大人気のフィジークコンテストとマニアックなボデイビルコンテスト。
下半身を隠すのはもちろん違いがありますが、ボデイビルとフィジークの一番の違いは”腕を上げる”ポーズの有無でしょう。
そう、上肢を胸郭から離して、かつ、腕を太く見せる、このフロントダブルバイセップスこそがフィジーク選手が”嫌がる”ポーズです。
これ、離した瞬間に、逆三角形のシルエットが消える、のです。
それは筋肉の解剖生理学的、当たり前。
上肢の外転伴う挙上は、広背筋も大円筋も働かないのです、”普通”は。
ダブルバイ取った瞬間に、胸郭の骨盤へ続くラインは”直線化”し、土管が骨盤に付いているが如くになります。
鍛え抜いた腕を見せたいもんだから、腕に意識がいくと、もっと円筒形に。
曲線が集まってこそ立体的に見える。
いかに直線をつくらないか、あっても短くするか。
今でも親しくさせていただいる大河原さんが、1985年か6年に宮崎に来た時、ダブルバイは、腕が広背筋に乗っかる、感じなんだな、と独り言を言ったのが、僕は神の声に聞こえました。
両方いっぺんはいきなり無理、片方ずつ、腕を広背筋、または大円筋寄りの背中に乗っける意識を持つのです。
今は禁止ですが、体幹を骨盤に乗せてから捻ってもいい。
肘の捻り、肩甲骨のコントロールで、ふっと乗る場所があるのです。
そしてもう一つ、脚。
優勝できなかった、密度ならクラス別を含めても全選手のなかで一番の、大久保くん。
ふとく、高密度の脚の間、”空いてます”。
太さがこの空間で、”死んで”いるのです、わかるかな?
優勝した岩井くん、4位の阪元くんが、この脚の見せ方が上手い。
岩井くん、僕の記憶では以前は、フィジカーだったと思うのですが、すごいです。
羨ましいほどの脚の太さとセパレーション、重量感ある土台に、腕を上げても広がったままの上半身を見せつけ、これで優勝は決まったと思います。
薄く見えそうな胸郭を、バキュームで”隠して”いるところも、感心しました。
審査員も、ダブルバイセップス、ほんと難しく奥が深いって知っているからです。
有酸素運動をヘロヘロになるくらいまでする選手が多いのですが、僕はダブルバイ、サイドチェストを一時間ずつしたほうが、はるかに安定感のある体を作ることができると、今でも思っています。
繰り返しのくどいくらいのポージング、錯覚の妙 を持てれば、小さな大会は勝てる、それが持論です。