私はフランスのリヨンという町にあるリュミエール・リヨン第二大学の大学院に在籍していましたが、クロード・ベルナール・リヨン第一大学に跨る大学院生活を送っていました。ここで私は管理栄養士として、健康指導学・健康促進学の研究をしていました。
在学中に2カ所でのインターンが義務付けられ、1カ所目は大学指定の保健センター、2カ所目は自分で探したインターン先です。私は某車メーカーの社員食堂を選びました。
インターン中のプロジェクトが進み、しばらくたったある日のこと。
(「捜索願いから始まったフランス留学中のインターン」「管理栄養士がフランス大学院インターン先でバリスタになった」に続くお話です。関連URLはブログ最後にあります。)
午前中の小休憩中に聞いていたラジオから偶然飛び込んできたニュース。
私と一緒にエスプレッソを飲んでいたスタッフ誰もが突然動揺し始め、ニュースの対象が捜索願を出していた同僚のことだと分かりました。
その翌日だったか、数日後だったか。スタッフの一人が黒いリボンを配りながら歩いてきました。彼女は私に対して「あなたの宗教上の習慣や制約があるのなら、このリボンを無理につけることはないのよ。」と言ってくれました。こんな時でも彼らは互いの宗教へのフォローの気持ちを忘れません。
私は何の信仰心もなく特に断る理由もなかったので、「皆と同じ様にしたい」と伝え、彼らと共に黒いリボンをつけて喪に服しました。
その日は報道陣が詰めかけて記者会見が行われ、、ローヌ・アルプエリアの代表が受け答えをしていました。その後、マイクロバスでスタッフ全員がお別れの会に向かいました。
マイクロバスに次々と乗り込むスタッフたちを呆然と見送っていると、最後に食堂の鍵束をぽいっと手渡され、全員去っていきました。レジの鍵も全てついていたのだけど、この時は信用されているというよりも(信用されてないことはなかったけど)、あまりの動揺故の行為だったと思います。
心よりご冥福をお祈り申し上げます。
果てしなく広い食堂に私はただ一人残りました。この日はもう誰もくることはないし、ここに一人残ってPCに向かう気にもなれなかったので、戸締りをして食堂を後にしました。
翌日から、スタッフは仕事中に1人ずつ抜けてはカウンセリングのフォローを受けることになりました。何があっても何もなかったかの様に繰り返される毎日の業務。同じことをずっと繰り返しているからこそ同僚の抜けた穴は大きく、悲しみは癒えにくいでしょう。
少しでも彼らの心が楽になる日が来ることを願っています。
これまでのフランス大学院留学記↓
管理栄養士がフランス大学院インターン先でバリスタになった
https://ameblo.jp/basejo/entry-12489281253.html
捜索願いから始まったフランス留学中のインターン
https://ameblo.jp/basejo/entry-12483902909.html
フランス寿司職人デビューその2 あがり!「フランスのエリートにとって寿司の栄養とは?」
https://ameblo.jp/basejo/entry-12480692431.html
日本人の大学院生フランス寿司職人デビューその2「ごめんねの食卓」中
https://ameblo.jp/basejo/entry-12480204665.html
日本人の大学院生フランス寿司職人デビューその2「ごめんねの食卓」上
https://ameblo.jp/basejo/entry-12475887764.html
日本人の大学院生が修行ゼロ日でフランスの寿司職人になりました
https://ameblo.jp/basejo/entry-12471726204.html
フランスの栄養指導は大変です
https://ameblo.jp/basejo/entry-12465432745.html
リヨンの大学院で学んだ課目 親友マリーのこと
https://ameblo.jp/basejo/entry-12464390351.html
留学先は「食の都」&「予防医学の都」リヨン
https://ameblo.jp/basejo/entry-12463140695.html
フランス大学院留学記 私の母校
https://ameblo.jp/basejo/entry-12463904306.html
