私はフランスのリヨンという町にあるリュミエール・リヨン第二大学の大学院に在籍していましたが、クロード・ベルナール・リヨン第一大学に跨る大学院生活を送っていました。ここで私は管理栄養士として、健康指導学・健康促進学の研究をしていました。
これまでのフランス大学院留学記↓
日本人の大学院生フランス寿司職人デビューその2「ごめんねの食卓」中
https://ameblo.jp/basejo/entry-12480204665.html
日本人の大学院生フランス寿司職人デビューその2「ごめんねの食卓」上
https://ameblo.jp/basejo/entry-12475887764.html
日本人の大学院生が修行ゼロ日でフランスの寿司職人になりました
https://ameblo.jp/basejo/entry-12471726204.html
フランスの栄養指導は大変です
https://ameblo.jp/basejo/entry-12465432745.html
リヨンの大学院で学んだ課目 親友マリーのこと
https://ameblo.jp/basejo/entry-12464390351.html
留学先は「食の都」&「予防医学の都」リヨン
https://ameblo.jp/basejo/entry-12463140695.html
フランス大学院留学記 私の母校
https://ameblo.jp/basejo/entry-12463904306.html
寿司職人がいない間、平日はキッチンスタッフが寿司場を担当し、週末は私とキッチンスタッフが二人で寿司場を、月曜日の夜は私一人で寿司場を担当していました。
マダムは持ち前の明るい性格と、鋭い経営感覚で、魚の仕入れ時の目利きもしてくれました。ある時、寿司用としてはいまいちなマグロが納品されたなと思っていたら、マダムは瞬時に魚屋に電話をかけ、「もしもし~魚屋さん、こんにちは。今日は猫の餌を間違えて納品されませんでしたか?」と。とても頼もしい瞬間でした。
ちょっと息抜きの写真を。リヨンの私のアパートの窓べで遊ぶ猫です。
(どこかの飼い猫3匹が窓を全開にしている私の部屋に遊びに(勉強の見張りに?)来てくれていました。)
ところで、寿司店のお客様の多くはフランス人でした。とっさに寿司場に立った私に対する彼らの反応は想像を絶するほど温かいものでした。
私が初めからちゃんとお寿司を握れたわけではありません。それでも彼らは私に敬意を表し、時には握手を求めてくれ、そしてリピートしてくれました。それは私が日本人であり、女性であり、高級すし店の寿司カウンターに立ったという勇気と正義と本物であることを認めてくれたからです。
彼らが寿司職人の青年の作る寿司が好きだったのは良く知っています。青年の寿司はどこかはかなくて繊細でとても綺麗だったから。盛り付け1つとっても、誰にも真似できないオーラがありました。寿司職人がいない間も、変わらずに私の寿司を食べに通ってくれたお客様には感謝の気持ちしかありません。その分、私は、彼らに私しか伝えられないものを伝えることができたでしょうか。
このお店の常連客は社会的に活躍されている方々でした。有名企業の代表、映画俳優、プロサッカー監督、ブランドショップのユダヤ系オーナー、ブルジョワジー等々。彼らにとって、ここで食べる寿司とは「ヘルシーな和食」意外にも彼らの美意識をくすぐる特別なものがあったのだと思います。
人が飲食店やカフェに行く行為、特別な日に特別な料理やお菓子を買う行為とは、「お腹を満たす以外」の目的もありますよね。「お洒落な空間や料理を楽しむ」とか、自分では作れない「特別な料理を味わう」とか、日常生活の中でつかの間の「リラックスを手に入れる」ためだとか。
それは、高級かどうかが問題ではない。大切なのは「自分の心が満たされるかどうか」なんです。この寿司店で彼らが求めていたのは繊細で美しい寿司を食べること、その時間、空間。あわただしい日常の中で特別に切り取られたつかの間の幸せを満たすためのもの。
「心が満たされる食事=健康にとって実はとっても良い食事」
私が予防栄養学の話をする際の視点や目標はこんなところにもあります。おしゃれだけど健康にいいか分からない、健康効果をうたっているけど本当に効くかわからない。そんなこと、ありますよね。その瞬間だけ心が満たされて、後は罪悪感が襲ってくるのでは勿体ない。本当に健康で美味しいものが直ぐにわかる、そんな世の中にしたい。
定期的に通ってくれる常連たちに寿司だけでなく自家製ドレッシングをかけた山盛りのサラダも食べさせるマダム。彼女の誠実で素敵な人柄が、繊細で美しい寿司の魅力をさらに引き立て、多くの人々の心や体の癒し・栄養になっているのだと思いました。
さて、橋本病やバセドウ病の話から少しそれた記事が続いているので、少し甲状腺の話に戻りたいと思います。甲状腺ホルモンは、色々な健康のバロメーターになるんですよ。というお話にしようかなと思っています。
そして、フランスの寿司屋が落ち着きを取り戻したところで、私は新たなチャレンジを試みました。実はこの後、「タコ焼き屋」を始めました。彼らの反応は・・・?そんなお話や、大学院のインターンのお話も。書きたいことがたくさんです。
今日も読んで下さり有難うございました。
