1 概要
(1)印紙税検定の中級編を受け、印紙税管理士 ® ※に認定されました。
※登録商標第5906483号
(印紙税検定 利用規約)
https://www.nikkeizei.co.jp/inshikiyaku
勉強方法は初級編と基本的に同じです。
(初級編について)
法令だけでなく、通達や質疑応答事例に当たる必要性は、初級編より若干増えました。
(国税庁・印紙税法基本通達)
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/inshi/mokuji.htm
(2)公式テキストはこちらです。
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ア 例えば契約書や領収証を作るのは、契約締結や弁済の事実を裏づける証拠とするためです。
上記の文書を作る場合に印紙税が課されるか、つまり課税文書かどうかを印紙税法が定めている、ということが上記公式テキストに書いてあります。
事実と証拠のわかりやすい説明は、この本にも書いてあります(p58-65、請求権の一生の物語)。
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イ 課税文書を作ったかどうかは、客観的に判断されます。
なので、印紙税法を知らなくても、課税文書を作れば印紙税を納める(印紙を貼る)必要があります。
課税文書を作ったと気づかないで、印紙を貼っていない可能性があります。
ウ 一方で、課税文書の作成が本当に必要なのかを考えて、①必要なければ作らない、という判断もあり得ます。
また、証拠価値を維持したまま、②課税されない文書を作成する③税額を抑える、ということができる可能性があります。
エ 印紙を貼るのを怠ったらまずい(イ)、というのは多くの人が思うはずです。
ただ、上記①-③(ウ)を検討してみたことは、あまりないかと思います。
証拠価値の判断は、税務というよりは要件事実・事実認定で、司法修習や争訟実務でなければ、接する機会があまりないからです。
つまり、事実認定から逆算する分野として、弁護士が関与する必要があると考えられます。
(受験生との対話13:事実認定ってどうするの?)
https://ameblo.jp/bengoshibenkyou/entry-12349479611.html?frm=theme
2 債権法改正(2020施行改正民法)との関連
上記公式テキストに書いてある内容とは別に、債権法改正について考察します。
(1)弁済と受取書
領収証等の「金銭の受取書」について、振込みに関する解釈として、このような通達があります。
(振込済みの通知書等)
4 売買代金等が預貯金の口座振替又は口座振込みの方法により債権者の預貯金口座に振り込まれた場合に、当該振込みを受けた債権者が債務者に対して預貯金口座への入金があった旨を通知する「振込済みのお知らせ」等と称する文書は、第17号文書(金銭の受取書)に該当する。(平元間消3-15改正)
金銭と預貯金は厳密には別ですが、同じ取扱いをするという内容です。
一方、改正民法に以下の規定が加わります。
(預金又は貯金の口座に対する払込みによる弁済)
第477条 債権者の預金又は貯金の口座に対する払込みによってする弁済は、債権者がその預金又は貯金に係る債権の債務者に対してその払込みに係る金額の払戻しを請求する権利を取得した時に、その効力を生ずる。
(民法477条(2020年4月1日施行予定))
https://ameblo.jp/bengoshibenkyou/entry-12387882922.html?frm=theme
理論的には、上記の通達は必要なくなるのではと思います。
(2)諾成的消費貸借契約
上記公式テキストp114-7に、消費貸借契約書(1号の3文書)と受取書(17号の2文書)との区別について説明があります。
消費貸借契約は現行法上要物契約です。
そのため、消費貸借の合意をして書面をつくっても、実際に金銭等を受け取らなければ、契約は成立しないことになっています。
もっとも、諾成的消費貸借契約は実務上認められています。
また、通達12条で、契約が成立するかどうかとは別に、重要事項のうち一つでも記載があれば課税文書になります。
(契約書の意義)
第12条 法に規定する「契約書」とは、契約当事者の間において、契約(その予約を含む。)の成立、更改又は内容の変更若しくは補充の事実(以下「契約の成立等」という。)を証明する目的で作成される文書をいい、契約の消滅の事実を証明する目的で作成される文書は含まない。
なお、課税事項のうちの一の重要な事項を証明する目的で作成される文書であっても、当該契約書に該当するのであるから留意する。
おって、その重要な事項は別表第2に定める。 (昭59間消3-24改正)
債権法改正によって、諾成的消費貸借契約を、条件付きで明文上認めることにしました。
なので、気にしなくて良くなります。
(書面でする消費貸借等)
第587条の2 前条の規定にかかわらず、書面でする消費貸借は、当事者の一方が金銭その他の物を引き渡すことを約し、相手方がその受け取った物と種類、品質及び数量の同じ物をもって返還をすることを約することによって、その効力を生ずる。
2 書面でする消費貸借の借主は、貸主から金銭その他の物を受け取るまで、契約の解除をすることができる。この場合において、貸主は、その契約の解除によって損害を受けたときは、借主に対し、その賠償を請求することができる。
3 書面でする消費貸借は、借主が貸主から金銭その他の物を受け取る前に当事者の一方が破産手続開始の決定を受けたときは、その効力を失う。
4 消費貸借がその内容を記録した電磁的記録によってされたときは、その消費貸借は、書面によってされたものとみなして、前3項の規定を適用する。
(3)成果報酬型委任
請負契約書は課税文書(2号文書)で、役務提供契約として類似性があっても、委任契約書には課税されません。
請負と委任を区別するのは、結果つまり「仕事の完成」に報酬を支払うかどうかというところです。
簡単に区別できそうですが、けっこう微妙なケースもあります。
(例:プログラムの設計・開発契約書、質疑応答事例)
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/inshi/12/24.htm
(プログラム作成は請負、支援業務は委任)
(通達)
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/inshi/betsu01/03.htm
(税理士委嘱契約書)
17 税理士委嘱契約書は、委任に関する契約書に該当するから課税文書に当たらないのであるが、税務書類等の作成を目的とし、これに対して一定の金額を支払うことを約した契約書は、第2号文書(請負に関する契約書)に該当するのであるから留意する。(平元間消3-15改正)
改正によって、成果に報酬を支払う委任契約も定めることとしたので、さらに微妙なケースが生じるのではと思います。
(成果等に対する報酬)
第648条の2 委任事務の履行により得られる成果に対して報酬を支払うことを約した場合において、その成果が引渡しを要するときは、報酬は、その成果の引渡しと同時に、支払わなければならない。
2 第634条の規定は、委任事務の履行により得られる成果に対して報酬を支払うことを約した場合について準用する。
第634条 次に掲げる場合において、請負人が既にした仕事の結果のうち可分な部分の給付によって注文者が利益を受けるときは、その部分を仕事の完成とみなす。この場合において、請負人は、注文者が受ける利益の割合に応じて報酬を請求することができる。
一 注文者の責めに帰することができない事由によって仕事を完成することができなくなったとき。
二 請負が仕事の完成前に解除されたとき。
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債権法改正と税務実務への影響
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(税理士委任契約についてp167-8)