私はフランスのリヨンという町にあるリュミエール・リヨン第二大学の大学院に在籍していましたが、クロード・ベルナール・リヨン第一大学に跨る大学院生活を送っていました。
そんなある日、リヨンのお寿司屋さんで私・・・
寿司職人デビューしました。
管理栄養士である私の夢は、「命ある限り、皆がさいごまで食生活を楽しんで、その食生活から元気のパワーをもらって欲しい」ということ。
私がバセドウ病や橋本病の食事療法の本を執筆したのはその考えのもと。時には食事に対して丁寧に正しく向き合うことが大切。そんな時期を大切に過ごして欲しいと思って。
食とは欲だから。それが満たされないなんてストレスですよね。でも、うまく満たされれば、幸せです。
美味しいものは不健康とよく言うけれど、健康と美味しいご飯の両立は可能です。太るとか、病気になるとか、体に悪いとか、何の心配もいらない、美味しくて幸せなごはん。それを実現するには、少しだけ工夫が必要なんです。でもできます。健康と美味しいご飯の両立をもっともっと伝えたい、それが私の永遠のテーマですし、留学の目的でもありました。そのために、食の在り方、健康の在り方、人々の考えを色々な角度から知りたい。そんな訳で、1つの「食の在り方」を見るために、リヨンの寿司屋に入りました。
リヨンの寿司屋でアルバイトをしていた私。寿司屋で働くことになったのは、偶然のすれ違いからでした。まあ、何であれ面白そうだから経験してみようと始めました。私はキッチンを担当したり、客席で料理の説明をしたり、お運びを手伝ったり、取材対応等をしていました。日本人スタッフは私一人だったので重宝されました。
ある土曜日の夕方、出勤するとキッチンスタッフとお運びのスタッフが騒いでいました。騒ぎの原因は「寿司職人が無断欠勤している」とのこと。確かに、魚が納品された状態で山積されていて、ネタケースも空っぽ。本人に何度電話をしても連絡が取れず・・・。キッチンスタッフは料理担当だし、営業時間は迫っているし、予約は満席の2回転予定だし・・・。テーブル席もお座敷もあるので、仕込みはかなりの量です。悩む時間はありませんでした。私たちは覚悟を決めました。私たちだけでキッチンも寿司カウンターも回そうって。このお店は高級店、単価は高いもののネタの良さ、コスパの良さでお客様に期待されている店だったので、予約を全部店の都合でドタキャンしたら、店の評判に傷ついてしまいます。(今考えたら、良いネタが入らなかったといってドタキャンした方が安全だったかも・・・)
中国人のキッチンスタッフは長年このお店で働いていたので、店の事情を良く知っている彼が寿司カウンターに立ち、私がキッチンを担当することにしました。そこからは猛スピードで準備し、何とか営業にこぎつけました。幸い、その夜は料理の出が少なかったため、私も寿司カウンターに入って彼のサポートをしました。目の回る様な忙しさでしたが、何とかお客様に楽しんで頂くことができました。
翌日は日曜日、定休日です。月曜日のことは不安だったものの、「月曜には寿司職人が戻ってくるといいね」と話し、その日はそのまま帰途につきました。
そして、月曜日。月曜日は夜だけの営業です。月曜日はお客さんもほとんど来ないので、お運びのスタッフも休み、普段は私と寿司職人で切り盛りしていました。そして後からオーナーマダム(フランスに移住した韓国人エリート)が顔を出し、おしゃべりして店じまいといった感じでした。ところが、この日は様子が違いました。寿司職人が来ません。そして連絡もつきません。
キッチンスタッフもいつも通り休んでる!よく考えたら、マダムの電話番号も知らなかった!なにこれ。私一人??意味がわからない!!
でも、なぜかこの日は予約が入っているし、店の都合でドタキャンしたら、店の評判に傷ついてしまいます。と言う訳で、私は一人で店を開けることにしました。「えーい、開けちゃえ!」ってね。そして、他に人がいないから、
私、とりあえず、リヨンの高級寿司店の寿司職人に変身しました。
魚はさばけるんですけど、いいんでしょうか?寿司職人の修行ゼロ日でしたけど。(土曜日の夜に巻きずし作ったのはカウントして良い?)
店を開けてカウンターに立ち、しばらくすると、マダムがのんびりやってきました。状況を予想していたのか、「Acco、私、日本の映画をみて日本語勉強してきたわ。私が接客するから、寿司カウンターは任せたわ♡」って。このお店は、初めのあいさつだけは日本語にしようっていうことになっていたんです。
そして、予約ではないお客様がいらっしゃいました。こういう日に限ってお客様はなぜか来る来る!その瞬間、マダムが叫びました。
「いらっさいませ~!何様ですか?」
へ???
「ねえねえ、マダム、今、 ’’なにさま?’’って言った!?」(何名様ですか?って言いたかったみたい・・・)
「言ったわよ~」
お客様、日本語のわからないフランス人でよかったです。
と言う訳で、愉快なマダムとの珍道中は次回も続きます。
ところで、この寿司屋のアルバイト、偶然始めることになったのですが、私にとっては素晴らしい出会いの1つでした。
オーナーは韓国人のご夫婦でした。ご主人はリヨン第二大学の言語学博士、奥様はINSA(リヨンにある工学系のグランゼコール)出身。アカデミックキャリアの持ち主です。私の大学院生活での相談を持ち掛けると、いつも的確なアドバイスを下さりました。
リヨンでの大学院生活はとても忙しかったのですが、このアルバイトはシフト時間を調整して頂きながら結局最後まで続けました。ここで過ごした時間は、自分の考えや方向を一歩立ち止まって考えるための貴重なものになりました。
これまでのフランス大学院留学記↓
フランスの栄養指導は大変です
https://ameblo.jp/basejo/entry-12465432745.html
リヨンの大学院で学んだ課目 親友マリーのこと
https://ameblo.jp/basejo/entry-12464390351.html
留学先は「食の都」&「予防医学の都」リヨン
https://ameblo.jp/basejo/entry-12463140695.html
フランス大学院留学記 私の母校
https://ameblo.jp/basejo/entry-12463904306.html