私はリュミエール・リヨン第二大学の大学院に在籍していましたが、クロード・ベルナール・リヨン第一大学に跨る大学院生活を送っていました。これまでの記事↓
https://ameblo.jp/basejo/entry-12463140695.html
https://ameblo.jp/basejo/entry-12463904306.html
大学院では予防医学、健康科学、社会科学、公衆衛生、医療政策、福祉制度等を学びました。私が大学院を修了できたのは、ここで知り合った親友のマリーのおかげです。
私が通っていた校舎です↓
クロード・ベルナール・リヨン第一大学ロックフェラーのメイン校舎1932年の建築物です。廊下はかなり薄暗かったです。
(オフィシャルホームページより画像を引用しました。引用元URL↓)
https://www.univ-lyon1.fr/campus/plan-des-campus/domaine-rockefeller-740141.kjsp
マリーには持病がありました。そのために彼女は授業を休みがちでした。
ある時、彼女が私に頼みました。「私はこれからも授業を休まなければならない時が度々出てくる。だから私に授業のノートを貸して欲しい」と。あまりに責任重大なお願いに、私は困ってしまいました。私のノートが彼女の単位に大きな影響を与えるかもしれない。
それでも私は彼女の力になりたかったですし、頼まれたのは他の誰でもなく、私。困ったけれど、迷いはありませんでした。引き受けることにしました。この瞬間から私の授業へ向かう姿勢は、自身とマリーのためのものになりました。
時に人は「誰かのためになりたい」と心から思えることで、そのホスピタリティによって自身が育てられることがあります。問題や目的の本質や焦点を失ったり反らしてはいけないけれど、でも、人間の社会とは、そうやって上手く循環していくのかなと思います。フランスはある場面において、この循環がとても上手くいっていると感じます。その1つが予防医学の分野です。
大学院の授業科目は下記の様なものでした。記憶している限り列挙してみます。科目の切り分けがやや曖昧です。
◎ 社会科学、医療政策 :WHOの話をしたり、世界の医療政策についての評価など
集団における予防医学プロジェクトのたてかたや評価法など
ケーススタディ
◎ 社会心理学 :様々な社会心理学者の話や精神分析法、ストレスの話など
ケーススタディ
◎ 依存症学、医学史 :薬物中毒、アルコール中毒、DV、神経性食欲不振症など
医学や病院設備の歴史、伝染病、助産婦の制度等
◎ 労働法、NPO法
◎ 会計学
フランスの大学院の授業は、ホワイトボードに説明をほとんど書きません。多くの場合、教授がひたすらしゃべり、学生は必死にメモをとります。大学の授業もこのスタイルが多いそうです。この授業方式のために、マリーの依頼に当初の私は困ってしまったのです。
もし、フランスの大学や大学院に行く予定の方がいらっしゃるのであれば、予め「速記」を勉強してから行くと役に立つと思います。フランス語は綴りがとても長いですから。
社会科学は担任が受け持ち、社会心理学と労働法は各教授、それ以外の科目は外部の専門家でした。依存症学はクレルモン=フェランから精神科医が来てくださっていましたが、TGVが通ってないので、急行で片道4時間かかるそうです。フランスの電車は遅延やストライキが多いため、何度か休講になってしまいました。深く考えさせられる内容が多く、一番興味深い授業だったので残念。
社会科学はアメリカの社会心理学者のIcek Ajzenの理論モデル「The theory of planned behavior (フランス語だとThéorie du comportement planifié)」をベースにしています。プロジェクトはこの理論モデルをベースに進めます。これは欧米と、恐らく日本でもこのモデルを用いるのではないでしょうか?
Icek AjzenのThe theory of planned behavior:
理論モデルはあくまでプロジェクトを動かす手段なので、これをベースに授業ではケーススタディーをたくさんこなします。
あるケーススタディーを行った際、とってもシンプルな内容だったのですが・・・私はここで「フランスの天才教育=非認知能力を高める教育」の本質を初めて実感しました。