落語に見る食の風景~「青菜のおひたし」
万葉の時代から日本人の大事な食材
1年を通じて安価に入手でき、栄養豊富です
「青菜」…青い菜の総称ですから春の七草をはじめとして、太古の昔から私たちの先祖が食べてきたものです。
農作物の直売所などで、葉がついたまま売られている大根や蕪などがあります。
レジで支払いをすませた後、わざわざ葉っぱを切り捨てて帰る人をよく見かけますが、何ともったいないことをと、いつも思います。
冷蔵庫もなけりゃエアコンなんてものも全然ない時代…人々はいろんな工夫をして「涼」を演出したものです。簾、風鈴、団扇に浴衣、打ち水、縁台、吊りしのぶなど、みんな懐かしいですね。
「ツリシノブ?何、それ」って言う人が多くなったかもしれません。
竹や針金を芯にして山苔を巻きつけた上に、シノブというシダ類の根茎を植え付けてさまざまな形に仕立て、風鈴と同じように縁側の鴨居などにぶら下げていたものですが、最近は本当に見かけなくなりました。
先人は視覚や聴覚に訴えて、涼しく感じる努力をしていたのだと思います。
味覚のほうでも然り…氷なんて物は貴重品ですから、野菜や果物、お茶やお酒も井戸の水でしっかり冷やしていました。
京都では葛きり、葛饅頭、水羊羹に冷やし飴(飴湯を井戸水で冷たくした物)などが、各地の名物となっています。
アユやハモの料理、鯉の洗いななども、見た目に涼やかな夏らしい料理です。
さて、そんな暑い日の昼下がり、お屋敷の縁側と植木屋の家が舞台の「青菜」という落語があります。
陽射しが強く暑い日の午後、植木屋があるお庭で仕事をしていると、その屋敷の主人に声をかけられます。
「植木屋さん、ご精がでますな」
植木屋は一休みすることにして、その後主人と縁側で一杯やることに…。
酒は上方の柳影といわれて「いやーこんな銘酒を、ありがてえ」と何も知らない植木屋は褒めますが、実は「直し」という安酒です。
冷たくした酒ですっかりいい心持ちになり、鯉の洗いもご馳走になります。
「時に植木屋さん、菜をおあがりかい?」
「へい、大好物で」
というので、主人が奥に向って青菜のおひたしを持ってくるように声をかけます。
すると次の間から奥さまが顔を出して、
「だんなさま、鞍馬山から牛若丸が出まして、名を九郎判官(くろうほうがん)」と妙なことを言います。すると主人が「義経にしておきな」と、これもまた訳のわからぬ返事をします。
実は菜は食べてしまってもうないから「菜は食らう=九郎」「それならよしとけ=義経」という意味。
他人の前で「あいにく切れてしまった」などと言うと、主人に恥をかかせることになるので掛け言葉の符丁を使ったというわけです。
これに感銘を受けた植木屋は、早速帰って女房にそのことを話し、自分の家でも同じようにやろうと決め込みます。
「やい、これこれこういうわけだが、てめえなんざ、亭主のツラさえ見りゃイワシイワシって言いやがって…。お屋敷の奥さまは違うぞ。同じ女ながら、こんな行儀のいいことはてめえにゃ言えめえ」
「言ってやるから、鯉の洗いを買ってみな」と、もめているところへ大工の熊さんがやってきます。
よし、ウチでも同じようにやってみようと、女房を無理やり次の間ならぬ押入れに詰め込んで熊さんを迎えます。
突然「たいそうご精がでるねえ」ときたもんで、熊さんは驚きます。
「青い物を通してくる風が、ひときわ心持ちがいいな」
「青いものって、向こうにゴミためがあるだけじゃねえか」
「あのゴミだめを通してくる風が……」
「変なものが好きだな、てめえは」
「大阪の友人から届いた柳影だ。まあおあがり」
「ただの酒じゃねえか」
「さほど冷えてはおらんが」
「燗がしてあるじゃねえか」
「鯉の洗いをおあがり」
「イワシの塩焼きじゃねえか」
「時に植木屋さん、菜をおあがりかな」
「俺は大工だよ。植木屋は、てめえだ」
「菜はお好きかな」
「大嫌えだよ」
「タダ酒飲んで、イワシまで食って、今さら嫌いはねえだろう。ここが肝心だから、頼むから、食うと言ってくれ」と泣きつかれ、
「しょうがねえ。食うよ」と熊さん。
待ってましたとばかり手をたたいて「おーい、奥や」と言うと、押入れから汗びっしょりになった女房が飛び出してきて、
「だんなさま、鞍馬山から牛若丸がいでまして、その名を九郎判官義経」。
最後まで言われてしまった亭主は困って「うーん、弁慶にしておけ」
というばかばかしい噺です。
夏場に青菜のおひたし…さてどんなものでしょうか。菜の花や春菊はもう終わっています。
小松菜、三つ葉、ホウレン草などでしょうかね。
おひたしは最も手軽な調理法です。茹ですぎないようにして、水気を絞って一口大に切り、おかかや摺りゴマなどをかけお醤油でいただくのが一般的です。
お醤油にお出汁や煮きったみりんなどを加えたタレを作り、ゴマなどと一緒に和えてもいいですね。
同じく春の青菜のからし菜です。(左)(右)
決して茹ですぎないこと・・・シャキシャキっとした食感と、独特の匂いを楽しめます。























































































