ティム・ロス出演作に駄作はなし、といままで思ってきたのですが、これは最初の外れかも。位置づけとしては主演はユマ・サーマンで次がティム・ロスなのですが、それにしても。

最初に麻薬取引でさっそうと引き換えに成功して大金をせしめたハリー(ユマ・サーマン)、夫のピーター(ティム・ロス)と落ち合い、依頼人のイリーナに金を渡すはずが、ピーターはアル中+薬物依存、ハリーはギャンブル中毒で、その金をすべてすってしまい、逃亡。

逃げた先で賞金首になっていることも知り、返済のために大きなヤマを当てなければ、と焦る。そんなところに、ピーターの元妻ジャッキーが大きな結婚指輪を夫の映画監督からもらったことを知り、その指輪を盗む計画を。

このお膳立てさえあれば、それなりに面白くなるのかも、と思ったのですが、期待は見事にはずれました。たしかに屋敷に住む人々それぞれの人物像はどこかピント外れの奇人ばっかりなのですが、それが積み上がってなにかに結びつくか、というとバラバラなまま。

主役の二人が、計画らしい計画をほとんど立てずに、うまくいかずにジャッキーと夫の夫婦関係のいざこざを傍観しているだけ。あとから追ってきたイリーナで場が締まるかと思ったら、これもただマヌケなだけで話が進みません。

どうも役者の演技力に頼った、オフビートな笑いをねらったのかもしれませんが、乾いた苦笑いぐらいで終わった感じです。なにより、麻薬と酒に溺れて何もしようとしないピーターと暇さえあればギャンブルをしているハリーの二人に感情移入ができない、というところから誤算が始まっているように思います。

FOXのテレビシリーズ「バーン・ノーティス」や「ライ・トゥ・ミー」の爪の垢でも煎じて飲んでほしいです。

ジャッキー役のアリス・イヴは「レプリカズ」でキアヌ・リーヴスの妻役、ケビン・コスナーの「クリミナル」、「推理作家ポー 最期の5日間」でエドガー・アラン・ポーの恋人役などをやっていますね。ちょっとヘレナ・ボナム=カーターを甘くしたようなかわいい顔です。容赦なく殺すイリーナを演じたのはマギー・Q。個人的には「プリースト」でカッコいい人だな、と注目していたぐらいですが、テレビシリーズの「ニキータ」で主役ですね。だから殺し屋役がはまっているのかと。

映画監督の夫役で、「バック・トゥ・ザ・フューチャー」シリーズの父マクフライを演じたクリスピン・グローバーが出ていますが、彼もちょっと本領発揮はできていない感じです。