とにかく、凄まじい物量となりつつあるニール・ヤング(Neil Young)大先生の発掘音源シリーズ(The Neil Young Archives)の一つ、未発表ライヴ音源シリーズ(the Archives Performance Series)の第7番目のリリース、『Songs for Judy 』を聴いてみました。 1968年から92年までの間のライヴ音源が合計14作品に分けてリリースされる予定です。
実際に購入したのは、2007年3月にリリースされた70年1月のライヴ、『Live at the Cellar Door』だけですが、一体いつまで続けるのでしょうか?! 随分と前になりますが、その時のブログはこちら(↑↓)
ニール・ヤング − 『Live at the Cellar Door』
この76年11月のアコースティック弾き語りライヴは、名高いブートレッグ、”バーンスタイン・テープス”(Bernstein Tapes)として出回っていた音源です。 この当時は、再結成クレージー・ホースを引き連れて北米ツアーを行っており、1部がニール・ヤングによるソロでの弾き語りで、休憩を挟み、2部ではバンドによるエレクトリック・パートとなっていました。
同じ年の3月には、初来日を果たしております(私は、彼のライヴを一度も経験していません・・・・・) この頃は、懐かしいスティルス=ヤング・バンド(the Stills-Young Band)も並行して活動していましたね。
最初にタイトルを目にした時には、Judy とは”Suite: Judy Blue Eyes”で歌われていたジュディ・コリンズ(Judy Collins)のことだとばかり思っていました。 スティーヴン・スティルス(Stephen Stills)と夫婦の関係にあったのですが、完全なる勘違いでした。
フォックス・シアターでのライヴでのこと、完全にラリってしまったニール(stoned Neil)がその日の2回目のステージで観客に向かってのМCの最中に幻覚を見たのです。 ステージ下のオーケストラ・ピットに女優のジュディ・ガーランド(Judy Garland)が立っており、ニールを見つめていたんだとか・・・・・。
彼女が発した言葉は、「How was the business, Neil??」だって。
それを聴いたクルー達がこの11月に行われた25回のライヴツアーを『Songs for Judy』を呼ぶようになったそうです。 ジュディ・ガーランドはすでに亡くなっており、幻影でしかないですけど、ぶっ飛んだままステージに出て演奏していたんですね、当時は・・・・・。
このツアーに同行していた、カメラマン兼ギター・テクニシャンであったジョエル・バーンスタイン(Joel Bernstein)が、自分用に毎回PA卓からカセット・テープへダイレクトに録音していたのです。 やがて、このテープのコピーがブートレッグとして出回りました。
今回のアーカイヴ・シリーズ制作に際して、ジョエルはこのカセット音源を元に、当時音楽ジャーナリストとしてツアーに同行していたキャメロン・クロウ(Cameron Crowe)と共に選曲を行い、プロデューサーとして名を連ねています。 いい時代だったんですね、今思えば。
そのジョエルのインターヴューがこちらに掲載されています(こちら↑↓)。 ニールはこの選曲の内容について、一切口を挟まずに好きにやらせてくれたそうです。 曰く、「He's not looking for perfection. He's looking for feel.」と云うことらしいです。
□ Track-listing *****;
1."Songs for Judy Intro" 3:25
2. "Too Far Gone" 3:15
officially released on Freedom (1989)
3. "No One Seems to Know" 2:29
*)previously unreleased track
4. "Heart of Gold" 2:53
5. "White Line" 2:45
officially released on Ragged Glory (1990)
6. "Love Is a Rose" 2:20
7. "After the Gold Rush" 4:15
8. "Human Highway" 3:04
9. "Tell Me Why" 3:34
10. "Mr. Soul" 3:06
11. "Mellow My Mind" 2:30
12. "Give Me Strength" 3:26
featured on 2017 archival release Hitchhiker
13. "A Man Needs a Maid" 4:54
14. "Roll Another Number (for the Road)" 2:22
15. "Journey Through the Past" 3:17
16. "Harvest" 2:42
17. "Campaigner" 3:30
18. "Old Laughing Lady" (includes "Guilty Train") 5:18
19. "The Losing End (When You're on)" 3:52
20. "Here We Are in the Years" 3:53
21. "The Needle and the Damage Done" 2:27
22. "Pocahontas" 3:48
23. "Sugar Mountain" 6:08
Recording data;
#1 Live at November 6, 1976, Balch Fieldhouse, Boulder, CO
#3 Live at November 7, 1976, Balch Fieldhouse, Boulder, CO
#4 Live at November 10, 1976, Tarrant County Convention Center, Fort Worth, TX
#6 Live at November 11, 1976, The Summit, Houston, TX
#8 Live at November 14, 1976, Dane County Veterans Memorial Coliseum, Madison, WI
#9 Live at November 15, 1976, Auditorium Theater, Chicago, IL
#10 through #13 Live at November 20, 1976, Palladium, New York, NY
#14 through #17 Live at November 22, 1976, Music Hall, Boston, MA (Late show)
#18 through #21 Live at November 24, 1976, Fox Theatre, Atlanta, GA (Early show)
#22 through #23 Live at November 24, 1976, Fox Theatre, Atlanta, GA (Late show)
□ Personnel;
Neil Young – vocals, acoustic guitar, piano, banjo, organ, harmonica
Engineering and production
Joel Bernstein, Cameron Crowe, David Briggs, Neil Young – production
Tracks 1–9, 23;
Joel Bernstein – cassette recording
Tim Mulligan – original PA mix
Tracks 10–22;
Dave Hewitt – multitrack recording
Phil Gitamer – assistant engineer
イントロのMCを含む23曲で凡そ70分間、と凄いヴォリュームですが、最も創造力に満ち溢れていた時期だけに、シンプルな演奏の中で次々と繰り出される新旧の楽曲、特にお蔵入りになった未発表曲を初めとする新曲群に魅力を感じます。
3曲目の”No One Seems to Know”は、ピアノによる弾き語りですが、完全な未発表曲です。
□ " No One Seems to Know" by Neil Young ;
アレンジについて特にひねりがある訳ではないですが、いくつも心に刺さる曲があります。やはり、バッファロー・スプリングフィールド(Buffalo Springfield)時代の”Mr. Soul”に、1stアルバムの曲、Old Laughing Lady””と予測不能ですね。
まず、"Love Is a Rose"でしょうか、創作意欲が旺盛だった時期に何故かオクラ入りになったアコースティック・アルバム、『Homegrown』に収められていた楽曲です。 結果的に、先にリンダ・ロンシュタット(Linda Ronstadt)がカヴァーし、75年リリースの『Prisoner In Disguise』の1曲目に収録されていました。
□ " Love Is a Rose" by Neil Young ;
そして、この年の8月に録音されながらもお蔵入りしていたアコースティック・アルバム『Hitchhiker』に入っていた”Human Highway”ですね。バンジョーを使っているので、随分と違う印象を受けます。
□ "Human Highway " by Neil Young ;
ダークなアルバム、『Tonight's the Night』に収められていた”Mellow My Mind”も、バンジョーとハープで明るい感じで演奏されると全く違う曲に聴こえてしまいます。次の””は未発表曲集の『Hitchhiker』に収められていますが、ほぼ同じアレンジで割と淡々と演奏されています。
そして、とてもポピュラーな”A Man Needs a Maid”では、シンフォニックなパイプオルガン??で当時まだリリース前であった”Like a Hurricane”のメロディーが顔を覗かせています。
□ "A Man Needs a Maid" by Neil Young ;
久しぶりに聴く”Old Laughing Lady”はオリジナルとは随分違うアレンジで別の曲かと思いました。 ゴスペル風味のオリジナルは好きでしたが・・・・・。
そして、イントロを聴いただけで場内に歓声が響き渡る曲、”The Needle and the Damage Done”は美しい曲ですが内容はとても悲痛で暗い歌の筈です。 大ヒット作である『Harvest』の曲だから仕方ないのでしょうが、あっさりと終わります。
□ "Pocahontas" by Neil Young ;
それにしても、69年リリースの1stアルバムの曲をこんなに普通に演奏していることに驚きました。最後の6曲は同じフォックス・シアター(Fox Theatre, Atlanta)で録音された音源になります。
最後の曲は、ニールが19歳の時に書き上げた楽曲、”Sugar Mountain”で締め括られています。 ライヴでは割とお馴染みの曲ですね。
ニール・ヤングの自伝ともいえる『Waging Heavy Peace 』(Kindle Edition with Audio/Video)は、今の時代の技術を駆使した画期的なディジタル・メディアでしたね・・・・。
3回に分けて記したその時のブログ、『Waging Heavy Peace』はこちら(↑↓)
ミュージシャンとしては、以前程魅力ある作品を産み出している訳ではないが、唯一無二の魔力を持っていることは変わらず、常に気になる存在であるけれど・・・・・。
それでも、30数年に亘り連れ添って来た強い絆で結ばれた筈のペギー・ヤング(Pegi Young)と2014年に離婚し、ダリル・ハンナ(Daryl Hannah)と行動を共にしたあげく晴れて結婚しました。 一方、ペギーが今年1月1日に癌で息を引き取ったニュースを聞いた時には何ともいえない虚しさを感じました・・・・・。