ジョン・ヴォイトは、もっぱら悪役としてしか知らなかったので、この半ばヒーロー的な描かれ方はなかなか新鮮でした。

ハンブルクに暮らすフリーの記者ピーター・ミラーは、自殺をした老人の手記をひょんなことから手に入れる。老人はリガ収容所の生き残りで、妻を収容所で亡くしたあと、収容所の所長だったロシュマン告発を唯一の生きがいとしていた。

その手記には、収容所のユダヤ人たちの心を、肉体を殺すことに嗜虐的な喜びを抱いていたロシュマンの様子が克明に記されていた。

特ダネになると感じたピーターはのめり込み、その過程でSSの生き残りが地下組織「オデッサ」を作っていることもわかり、大会に潜入したことで組織に目をつけられることに。だが諦めずサイモン・ヴィーゼンタールにも相談してロシュマンの現在を探る。一方でピーターの存在はイスラエルの組織(モサド?)の関心を引き、彼を別人に仕立ててオデッサへの侵入を図る。

徹底した訓練の後、面接をクリアしてピーターは偽ID作りにバイエルンのクラウスの許へ。しかしミュンヘンから愛人ジギにかけた電話がきっかけで偽装はばれそうに。偽ID工場に呼び出されたピーターは暗殺者と決闘の末返り討ちにして、クラウスが隠していた「オデッサ・ファイル」を入手。それはナチス所属時代の本名と、現在の偽名がすべて記された資料だった。

ファイル本体はジギに託し、ピーターはロシュマンの許へ。屋敷に忍び込み1対1で対決。そこで明かしたのは、戦時中にロシュマンが射殺したナチスの将校はピーターの父親だったという事実。自らを正当化し、非を認めないロシュマンはピーターを撃とうとして射殺され、ピーターは不起訴に。

その結果、エジプトがイスラエルに撃ち込もうとしていたミサイルは飛ばなかった、というオチ。

冒頭にイスラエルの話があって、これがどう関係あるのかな、とずっと不思議に思っていたらラストでちょろりと明かすだけで終わったのはびっくりしました。

新聞記者がただ特ダネを追っているにしては、こだわり方がおかしいし、スパイまがいのことをいつの間にか始めるし、スパイとしての潜入が成功する前に正体ばれてるし、で、最近の政治スリラーの手回しのよさと誰も信じられない展開になれてしまっているので、車でつけられていることに気づかないユルさはだいぶ時代を感じさせますね。

原作小説はフィクションで、ロシュマンは実在するけれど1977年までは死んでないようだし、いろいろと事実を元に脚色しているみたいですが、でも1963年なんてまだ戦後間もない時代だったんだな、と思ってしまいました。「ネオナチ」が自分の周りで話題になり始めたのは80年代だったように思いますが、実はドイツでも、ナチスの話をことさらに持ち出すのが憚られた時代があったり、オデッサの連中のように、現在の繁栄を築いたのはナチスだ、とうそぶくような歴史修正主義もそれなりにあったんだな、と思います。日本にはそのムーブメントが今来ている、といってもいいのかもしれませんがやはり怖い話です。

ジギ役のメアリー・タムは、後年イギリスの大ヒットSFテレビドラマ「ドクター・フー」でトム・ベイカーの相棒役ロマーナをつとめた人ですね。

音楽をアンドリュー・ロイド・ウェッパーが書いているんですが、けっこうシンセを多用していて、今の作風とは全然違いますね。

原題のParanoiaからすると、誰が敵か味方かわからなくなって錯乱していく主人公、という心理スリラーかと思いましたが、もっとストレートな脅迫サスペンスでした。

IT大手のワイアット社に勤めながらなかなか芽が出ず、父親の肺病の治療費で首も回らないアダム、ワイアット社長を前にしてのプレゼンでよりによって社長の態度にキレてチャンスを棒に。その腹いせに社用カードで高級クラブで飲み食い。クラブで知り合った謎の美女と一夜を共にし、でも翌朝には知らん顔されて放り出されます。

その直後、社長含む幹部に呼び出され、ワイアットの前ボス・ゴダードの会社に再就職してスマホの最新モデルの内容を探るスパイになれと命じられます。いやなら刑務所と脅され、しぶしぶ引き受けることに。

ゴダード社の面接では、なんと例の謎の美女エマも同席。どうやら有能な広報担当らしい。ワイアットのいろんな入れ知恵でゴダードには気に入られた様子のアダム。少しずつ情報をワイアット側に流すけれども、その過程でエマと接近するけれど段々と気が咎めるように。

その頃、父の家にFBIが。どうやらワイアットが以前にスパイを命じたらしき人間は次々と死体になっているらしい。なにかやましいことをしているなら申告を、と問い詰められるけれど、その時は父親の手前虚勢を張って追い返します。

しかし、報告が遅いのにじれたハンドラーから脅迫まがいの催促が届き、徹底的にハッキングされていることに気づきアダムはパニックに。しかし言うことをいかないと友人たちを殺すと脅され、本社の試作モデルを盗みに。

エマの指紋と携帯を使ってうまく潜入して金庫の試作を手にしたと思ったのも束の間、ゴダードはすべて読んでいた。ワイアットとアダムのやりとりはすべて筒抜けだったと。

そこでアダムは仲間のケヴィンに相談に。そしてワイアットと直談判、やりとりはすべて記録されているから捕まりたくなかったらゴダードと交渉しろと。その過程でハンドラーの一人がゴダードと通じていたことも明らかに。

そしてゴダードの元に。三者会談、いきなり携帯を没収されてケヴィンは会話にアクセス不能に、しかし機転を利かせてゴダードの携帯に仕込んだスパイウェアで盗聴に成功。彼らの不正の証拠が押さえられたところでFBIが乗り込みゲームオーバー。アダムは協力が認められて不起訴に。

後日、自分の身の丈相応にやっていこうと、改めて仲間と一緒にベンキャー企業をブルックリンに立ち上げるアダム。そこにエマも訪れてメデタシメデタシ。

全体を通じては、一生警備員として過ごした父親のようにはなりたくない、というところで頑固なアダムが、虚勢を捨てて父親の生き方を認められるようになるまでの成長ものがたり、と言えなくもないですが、プロセスがプロセスなだけに、エンディングが悲惨でない「グッドフェローズ」、という感じがなくもないです。

序盤、アダムの能力の高さがあんまり感じられなくて、せめて口先のうまさか頭のよさか、情熱か、どれかは感じさせてほしいな、というのは残念なところ。エマに適当にあしらわれるところあたり、全然冴えないし、そもそもプレゼンしたかった新コンセプトが全然いけてないので、成功できないのが仕方ない、という感じがしてしまいました。次にスパイ行為を働くのも、やる気があるのかないのか、面白さを感じているのか、もう少しわからせてほしい。エマに気があるのだけはわかりましたが。

それでも、後半になって、逆転のためのしかけを思いついてからは少し面白かったですが、それまでの途中、たとえばFBIが来たときに、普通はもう白状した方がずっとうまくいく、と思いそうなものですが、なぜそこでは黙っていて、ワイアットとの直談判で不用意なことを口にして自らを厳しいところに追い込むのかわかりません。

ゲーリー・オールドマンは小悪党を演じるのはうまいですが、後半になるにつれてスケールダウンしたのは残念。その分ハリソン・フォードが得をするように設計されていたのですが。

アダム役はリアム・ヘムズワースといって、クリスの弟ですね。どうしても若いころのジョン・トラヴォルタという感じがしてしまいます。エマ役はアンバー・ハード、ジョニー・デップの元奥さんですが、わりにコメディー映画での役が多いようです。父親役のリチャード・ドレイファス、さすがにお年を召した印象ですが、まだ元気ですね。

ジェームズ・フランコが、「オズの魔法使」で描かれる前の、オズの国にやってきたころの若き日のオズを演じた物語。

巡回サーカスの手品師としてカツカツの暮らしをしながら、でも何かをなし遂げたいと夢見る若者オズ。ある日サーカス内のいざこざを逃げるために気球に乗ったら、竜巻に巻き上げられて知らない国へ。どうやらここは魔法の国らしい。しかも「オズ」と自分の名前がついている。

出会った魔女セオドラとちょっといい仲になってしまったら彼女はすっかり女王になったつもりに。彼女の頼みで悪い魔女を退治してくれ、と頼まれ、安請け合いしてしまいます。途中で助けた羽の生えたサル・フィンリーは半ば強引に家来になり、エメラルド・シティーに。

そこで出会ったセオドラの姉エヴァノラはオズの力に懐疑的。でも信用して彼を王国を脅かす「悪い魔女」グリンダ討伐に送り出します。

途中で陶器の村に立ち寄ると軍隊に襲われて全滅。ただ一人の生き残りの陶器の少女の足を糊でくっつけてやり、彼女もお供することに。そうして暗い森にやってくると、グリンダは思いの外いい人みたいだ。さては?

そう、本当に悪い魔女はエヴァノラだった。彼女の差し向けた追手を逃れ、グリンダは一行を彼女の村へと連れてくる。軍隊はないけれど平和を愛する気のいい人たち。その様子をエヴァノラはセオドラに見せ、彼女の傷心につけこんで毒リンゴを食べさせ、悪意に満ちた強力な魔女にしてしまう。

セオドラがオズたちに宣戦布告し、オズはたまらず逃げ出そうとするが、妙案を思いつき、エメラルド・シティーと戦う作戦を立てる。それには村人の熱心な協力が必要だった。

序盤は有利に運ぶものの、グリンダは杖を失いエヴァノラに捕らえられてしまう。その間に仲間を場内に侵入させたオズは、味方も欺き、気球に乗って逃げたと見せかけて一大イリュージョンを演出。雲に巨大な顔を投射させ勝利を収める。セオドラは捨てぜりふを残し逃亡、エヴァノラはグリンダとの一対一の闘いに破れ、醜い姿で追放される。

最後は一緒になった戦った仲間たちをねぎらい、今後の統治の体制を決めたところでおしまい。このしかけが、「オズの魔法使」のラストでドロシーたちに暴露されてしまう伏線になるわけですね。

何かでかいことをなし遂げたいけど、どうしたらいいかわからない、女性には次から次へと手を出すけど、本気で責任をもとうとはしない、ちゃらんぽらんな若者が、自分のなすべきことを知る、というのが基本の流れなんでしょうが、手品師が魔術師と間違われたことへの戸惑いや、魔女討伐を頼まれたときの虚勢の張り方、びくつき方などが、あまりメリハリがなくて、どこで心情にスイッチが入るのか、やや分かりにくかったです。これはジェームズ・フランコの欠点なのか、脚本・演出の責任なのか。

魔法の国の魔女たちが次々と彼の小手先の手品に騙されてくれる、というのがややリアリティーがないのですが、電気のない世界においては、科学は魔術に近いもの、と好意的にとることもできます。それにしてもセオドラはちょっとかわいそうだったし、序盤のサーカス小屋で足の悪い少女が「歩けるようになりたい」と頼むところを断るあたり、ちょっとしり切れとんぼで後味が悪いな、とか思ってしまいました。

キャラクターの中では、フィンリーのサルの顔の造形がややグロテスクだったのが残念で、性格そのものはけっこう好きでした。陶器の少女、最初は少し気味悪いかなと思ったんですが、表情豊かだし、けっこう愛らしいなと思いました。ただ、性格の豹変するキャラクターの割に、強みがあんまり設定してもらえていなくて、活躍する場面は少なかったです。

自分の能力や強みを生かすことで、人の望む自分になれる、というメッセージはやや楽天的ですが、見て楽しい作品ではありました。

作り方からすると信じがたいほど古めかしい、心理スリラーでした。序盤の会話からしてもう、ちょっと標準を下回る出来だ、というのはわかりましたね。台本が平板で人物の背景を全く感じさせない。

序盤からクリスティーナ・リッチ演じるローレンが悪夢にうなされたりフラッシュバックに襲われるところで始まり、どうも子どもを亡くしたことがうかがわれる。かなり神経症的な様子でカウンセリングにも通っている。夫のラッセルは引っ越して環境を変えようと。選んだのはよりによって超ハイテクの高級マンション。一体なんの仕事をしていたらそんなお金ができるのかな。

で、引っ越しが住んで住民との交流パーティーなど。しばらくすると、不思議な音楽(フォスターの「夢路より」)が流れてきたり、テレビが急に点いて支離滅裂なメッセージを流し始める。これは洗脳では?

ネットカフェで調べると掲示板での質問に答えて、潜在意識に働きかける研究があると。夫に言ってもとりあってくれない。最初は優しかった夫もローレンのあまりに不安定な様子にイライラし始め、再び入院させようとする。

そうこうするうちに地下の駐車場で拉致され、椅子に固定されて洗脳映像を見させられる。そこを助けてくれたのがネットの相談相手ヴァーノン。殺害指令を出されたマンションの女の子アリーを連れて逃げるが、潜在意識から彼女を殺せと指令を受けて…。

最終的に黒幕は引っ越しパーティーで話しかけてきた男だった。夫は騙されていただけで、独自の隠しカメラで真相を発見していた。ヴァーノンはローレンを助ける家庭で死亡。その後ローレンとラッセルは子どもを授かりめでたしめでたし、なのかな?というところで終わり。

いろいろと設定には厳しいものがあり、なぜわざわざあんな不気味なマンションを選んだのか、なぜ夫ラッセルは妻の話にちゃんと取り合わないのか、謎が多いです。どうも夫の携帯に連絡が入っていたあたり、やはり彼もぐるでは?と思われたりする部分もあるのですが、あれは思い過ごしなんだろうか。

軍事目的で洗脳するにして、一人は飛び下り自殺させたり、やってることが雑ですよね。

もともとが、夫婦のどちらにもあんまり感情移入できない作り方だったので、前半部分がとてももどかしい作品でした。

思いの外よくできたSFホラーラブコメディーでした。

アイルランドの離島に一時的な人員補給でやってきた女性警察官リサと、地元の酔っぱらい警察官オシェイが組んで、未知の吸血生物をやっつけるお話です。

最初の出会いの瞬間からオシェイは酔っぱらって船着場へリサを迎えに。リサは対照的に生真面目な警察官。

折しも、海では漁船が謎の生物に襲われ、船員が行方不明。浜にはクジラの死体が多数打ち上げられます。地元の漁師の網には不審な生物が。

で、浜で人が襲われたり、捕まえていた一匹が逃げ出して襲いかかったりする中で、段々襲われても大丈夫な人が出てくる。それはなぜか?酔っぱらっていたからだ、と判明。生物は水と血が必要らしい。

大々的な応援は嵐が迫っているので期待できず。みんなは酒場に住民を集めて酒盛りさせることに。

そのうち卵から孵った無数の幼獣とメスの匂いを追ってやってきた巨大なオスにパブが襲われる。リサとオシェイの機転により危機一髪やっつける、というお話。

地元民たちの陽気な酔っぱらいぶり、最初のオシェイとリサのダメ人間と生真面目人間のコントラストが、後半になって逆転してくるのが微笑ましいです。

オシェイ役リチャード・コイルは、「プロヴァンスの贈りもの」などにも出演していますがイギリスのテレビドラマベースの活躍が多いようです。ややアウトロー的なキャラクターが似合うんでしょうね。リサ役のルース・ブラッドリーは「プライミーバル」や「ドクター・フー」などテレビシリーズ中心で、最近では「ヒューマンズ」にも出ています。少しサラ・ウェイン・キャリーズを思わせる親しみやすさがいいですね。

ウィル・スミスとトミー・リー・ジョーンズのコンビで人気を誇ったシリーズのリブート。オリジナルキャストがいない、ということでどうなるのかな、と思いましたが、案外違和感のない、さわやかな一本になりました。

メインキャストは、幼いころに両親がMIBに記憶を消された経験をもつ少女モリー。彼女は以来MIBの一員になりたくて個人的に調査を続け、ついには組織のビルにもぐり込むことに成功。そしてエージェントOに気に入られて見習いエージェントMに。そしてOの指示でロンドン派遣。

折しもロンドンでは一つの任務が遂行中。エージェントHと共にヴァンガスの護衛を任されたM。ところがヴァンガスが二人組のエイリアンに毒を盛られ、車を爆破されて殺されてしまう。瀕死のヴァンガスからHは人が変わってしまったから、と不思議な石を託された。

その石は実は強力な兵器だった。二人はこれをねらうエイリアンに追われ、ついには奪われてしまう。行き先はHの元恋人の武器商人の宇宙人リザ。彼女の家に侵入するが力で圧倒され、万事休すか、と思ったとき、意外な展開。リザの用心棒はモリーが幼いころに逃がしてやったエイリアンだった。

島を出ようとしたとき、また二人組のエイリアンが襲うがそこにロンドンのトップ、ハイTが助けに駆けつける。

めでたしめでたしかと思われたその時、実はすべてハイTの策略だったとわかる。HもかつてTとコンビを組んで活躍したと思われていたが実はハイヴに身体を乗っ取られたTにずっと騙されていたのだ。パリのエッフェル塔にポータルを開きハイヴを招き入れようとするTを最後は倒し、Mはめでたく見習いを卒業。Hはイギリス支部長の見習いとなる。

ちょっと久しぶりだったのでこのシリーズの設定を細かくは覚えていなかったのですが、人の記憶を消す装置だけは強力なギミックですね。もうこの世界では普通に人と宇宙人が共存している社会に進化している、というところ、「エイリアン・ネイション」にも通じるものを感じました。また、途中で小人の宇宙人の生き残りポーンが出てきて大事な役どころを演じるのが、少し「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」味を感じさせます。

Mを演じるテッサ・トンプソン、ちょっと顔だちは地味ですが親しみの持てる丸い鼻、無理やりな会話で危機を脱するなど、頑張っていました。「アナイアレイション」「マイティー・ソー」シリーズなどでも活躍してるんですね。リザ役のレベッカ・ファーガソンは「ミッション・インポッシブル」シリーズの他「スノーマン」で殺されちゃう捜査官をやっていました。途中までHを疑うエージェントCはレイフ・スポール、ティム・ロスを薄味にしたような感じですが、「ホット・ファズ」「プロメテウス」などにも出ています。

冒頭でいきなり冴えないサラリーマンのモノローグで始まって、あれ、と思っているとシームレスに凄腕の殺し屋の死闘が始まって、意表を突いてくれるのはうれしい趣向です。

主人公のウェズリーは職場ではいやな上司にいじめられ、同僚には彼女を寝取られ、薬がないと精神が安定しないダメ人間。と思ったら、ある日スーパーマーケットで殺し屋同士の銃撃戦に巻き込まれ、そのまま美女フォックスの車に乗せられ壮絶なカーチェイス。連れて行かれた先で、組織のトップ、スローンに、お前は凄腕の暗殺者の息子なのだと聞かされます。その証拠にと、ハエの羽だけを撃ち落とせ、と頭に銃を突きつけられ要求され、必死でやるとなんとできてしまう。

じゃあ仲間に入る、と言ってみたものの、いざ始めてみるとトレーニングがめちゃくちゃキツい。音を上げ始めたところで父親の部屋に案内されてやる気が復活。着々と教育の成果が。仕上げは銃弾をカーブさせる試練。フォックスが身体を張って障壁になり、失敗は許されないところ、無事合格。

その後、いくつかミッションをこなしたところで、父親を殺した相手クロスの手がかりが銃弾から。追っていくと父を知っているという老人に。彼の手引きでクロスの乗っている電車に乗り込み銃撃戦に。車掌が急ブレーキをかけ、山中で脱線して落ちかけるところ、クロスが手をさしのべる。隙を突いて撃つウェズリー。だが、最期の息でクロスは自分がウェズリーの父親だと告白。実は裏切ったのは暗殺者の組織の方なのだと。

真実を知ったウェズリーは組織を壊滅すべく襲撃。手練が全員揃ったところでスローンが実は暗殺のターゲットはスローン他、メンバーみんなだったのだと告白。組織の掟を守って自殺するか、スローンを守って組織の力を利用するか選べと。大半が保身に走る中、フォックスは掟に殉じて自分含む全員を射殺。スローンはその場を逃げる。

後日譚。会社にもどって冴えない仕事をしているウェズリーを狙いに来たスローン、と思ったらそれはおとりでウェズリーは仇をとったのだった。

1000年も昔から続く暗殺組織、というのはまさに奇想天外ですが、テンプル騎士団とか、フリーメイソンとか、いろいろありますからね。その指示自体がどこからくるのか、よく分からないところが不思議な組織です。盲目的に出てきた名前を暗殺することで世の平和に貢献できる、という理屈が通るのかどうか、難しいところで、この辺はマンガならではの設定で、実写映画になると、ちょっとバカバカしく見えるところです。

途中で父親の後を継ぐことに目覚めて、急によい子になるあたり、単純だな、と危うさを感じたりしていたら、やはり後半にどんでん返しがきましたね。組織の脅威になる存在を消すために息子を暗殺者に仕立てる、というのはなかなかうまくできたプロットかなと思いました。

「スプリット」で驚異的な多重人格を演じたジェームス・マカヴォイがまだトム・ホランドばりの素朴な青年を演じているところが面白いですね。アンジェリーナ・ジョリーの役柄としては可もなく不可もない感じで、ララ・クロフト以上の深みがあるかというとそうでもない。モーガン・フリーマンも標準以上の悪役でもなかった感じです。あと、職場で彼女を寝取る同僚役の顔を見たことあるな、と思ったら、若き日のクリス・プラットでした。このころはちょっと太ってますね。

音楽がダニー・エルフマンだったのが意外でした。

世界観は「スチームボーイ」と「ハウルと動く城」で、ストーリーは「スター・ウォーズ」と思って見ればだいたい間違いないです。あと、「モリー・テンプラーと蒼穹の飛行艦」という小説も思い出しました。

舞台としては、世界大戦で一度人類が滅びたあとの世界で、大陸はその形を変え、人類が移動する都市の上に住んでいるという設定。まず小さな街が一つ、巨大な移動都市「ロンドン」に飲み込まれるところから始まります。街を飲み込むと、住人は武装解除されて引き受けられ、都市のパーツはリサイクルに回されて巨大都市のエネルギーにされる宿命。

そんな中で、滅びた古代文明を回収したり、博物館に収めたりする動きもある。飲み込まれた都市に住んでいた一人の少女ヘスターが、市長補佐ヴァレンタインを殺そうとする。ヘスターの母親をヴァレンタインが殺したという。その場に居合わせた博物館職員トムとヴァレンタインの娘キャサリン。ヘスターは逃げる途中で排出口に転落。追いついたトムはヴァレンタインに突き落とされてヘスターと珍道中に。

途中で怪しい人身売買に引き渡されたりしたヘスターとトムを救出したのはお尋ね者のアナ・ファン。移動都市反対のテロリストという触れ込み。自由になったかと思ったとき、ヘスターを追うもう一人の存在、人造人間シュライクが乱入。かろうじて逃げおおせる。どうもヘスターは母親を殺された後でシュライクに育てられた。人間性をほとんど失ったものの、ヘスターを大事に育て、彼女の哀しみを癒やすために、人造人間に移植しようという計画を。ヘスターは父の形をとるために逃げ出したのだと。

一方「ロンドン」では、ヴァレンタインが密かにクーデターを遂行中。過去の大戦で壊滅的な被害をもたらした最終兵器「メデューサ」を復活させようとしていたのだった。トムが集めた古物とヘスターの母親から手に入れたコンピューターのコアで、それが実現しようとしている。

アナとエアヘイヴンで話したヘスター。母親のことをよく知っているらしい。ヴァレンタインの計画を止めるためにヘスターが必要なのだと。しかしそれがなんなのかわからない。そこにシュライクが乱入して戦闘に。燃え落ちるエアヘイヴン。ヘスターがトムのことを大事に思っていることを知り、シュライクは計画を諦め、機能停止する。彼がヘスターに託したのは、母親が残したペンダント。

ヴァレンタインはかつての中国シャングオへの進撃を開始する。射程距離に入ったとき、メデューサの威力で城壁は焼け落ち、甚大な被害が。ヘスターはペンダントのデザインから、中にデータが入っていたことを知る。これこそがメデューサを機能停止させるキーだった。

空中戦で仲間を失いながらも「ロンドン」に潜入、アナはヴァレンタインに殺されるがギリギリのところでメデューサを止めたヘスター。キャサリンが暴走するロンドンをトムと協力して止め、大戦はくい止められた。投降するロンドン市民たちをシャングオは温かく受け入れ、トムとヘスターは新たな旅に出る。

ということで、いわくありげな登場人物が次から次へと表れるので、本当の主人公は誰だよ、と言いたくなりますが、基本はトムとヘスターのラブストーリーなんですね。トムが基本とろいタイプなので、ヘスターがなぜ彼に惚れるのかはよくわからない感じです。キャサリンが途中でフェードアウトしがちで、ラストで少し役割はありますが、お添え物感は否めません。

「ロンドン」が、侵略を進めなければどうなっていたのか。エネルギー枯渇が問題となっていたようで、他の都市を飲み込んでも先は見えていたようにも思えます。シャングオはその後平和に暮らせるような町だったんでしょうか。

ヘスターの父親がヴァレンタインなのじゃないか、と匂わせて、でも結局ヴァレンタインに止めを刺したのはトムだというのはどうなんでしょう。ちょっと違う終わらせ方もあったような。

ちょっと興味深かったのは、ヘスターとシュライクの関係で、シュライクの最期は泣けました。シュライクがヘスターを殺したがっている、というのは違う意味での愛情表現なんですよね。心があるから、苦しい、だから彼女を自由にしてあげたい、という彼なりの親心はちょっと胸を打つものがありました。

アナは、なんとなく侍っぽい、というか布袋寅泰さんぽいです。

映像的にはとにかく大半がCGと合成なので、よくここまで映像化したな、というのは感心しました。ただ、映像がそうでもこの世界が成立しているかどうかの説得力、という意味では少し怪しい感じもします。エネルギーの原理とか、都市機能や日常生活のディテールがちょっとずつ足りないように思いました。序盤のトースターの話なんかは少し面白かったんですけどね。

ロンドン市民が、無邪気に昔の帝国主義を肯定しているような感じで、簡単に戦意高揚にあおられてしまう人民だ、というのはイギリスの観客にはどう見えたでしょうか。ラストは帝国主義の敗北と、中国哲学の寛容をPRしすぎのようにも見えますね。

原作本があるので、たぶん本だとちょうどいいんでしょうが、映画としては詰め込みすぎでしょうね。

ティム・ロス出演作に駄作はなし、といままで思ってきたのですが、これは最初の外れかも。位置づけとしては主演はユマ・サーマンで次がティム・ロスなのですが、それにしても。

最初に麻薬取引でさっそうと引き換えに成功して大金をせしめたハリー(ユマ・サーマン)、夫のピーター(ティム・ロス)と落ち合い、依頼人のイリーナに金を渡すはずが、ピーターはアル中+薬物依存、ハリーはギャンブル中毒で、その金をすべてすってしまい、逃亡。

逃げた先で賞金首になっていることも知り、返済のために大きなヤマを当てなければ、と焦る。そんなところに、ピーターの元妻ジャッキーが大きな結婚指輪を夫の映画監督からもらったことを知り、その指輪を盗む計画を。

このお膳立てさえあれば、それなりに面白くなるのかも、と思ったのですが、期待は見事にはずれました。たしかに屋敷に住む人々それぞれの人物像はどこかピント外れの奇人ばっかりなのですが、それが積み上がってなにかに結びつくか、というとバラバラなまま。

主役の二人が、計画らしい計画をほとんど立てずに、うまくいかずにジャッキーと夫の夫婦関係のいざこざを傍観しているだけ。あとから追ってきたイリーナで場が締まるかと思ったら、これもただマヌケなだけで話が進みません。

どうも役者の演技力に頼った、オフビートな笑いをねらったのかもしれませんが、乾いた苦笑いぐらいで終わった感じです。なにより、麻薬と酒に溺れて何もしようとしないピーターと暇さえあればギャンブルをしているハリーの二人に感情移入ができない、というところから誤算が始まっているように思います。

FOXのテレビシリーズ「バーン・ノーティス」や「ライ・トゥ・ミー」の爪の垢でも煎じて飲んでほしいです。

ジャッキー役のアリス・イヴは「レプリカズ」でキアヌ・リーヴスの妻役、ケビン・コスナーの「クリミナル」、「推理作家ポー 最期の5日間」でエドガー・アラン・ポーの恋人役などをやっていますね。ちょっとヘレナ・ボナム=カーターを甘くしたようなかわいい顔です。容赦なく殺すイリーナを演じたのはマギー・Q。個人的には「プリースト」でカッコいい人だな、と注目していたぐらいですが、テレビシリーズの「ニキータ」で主役ですね。だから殺し屋役がはまっているのかと。

映画監督の夫役で、「バック・トゥ・ザ・フューチャー」シリーズの父マクフライを演じたクリスピン・グローバーが出ていますが、彼もちょっと本領発揮はできていない感じです。

邦題の「グラビティ」は勘弁してほしいですが、原題は宇宙船の名前そのもののATROPA。消息を絶った宇宙船を探して旅立った捜査官が予想よりも早く、目的の船を発見。乗り込んでみた直後に、急に他の宇宙船と激突。相手は、同じATROPA号だった…。

主人公が乗り込んで捜索すると、生きているはずの乗員の死体が。それを見た当人はパニック。

重力異常なのか、空間のゆがみなのか、原因はハッキリ特定できないけれど、とにかく、時間も含めてのループに迷い込んでしまったらしい。対策を練る間もなく、船の動力は失われ、電源も失われる。そして、乗員の死体には銃で撃たれた痕が。

一体誰が撃ったのか、このループを抜け出せるか、というミステリーとSFをミックスした作品。ちょっと人物の彫りが浅いのは残念ですが、脱出ポッドで抜け駆けした隊員が、惑星の周辺の輪っかになって、同じポッドが無数に並ぶところとかはおっと思わせてくれたし、解決策の、過去の自分と出会わせるために妻を逃がす、というトリックは、確かに同一人物が二人出会うわけにはいかないなぁ、と思ったりしたので、まあ納得です。

プロットとしてはけっこう粗くて、主人公の時代後れのヒロイズムは、ちょっと鼻につきましたが、一生に一本だけ、映画を撮るなら、こういう作品が許されてもいい、と思いました。「恋はデジャ・ブ」でもあった、無限に繰り返されるループの中で、何が正解か。人生に悔いを残した主人公が、絶望の中に希望を見いだすのは、毎回が同じ繰り返しではなく、それぞれの1回のユニークさがあるからなんですね。だから、すでにその選択肢かない、ではなく、今回の自分だけの選択をすることに可能性がある、そんなメッセージだろうと思います。

これ、映画じゃなくて、テレビ映画ですかね。マイケル・アイアンサイドのフィルモグラフィーには乗っていないし、IMDbで検索すると、7本のテレビシリーズだ、と出てくるんですが、どう見ても1本で完結してるんですが。