ジェームズ・フランコが、「オズの魔法使」で描かれる前の、オズの国にやってきたころの若き日のオズを演じた物語。
巡回サーカスの手品師としてカツカツの暮らしをしながら、でも何かをなし遂げたいと夢見る若者オズ。ある日サーカス内のいざこざを逃げるために気球に乗ったら、竜巻に巻き上げられて知らない国へ。どうやらここは魔法の国らしい。しかも「オズ」と自分の名前がついている。
出会った魔女セオドラとちょっといい仲になってしまったら彼女はすっかり女王になったつもりに。彼女の頼みで悪い魔女を退治してくれ、と頼まれ、安請け合いしてしまいます。途中で助けた羽の生えたサル・フィンリーは半ば強引に家来になり、エメラルド・シティーに。
そこで出会ったセオドラの姉エヴァノラはオズの力に懐疑的。でも信用して彼を王国を脅かす「悪い魔女」グリンダ討伐に送り出します。
途中で陶器の村に立ち寄ると軍隊に襲われて全滅。ただ一人の生き残りの陶器の少女の足を糊でくっつけてやり、彼女もお供することに。そうして暗い森にやってくると、グリンダは思いの外いい人みたいだ。さては?
そう、本当に悪い魔女はエヴァノラだった。彼女の差し向けた追手を逃れ、グリンダは一行を彼女の村へと連れてくる。軍隊はないけれど平和を愛する気のいい人たち。その様子をエヴァノラはセオドラに見せ、彼女の傷心につけこんで毒リンゴを食べさせ、悪意に満ちた強力な魔女にしてしまう。
セオドラがオズたちに宣戦布告し、オズはたまらず逃げ出そうとするが、妙案を思いつき、エメラルド・シティーと戦う作戦を立てる。それには村人の熱心な協力が必要だった。
序盤は有利に運ぶものの、グリンダは杖を失いエヴァノラに捕らえられてしまう。その間に仲間を場内に侵入させたオズは、味方も欺き、気球に乗って逃げたと見せかけて一大イリュージョンを演出。雲に巨大な顔を投射させ勝利を収める。セオドラは捨てぜりふを残し逃亡、エヴァノラはグリンダとの一対一の闘いに破れ、醜い姿で追放される。
最後は一緒になった戦った仲間たちをねぎらい、今後の統治の体制を決めたところでおしまい。このしかけが、「オズの魔法使」のラストでドロシーたちに暴露されてしまう伏線になるわけですね。
何かでかいことをなし遂げたいけど、どうしたらいいかわからない、女性には次から次へと手を出すけど、本気で責任をもとうとはしない、ちゃらんぽらんな若者が、自分のなすべきことを知る、というのが基本の流れなんでしょうが、手品師が魔術師と間違われたことへの戸惑いや、魔女討伐を頼まれたときの虚勢の張り方、びくつき方などが、あまりメリハリがなくて、どこで心情にスイッチが入るのか、やや分かりにくかったです。これはジェームズ・フランコの欠点なのか、脚本・演出の責任なのか。
魔法の国の魔女たちが次々と彼の小手先の手品に騙されてくれる、というのがややリアリティーがないのですが、電気のない世界においては、科学は魔術に近いもの、と好意的にとることもできます。それにしてもセオドラはちょっとかわいそうだったし、序盤のサーカス小屋で足の悪い少女が「歩けるようになりたい」と頼むところを断るあたり、ちょっとしり切れとんぼで後味が悪いな、とか思ってしまいました。
キャラクターの中では、フィンリーのサルの顔の造形がややグロテスクだったのが残念で、性格そのものはけっこう好きでした。陶器の少女、最初は少し気味悪いかなと思ったんですが、表情豊かだし、けっこう愛らしいなと思いました。ただ、性格の豹変するキャラクターの割に、強みがあんまり設定してもらえていなくて、活躍する場面は少なかったです。
自分の能力や強みを生かすことで、人の望む自分になれる、というメッセージはやや楽天的ですが、見て楽しい作品ではありました。