5年遅れのリリース 『Trio Ⅱ』 | Music and others

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87年にリリースされて大成功を収めた歌姫3人、ドリー・パートンDolly Parton)、リンダ・ロンシュタットLinda Ronstadt)、エミルー・ハリスEmmylou Harris ) による夢のコラボレーション作品、『Trio』の続編になる『Trio Ⅱ』です。 しかしながら、94年にレコーディングは完成していたにも拘らず、ほぼ5年近くそのまま熟成?させられていました。


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リリースされるまでに紆余曲折があった分、どうしても1枚目の『Trio』に比べると、サウンドのオーガニックさや透明感において劣るように思います。 本アルバムには、リンダ・ロンシュタット(Linda Ronstadt )の執念が込められているように感じます。
 
彼女自身の95年リリースのカントリー・ロック/ポップ・フィールドへの復帰作、『Feels Like Home』に以下の5曲が重複して含まれていることからも判ると思います。
 
"Lover's Return","High Sierra","After the Gold Rush", "The Blue Train", "Feels Like Home"
 
 
現在、CDとしては廃盤となってしまった『Feels Like Home』に収録されている上述した曲と聴き比べると、違和感を感じる筈です。 この『Trio II』の同名曲にある筈のヴォーカル・トラックが削られているからです。そして、ドリー・パートンの名前はクレジットされていませんでした。


また、ジャケットにしても一堂に介してのフォト・シューティングも出来ないために、それぞれの幼少期の写真をレイアウトするという苦肉の策を講じて制作されています。
 
□ Track listing;
1.  "Lover's Return" (A.P. Carter, Maybelle Carter, Sara Carter)     feaut. Ronstadt
2.  "High Sierra" (Harley Allen)     feaut. Ronstadt
3.  "Do I Ever Cross Your Mind?" (Dolly Parton)     feaut. Harris
4.  "After the Gold Rush" (Neil Young)     feaut. Parton
5.  "The Blue Train" (Jennifer Kimball, Tom Kimmel)     feaut. Ronstadt
6.  "I Feel the Blues Movin' In" (Del McCoury)     feaut. Parton
7.  "You'll Never Be the Sun" (Donagh Long)     feaut. Harris
8.  "He Rode All the Way to Texas" (John Starling)     feaut. Parton
9.  "Feels Like Home" (Randy Newman)     feaut. Ronstadt
10.  "When We're Gone, Long Gone" (Kieran Kane, James Paul O'Hara)     feaut. Harris
 
 
□ Personnel
   - Linda Ronstadt -  vocals
   - Emmylou Harris -  vocals, acoustic guitar (1,5,7)
   - Dolly Parton -  vocals
 
   - Alison Krauss -  Fiddle
   - David Lindley -  Autoharp
   - Dean Parks - Guitar (Acoustic), Guitar (Electric), Mandolin
   - John Starling -  Guitar (Acoustic)
   - Mark Casstevens - Guitar (Acoustic)
   - Carl Jackson -  Guitar (Acoustic)
   - Ben Keith -  Guitar (Steel)
   - David Grisman - Mandolin
   - Larry Atamanuik - Drums
   - Jim Keltner -  Drums
   - Leland Sklar -  Bass
   - Roy M. "Junior" Husky -  Bass, Bass (Acoustic)
 
□  Production
   - Recorded, produced & engineered by George Massenburg




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バッキングのミュージシャンは1作目からは大幅に変わりましたね、主役は数々のセッション・ワークをこなしているギタリストのディーン・パークス(Dean Parks)と裏方に徹して素晴らしいフィドルを聞かせてくれるアリスン・クラウス(Alison Krauss)でしょうね。
 
1曲目の”Lover's Return”ですが、これはあのカーター・ファミリー(the Carter Family)が1934年にリリースした楽曲です。私は初めて聴きました(お恥ずかしい・・・・)。 しっとりと歌いかけるスローナンバーですが、ここではやはりドリー・パートンのハーモニー・ヴォーカルが光ります。こちらに収録されたサウンドが本来の姿であり、リンダのソロ作品のようにあるはずのヴォーカル・トラックを消し去った『Feels Like Home』の同曲には違和感が付いてまわりますね。
 
□ ”Lover's Returnby Dolly Parton, Emmylou Harris & Linda Ronstadt

 

 

 
 
□ ”Lover's Returnby Carter Family in 1934
 

 

 

 
 
 
 
2曲目の”High Sierra ”はそれほど3人によるコラボレーションの妙が聴ける内容ではありません。 リンダのソロ作品と言っても過言ではありませんが、アリスン・クラウスのフィドルの艶やかさが目立っています。
 
3曲目””はドリー・パートンによる楽曲で、リードを採るのはエミルーなのですが、こちらはオルタネート・テイクが存在します。全く異なるドゥワップの様なアレンジになっており、驚かされます。
 
□ ”Do I Ever Cross Your Mind?by Dolly Parton, Emmylou Harris & Linda Ronstadt

 

 

 
 
 
そして、このアルバムの中でのハイライトと言うべきか、彼女達歌姫の最高の成果と言うべき”鳥肌”ものの曲の登場です。ドリー・パートンが素晴らしい歌唱を聴かせる、ニール・ヤング(Neil Young)の72年の楽曲、”After the Gold Rush”です。これに優るカヴァーを聴いた記憶はありません。
 
 
 
□ ”After the Gold Rush ”by Dolly Parton, Emmylou Harris & Linda Ronstadt

 

 

 
 
 
 
 
□ ”After the Gold Rush ”by  Linda Ronstadt in '94

 

 




 

リンダ・ロンシュタットが先にリリースした『Feels Like Home』 では、何とこんなに素晴らしいドリーのヴォーカル・トラックを削除せざるを得ない強硬策を施してリリースしています。 不自然極まりないと思うのは私だけでしょうか・・・・? 
 
次の曲、”The Blue Train”は同名異曲の多い名前の曲ですが、オリジナルは92年にアイリッシュ・フォーク・シンガーであるマウラ・オコンネル(Maura O'Connell)が取り上げて発表しています(プロデュースはドブロギターの名手でもあるジェリー・ダグラスでした)。 それを聴いたリンダがカヴァーして多くの人に知られるようになりました。
 
□ ”The  Blue Trainby Dolly Parton, Emmylou Harris & Linda Ronstadt

 

 

 
ブリッジが特徴あるメロディラインで印象に残る曲だと思いますが、3人による多重コーラスがとてもミステリアスな雰囲気を創り上げているように思います。
 
リンダのソロアルバムでの収録ヴァージョンは、正にAORど真ん中と言った出来であり、ミディアム・テンポのゆったりとした流れの中で、ヴァレリー・カーターValerie Carter)のハーモニー・ヴォーカルが効いているように思います。 
間奏で入ってくる流麗なギター・ソロは音色からしても、ディーン・パークスお家芸のソロですね。
□ ”The  Blue Trainby Linda Ronstadt in '94

 

 




 
 
そして、7曲目”You'll Never Be the Sun ”は正にエミルーに打ってつけのスローテンポの美しい曲ですね。 こういう陰影のある起伏のあるメロディラインの曲を歌わせると何とも言えない色気を感じさせてくれます。
 
□ ”You'll Never Be the Sunby Dolly Parton, Emmylou Harris & Linda Ronstadt

 

 

 
 
 
そして、リンダのソロ・アルバムでもハイライトとなっている曲が、ランディ・ニューマンRandy Newman)による有名曲、”Feels Like Home ”ですね。 数多くのアーティストがカヴァーしていますが、その中ではボニー・レイトBonnie Raitt)による作品がいいと思いますが、サウンド・トラックとしてのリリースのみで彼女のアルバムには収録されておりません。
 
□ ”Feels Like Homeby Dolly Parton, Emmylou Harris & Linda Ronstadt

 

 

 
 
 
こう言った曲は、言わずもがなでリンダ・ロンシュタットの独壇場だと言えます、どんどん盛り上げて行く曲では。 たくさんの素晴らしいカヴァー曲がいくらでもありますが、この3人のコラボレーションで収録されているヴァージョンが最高だと思います。 そして、ランディ・ニューマンの歌詞、とても沁みます。
 
□ ”Feels Like Homeby Linda Ronstadt in '94 ;

 

 

 
 
 
 
□ ”Feels Like Homeby Randy Newman in 2008 ;