ニール・ヤング 『Peace Trail』 | Music and others

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もう、錆び付く事なく、我が道を走り続けるニール・ヤング先生(Neil Young)、本年何と2作目のアルバム、『Peace Trailがリリースされました。 通算で37枚目のスタジオ・アルバムになります。
 
今回は、よりオードソックスな作品となったとのインフォメーションを受けて即買いしてしまいました。 そして、かなりガッカリしております。 ニール・ヤング先生の熱烈なファンの方たちは一体どう受け止めているか、興味は尽きません。 もう一度、『Harvest Moon』の続編を制作しろなどとは言いませんが、世代の全く違う子供達のようなバンド、THE PROMISE OF THE REALとの間で新たな展開のアルバムを期待しているのですが・・・・・。
 
 
Peace Trail』(訳せば、"平和の轍"って感じでしょうか?)は、リック・ルービン(Rick Rubin)のシャングリラ・スタジオ(SHANGRI LA STUDIO)で録音され、ドラムスにジム・ケルトナーJim  Keltner)、ベースにポール・ブッシュネルPaul Bushnell)を起用しています。 但し、僅かに5日間で録り終えたそうです。
 
グルーヴ・マスターのジム・ケルトナー参加の情報だけで"買い"と判断したのですが、リム・ショットとブラシに持ち替える曲が多くて、ケミストリーが産まれる様な展開があまり無いのは残念な限りです。まあ、殆どがワン・テイクかツゥー・テイクでレコーディングされたことを考えれば、要求に応えるだけで個性を発揮するような展開ではないことは理解できます。
 
全体的に散漫な印象でムラのある、10曲36分の内容ですね。 製作のキッカケが環境問題、ダコタ・アクセス・パイプライン建設によるインディアン居住地への悪影響への抗議なのです。 どうも離婚後に付き合い始めた、女優兼アクティヴィスト(環境活動家)の ダリル・ハンナ(Daryl Hannah)の影響を大きく受けているとしか思えないけれど、これも創作のエナジーの源だから仕方ないとは思うのだが…。
 
抗議デモ活動により何度も逮捕されている、彼女のためにやっているように感じてしまうのは私だけでしょうか・・・・・?
 
 
最近では、過去のライヴ音源をまとめたライヴ・アーカイヴ・シリーズのリリース、MP3に替わる音響圧縮技術とiPhoneに替わる携帯プレイヤーであるPONOの開発とマーケティング(ブログではこの辺です↓↓)や、更には、ウィリー・ネルソン(WILLIE NELSON)の息子たちによるバンド、THE PROMISE OF THE REALとのスタジオ作品にライヴ・アルバムなどを発表して、相変わらずの"枯れない"、そして、"錆びつかない"姿勢を見せていることは間違いありませんけど。
 
また、政治&思想面では、バイオ技術を使った遺伝子組換え作物GMO)による健康被害、食への危機感から、その先頭に立っているバイオケミカル企業のモンサントMonsanto Company)に対して反旗を掲げて抗議活動を行なっているのです。  あろうことか、その意思表示としてアルバム『The Monsanto Years』まで制作してツアーに打って出たんですから、信念なのでしょうね。
 
「食べ物の中身を知る権利を求める人々に対して、その主張を負かそうとする企業を支援するつもりはない」と云うスタンスに立ち、モンサントに同調したと思われるスターバックスStarBucks)に対しても批判の矛先を向けています。 その証しとして、ニールは2014年に「GOODBYE STARBUCKS!!!」宣言をして、大好きだったラテを断ちました。(笑)
 
それから、二人の息子、ジークとベンは先天的な障害(脳性麻痺)を持って産まれて来ていることがある種の想いを助長しているのだと思うのは私だけでしょうか?!(ニールの自伝についてのブログはこの辺りになります↓↑
 
 
さて、楽曲の話に入りましょうね。
 
□  Track-listing ******;
1. "Peace Trail"   
2. "Can't Stop Workin'"   
3. "Indian Givers"  
4. "Show Me"  
5. "Texas Rangers"  
6.  "Terrorist Suicide Hang Gliders" 
7. "John Oaks"  
8. "My Pledge"   
9. "Glass Accident"   
10."My New Robot"  
 
出だしの1発目を聴くと、デジャヴのような感覚に襲われて「オッ!いいじゃないか、まるで"Like a Hullicane"みたいな…」と思わせてくれます。 この曲がベスト・トラックと言えるでしょうね。 アコギに、代名詞とも言えるブラックのレスポールから放たれるディストーション・サウンドとハモンドB3、悪くありません。 他の曲とは明らかに一線を画する曲調であり、余りラフな感じはしません。
 
 
 
 

リフレインされるコーラス部分の歌詞はシンプルですが、強い意思を感じさせるものです!

 

           I think I'll hit the peace trail
           I know that  treasure takes its time
           I have to take good care
           When somethin new is growin'
 
           I think I'll hit the peace trail
           I know I like my changes now
           I have to take good care
           Cause somethin new is growin'
 
 
 
アルバムのリリース前には、すでにTHE PROMISE OF THE REALとのライヴでこの曲を演奏しています。来日して欲しいですね、是非。
 
 
 
 
 
2曲目の"Can't Stop Workin'”は、自らの創作活動の源にある事に想いを馳せて書き上げた曲と言えるでしょうね。この曲迄は、アルバムとしての体裁を保っており、相変わらずだなと思いながら聴いて行けます。 この曲では、思い切りディストーションさせたハーモニカがリード楽器になっています。
 
 
3曲目が、今回のアルバム制作のトリガーとなったダコタ・アクセス・パイプラインthe Dakota Access Pipeline)への抗議活動を行うネイティヴ・インディアンへの過剰な排除行為に反応して書き上げた楽曲です。
 
 
 
 
今年の9月には、その抗議活動の映像をまとめたビデオ・クリップと共に、この曲を先行リリースしています。 こう言った抗議活動が注目を集めた結果、工事は中断されて環境への影響について再調査が行われることが決定していますから、正に有言実行と言えるのでしょうね。
 
この曲では、もう殆どドラムスがリード楽器の様な役割を担っています。 ジム・ケルトナーの面目躍如と言う演奏ですね!
 
5曲目、”Texas Rangers”は、次期大統領となるドナルド・トランプ氏が持論として訴えていたメキシコとの国境に強固なバリケードを築き移民を排除する極端な施策を連想させる内容です。 テキサス州のアメリカ国境沿線を警備するテキサス・レンジャーズの事を皮肉ったかのような歌詞ですね。
 
6曲目の”Terrorist Suicide Hang Gliders”は、同じくドナルド・トランプ氏が訴え続けて支持を得たと思われる移民排斥思想に言及した楽曲ですね。 これを完成した楽曲と云うのか、それとも即興のデモ曲と言った方が良いのか、驚きです! レーベルであるリプリーズ側(Reprise Records)はどう判断したのでしょうか?
 
 
 
7曲目はトーキング・ブルース調の少し冗長な?曲です。  
全米各地で起こっている警官の過剰防衛、 trigger-happy police(やたらに銃を撃ちたがる、または、すぐ荒っぽい手段をとりたがる警官)について批難している曲です。この歌詞の中では、主人公であるジョン・オークス(John Oaks)がある日、車のバックファイアの音を発砲音と聞き違えて銃撃されて死亡したという架空の物語りですが、決して笑えませんね〜。 日常的に起こり得る事だから・・・・。
 
8曲目の”My Pledge”では、ハーモニー・ヴォーカルに Auto-Tune Vocal Effect  を使っています。 ナレーション調のヴォーカルに被さるようにハーモニーが添えられて、不思議な感じがします。
 
 
 
次の"Glass Accident"はとても分かりやすい語彙を使っていますが、比喩的表現ではないかと思います。 自身の離婚の事に言及している様な印象を受けます。 少し感傷的な曲に聴こえてきますね。
 
 
 
 
最後のこの曲、"My New Robot" はあっと言う間に尻切れトンボの様に終わります。 ゲフィン在籍時代に物議を醸した82年リリースの問題作である、『Trans』の時に使用したヴォコーダーを通した変声が登場します。 何故今また演るのか、それは分かりません(笑い)。 
歌詞の中に出てくる、ロボットに引っ掛けたのでしょうが・・・・もう意味不明!
 
 
 
 
          The packages arrived,
          I got my new robot from AMAZON.COM
          Unpackin' it now
          I have a sence of pride
          I'm goin' online to program it for you
 
AMAZON.COMお掃除ロボットのルンバ(iRobot Roomba)でも買ったのでしょうかネ(笑)
 
 
ニール自身は民主党、しかも、バーナード・サンダース候補(Bernard "Bernie" Sanders)を推していたにも拘わらず、ドナルド・トランプ氏の大逆転勝利となり、本当にいてもたってもいられなくなったのではないでしょうか??
 
 
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