲ですが、何かと引用される程の有名な楽曲にまでなりました。 レイナード・スキナード(Lynyrd Skynyrd)が”Sweet Home Alabama”でこの曲に言及したのは有名なエピソードですね。 南部生まれの人間として対立心を煽った訳ではありませんが。 未だにアメリカ社会には存在する、この問題は永遠の課題であること、痛感します。
 
 
 
とても短い小作品、CSN&Yのスティーヴン・スティルス(Stephen Stills)がハーモニーを付けているTill the Morning Comesを挟んで、B面の唯一のカヴァー曲、カントリー界の大御所であるドン・ギブソン(Don Gibson)の58年のヒット曲、“Oh, Lonesome Me”が連なります。 オリジナルよりもずっとテンポを落として、三連のバラッドに変えて裏侘しい感じを強調しています。
 
 
 
ドロップ・チューニングを使った3分足らずの楽曲、比喩的な歌詞の中で孤独感を描写した美しい曲、“Don't Let It Bring You Down”が続きます。 このスタジオ・テイクよりも、ライヴでの弾き語りヴァージョンの方が数段素晴らしいと思う方は数多くいると思います。
多くのアーティストがカヴァーしており、スティング(Sting)にアニー・レノックス(Annie Lennox)、変わったところではジャズ・ピアニストであるブラッド・メルドー(Brad Mehldau)が取り上げていますが、オリジナルに忠実なアレンジです。
 
□ ”Don't Let It Bring You Downby Crosby, Stills, Nash & Young  ;

 

 

 

 

続く”Birds”も短い曲ですが、傷心の心境を綴った繊細な曲です。 ”When You Dance I Can Really Love”では一転バンド・サウンドでシンプルにロックしています。
 
そして、”I Believe in You”は恋人との恋愛関係の機微を描いた、シンガー&ソングライター的な楽曲で、レコーディングの初期にクレイジーホースと共に完成した曲です。
 
今回のボーナス・トラックは、同じ頃に出来上がっていた”Wonderin’”がヴァージョン違いで2曲収められています。 最初の方は、『The Archives Vol. 1 1963–1972』で2009年に発表されたものです。 次のヴァージョンは完全な未発表のものになりますが、出来自体は可もなく不可もないレベルです?!。 出来るなら、『The Archives Vol. 1 1963–1972』に収録されていた隠しトラック(hidden track)と呼ばれる別ミックスの楽曲を収録して欲しかったですネ。
 
□ ”Wonderin’by Neil Young

 

 

 
 
 
 
 
 
折に触れてブログで紹介した、過去の記事を列挙させてもらうと、こんなヴォリュームになりますから、自分でも驚きですね。
 
     2014年1月    ニール・ヤング − 『Live at the Cellar Door』(ここ↓↑
     2014年2月    ニール・ヤング − 『Journeys』(ここ↓↑
     2015年1月    ”Waging Heavy Peace” その壱(ここ↓↑
         ※) 3回に分けてシリーズ化させました
 
     2015年3月    二人のニール・ヤング "Old Man"(ここ↓↑
     2015年3月    Neil Jam ? 『Mirror Ball』(ここ↓↑
     2016年12月    ニール・ヤング 『Peace Trail』(ここ↓↑
 
     2018年9月    Neil Young 『On the Beach』(ここ↓↑
     2019年3月    Neil Young 『Songs for Judy 』(ここ↓↑
     2019年8月    ニール・ヤング 『Tuscaloosa』in 1973(ここ↓↑
     2019年12月 ニール・ヤング 『Colorado』(ここ↓↑
 
 
 
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昨年の10月中旬以来、しばらくブログをアップすることを中断していました。 コロナ禍の下で生活スタイルが変わったからではなく、あることをきっかけに音楽を話題にしたブログを書くことに嫌気がさしたのです。 詳しく説明するつもりはありませんが、大したことではないのかもしれません・・・・・。 
 
それと、自己満足とは言えきちんとした内容にしたいと思うあまり、音楽そのものを楽しむのではなく、次から次へと流れ作業的に消費しているように感じたのです。 音楽評論を生業にしている訳ではないので、綿密に調べて掘り下げる必要はないのですが、何かこうジレンマに陥ってしまったのです。誰しも通る道なのかも知れませんが……!?
 
その影響で、書きかけのメモが40件以上EVERNOTEに眠っています。 これから時間かけてアップできればと思います(多分ですが)。