冒頭でいきなり冴えないサラリーマンのモノローグで始まって、あれ、と思っているとシームレスに凄腕の殺し屋の死闘が始まって、意表を突いてくれるのはうれしい趣向です。
主人公のウェズリーは職場ではいやな上司にいじめられ、同僚には彼女を寝取られ、薬がないと精神が安定しないダメ人間。と思ったら、ある日スーパーマーケットで殺し屋同士の銃撃戦に巻き込まれ、そのまま美女フォックスの車に乗せられ壮絶なカーチェイス。連れて行かれた先で、組織のトップ、スローンに、お前は凄腕の暗殺者の息子なのだと聞かされます。その証拠にと、ハエの羽だけを撃ち落とせ、と頭に銃を突きつけられ要求され、必死でやるとなんとできてしまう。
じゃあ仲間に入る、と言ってみたものの、いざ始めてみるとトレーニングがめちゃくちゃキツい。音を上げ始めたところで父親の部屋に案内されてやる気が復活。着々と教育の成果が。仕上げは銃弾をカーブさせる試練。フォックスが身体を張って障壁になり、失敗は許されないところ、無事合格。
その後、いくつかミッションをこなしたところで、父親を殺した相手クロスの手がかりが銃弾から。追っていくと父を知っているという老人に。彼の手引きでクロスの乗っている電車に乗り込み銃撃戦に。車掌が急ブレーキをかけ、山中で脱線して落ちかけるところ、クロスが手をさしのべる。隙を突いて撃つウェズリー。だが、最期の息でクロスは自分がウェズリーの父親だと告白。実は裏切ったのは暗殺者の組織の方なのだと。
真実を知ったウェズリーは組織を壊滅すべく襲撃。手練が全員揃ったところでスローンが実は暗殺のターゲットはスローン他、メンバーみんなだったのだと告白。組織の掟を守って自殺するか、スローンを守って組織の力を利用するか選べと。大半が保身に走る中、フォックスは掟に殉じて自分含む全員を射殺。スローンはその場を逃げる。
後日譚。会社にもどって冴えない仕事をしているウェズリーを狙いに来たスローン、と思ったらそれはおとりでウェズリーは仇をとったのだった。
1000年も昔から続く暗殺組織、というのはまさに奇想天外ですが、テンプル騎士団とか、フリーメイソンとか、いろいろありますからね。その指示自体がどこからくるのか、よく分からないところが不思議な組織です。盲目的に出てきた名前を暗殺することで世の平和に貢献できる、という理屈が通るのかどうか、難しいところで、この辺はマンガならではの設定で、実写映画になると、ちょっとバカバカしく見えるところです。
途中で父親の後を継ぐことに目覚めて、急によい子になるあたり、単純だな、と危うさを感じたりしていたら、やはり後半にどんでん返しがきましたね。組織の脅威になる存在を消すために息子を暗殺者に仕立てる、というのはなかなかうまくできたプロットかなと思いました。
「スプリット」で驚異的な多重人格を演じたジェームス・マカヴォイがまだトム・ホランドばりの素朴な青年を演じているところが面白いですね。アンジェリーナ・ジョリーの役柄としては可もなく不可もない感じで、ララ・クロフト以上の深みがあるかというとそうでもない。モーガン・フリーマンも標準以上の悪役でもなかった感じです。あと、職場で彼女を寝取る同僚役の顔を見たことあるな、と思ったら、若き日のクリス・プラットでした。このころはちょっと太ってますね。
音楽がダニー・エルフマンだったのが意外でした。