邦題の「グラビティ」は勘弁してほしいですが、原題は宇宙船の名前そのもののATROPA。消息を絶った宇宙船を探して旅立った捜査官が予想よりも早く、目的の船を発見。乗り込んでみた直後に、急に他の宇宙船と激突。相手は、同じATROPA号だった…。

主人公が乗り込んで捜索すると、生きているはずの乗員の死体が。それを見た当人はパニック。

重力異常なのか、空間のゆがみなのか、原因はハッキリ特定できないけれど、とにかく、時間も含めてのループに迷い込んでしまったらしい。対策を練る間もなく、船の動力は失われ、電源も失われる。そして、乗員の死体には銃で撃たれた痕が。

一体誰が撃ったのか、このループを抜け出せるか、というミステリーとSFをミックスした作品。ちょっと人物の彫りが浅いのは残念ですが、脱出ポッドで抜け駆けした隊員が、惑星の周辺の輪っかになって、同じポッドが無数に並ぶところとかはおっと思わせてくれたし、解決策の、過去の自分と出会わせるために妻を逃がす、というトリックは、確かに同一人物が二人出会うわけにはいかないなぁ、と思ったりしたので、まあ納得です。

プロットとしてはけっこう粗くて、主人公の時代後れのヒロイズムは、ちょっと鼻につきましたが、一生に一本だけ、映画を撮るなら、こういう作品が許されてもいい、と思いました。「恋はデジャ・ブ」でもあった、無限に繰り返されるループの中で、何が正解か。人生に悔いを残した主人公が、絶望の中に希望を見いだすのは、毎回が同じ繰り返しではなく、それぞれの1回のユニークさがあるからなんですね。だから、すでにその選択肢かない、ではなく、今回の自分だけの選択をすることに可能性がある、そんなメッセージだろうと思います。

これ、映画じゃなくて、テレビ映画ですかね。マイケル・アイアンサイドのフィルモグラフィーには乗っていないし、IMDbで検索すると、7本のテレビシリーズだ、と出てくるんですが、どう見ても1本で完結してるんですが。