関係者はみんな言外に「デル・トロより原作寄りに」と自画自賛してます。気持ちはわかりますし、原作者も初回の映像化ではやはり映画なりの世界になるのはしょうがない、と割り切っていた節がありましたから。でもやっぱり映画になるなら、原作通りになる方がうれしい、という人情もあるし、集まったクリエイターの原作リスペクト度合いが強ければそうなりますよね。

で、そこまで違うか?というと原作をちゃんと読んでないのでわかりません笑。

でもロン・パールマンが作った原型をそこまで裏切って変えた、という印象もなく、よくやっていると思います。

リズは登場せず、代わりにヒロイン的にアリスが登場。また、アジア系ヒーローが出てくるのもいいかなと。ダイミョウ少佐を演じたダニエル・デイ・キムのインタビューも見ましたが、かれも韓国系俳優として、見た目で判断されることへの違和感や反発、というものを通じて、この作品への共感を強くしているみたいです。韓国系なのに「ダイミョウ」という日本人名が付くのも、本当は複雑でしょうね。

ストーリー全体は、アーサー王の時代からの因縁を経て、女王ニムエ復活、という話。ミラ・ジョヴォヴィッチは貫祿十分。カットされたシーンを見たら、ニムエが酷いだまし討ちに遭っていて、実は平和主義者だったこともわかるので、よけいに人間側が酷い、ということになるのです。このシーンは残した方が、魔物ワールドに共感するヘルボーイの心情に説得力がもたせられたかもしれません。

まあでも、全体に感情の流れは前2作よりもスムーズにできていたかな、とテンポ感も含めて納得です。クライマックスが少し淡白な気もしましたが。

あまり好きじゃなかったのは残虐描写が多かったこと。

 

前作から一度ヘルボーイの幼少期に聞いた物語を振り返って現代へ。前回の相棒だったマイヤーズは南極に飛ばされた、という設定でリズやエイブとの関係が中心。そこに新任のハンドラー、ヨハン・クラウスという謎のガス人間が登場。

かつて人間と魔界のものが争って、休戦協定を結んだが、魔界の王の息子が叛乱を企てる、という話。双子の娘もいて、途中でエイブといい仲に?というあまずっぱい展開もあります。

全体としては、映像のためにお話がある、という印象で、個々の心情の展開のための細やかな演出、というのはあまり見られなくて、リズが妊娠したのをいつレルボーイに伝えるか、だけみたいに見えました。

あとは、やはり戦闘シーンの魅力、というのがそんなにないような気がしました。圧倒的な力があるわけじゃなく、ただしぶとい、というだけなのに態度はデカイ、この落差がずっと気になってしまって、やはり知恵のないヒーローには限界があるのかな、と思ったり。「ハルク」にもそういうところはありますね。

 

1作目を見た行きがかり上、見ておかねばと思って見ましたが、まあ残念の一言。

オチは言いませんが、未来から何を学んで帰ったのか、というぐらいに、無策に同じ悲劇を繰り返す愚かさ。菅自民党政権の無策並みに酷い。ビジュアルなどはまあ頑張っていただけに、労力を無駄遣いさせた脚本の罪は深いです。

ヒロイン二人にはさまれた主人公の右往左往、みたいな展開も、失敗した過去を繰り返さないための作戦も何もなし。せめて万全を尽くして対策したのに運命の歯車が狂って歴史が繰り返す、というようなプロットを作るべきでは。

日本に占領されかけた1927年に一度だけタイムトリップして、支配が10年だけ遅れた、みたいな豆情報があって、ブラック・ジョークぶりにも引いてしまいました。

途中で江戸時代に入った日本から北条氏がやってきて明国に倭寇を引き連れてやってくる、という演出なのですが、中国における北条氏の位置づけについては、ちょっと興味がわきました。

 

明朝の時代に逆賊として追われる立場になった剣士が氷漬けになって現代に蘇るという設定のSFファンタジー。藤岡弘の「SFソードキル」を思い出しましたが、それよりはアクションやテンポは格段に速く、人物同士の掛け合いもコミカルだったりします。

序盤、時間軸も場所も飛びまくるので、土地勘がない自分にはテロップが出てもピンとこないところがたくさんありましたが、敵味方が把握できて、大きな全体の構図が見えてくると気にならなくなりました。

最終盤の橋の上での剣や斧でのアクションは見応えがあり、かつては兄弟の契りを交わしたもの同士の複雑な心境も伝わってきました。終わり方がちょっと中途半端なのは残念というか、続編にひっぱりすぎな印象。

また、宿を貸してくれるメイも、最初はお金目当てで近づくけど、母親の病気などを通じて信頼を寄せるようになる心情が伝わって、好感度高いです。超美人、というよりは、かけだしのアイドル感があって、親しみが持てます。

 

2019年の「ヘルボーイ」を見たいと思ってたんだけど、前の作品のディテールを忘れ過ぎてる!と思ったので、最初から見直そうと思い立って、今日は2004年の1作目。

全面的にCGが採用され始めたころの作品だから、今に比べると画面が整然としていて、なんとなくきれい。今のディストピアSFって、逆に汚しすぎ、と思うこともあるけど。

メイキングを見ると、原作者のミニョーラはコミックアーティストとしてずっと活躍してきたけど、ストーリーから自分で考えた初めての作品だったそうだ。モデルが家具職人だった父親で、毎日オガクズまみれで帰ってきた力強いイメージ、というのを聞いて、ヘルボーイの無口な不器用さが腑に落ちた。

設定の説明は1944年の戦争末期のナチスの研究でヘルボーイ誕生、ストーリーは新人捜査官の目から描いた、極秘のFBIモンスター捜査研究所の様子から始まるのでわかりやすかったけど、モンスターがモンスター事件を捜査している、というひねりの面白さやヘルボーイの捜査官としての強みはあまり印象つかず、日常のルーティンをもう少し描いたらよかったかも、と思った。子どもっぽく脱走を繰り返して全くチームとしてのコントロールが効かない捜査の支離滅裂ぶりの方が目立った。

クライマックスでのバトルも少し淡白で、ジェフリー・タンバー演じる部長とのコミカルなやりとりと、墓から掘り起こした死体が喋り出すあたりが一番楽しかったかも。

デザインワークやアニマトロニクス、特撮はそれでも贅沢な楽しみ方ができた。序盤から出てきた半魚人のキャラクターが、「シェイプ・オブ・ウォーター」の怪物にこんなに似てたっけ、とビックリした。それだけ忘れてたんだろう。

 

日本映画チャンネルで放送していたので録画で視聴。自分5歳の時の作品なのでたぶん見ていないでしょう。テレビでも放送したかどうか。

海外の妖怪ダイモン(デーモンからとったのでしょうか)が日本のお代官にとりついて、血を吸われるとどんどん手下になってゆく、というので今でいうとゾンビでしょうか。日本の妖怪もマヌケ揃いでかなわないはずですが、代官の部下のおじさんが修験者で、破魔の矢みたいなものをくれて、これが突破口になって闘いらしくなっていきます。

テンポはまあ、この時代ならしょうがないかなと思いますが、特撮のアングルとか、同ポジでの出現・消滅などは丁寧にしてあって、終盤の「大戦争」的な群衆もオーバーラップ機能をフル活用してモブシーンらしく盛り上げています。

冒頭にWestrex Recording Systemというクレジットが出て、どうもステレオで録音されているらしいのですが、少しひずみっぽくて全体の広がりはもう一つ。ただ、音楽は少しドビュッシーっぽいところがあったり、現代にも通じるようなファンタジー的要素があります。

 
「マニカルニカ ジャーンシーの女王」を見た。1957〜58年のインド大反乱の女性指導者ラクシュミ・バーイーが主人公。
 
インド映画特有のミュージカルノリの陽気な部分もあるけれど、当時のインドの独立への渇望と、民衆と共に生き愛された女王の生涯を重厚に描いている。
 
これはインドの歴史の映画であるとともに女性の歴史の映画でもあって、ラクシュミが宮廷での女性の振る舞いのタブーをいかに破って指導者としてのカリスマ性を獲得していったか、という、比類なき戦士、母、寡婦、そして女王の物語となっている。
 
きのうコナン・ドイルのドキュメンタリーを見たばかりで、ドイルは従軍して医師として、そして記者としてイギリスの立場でものを語っていたわけだけれど、その真裏から、イギリスからいかに東インド会社を通じて傍若無人に振る舞っていたか、ということをこれでもかと描いている。
 
冒頭で面白いのは、「信仰・国家・地域を傷つける意図はない」「動物は虐待していない」「ドラ・馬・ゾウはCG」「お酒は身体に悪い」と、断り書きのオンパレードで始まることで、一口にインドといっても受け取られ方は地域によってさまざま、ということも意識しているのだろう。
 
すごく面白かった反面、独立心と表裏一体の愛国心・宗教心に火がつくことで、簡単に武装蜂起に結びついてしまう、反応の速さについては複雑な感覚も持った。
 
戦闘シーンは、ちょっと「300」も思わせる、CGと現代的なテンポのよさもあって飽きさせない。剣技については当時のインドの剣術を参考にしているのだろうか、舞のような優雅な動きで、手首の返しに特徴があるように思った。
 
あと、この映画で面白かったのは大砲の音で、どのくらい考証しているのかわからないけど、防弾の発射と着弾に金属の重みを感じさせる要素がある。ズドンという重みは他でも聞いたことがあるけど、金属感は初めてだった。
 
インド映画だけど歴史映画であることで、ボリウッドという以上に「アジア映画」であることを意識させられた印象。音楽の使い方なども、中国の王朝ものドラマを連想する要素がある。イギリス人を演じる俳優の演技も、大河ドラマに出てくる外国人感がすごく強かった。

 

このシーズンで打ち切りになってしまった「インスティンクト」。シーズン1が13話だったのに対してこちらは11話。

 

チームワークや話の構成に関しては大幅に改善されて、テンポもよく面白くなってるな、という印象を全般的に持ちました。リジー・ニーダム刑事のキャラクターも確立されて不用意な攻撃性が陰をひそめたのがよかったなと思います。

 

ディランについては、行動分析の専門性がどこまで生かされていたか、はよくわからない部分もありますが、性格的な特徴と能力のマッチングに少し苦労した印象。でも彼の存在がチームに活気を与えたことは伝わったかなと思います。

 

今シーズンは「眠り姫事件」というのが全体をつなげるアークとして機能しているのが特徴で、ディランは日常で起きる事件とこの連続殺人の間を行ったり来たり。ネブラスカからやってきたライアン・ストック刑事と時々コンビを組んだり。

 

ディランの行動でいうと、大学教授と事件捜査は従来通りですが、作家としての面は控えるようにしたらしく、ウーピー・ゴールドバーグのジョーン編集長はお役御免に。アンディと養子をとることに決めて、それに関するストーリーは共感できます。

 

上司であり親友のジャズミン警部については、婚約を破棄したり、リジーを夜な夜なパーティーに誘ったり、市長からの圧力に屈して現場に当たったり、あまり理想の上司とは言えない人のようです。

 

どうも最終話までシリーズ継続の可否がわからなかったらしく、ジュリアンの仕事の秘密と、かつての宿敵の再登場など、スパイの世界について少し伏線をひっぱりつつ、消化不良な印象を残して終わりました。ディランとリジーの二人がお互いの理解を深め成長した、という流れにはなったようですが。

ボディビル時代の名残があるシュワルツェネッガーの肉体美ですね。「ターミネーター」より後だとは知りませんでした。

ストーリー的には荒っぽくて、ご都合主義と言われても文句は言えないでしょう。大雑把で、楽天的で、悪役も詰めが甘い、古き良き時代の大量殺戮アクションです。

アリッサ・ミラノが、まだ幼さを残す娘役。そして、ダン・ヘダヤが、まだ悪役を演じていた時代。後に「プレデター」で共演するビル・デュークが、元グリーンベレーを名乗る悪役で出ています。そして、見覚えがあるなと思ったのは、前半で殺されるチンピラ。デヴィッド・パトリック・ケリーという人で、「ツイン・ピークス」のジェリー・ホーン役の印象そのままですね。もう一人、航空管制官役でちょっとだけ、ビル・パクストンが出ています。


CGばかりになる前の時代の作品で、Blu-rayのメイキングとかを見ると、コミックスにただ忠実に、というよりも映画独自の魅力と原作の本質をうまく掬い取った労作だなという印象を受けます。

レイチェル・ワイスの二役の演技もさすがだし、ティルダ・スウィントンは生き生きとサディストを演じているし、ピーター・スターメアの悪魔はイタズラ心に満ちているし、ワクワクの止まらない作品。

冒頭から始まる「ロンギヌスの槍」発見からのメキシコのくだりは途中でフェードアウト気味になるのがちょっと惜しいですが、後半のクライマックスでちょっとのキズは帳消しに。

知り合いが禁煙のための映画だ、なんて言ってましたが、頷けるところもあります。

でも、安易なロマンス映画にはならず、精神病院に入れられた妹とアンジェラの関係なども繊細に描かれていて、見れば見るほどディテールに深みを感じました。

エンドロールの後ろにも少し話があるので、見逃すと損します。